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かつて結婚を誓い合った恋人だった男とフェイスブックで交流した女。男のメッセージの端々から、嫌な雰囲気が漂ってきたけれど、やっぱりなぁ~!と思わせるかのようなラストまで、一気読みさせる作品でした。
2021年06月29日
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三組の親子の物語ですが、どの家庭も大変。でも、最後に救いがある結末で良かったかな。ただ、一組の親子を除いては。
2021年06月29日
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。土方さんが「夜にだけ女になる」という特殊設定です。苦手な方はご注意ください。「海賊ですって!?」「わたし達、どうなるの?」「殺されてしまうわ!」 海賊が船に乗り込んで来た事を知った娘達は皆半狂乱となり、海へと次々に飛び込んだ。「おい、あれを見ろ!」「畜生、遅かったか!」 海へと次々に飛び込んでゆく娘達の姿を望遠鏡で見ていた海賊の一人がそう言って呻いた。「どうした?」「お頭、起きて下さい!あの娘達が・・」「こいつはひでぇな。よし、娘達を俺達で救い出すぞ!」「アイサー!」 船長・ジェラルドの指示で、海賊達は奴隷船から海へと飛び込んでゆく娘達を救出した。「救出した娘達はこれで全部か!?」「はい。」「よし、ずらかるぞ!」「アイサー!」(チッ、遅かったか!) 海賊船が遠ざかってゆくのを、歳三は奴隷船の甲板から見た。 この船から降りた所で、待っているのは地獄だ。「探したよ。さぁ、大人しく船倉に戻りな!」「わかったよ!」「今度おかしな真似をしてごらん、こいつでお前の頭に風穴を開けてやるからね。」 女はそう言うと、歳三のこめかみに拳銃を押し当てた。「おい、これからどうする?」「どうするもこうするも、娘達はあいつらに奪われちまったんだから、引き返すしかねぇよ。」「上玉揃いだったのに、とんだ大損だよ!」 歳三達を乗せた奴隷船は、時折近くの港に寄っては、金になる若い娘達を奴隷船に乗せた。「まぁ、これで大丈夫だね。」「そうだね。」「酷い船旅だったよ。」 娼館の経営者夫婦はそう言いながら、ワインを一気に飲み干すと、眠ってしまった。 彼らは二度と、目覚める事はなかった。「一体、これはどういう状況なんだ?」「こんなに遺体の損傷が激しいんじゃ、身元の特定に時間がかかるな・・」「あぁ。」 奴隷船の中を捜索した王宮警察官達は、船倉に転がっている若い娘達の遺体を外へと運び出していった。「おい、ちょっと来てくれ!」「どうした?」「この娘、生きているぞ!」 奥の方に、毛布にくるまれて蹲っている黒髪の娘は、まだ息をしていた。 彼らはすぐさま、病院へとその娘を運んだ。 娘は、軽い脱水と栄養失調状態だった。「この娘の身元が判るものは?」「ありませんね。」「そうか・・」「この刺繍は、確か王家の・・」「まさか・・」「王妃様、一大事でございます!」「何ですか、騒々しい。」「申し訳ございません、実は・・」 息を切らしながら王妃の私室へとやって来た女官達の一人が、彼女の耳元で何かを囁いた。「すぐにそこへ案内なさい!」「は、はい!」 王妃を乗せた馬車は、例の娘が入院している病院へと向かった。「ん・・」「気が付いたのかい?」「あの、ここは・・」「君は、酷い目に遭ったんだ。暫くここで、心身を休めなさい。」「はい・・」 娘―歳三がそう言って目を閉じると、安堵の表情を浮かべた医師は、白衣の裾を翻しながら病室から出て行った。「先生、あの子に会えますか?」「王妃様、彼女には暫く静養が必要です。」「そうですか・・」「奴隷船の中に一月も監禁され、水も食料も与えられていなかったのですから、衰弱している彼女の身体の回復には相当時間がかかります。」「先生、ありがとうございます。」「いいえ。彼女のケアと治療は我々が全力を尽くして参ります。」「どうか、よろしくお願いいたします。」 エリスは医師に一礼すると、女官達を従えて病院から去っていった。「エリス様、あの娘はあなた様のお知り合いなのですか?」「いいえ。」「では、あの娘は・・」「あなた、それ以上聞くのは野暮ですよ。」「すいません。」「申し訳ございません、王妃様。この者には、わたくしの方から厳しく言い聞かせておきますので・・」「いいのよ。それよりもみんな、忙しいのにわたくしに付き合って貰って悪かったわね。そうだ、みんなでお昼に行きましょう!」「はい!」「まぁ、嬉しいですわ!」「ありがとうございます!」 病院への帰り道、エリスは女官達と共にカスクートが美味しいと評判のカフェへとランチに出かけた。「いらっしゃいませ~!」「五名だけれど、空いているかしら?」「はい、御二階席へどうぞ!」「ありがとう。」 エリスたちが二階席でランチを食べていると、広場の方から鐘の音が聞こえて来た。「何かしら?」「さぁ・・」「そろそろ、行きましょうか?」「はい。」 エリス達が王宮に戻ると、グレゴリーが血相を変えた様子でエリス達の元へと駆け寄って来た。「母上、大変です!」「どうしたの、何があったの?」「アリシアが・・彼女が、姿を消しました!」「それは一体、どういう事なの!?」「実は・・」 グレゴリーは、エリスにアリシアがアレクシアの死後、精神的に不安定な状態だったという事を話した。「手分けして、彼女を捜しましょう!」「はい!」 女官達とエリスが消えたアリシアを捜していると、エリスは王宮の裏にある崖に彼女が居るのを見つけた。「アリシア!」「王妃様、わたしは・・」「気づいてあげられなくて、ごめんなさいね。」「うっ・・」 アリシアは、エリスの顔を見て安堵の笑みを浮かべた後、彼女の言葉を聞いて堪えていた涙を流した。「姉は、何故殺されなければならなかったのでしょう。幸せな結婚生活を送っているとばかり思っていたのに、それなのに・・」「わかるわ、その気持ち。あなたとお姉様は、とても仲の良い姉妹だったと周りから聞いていたから。」「姉とわたしは、姉がガレリアへ嫁ぐその日まで一緒でした。子供の頃からずっと、片時も姉と離れた事はありませんでした。それなのに・・」「実は、わたくしにも仲が良い兄が居たの。子供の頃からずっと、わたしと兄は一緒だったわ。でも、“あの日”、わたし達は永遠に引き離されてしまったのよ。」「“あの日”?」「それは、後で話すわ・・ここは冷えるから、戻りましょうか?」「はい・・」 エリスとアリシアが崖から立ち去ろうとした時、一羽の鳥が大きな弧を描きながら、二人の頭上を飛んでいった。「王妃様?」「いいえ、何でもないわ、行きましょう。」(お兄様、きっといつか会いましょう・・)にほんブログ村
2021年06月29日
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素材はコチラからお借りしました。「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。(何で、俊郎さんがここに?)「全員、整列!」「トシ?」「いや、何でもない・・」「・・久しぶりだね、歳三君。元気そうで良かった。」「ト、トシ!?警視総監と知り合いなのか!?」「ま、まぁ・・」「な、なんだって!?」「そこ、騒ぐな!」「すいません!」「いや、いい。土方君は、わたしの友人の子供でね。彼が子供の頃からの知り合いだ。」「は、はぁ・・」―おい、今の聞いたか?―土方が、警視総監と知り合いだってよ!―すげぇ人脈だな・・ この事で、歳三は暫くの間同期達の間で気まずくなった。「やぁ、良く来てくれたね!」「お、お邪魔しま~す。」「何だここ、すごいな・・」 週末、歳三達は八郎に招待されて伊庭家の別荘に来ていた。「今日は、ゆっくりしていってね!」「は、はぁい・・」(そんな事言われても、寛げるわけねぇだろ・・) 歳三は、勇とは本当は彼の実家に遊びに行きたかったのだが、伊庭家の別荘に招待された事を知った由紀子が、“そちらの方を優先しろ”と言ってきたので、仕方なく同期達と伊庭家の別荘へとやって来たのだった。「おや八郎、来たのか?」「パパ~!」「け、警視総監!」「お邪魔しております!」「いや、そんなにかしこまらなくてもいいよ。ゆっくりしていきなさい。」(いやいや、それは出来ねぇよ・・) 警察組織のキャリア“雲の上の存在”である伊庭父子相手に“ゆっくりしていけ”と言われても、己の一挙手一投足でその後の警察官としてのキャリアが決まるのだからゆっくり出来る訳がない。 悲しいかな、それが警察官というものなのだ。「トシさん、みんなでバドミントンやろう!」「わ、わかった・・」「あ、俺もやります!」「俺も!」 こうして歳三達は伊庭家の広大な別荘の庭でバドミントンをする事になったが、皆八郎に忖度して本気を出そうとしなかった。「つまんないなぁ、もぅ。」(まぁ、そうなるよなぁ・・)「トシさん、行くよ~!」「あ、おい、待て・・」 八郎が飛ばしたシャトルは、茂みの中へと消えていった。「あ、ごめん~!「俺が取って来るから、八郎達は先に別荘の中へ戻っていろよ。」「うん、わかった。」 八郎達が別荘の中へ戻ると、俊郎の書斎から彼が好きなオペラのメドレーが聴こえて来た。「何か飲む?」「じゃぁ、俺アイスコーヒーで。」「オッケー!」 八郎達は、別荘の居間でアイスコーヒーを飲みながら歳三が戻るのを待っていた。「どうしたんだろう?トシさん、遅いねぇ。」「俺があいつの携帯にかけてみようか?」「勇さん、トシさんの携帯の番号、何で知っているの?」「いや、警察学校に入学する前、連絡を取り合う為にお互いの連絡先を交換したんだ。」「へぇ、そうなの・・」「何だろう、さっきからかけているんだが繋がらないな。」「ねぇ、もしかして何か大変な事に巻き込まれているんじゃないのか!」「そうかもしれない!」 八郎達が別荘の中庭へ向かうと、そこにはバドミントンのシャトルと歳三の携帯電話が茂みの中に落ちていたが、歳三本人の姿はなかった。「どうしよう、トシさんが・・」「八郎、何かあったのか?」「パパ、トシさんが居ないんだ!」「慌てるな。すぐに近くの警察に通報しろ。おそらく、まだ彼と、彼を拉致した犯人は遠くには行っていない。」「わかった!」 八郎達が地元警察と協力して歳三の消息を探している頃、その本人は見知らぬ車のトランクに閉じ込められていた。(畜生、早くここから出ねぇと!) 歳三はトランクの蓋に手を掛けると、そこはロックされておらず難なく開いた。 一か八か、彼はトランクから身を乗り出してそこから脱出した。 地面を転がり、何とか立ち上がった歳三は、全身傷だらけになりながらも伊庭家の別荘へと戻った。「トシさん!」「トシ、大丈夫か!?一体何があったんだ!?」「それは後で話す。それよりも、救急車呼んでくれ。」 歳三はそう言った後、気を失った。「トシさん、しっかりして!」「トシ~!」 歳三が病院に運ばれた後、彼を拉致しようとした犯人二人組が警察に逮捕された。 彼らは、身代金欲しさに八郎を誘拐しようとしたが、“人違い”で歳三を誘拐してしまったのだった。にほんブログ村
2021年06月27日
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素材はコチラからお借りしました。「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「トシさ~ん!」「げっ」 警察学校に入学してから、一ヶ月が経った。 大型連休が終わり、歳三達が食堂で帰省話に花を咲かせていると、そこへ八郎がやって来た。「トシさん、どうして軽井沢の別荘に来てくれなかったの?トシさんの誕生日を盛大に祝いたかったのにぃ!」「済まねぇ、忘れていた。」「ひどい~!」 八郎はそう言って嘘泣きすると、歳三にしなだれかかった。「ねぇトシさん、今度の日曜、一緒に出かけたいなぁ。」「悪い、その日は予定があるんだ。」「え~!」「八郎、うっとうしいからそろそろ離れてくれねぇか?」「嫌だよ~!」 歳三は困惑したような顔で同期達に助けを求めたが、彼らは皆気まずそうに俯いていた。「トシ、こんな所に居たのか、探したぞ!」「勝っちゃん!」「あ、トシさん!」 歳三は勇の姿に気づくと、八郎達が居るテーブルから離れた。「あ、みんなも今度の日曜、うちに来てね。」「は、はい・・」「是非、行かせていただきます・・」 警察は完全なる縦社会。 その場に居た者達は皆、誰も断れなかった。「なぁトシ、またノート見せてくれないか?」「あぁ。それにしても勝っちゃん、目の下に黒い隈出来てるぜ?」「あぁ、昨夜徹夜で勉強していてな。」「余り無理するなよ。一夜漬けは身体に悪いぜ。」「あぁ、わかった。」 勇はそう言うと、歳三からノートを受け取った。「トシの字は、いつ見ても綺麗だなぁ。」「そうか?」 歳三がそう言いながら自分を見つめているその姿は“昔”と変わっていなかった。「どうした?」「いや、何でもない。」 そんな二人の姿を、八郎は恨めしそうな目で見ていた。「おい、どうしたんだ?」「いいえ、何でもありません。」「そうか。丁度良い、君に話がある。」「わかりました。」 教官と共に廊下を歩いてゆく八郎の姿を見ながら、彼と同期の佐々木と宮本は、こんな話をしていた―「また、あいつ教官に呼ばれているよ。」「あいつ、父親が警視総監だからな。教官も色々と必死なんだろうよ。」「そういや、土方も家が伊庭と同じ警察官僚だったよな?金持ちの家に生まれた奴は良いよなぁ。」「本当、“上級国民”ってカンジ。」 二人の会話を、密かに聞いている者が居た。「教官、お話というのは?」「今朝、君の父上から電話があってね。何故警察大学校ではなく、警察学校へ来たんだ?」「好きな人がここに居るからです。」「それだけか?」「はい。」「君は大変優秀なのに、その能力を活かそうとは思わないのかい?」「いいえ。」「そうか。では下がりなさい。」「はい、失礼致します。」 午後の授業は、体術と逮捕術の訓練だった。「え、土方十人抜き?」「マジで!?あの顔でやるなぁ!」「やるって言ったら、伊庭もすげぇよなぁ。」「二人共向かう所敵なしって感じだよな。」「トシは相変わらず強いなぁ。」「え、近藤さん二人の事を知っているんですか?」「あぁ。トシとは、子供の頃から同じ剣道教室に通っていたからな。国体にも出た事があったなぁ。」「へぇ~」「それで、近藤はどうなんだ?」「俺はまぁ・・二人程、強くないかなぁ。」 そう言って笑った勇は、歳三と同じ十人抜きだった。「トシさん。」「八郎、どうした?」「ねぇトシさん、本当に僕と付き合ってくれないの?」「済まねぇな、俺ぁもう・・」「どうして、僕じゃ駄目なの?」「俺は、昔から勝っちゃんの事が好きだった。でも、あの時は・・」「あの時、トシさんは勇さんに未練があったから、その想いを叶えようとしている訳?」「あぁ、そうだ。」「そう・・じゃぁ、僕も遠慮しないからね。」「八郎?」「トシさんがそのつもりなら、僕もトシさんを諦めないからね。」 そう言った八郎の瞳は、昏い光を宿していた。(一体八郎の奴、何だったんだ?あいつらしくもねぇ・・) そんな事を思いながら、歳三は夢も見ずに眠った。 翌朝、歳三が目を開けてベッドの中で寝返りを打っていると、突然廊下が騒がしくなった。(何だ?)「トシ、起きろ!」「どうしたんだ、勝っちゃん?」「警視総監がいらっしゃったんだ!すぐに制服に着替えて整列しろってさ!」「わ、わかった!」 何が起きたのかわからぬまま、歳三が勇と共に制服姿で校庭へと向かうと、そこには八郎の父・俊郎の姿があった。にほんブログ村
2021年06月27日
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本格的なハードボイルドミステリーでした。 読みごたえがありましたね。
2021年06月24日
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土方さんが両性具有です、苦手な方はお読みにならないでください。「ご主人様、只今戻りました。」「首尾は?」「鬼の片割れを見つけました。」 男はそう言うと、主に何かを囁いた。「そうか。では、そやつについて探れ。」「はい・・」「全く、あやつは只者ではないと思っていたが、やはりな・・」「あの者達は、どうしますか?」「それは放っておけ。暫く泳がせた方がいい。」「わかりました、そのように致します。」「なぁ、お前が以前話した噂は本当か?“青い瞳をした聖母が居る”という・・」「あんなものは、ただの噂ですよ。」「そうであろう。お主はもう下がれ。」「わかりました。」 部屋の前から男の気配が消えた後、彼の主は煙管を咥えた。「お珍しい、あなたが煙管をお吸いになられるなんて。」「ここへはもう来るなと言った筈だ。」「まぁ、つれない事をおっしゃらないで下さいな、遊馬様。」 部屋に入って来た女はそう言うと、忍の主・遊馬に少ししなだれかかった。「お前は、あやつらが“先生”と慕っていた男の事を憶えておるか?」「えぇ。その男と、彼らと一体どういう関係なのです?」「それを今、部下に探らせている。」「楽しみですわね、その鬼達に会える日が。」「あぁ、そうだな・・」 遊馬はそう言うと、煙を吐き出した。(俺の左目を抉った借りは、必ず返してやるぜ。)「ねぇ土方さん、あの二人どうするつもりなんですか?」「それは明日決める。」「まぁ、その口ぶりからすると、悪いようにはしないんでしょうけど。」 総司はそう言って横目でお優を見ると、副長室から出て行った。「今日はもう遅いから、お前はここで休め。」「へぇ。」「きっと俺が、必ず“先生”を殺した奴を見つけ出してやるから、安心しろ。」「うちはずっと、あなた様を誤解しておりました・・血も涙もない鬼やと・・でも、それはうちの勝手な勘違いやったようどす。」「誰にだって、間違いを犯す事がある。大切なのは、それとどう向き合うかだ。」「わかりました・・」 翌朝、お優の処遇についての詮議が局長室で行われ、お優は暫く歳三の小姓として働く事になった。「本当なら女中として働かせてやりてぇと思ったんだが・・」「わかっています。この姿は人目につくさかい、うちと弟は隠れるようにして生きて来ました。」「そうか・・」「弟は、今知り合いの町医者の所に居ます。右目の怪我は、少し良くなったそうやと・・」「お前ぇには、弟が居るんだったな?」「へぇ。物心ついた頃から、弟はたった一人の家族どした。弟の為やったら、うちは何でもします。」 そう言ったお優は、優しい母親のような顔をしていた。「兄上、あいりどす。」「来てくれたのか、あいり。」 あいりが真紀の家を訪れると、彼は丁度布団から起き上がって来た所だった。 妊娠してからというもの、真紀は体調を崩し床に臥せる事が多くなった。「まったく、最近は剣の鍛錬が出来なくなってしまう程身体が弱くなってしまうなんて、情けない。」「妊娠は病気と違いますけど、普通の状態と違いますさかい、辛いどすなぁ。」「あぁ。何かを食べても吐いてばかりいて、横になる事しか出来ない。」「お粥さんなら食べられますやろうか?」「少しだけなら・・」「ほな、今からお粥さん作ってきますさかい、兄上は寝といて下さい。」「わかった・・」 蒼褪めた真紀が再び布団の中に入るのを見たあいりが彼の部屋から出て厨で粥を作っていると、外から何か物音が聞こえて来た。(何やろか?) あいりは懐から隠し持っていた苦無を握り締めながら物音が聞こえて来た庭の方へと出ると、そこには見知らぬ男が立っていた。 頭に編笠を被っていて顔は良く見えないが、男は全身から殺気を漂わせていた。「あんた、何者や!」「今から死ぬ奴に、名乗る名などない!」 男はそう叫ぶと、刀の鯉口を切った。 あいりは男に向かって苦無を投げたが、それは男によって刀で弾き飛ばされてしまった。 帯の中に隠し持っていた懐剣を取り出そうとしたが、男の動きの方が速かった。「諦めろ。」「あんたが何者なんかは知らんけれど、兄上はうちが守る!」「笑止。」 男はそう言って口端を歪めて笑うと、あいりの首を両手で万力のように締め上げた。(兄・・上・・) このまま、やられる訳にはいかない。 だが、身体が動かない。 あいりが必死に男に抵抗していた時、銃声と共に男の悲鳴が上がった。「次はお前の頭に風穴を開けてやる。」「クソ!」 男は真紀に撃たれた右肩を押さえると、そのまま消えていった。「あいり、大丈夫か?」「はい。」「坂本さんから護身用に渡された拳銃が役に立ったな。」 真紀はそう言った後、持っていた拳銃を下ろした。「本当はあの男を袈裟斬りにしたかったが、距離があり過ぎたし、間に合わないと思ってこれを初めて使ったが、性能は良さそうだな。」「兄上、おおきに。」「礼など不要。お前を襲った男がどこの誰なのかはわからぬが、あの男は二度と剣を握れぬだろうよ。」 真紀はそう言うと、自室へと戻った。「曽我、残念だが君の右腕は二度と剣を握る事が出来ない。」「おのれぇ、あの女、許さぬ!」 遊馬は、真紀に撃たれた右肩を押さえながら、怒りに震えていた。「顔色が少し良くなったのぅ。」「えぇ、坂本さんが下さったはぁぶとかいう西洋の薬草のお陰です。」「そうか。それは良かったのぅ。そういえば、桂さんからおまん宛の文を預かって来たぜよ。」「ありがとうございます。」「坂本様、お久しぶりどす。」「あいり、元気にしちょったか?」「へぇ。」にほんブログ村
2021年06月23日
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このシリーズは相変わらずの泥臭さがあるハードボイルドですが、読みごたえがあって面白かったです。
2021年06月15日
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犯罪加害者家族のバッシングに焦点をあてたミステリー。東野圭吾の「手紙」の方がかなりリアルに描かれていただけに、ちょっともの足りなかったかなあと。
2021年06月15日
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※BGMと共にお楽しみください。「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。 1925(大正十四)年、4月。「トシさん、元気そうだね。」「お前ぇは相変わらずだな、八郎。」“野村”の離れに来た八郎は、昔と変わらず自分に向かって憎まれ口を叩いているかつての想い人の顔を見た。「父様!」「おう、お帰り、千歳。今日も学校、楽しかったか?」「うん!あのね、今日作文でお父様の事を書いたら、先生に褒められたの!」「そうか、良かったな!」 歳三がそう言って一人娘の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑った。「千歳ちゃん、久しぶりだね!」「八郎おじちゃん、久しぶり。」「“おじちゃん”か・・はは、何だか複雑だな。」「まぁ、お前ぇもそんな年になったって事だよ。」「そうだね。」「それで?わざわざ東京で忙しく働いているお前が、京都まで来たのには理由があるんだろう?」「実は・・」 八郎が歳三に話したのは、歳三の親族の事だった。 その親族は、生活に困窮していて、どこからか歳三の事を聞いたのだという。「何で、今頃になって・・」「きっと、たかりに来るよ。だから、そいつが来ないように、ここから逃げた方がいい。」「俺は逃げも隠れもしねぇ。」「・・そう言うと、思ったよ。」 八郎が“野村”を訪ねた数日後、彼が話していた件の親族がやって来た。「おぉい~、居るかぁ!」「あんたか、俺に会いたがっているのは?」「お前ぇだけが、幸せになるなんて許せねぇ!」「言っておくが、あんたとは親族でも何でもねぇ。」「何だとぉ!?」 親族の男がそう言って血走った目で歳三を睨んでいると、彼の顔が突然白く染まった。「さっさとここから出て行け!」 歳三が背後を振り向くと、そこには真っ赤な顔をして男に塩をぶつけている千歳の姿があった。 男は、何か意味不明な言葉を喚き散らしながら去っていった。 だが、千歳は男が居なくなっても塩を投げ続けた。「千歳、大丈夫だから・・」「父様~!」「俺を守ってくれたんだな、ありがとう・・」 その時、自分にそう言って感謝の涙を流した父の姿を、千歳は生涯忘れる事はなかった。 1945(昭和二十)年8月15日。 その日は、とても暑かった。 戦争が終わった。 沢山の大切なものを奪ったあの戦争が。 抜けるような、美しく澄んだ青空の下、わたし達は、安堵の涙を流した。「おかあさん、何で泣いてるん?どこか痛いん?」「どこも痛うない。あんなぁ、涙は嬉しい時にも流すもんや。」「そうなん?」「そうやで。もう何もこわい思いせぇへんで。」「ほんま?」「ほんまや。うちがあんたに今まで嘘を吐いた事があるか?」「ううん。」「さ、外はもう暑いさかい、お家帰ってから冷たい物でも食べようか。何がええ?」「かき氷!」「えぇなぁ~、かき氷みんなで作って食べようか!」 青空の下、わたしは幼い娘の手をひいて、ゆっくりと我が家へと帰っていった。「桜ちゃん、お帰り。外暑かったやろ、すぐに冷たいかき氷作ったげるから、待っとき。」「は~い!」 縁側につけられた風鈴が、チリンチリンと涼し気な音を立てた。 京の夏も、もうすぐ終わろうとしている。 2011(平成二十三)年4月。「よう来たな、お疲れさん。」 あの震災で津波に遭い、両親を亡くしたわたしは、愛犬と共に京都に住む曾祖母の元へと引き取られた。「長旅で疲れたやろ?ワンちゃんの世話はうちでするさかい、千鶴ちゃんはお風呂でも入ってゆっくりしぃ。」 曾祖母は、何も聞いてこない。 どうやってわたしがあの生き地獄から生き延びてここまで来たのか、どんな思いをしてきたのかを、聞いて来ない。 今までわたしの周りには、家族を亡くした辛さを抱えた人達を支えようとする“ボランティア”が、漸く落ち着けた場所にまで土足で入り込んで来た。 物見遊山で来て、“自分は善行を積んでいます”アピールの人に、何も話したくなかった。「何も、聞かないんですね。」「言いたくない事は無理に言わんでもよろしい。あんたもこの子も、大変やったんやから。」「ありがとう。」「別にお礼言われる程の事はしてへんえ。」 曾祖母からそう言われた後、わたしは今まで堪えていた涙を流した。「泣きたい時には、泣くのが一番や。」 2020(令和二)年十二月。 曾祖母が倒れたと聞いて、わたしはすぐに東京の自宅から彼女の自宅がある京都へと向かった。 だが、彼女は倒れたというのに、朗らかな笑みを浮かべながらわたしを迎えてくれた。「よう来てくれたなぁ。」「もう大丈夫なの?」「軽い貧血やったから、もう大丈夫や。」「そう、良かった。」「あんたと正月を迎えたくて、えらい作り過ぎてしもうてなぁ。今夜はキムチ鍋にしようか。」「ひいばあちゃんは座ってて。わたしが全部やるから。」「人を年寄り扱いしたらあきまへん。」 そう言いながらわたしと共に台所に立っている曾祖母は、今年で101歳になった。「何や、最近変な感染症が流行っているそうやねぇ。千鶴ちゃんの会社はどうなん?」「う~ん、あんまり変わっていないかなぁ。在宅勤務になった位で。」「太郎ちゃんは元気にしてるか?」「うん、もう年だから、覚悟しないとね。」「まぁ、人や動物には必ず“別れ”が来るもんや。」「ねぇ、ひいばあちゃんも、大切な人と別れたの?」「そうや。うちの父ちゃんは、うちが8つの時に労咳で亡くなってしもうた。でもな、お父ちゃんが死んでも、お父ちゃんから愛された記憶は消えへん。うちが生きている内はな。」「ひいばあちゃん・・」「これだけは憶えておきや。人は死んでも、愛した人がその人の事を忘れへん限り、その人は生き続けるのや。人も動物もな。」「うん・・」「その事を忘れたらあかん。」 2021(令和三)年四月。 桜舞う季節に、曾祖母は静かに旅立った。「ねぇ、これひいばあちゃんの子供の頃の写真?」「そうや。ひいばあちゃんの近くに座って写っているのが、ひいばあちゃんの両親や。あんたにとっては、高祖父母にあたるなぁ。」「じゃぁ、“千鶴”って・・」「ひいばあちゃんを産んだ後、スペイン風邪で亡くなったひいばあちゃんの母親の名前や。」 妻を亡くし、男手ひとつで曾祖母の事を育てた高祖父。 その娘を遺して逝くのは、どんなに辛かっただろうか。「あれ、この人・・」「あぁ、これは歳三さんの・・ひいばあちゃんのお父さんが芸妓をやっていた時の写真や。」「へぇ、そうなんだ。」 白粉を塗って、日本髪を結っているからか、さっきの写真とはかなり雰囲気が違って見えた。 わたしがその写真をアルバムの中に戻そうとすると、はらりと何かが落ちた。 それは、高祖父が、曾祖母に宛てた手紙だった。“千歳へ、もうすぐ父様は母様の元へいってしまうけれど、父様は、ずっとお前を見ているからね。だから、父様の事を忘れないでくれ。歳三” ひいばあちゃん。 あなたに恩返し出来なかったけれど、あなたの事はずっと忘れないよ。 ずっとわたしを見守っていてね、ひいばあちゃん。「父様、母様、遅くなってしまってごめんなさい。」「ずっと待っていたわ。これからはもう、さびしい思いはさせないわ。」「行こうか、みんなが待ってる。」(完)にほんブログ村
2021年06月15日
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※BGMと共にお楽しみください。「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。「トシさん!」「うるせぇ、耳元で騒ぐな!」「生きてた、良かったぁ~!トシさんが結核で入院したから、もう死んだのかと・・」「勝手に人を殺すな!」「そうだね、トシさんはすぐには死なないよね!」「あぁ。俺はまだ死なねぇ。」「はい、これ。最近出たミルクキャラメルだよ。これを食べて元気になって!」「こんな甘い物食えるか。沢庵持って来い、沢庵!」「まぁ土方さん、いけませんよ!塩分の摂り過ぎは良くないと先生から言われているんですから!」「うるせぇ~!」「何や、えらい元気そうやなぁ。」「おかあさん。」「はい、少ししかあれへんけど、これ食べて元気出し。」 さえがそう言って風呂敷包みから取り出したのは、小さな壺に入った沢庵だった。「うめぇ、これだ、これ!」「まぁ、主治医の先生からはうちがちゃんと言うときますから、どうか今回の事は堪忍しとくれやす。」「はい、わかりました。」「ほなトシちゃん、また来るからな。」「へぇ。」 さえ達を見送った後、歳三はさえが差し入れてくれた沢庵をひとつかじった。「美味ぇ・・」 一日一個食べれば、大丈夫だろう―そう思った歳三は、沢庵が入った壺をベッドの近くに置いて寝た。「姐さん、元気そうやったんどすか。」「あの様子やと、千年位生きそうやわ。」「さ、夕飯にしようか。」「へぇ。」 千鶴達が楽しく鍋を囲んでいる頃、歳三は病室で一人高熱にうなされて苦しんでいた。(勝っちゃん・・) 目を閉じれば、自分に向かって微笑んでくれる勇の姿が浮かんだ。 だが目を開けると、自分の傍には誰も居ない。(勝っちゃん、会いてぇよ・・) もう別れたというのに、歳三は勇に会いたくて仕方がなかった。 「姐さん、うちに頼みたい事って、何どす?」「あぁ、実は・・」 歳三はそう言うと、ある事を千鶴に頼んだ。「わかりました。」「頼んだぞ。」「へぇ。」 もうすぐ、歳三にとって最後の“都をどり”の季節を迎えようとしていた。 1913(大正二)年4月。「トシちゃん、ほんまに大丈夫か?」「へぇ。」「そうか。」“都をどり”の舞台に、歳三は病をおして最後まで立ち続けた。「姐さん、お疲れ様どした。」「おおきに、春月ちゃん。」 楽屋で歳三が化粧を落としていると、そこへ八郎がやって来た。「トシさん、お疲れ様!」「ありがとうよ、来てくれて。」「トシさん、元気そうで良かった。」「まだくたばるわけにはいかねぇからな。」 歳三がそう言って八郎と談笑していると、さえが楽屋に入って来た。「えらい賑やかやなぁ。」「おかあさん。」「トシちゃん、お疲れさんどした。」「おおきに。おかあさんも、今までうちを支えてくれてありがとうございました。」「お礼なんて要らへん。うちは充分、あんたに親孝行させて貰うたからなぁ。」 さえはそう言うと、そっとハンカチで目頭を押さえた。“都をどり”最終日の夜、歳三の引退祝いの宴が、料亭“幾松”で開かれた。「では皆様、竜胆姐さん・・もとい土方歳三さんのご健闘を祈って、乾杯!」「おおきに。」 長い髪をばっさりと切り、“芸妓・竜胆”から、“土方歳三”へと戻った歳三は、背広姿でご贔屓筋の前に現れた。「いやぁ、凛としてはるなぁ。」「おおきに。」「短い髪もよう似合うてるわ。これからはどないするん?」「それはまだ考えてまへん。」「そうか。」「まぁ、“野村”を継ぐ事は考えています。」「いやぁ、頼もしい跡継ぎが出来て、野村はんはうらやましいわぁ。」 歳三は数日後、さえと正式に養子縁組をしたが、姓は“土方”のままとなった。「あの・・」「どうしたん、利ぃちゃん?何や落ち着きのない・・」「竜胆さん・・歳三さんが家族になったから?歳三さんの事をどう呼んだらいいのかなって・・」「いや、別に普通に名前で呼んでくれていいぜ?」「ありがとう、兄さん!あ、ごめんなさい。」「兄さんって呼んでくれても構わないぜ。俺達は家族なんだし。」「そうですね。」「そうや、うちらは家族や。」 こうして、歳三達は真の家族となった。 1918(大正七)年4月。 桜舞う季節に、歳三と千鶴は“夫婦”となった。「二人共、おめでとうさん。これからもよろしゅうな。」「おおきに、おかあさん。」 白無垢姿の千鶴は、そう言った後懐紙で目元を拭った。「今日の千鶴ちゃんはえらい泣き虫さんやなぁ。」「それは母さんが泣かせるような事を言うからだろ?」「堪忍え。」「それにしても、トシちゃんとあんたがいつからこうなるんと違うかって思うてたんへ。」「え、いつから!?」「まだトシちゃんが“竜胆”やった頃や。あの頃は、トシちゃんがよう千鶴ちゃんを気にかけてくれたさかい、千鶴ちゃんもここでの生活に慣れて来たわなぁ。まぁ、トシちゃんは千鶴ちゃんの事を、“妹以上”の目で見ていたもんなぁ。」「おかあさん・・」「これからは、生まれてくる子の為に余り無理せんようにしぃや。」「へぇ。」「え、えぇ~!」「利ぃちゃん、うるさい。」「そうや、少しは静かにしぃ。」「すいません。」 歳三は千鶴の身体を気遣いつつも、仕事に精を出した。「なぁ、これから色々と楽しみだな。」「えぇ。男でも女でも、健やかに育って欲しいです。」「あぁ、そうだな。」 歳三がそう言って千鶴に微笑んだ時、彼はハンカチで口元を押さえて激しく咳込んだ。「まぁ歳三さん、大丈夫ですか?」「あぁ・・ただの風邪だ。」「そうですか・・」(まさか、な・・) 歳三が恐る恐る口元を押さえていたハンカチをそこから退けると、白いレースには赤黒い染みが広がっていた。「トシちゃん?」「おかあさん、俺・・」「うちやあの子の前では、無理に強がらんでもよろしい。」「すいません・・」 歳三はそう言うと、堪えていた涙を流した。「抱いておやり、元気な女の子や。」「千鶴、ありがとう。」「これから、二人で合わせて頑張っていきましょうね。」「あぁ。」 二人の間に生まれた女児は、“千歳”と名付けられた。にほんブログ村
2021年06月15日
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生まれつき白と黒の頭、天賦の才能をもったクルエラ。 アニメ版とは違い、己の心に従い、常識を打ち破る彼女の姿は美しいです。 普通や常識を打ち破れ、ありのまま生きる彼女の姿には読んでいて励まされましたね。
2021年06月12日
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映画は何度か観ましたが、小説として読むと、エリオットとE.Tとの交流があたたかく感じられました。 別れのときE.Tが大切に抱えていたガーベラの花言葉は、「希望」。 大人になったエリオットがE.Tと再会するのかなと。
2021年06月12日
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「薄桜鬼」の二次創作小説です。制作会社様とは関係ありません。二次創作・BLが嫌いな方は閲覧なさらないでください。1912(大正元)年12月。 京都・南座では、毎年恒例の顔見世興行が行われていた。「ねぇばあや、あの人達綺麗ね。」「お嬢様、あの方達は花街の芸舞妓さん達ですよ。今日は、あの方達も歌舞伎を鑑賞されるのですよ。」「へぇ、そうなの。」「さぁ、急ぎませんと。」「えぇ。」 少女とその乳母は、芸舞妓達とともに南座へと向かった。「竜胆さん姐さん、お待たせしました。」「遅かったやないの、春月ちゃん。」 そう言って自分を見つめる歳三の顔は、何処か蒼褪めているかのように千鶴には見えた。「何やの、人の顔をジロジロ見て?」「いやぁ、姐さんのお座敷姿、久しぶりに見るなぁと思いまして。」「そうか?」 歳三はそう言うと、姿見の前で一周した。 漸くあの帯状疱疹の後遺症である忌々しい頭痛から解放され、約半月振りに彼は髪を結い、黒紋付の正装姿になっていた。「姐さんには、誰かご贔屓の役者はんでも居てはります?」「また、その話かいな。」 歳三はそう言って苦笑した。 毎年、この季節になると花街の芸舞妓達は花簪の“まねき”に贔屓の役者の名を入れて貰う事で色めき立っていた。「それにしても、今日はえらい冷えますなぁ。」「そうやなぁ。もうすぐ初雪が降りそうやなぁ。」 そんな事を二人が言いながら屋形から出ると、雨が降って来た。「雪やなくて雨やったわぁ。」「そうどすなぁ。」 歌舞伎鑑賞後、二人が屋形に戻ると、玄関先に見慣れないハイヒールが置かれてあった。「とにかく、今日はお帰り下さい!」「そうはいかないわぁ。竜胆って女に会わせなさい!」 奥の部屋から、ヒステリックな女の声が聞こえて来たかと思うと、その声の主が玄関先へとやって来た。「あんたが、竜胆ね?」 女は毛皮の外套を羽織り、洒落たデザインのドレスを着ていた。「へぇ、竜胆はうちどすけど・・」「あの人を返しなさいよ、泥棒猫!」 女はつかつかと歳三の元へと近寄ると、そう叫んで彼の頬を平手で打った。「春月ちゃん、警察呼んで。」「わかりました。」「ちょっと、待ちなさいよ!」「待つも何も、先に手を出してきたんはそちらはんどす。」「そんな、あたしは・・」「何を言うても無駄どす。」 千鶴の通報で駆け付けた警察官により、女は連行されていった。「姐さん、大丈夫どすか?」「大丈夫や。」「これで顔、冷やしとき。」「おおきに、おかあさん。あの人、一体誰やったんどすか?」「何や、東京で有名なカフェーのマダムやそうや。」「カフェーのマダム・・」 さえの言葉を聞いた歳三の脳裏に、あの忌まわしい女の顔が浮かんだ。「八千代とは関係のない女や。」「そうどすか・・」 その日の夜、歳三は伊庭八郎のお座敷に出ていた。「トシさ~ん!」「おい、人が酌をしている間に抱きつくな!」「だって、トシさんに久しぶりに会えたから嬉しくて・・」「だからって、抱き着くな!」「ごめ~ん。」 そう言いながらも、八郎はトシゾウから離れようとしなかった。「伊庭様は、昔から姐さんの事がお好きなんどすなぁ。」「まぁな。」 歳三はそう言いながら、軽く咳をした。「姐さん?」「ただの風邪だ。」「そうどすか。玉子酒でも作りますえ。」「俺ぁ下戸なんだ。」「あぁ、そうどしたなぁ。」「道、雨で濡れて滑りやすくなっているから気をつけて歩けよ。」「へぇ。」 お座敷があった料亭から屋形に二人が戻った頃には、雨は雪へと変わっていった。「寒ぃ~」「トシちゃん、そないなだらしのない姿をしていたらあきまへんえ。」 火鉢の前にはりついて離れようとしない歳三を見たさえは、呆れ顔で彼にそう言った後溜息を吐いた。「せやかておかあさん、こないな寒い日にお座敷なんてよう行かれしまへんえ。」「よう言うわよ。さ、はよご飯食べて舞の稽古行ってきよし。」「へぇ。」 歳三は溜息を吐いた後、漸く火鉢の前から離れた。「お師匠はん、今日もよろしゅうお願いします。」「竜胆はん、お久しぶりどすなぁ。最近風邪ひいてはるって、春月ちゃんから聞いたえ。」「季節の変わり目やさかい、少し体調崩してしもうたんどす。すぐに治りますさかい、心配せんとくれやす。」「そうか。」 だが歳三の風邪は、良くなるどころか悪化していった。「姐さん、大丈夫どすか?」「大丈夫や。」 そう言いながらも、歳三は激しく咳込んだ。「あんた、一度病院で診て貰った方がええんと違うか?」「そうどすか?そないな事・・」「まぁ、“ただの風邪”やったらええんやけど・・」「へぇ。」 歳三は、咳が“単なる風邪”だと最初は思い込んでいた。 しかし、その咳は二週間経っても続いた。「竜胆、顔色が悪いぜよ?」「へぇ、何やらたちの悪い風邪にかかってしもうて参ってしまいました。」「おぉ、そりゃいかん!わしが玉子粥で作っちゃるき!」「まぁ、その気持ちだけでも充分どす。」 歳三はそう言いながら笑おうとしたが、その時激しく咳込んだ。「大丈夫かえ?」「へぇ。」 そう言った歳三は、懐紙が血に染まっている事に気づいた。「どないしたんや、あんた、顔真っ青やで!」「おかあさん・・」「部屋で休んどき。」「へぇ。」 歳三は、自室に入った途端、気絶した。「姐さん!」「誰か、お医者様を!」 歳三は、大学病院に入院する事になった。「大変申し上げにくいですが・・土方さんは肺結核です。しかも、かなり重いです。」「そんな・・」「土方さんから、子どもの頃に一度、結核に罹った事があるようです。その頃は治ったようですが、再発したようです。」「じゃぁ、姐さんは・・」「長くもって二年、短くても半年でしょう。」「そんな・・」「嘘や、あの子が・・」 医師から歳三の病状を告げられたさえと千鶴は、互いに抱き合って泣く事しか出来なかった。(まさか、昔罹った労咳がまだ残っていやがったとはな・・) 歳三は咳込みながら、ベッドの中で寝返りを打った。「勝っちゃん、会いてねぇな・・」「トシ?」「どうしたの、あなた?」「いや、今誰かに呼ばれたような気がしてな・・」「気の所為でしょう?早く行かないと、船に乗り遅れてしまうわよ?」「あぁ、わかった。」 勇は妻子と共に、上海行きの船に乗り込んだ。(トシ・・)にほんブログ村
2021年06月07日
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女宮が張り巡らした陰謀の糸は後宮中に張り巡らされているようですね。
2021年06月04日
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