お茶かけごはん と ねこまんま

お茶かけごはん と ねこまんま

2006.01.23
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カテゴリ: 年寄りと暮らす
精神科への半年の入院後、家に帰って来たじいちゃん。


入院前から自分の主義を曲げない人だったが、それは自分の部屋に閉じこもって、自分の居心地を守るための我がまま。
決まったものしか食べないとか、昼にしか起きないとか、本人の思うようにさせておけばよかったのだ。

しかし入院中は、やれどの銘柄の缶入りココアをもってこいと言い、そのために市内を端から端まで車で買いに行かなければならなかったり、差し入れた物が気に入らないと言っては、何度も持っていきなおしたり、「今日、今から来い」と言ってきかなかったり、ほとんど二日に一度はなにかで病院に面会に行ったのだった。

生活のペースはじいちゃん中心。
でも、そのことに気づかないほど毎日必死だった。
でもそれが、じいちゃんが落ち着きを取り戻した理由の一つかもしれない。

入院前は自分の部屋に閉じこもり、家族ともほとんど口を利かず、存在を忘れられたように感じていたのだろう。

寂しさが少しは軽減したのではないだろうか。

退院してきてからは、一切酒を飲まない。
去年、アルコール依存症の主婦が書いた本がドラマになっていたが、その様子を見て、じいちゃんが酒を飲まないということがどれ程大変なことかと感心する。
そして、度を越した我がままも鳴りを潜めた。

しかし、なんの楽しみもない毎日。
昼前に起きて食べるのは、わかめとたまねぎと卵の味噌汁にご飯。
夕方6時に風呂に入り、夕食はいわしの缶詰の味を付け直したものとマグロの刺身とご飯。
毎日その繰り返し。

家族と顔を合わせる食事時もむっつりと黙り込み、たまに話しかけてもめんどくさそうにジロリと見て、「んぁあ~…」と曖昧な返事をすればいいほうだ。
あんなに悩んでいたはずの飲酒を、やめさせることが本当によかったのかとまで思うようになった。

そのじいちゃんに変化が現れたのは、3ヵ月程まえ。四人目の孫、美月がはっきりと言葉を話し出してからだ。

と呼ばれるとやはり嬉しいようで、手をとって遊んでやったり、声をかけてやったり。
私がパソコンに張り付いていることが多いため、美月はじいちゃんばあちゃんの部屋に入り込んで遊ぶことが多くなった。

上の子たちと違い、美月はじいちゃんに対して気遣いがない。それがまたいいようだ。
「じいちゃん!」と言うなり、布団で寝ているじいちゃんの周りを駆け回ったり、上に飛び乗ったり。
ばあちゃんが歌う歌を覚えて、声を合わせて歌ったり。


じいちゃんの目に少しずつ光が戻り、朝、顔を合わせれば「おはよう」と声を交わすようになった。
生活のリズムは相変わらずだが、じいちゃんの体から生気が感じられるように変わってきたのだ。

「堕すのかと思った。」
と言われた子が、じいちゃんばあちゃんの希望の星になったと言っていい。
人生とは、分からないものだ。






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Last updated  2006.01.23 08:33:42
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