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再び陽織、動き始める。藪岡、グラスの中の物を飲みながら、「うん。中々いい子じゃない。ルシアの言う通り、手際良さそうだし…。」ルシアも、「ふふん。」陽織、テーブルの空いた皿をトレイに。そしてカウンターの中で…。「客への言葉遣いもいい。うん。はは。…こりゃ、客も嬉しいわ。」ルシア、「…でしょう~~。」藪岡、「但し…だ。」右手でグラスを持ったままで…。そして肇の隣で洗い物をしている陽織を見て、「記憶がない…。分からない。…たったの3時間。…ふ~~ん。」亮輔、「藪さん…???」「…ん…???…あ~~。…なんとも…。いただけないね~~。」その声に亮輔、「えっ…???」藪岡、亮輔を見て、「ん~~???…ふふ。…尋常じゃ…、ない。」「尋常じゃない…。」「…要するに…。…普通じゃない。…って事。」亮輔、「あん。なるほど…。」けれども、すぐに、「えっ…???…って…、どういう事…???」「はは。」藪岡、「そんなの…、俺にも分からないさ。ただ…。ひとつだけ。…追及していくのみ。」そして藪岡、洗い物をしている陽織に、「ねね、陽織ちゃん。」陽織、「あ、はい。」「陽織ちゃん。家族は…???家には誰が…。」「おばあちゃんです。」その声に藪岡、「おばあちゃん。」「あ、はい。」藪岡、少し口を尖らせて、「おばあちゃん…だけ…???」陽織、「あ、はい。」陽織、少し聞いた言葉に顔を傾げて、藪岡に、「あ、あの…。何か…???」慌てて藪岡、「あ、いいや。ふん。おばあちゃんか…。」亮輔は藪岡を黙って見ている。阿須賀はそんな亮輔を、少しだけ眠そうな感じで、チロリと顔を外して小さな欠伸。藪岡、陽織に、「じゃあさ、陽織ちゃん、おばあちゃん以外に、ご両親は…???」その、「ご両親は…???」の声に陽織、思わず手が止まって…。そんな陽織を見て肇、「……。」ルシアも藪岡も。そして亮輔も…、「…ん…???」藪岡、手の止まった陽織に、「陽織ちゃん…。」陽織、小さな声でボソッと。「分かんない。」そして、もう一度、「分からないんです。」肇もルシアも藪岡も亮輔も、「分からない。」阿須賀は僅かに顔を傾げて…、そして、「ねぇ~~。亮輔~~。」藪岡、「分からない。…分からないって…。…どういう事かな…???」陽織、藪岡に、「私…。ず~~っと、長い間、眠っていたような…。…で…、目が覚めたら、病院にいたんです。」一同、「病院…。」そして、それぞれ顔を見合わせながら…。「そして…。…変な話なんですけど…。あの時…。…病院で見た景色が、その…、長い間、眠っていた…。それからの…、初めての景色…。」また一同、「初めての景色…。」そして顔を見合わせて…。その時、「キャッハハハハ。バカじゃないの、あんた、大学生なのに、病院で目が覚めて。そして、その時見た景色が、今まで見た中で、初めての景色なんて…。」そして少しだけ、陽織をバカにした顔で、「ふん。有り得ないでしょ。」その声に亮輔、阿須賀に、「おぃ。」少しだけキツイ顔をして…。すると阿須賀、亮輔に、「何よ。もぅ~~。さっきから~~。陽織だか何だか知らないけど~~。この女の子の事ばっかり~~。」亮輔、「は・あ…???…何怒ってんだよ~~。」「怒りたくもなります~~。折角、楽しい夜になる予定だったのにぃ~~。ふん。私、帰る。」グラスカウンターに叩きつけるように。「ごちそう様~~。」勢いよく椅子から離れて、ツンとした顔をして玄関の方に。そして、勢いよくドアを開けて、パタン。亮輔、クシャリとした顔で、「…ったくよぅ~~。な~~に怒ってんだか~~。」そんな亮輔に藪岡、慰めるような顔で…、「大変だな。」肇もルシアも同様の顏で…。亮輔、口を一文字に。目を見開いて、「ふ~~~ん~~。」藪岡、そんな亮輔に、「いいのか…???…追いかけないで…。」数秒後…、亮輔、顔を小刻みに揺らしながら、「はいはい。…ったく~~。…しょうがねぇなぁ~~。」徐に椅子から立ち上がり…。ルシア、亮輔に、「行ってらっしゃい。」肇、ルシアを見て、幾分、困ったような顔をして…。藪岡、「さてと…。陽織ちゃん。」陽織、「はい。」「長い間…、眠っていたような…って、言ったよね。」「あ、はい。」「そして…。病院で見た景色が…。今まで…、初めて見た景色…。」その声に陽織、「あ…、はい。」肇、陽織を見て藪岡を…。ルシアも、「藪さん…。」藪岡、「…で…、陽織ちゃんのご両親は、君自身、分からない。」「あ、あ~~。はい。…で、でも…。」藪岡、僅かに顔を傾げて、「うん。…でも…。」「小さい…。時の…記憶は…、僅かに…。あるんです。」「小さいときの…、記憶…。」 LIBRA~リブラ~ vol,031 藪岡、グラスの中の物を飲みながら…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.31
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すると…。また、陽織…、黙ったままで…。数秒…。 けれども、ようやく…。「分からない。分からないんです。私。…目を覚ますと、もぅ…目の前が暗くて…。何処にいるのかも分からない。もう一度、目を閉じても、今度は眠れない。急に体がソワソワと…。」陽織、話し始める。 藪岡、真剣な目で…。 「そして、勝手に体が動いて、気付いたら家の外に…。そして…、歩いてみたり、駆け出してみたり…。」 藪岡、「それって…、大体…何時頃…???」 すると陽織、顔を左右に。顔は俯いたままで…。 「まさか…。パジャマのままで…外を…???」 するとまた陽織、顔を左右に…。 ルシア、「いいえ…。ラフな格好で来たけど…。」 藪岡、僅かに頷いて、「ふん。」そして、陽織に、「そして…???…陽織ちゃん。」 「…歩いて…。走って…。その繰り返しで…。…気が付いたら…、灯りが奇麗なところに…。」 ルシア、「あん。それで〜〜。まっ、確かに。駅前でもあるけど…。」 陽織、「何だか…。お洒落な看板みたいで…。」 瞬間、肇がニッコリと…。 ルシアも、「わ〜〜お。ありがと。」 藪岡も笑顔で、「はははは。なんと…。嬉しいね。」 陽織、「何となく…、入ってみたく…。」 ルシア、「な〜〜るほどね〜〜。…そういう…事か。うん。」 けれども藪岡、「いやいやいや。ルシア。…そういう事かって…。まだ…、何も、分かってないけど…。」 その声にルシア、目をパチクリと、「あっ。そっか…。…夜に目を覚まして、夜の道…、ただ…。…で、灯りに…。うんうん。そうだ、そうだ。」 藪岡、「ねね。陽織ちゃん。…もしかして…君。記憶がないって言ったけど…。夜目が覚めて、そしてここに来て。…今。」そして藪岡、腕時計を見て、「あと…。2時間弱で、3時だけど…。家に帰ったら、そのまま眠って…。その後は…???…確か、さっき、分かんないって言ったけど…。」 陽織、コクリと…。 「ふ〜〜〜ん。」藪岡、「つまりは…。陽織ちゃん。一日で、たったの3時間程度しか、記憶がない、事になる。」 亮輔、いきなり、「うそ。…そういう事って、あんの…???」 その声に藪岡、「いやいやいや。分かんないさ。…但し、陽織ちゃん自身が、記憶がない。分かんないって言うんなら、俺たちは、全く見ず知らずの人。別に店に迷惑掛けている訳でもない。それより、客にも喜ばれてる。」そして、ルシアと肇を見て、「ねぇ…。…だよね〜〜。」 肇、ニッコリと頷いて。 ルシアも、「その通り。」 「ならば…。」藪岡、「ゆっくりと…。陽織ちゃんの体調に合わせて…。」 亮輔、「体調…???」 「そうさ。まっ。見た限り…。こんな夜遅い時間でも起きていられてお店に来てる。そして、お手伝いをしている。体には、何も異変は…、ないとは思うけど…。ただ…。」 ルシアも亮輔も、「ただ…???」 藪岡、「精神面。」 亮輔、目をキョロキョロと…、「精神面…。」すると、「あっ。なるほど…。藪さん、得意分野。」 陽織、僅かに顔を起して、左右を…。そして、「あのぉ〜〜〜。」 藪岡、「あっ。はははは。ごめん、ごめん。つい、俺の話ばかりになっちゃって…。」 亮輔、陽織に、「この人、精神科医のお医者さん。新宿の大学附属病院で働いてる。心理療法士でもあるし、カウンセラーでもあるんだ。俺のおふくろの弟。いわゆる。俺の叔父さん。」 その話にいきなり亮輔の隣の女性、目をパチクリと、「うそ。凄〜〜い。精神科医で心理療法士。しかも…、カウンセラー。」 亮輔、「…って、それ…、さっき言ったじゃん。」 「あん。でも、驚きが、なに…???亮輔のおかあさんの弟。亮輔の叔父さんって…???」 藪岡、そんな女性の声に、「はははは。今後共に、お見知りおきを…。はは。…亮輔、中々可愛い子じゃない…???」 その声に、「えっ…???」亮輔、「へへへへ…。まぁ…。」 「同じ…、大学なんだ…。」 女性、藪岡に、手を上げて、「はい。亮輔と同じ大学です。広戸阿須賀(ひろとあすか)と申します。以後、お見知りおきの程を…。大学近くの居酒屋で亮輔と知り合いました〜〜。」元気に。 藪岡、ニコニコしながら、「そっ。そっか。うんうんうん。元気で何より。」 「…って、言うか、元ヤンキーだぜ、こいつ。」 いきなり藪岡、飲んでいたものを、「ぶっ。」 阿須賀、亮輔の頭をペンと。「何言うかな〜〜。そんな昔の話〜〜。」 「…って…。自分でばらしてるし…。」 瞬間、阿須賀、口を開けてへの字にして。そして口を尖らせて…。 「うんうん。いいんじゃない。可愛いよ。はは。」藪岡。 その声に阿須賀、ニコニコ顔で、「ありがとうございま〜〜す。」 後ろの席で、「彼女〜〜。同じの、作ってくれる〜〜。」 その声に陽織、いきなり後ろを向いて、「あっ。はい。」 藪岡、「おっ。はは。うん。頑張って。」 LIBRA~リブラ~ vol,030 陽織…、黙ったままで…。数秒…。けれども…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.30
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亮輔も、「うんうん。…確かに、前までは、いなかったけど…。」藪岡、「ふ~~ん。亮輔の大学の~~。」そして、「あっ。肇ちゃん、今、陽織ちゃんって言ったけど…。」その声にルシアが、「あん。汀陽織。太陽の陽に織るって書いて、陽織ちゃん。」そこまで言ってルシア、「あん。それ以上はね~~。彼女、何聞いても、恥ずかしいらしく何も話さないんだわ。まっ。でも、とにかく手際が良くってさ~~。ただ、彼女、3時になったら帰るけどね~~。」藪岡も亮輔も、「3時…???」「うん。何だか。訳アリみたいでね~~。」亮輔、「3時って…。何それ…???」ルシア、カウンターの端でビールとスナックを食べている陽織に、「陽織ちゃ~~ん。」そして手招き。陽織、そんなルシアに、「は~~い。」その時、後ろの女性客が、「ごめん、彼女~~。これ、もぅいっぱいお願い。」陽織、その声に、「あ、は~~い。店長~~。」肇、ニッコリと、「あいよ。」ルシア、ニッコリと。そして藪岡と亮輔に、「ちょっと待ってね~~。」肇、ビアグラスにビールを…。そして陽織に、「はい。お願い。」陽織、「ありがとうございます。」そして女性に、「お待たせしました~~。」女性客、ニッコリと、「ありがと。」ルシア、また陽織に手招き。陽織、ルシアの元に。藪岡、「おっと。」すぐさま席を開けて、「はい。どうぞ~~。ごめんね。僕が座ってた席だけど…。」陽織、「あ、いいえ~~。」そしてルシアと肇を見て…。ルシア、「どうぞ。座って。」陽織、「あ、はい。」そして、左右の男性を見て、少し照れ臭そうに、「すみません。」亮輔、「どうも。」陽織も、「どうも。」「あのさ。俺の顏、見た事、あるよね。」その声に陽織、目をパチクリと、そして顔をコクリと、「あ、はい。」そして顔を傾げて、「確か…。2度程…。」瞬間、亮輔の隣の女性、目を真ん丸に、おちょぼ口にして、「う~~~。」そして、「そ~~~。」すると亮輔、「うんうんうん。」笑顔で、「だよね~~。」陽織、目をパチクリと…。そして肇とルシアの顔を見て、また顔を傾げて…。亮輔、「なんだ…けど~~~。」陽織、またまた顔を傾げる。亮輔、「俺さ…。大学で、君を見てさ。…その時、君、俺を見て、どこかで…、お会いしました…???…って。…言ったんだけど…。」その声に藪岡、ルシア、「んん…???」肇は目をパチクリと…。亮輔、「あの時、君、俺を見て、あのぉ~~。どなたか存じませんが…、人違いじゃ…。…っても…。」藪岡、「はっ…???」「そして~~。」亮輔、「この店の事を言った時に~~。はっ…???…エンカン…???…なんですか、その…。…って。」いきなりルシアと藪岡、「うそ。」「だから…って、言うのも、変なんだけど~~。君…、ウチの大学の…、生徒…だよね。」陽織、話しを聞きながら…、困ったような顔で…。今度は全然、口を…。肇、「陽織ちゃん。」藪岡もルシアも、「……。」亮輔の隣の女性、亮輔に、「何なんのよ、この子。」藪岡、「ふん。まっ。何やら…。確かにルシアの言う通りに…、訳アリ…かな…???」そして女性に、「汀…陽織さん。」陽織、その声に、困った顔で、下を向きながら…、「あ、はい。」「分からなかったら、別に…、そのままでいいよ。うん。」そして、ニッコリと…。…やがて、陽織、「ご、ごめんなさい。…私…。」藪岡、そんな陽織に、優しく、「うん…???」「…私…。実は…。」ルシア、亮輔を見て、「……。」藪岡、「うん…???…どうしたのかな…???」陽織、「実は…。」下を向きながら、「……。…記憶が…。…ないんです。」思わず、亮輔、ルシア、「!!!!」藪岡、「記憶…が…、ない。」目だけ、キョロキョロと…。ルシア、小さな声で、「…記憶…。喪失…。」藪岡、そして初めに亮輔をチラリチラリと見て…。亮輔も、目をキョロキョロと…。藪岡、「…記憶が…。ない…かぁ~~。」そして、腕を組んで。「そぅ…かぁ~~。記憶が…、ない…かぁ~~。」亮輔、小さな声で、「…記憶…、喪失…。」隣の女性、「何々…???…記憶…、ないの…???…って…、大学、来てんじゃん。」瞬間、亮輔、目をキョロキョロと、そして口を尖らせながらも、「ふん。確かに。」ルシア、「はん…???…どういう事…???」カウンターの中で肇、顔を傾げて…。藪岡、「ふん。陽織ちゃん…、自身は記憶が…、ない。」その声に陽織、顔をコクリと…。藪岡、顔は真っすぐに。けれども目だけ陽織の方に…。「けれども…、大学にはいる…。…ふ~~ん。」そして…、「ねね、陽織ちゃん。」陽織、そのままの姿勢で…、「はい。」「…3時になったら家に帰るって聞いたけど…。…それからは…???」陽織、顔をそのままで…、「私…。…寝ます。」それぞれがそれぞれを見つめながら…。藪岡、「ん~~~。まだ、3時…、確かに。寝るしか…。…でも…、それから…???…朝になれば…。」 LIBRA~リブラ~ vol,029 藪岡も亮輔も、「3時…???」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.29
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そして、亮輔と一緒に入ってきた女性にもルシア、「あ~ら、いらっしゃい。」と、ニッコリ。女性も笑顔で、「こんばんは~~。」そして亮輔、カウンターに。瞬間、「おっと~~~。藪さん。いたんだ~~。ここず~~っと、顔見せてないけど…。」そんな亮輔に、藪と呼ばれた男性、「おほ~~。なんだ亮輔~~。久しぶり~~。」そして亮輔の隣の女性を見て、「ん~~~???…彼女か…???」その声に亮輔、「えへ…???」隣を見て、顔をチョコンと…。そして顔を傾げて、「…ん…。まぁ…、そんな…感じ…???」そして亮輔、「マスター、いつもの。」肇、亮輔を見てニッコリと、「いらっしゃいませ。はい。畏まりました。」亮輔、後ろのボックス席をサラリと一周して、「ふ~~ん。」そして、「藪さん、仕事、順調…???」その声に、「順調…、どころじゃない…。」「はっ…???」「貧乏暇なし。」「眠る時間も削られてるみたいですよ。」肇。「うっそ~~~。凄ぇな~~。さすがは精神科医。」その声に亮輔の隣の女性、「えっ…???…その人もお医者さん???」その声に藪と呼ばれた男性、「ははははは。おやおや、途端に食らいつきましたね~~。」亮輔も、女性を見て、顔を凹ませて、「やれやれ…。」女性、ぶすりとした顔で、「…だって…。お医者さん、憧れるんだもん。」肇、亮輔にジントニックを。そして女性にはレモンハイを。女性、「ありがとう~~。」亮輔、「では、藪さん。」藪、「乾杯と行きますか。」共にグラスをカチン。亮輔の隣の女性、「ねね、精神科医って、なんか…、恐くない…???」その声に亮輔、「何…???」そんな女性の、「精神科医って、なんか、恐くない。」の声に、いきなり藪と呼ばれた男性、「かかかかかか。」亮輔、「あのなぁ~~。」藪、そんな女性に、いきなり亮輔の前に体を…。「わたくし、藪岡海路(やぶおかかいじ)と申します。新宿の、蔵廉(くらかど)大学附属病院。そこの精神科に勤務しております。並びに心理療法士。そして…。」そこまで言って藪岡、「カウンセラーも行っております。以後、お見知りおきを~~。」その声に瞬間、女性、目を真ん丸にして、「うそ。すっご~~い。あ、あの…、新宿の…、蔵廉大学付属って、滅茶苦茶凄い病院じゃん。」亮輔、「えっ…???…阿須賀、蔵廉、知ってんの…???」「うん。前に一度、私の従妹が病気になって、難しい手術したんだけど~~。成功して治って、今、元気にしてるぅ~~。私も何度かお見舞いに行ったけど…。凄い病院。ホテルみたい。」いきなり藪岡、「かかかかか。ホテルは良かったな~~。…まっ。確かに、図体はデカいよな。」亮輔、顔を歪ませて、「いやいやいや。図体って…。自分の勤務している病院。」そして亮輔、何気に店の左奥からず~~っと目線を流して…。今度は店の右端に…。瞬間、飲んでた途中で、「ぶっ!!!」藪岡、「…ん…???」亮輔、また顔を歪めて、「…うそ…。」女性、ゆらりと顔を亮輔に、「どうしたの…???」いきなり亮輔、「おぃおぃおぃおぃ。いるじゃん、いるじゃん。」カウンターの一番端の席で、ビールとスナックを食べている女性を見て、「なんだよ、なんだよ、いるじゃん。」するとカウンターの中の肇、「う~~ん…???」藪岡を見て…。藪岡も顔を傾げて…。亮輔、その端の女性に、「君~~。君~~。」何かしら自分を呼ばれたような気がして陽織、顔を上げて、口を窄めて右左。そして、確かに声のする方に…。「えっ…???」すると自分を笑顔で見てくれている男性に、こちらも笑顔で、チョコンと頭を…。亮輔、「なんだよ、や~~っばり、あの子じゃ~~ん。」隣の女性も端の女性を見て、「あ~~~。」亮輔、女性に、「だろ…。」「うんうんうん。確かに。あの子だ。いやいやいや。全然服装は違うけど…。へぇ~~~。」ルシア、「え~~???…亮輔~~。彼女、知ってるんだ~~。」その声に亮輔、「うん。ウチの大学の生徒。」その声にルシア、肇、そして藪岡も、「はっ???」「…けど…。」亮輔、「多分…。」カウンターに左肘を突いて、左手で顎を撫でながら、「もしかしたら…。俺の…後輩…???…で…???」隣の女性を見て、「阿須賀の…、1年…先輩…???」女性、両眉の先を吊り上げて、「ん~~。見た事…、ないけど…。」ルシア、「何々。亮輔の大学の~~。」藪岡も、「へぇ~~~。」亮輔、「うん。」けれども、そこまで言って、今度は顔を凹ませて、「…なんだ…、けど~~。」ルシア、藪岡、亮輔を見て、「…なんだ…けど…???」亮輔、顔を傾げて、「どうも…、変なんだよな~~。」目は空を見て。ルシアと藪岡、「何が…???」「確かに。前も…、ここで彼女、見た事、ある。」肇、「まぁ~~。2週間程前からだから…、陽織ちゃん。」 LIBRA~リブラ~ vol,028 「ここず~~っと、顔見せてないけど…。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.28
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そんな風に呟きながらの男性に、傍でその男性の右腕を左腕で絡めながらの女性、「何、ボソボソ言ってるかな〜〜。亮輔〜〜。」 そんな女性に男性、「うん…???あ、ははははは。いやいや。うん。何でもない。」 「今日も、行くんでしょ。エンカント。」 そんな女性に、右腕を占領されている女性に亮輔と言われる男性、「さ〜〜て〜〜。どぅすっかな〜〜。」 その声に女性、「もぅ〜〜。意地悪なんだから〜〜。」 「まま。はははは。俺にだって、いろいろとやる事あんの。」「な〜〜によ〜〜。いろいろって〜〜。私以外の女と〜〜???」 「さ〜〜てと〜〜。どうでしょうか〜〜。」「もぅ〜〜〜。いいじゃないさ〜〜。両親が、お医者さんなんだから〜〜。」 その声に亮輔、「お〜〜い、おいおいおい。阿須賀(あすか)。おま…。俺の両親が医者だからって、俺にくっついてんのか〜〜???」 「そうじゃないけど〜〜。」女性、頬っぺたを膨らませて…、「もぅ〜〜〜。」 深夜1時。暗闇の中で静かに眠っている幸乃。 店の裏口から…。そして…、スタッフルームと呼ばれている6畳くらいの部屋で着替えをして店のカウンターに。 「オーナー、店長〜〜。入りました〜〜。」 その声にオーナーと呼ばれた女性、「あ〜〜はい。陽織ちゃん、いらっしゃい、お疲れ〜〜。」 店長と呼ばれた男性も、「ヨッ。こんばんは〜〜。」 店の客も、「おっ、陽織ちゃん、来たね〜〜。一杯、どうだ。ビール。」 その声に陽織、「はは。来て早々、いいんですか〜〜???」オーナーと店長を見て陽織。 そんな陽織にふたりもニッコリと、「頂いちゃいなさい。奢りなんだから。はは。」 陽織、その声に、「お言葉、頂きました〜〜。」 そしてグラスにビールを注いでもらって、「いただきま〜〜す。」 半分ほど、一気に。そして、一呼吸置いて、また喉に…。 客も、「おぅ、いい飲みっぷりだね〜〜。」 けれども、それ以上にビールを進める事はなく…。「今日も、陽織ちゃんの顏が見れる。楽しませてもらうよ。」 その声に陽織、「ありがとうございま〜〜す。」 そんな陽織をカウンターで黙って見ながら飲んでいる男性。年齢は50代だろうか。「ママ、新しいバイト、雇ったの〜〜???初めて見るけど…。」 カウンターの中でバーテンダー、「いえ。バイトじゃないんです。…と、言っても…。はは、何と言って説明していいか…。」 その声に男性、「はっ…???」 バーテンダー、オーナーの女性に顔を…。 オーナーと言われる女性。日本人ではなく、スペイン人である。名前をルシア・大越(おおこし)。「2週間くらい前…だったかしらね〜〜。」流暢に日本語を話す。「いきなり店に入って来て、店をあちこち見て、ほら、今、あんたが座っている椅子に座って。後ろの客を見て、同じもの、下さいって…。私も肇(はじめ)も顔を傾げたけど…。まま、20歳は過ぎているだろうからと…。ビールをね〜〜。…そしたら、途端に顔が赤くなって…。とにかく、それでストップ。とにかく、見慣れない顔だったからさ。…なんだけど〜〜。やたらと他の客に愛想が良くって…。顔は赤いんだけど…、それほど酔った感じも見せない。」 男性、「ふん。」 バーテンダーもニッコリと。 「その内…。私、そろそろ…。って事になって…。…けど…。結局は、お金…持ってなかったんだよ。」「おや。」 「…で、肇が、お客様…???って顔で見たら、いきなり、働かせてくださいって…。」「ふ〜〜〜ん。」 「…って言うか…。まっ、どんな子なのか、全然分かんなかったけど…。とにかく皿洗いから…。」 男性、「ふんふんふん。」 「するとどうだい、何と、手際がいいのなんの。…しかも、もの凄い、気が利く〜〜。…で…、聞くと、3時までしか働けないって言うじゃない。まっ、別に店に迷惑掛けている訳じゃないから…。まっ。好きなだけやってみな。…ってね。」「へ、ぇ〜〜〜え〜〜。」 「どっかの大学生か…。まっ。分かんないけど…。世の中、いろんな子、いるから。…で、1週間過ぎたら、なんか…、客入りが変わってね〜〜。」「ほぅほぅほぅ。」 「1時過ぎた辺りから、陽織ちゃん目当ての客が増えた。」「何と。」 「まっ。3時にゃ〜〜、帰っちゃうんだけどね〜〜。」「どこに住んでんの…???」 その声にルシア、「藪(やぶ)さん。野暮でしょ。そういうのは…。」 藪と呼ばれた客、顔を歪ませて、「はは、申し訳ない。」けれどもその女性を見ながらにして、「ふんふんふん。何とも、愛嬌があるね〜〜。」 店の客も陽織を歓迎してくれている。 店のドアが開く。店に入ってきた男性と女性。 ルシア、「はい、亮輔、いらっしゃ〜〜い。」 「こんばんは、ルシア。」 LIBRA~リブラ~ vol,027 「オーナー、店長~~。入りました~~。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.27
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愛実、柚香を見て、「な~~るほどね~~。…で…???…いい感じの人…???」その声に思わず柚香、顔を赤くして、「はっ…???…へっ…???」そして急に、両手を愛実の前でヒラヒラとさせて、「いやいやいやいや。そんなんじゃないから…。うん。そんなんじゃない。…彼は…。」そんな慌てぶりに愛実、途端に目を真ん丸に。そして、いきなり、「キャハハハハハハ。な~~によ、柚~~。完~~~璧に、いい感じ的じゃ~~ん。」「いやいやいや。」困った顔をしての柚香、「そんなんじゃないから~~。絶対にそんなんじゃない。」そして口を尖らせて…。愛実、「でも…、柚…、顔、赤くなってるよ。」そんな愛実に柚香、口を尖らせたままで、今度は両眉の先端を吊り上げて、「もぅ~~~。仕方ないじゃんよ~~。いきなりメグがそんな事言うから~~。」愛実、そんな柚香を見て、優しそうに、「かかかかか。まま、いいじゃない、いいじゃない。柚香にも素敵な彼氏、出来たと。ねぇ~~。」笑顔で…。そんな愛実を見て柚香、「もぅ~~~。」「ただね~~~。」愛実。「気になりますね~~。その…、朝の頭痛。」柚香、「うん。全然分かんないから、尚更、気味悪い~~。」「だ~~ね~~。」そして、3日後の深夜3時過ぎ…。静かに腰を低くして階段を上る柚香の姿。珍しくこの時間にトイレに起きてきた幸乃が人の気配に気付いて階段を。「おや、柚香。トイレかぃ。」その声にいきなりビクン。すぐさま急いで階段を駆け上がり、自分の部屋に。幸乃、思わず顔を傾げて、「おかしな子だね~~。」ベッドに潜り込み、「やばい、やばい。」そしてまた朝を迎えて…。柚香、幸乃の声にまた目を覚まして…。そして、またいつもの頭痛。「もぅ~~。なんでよ~~~。」但し、幾分か、その痛みも、最初のガンガンではなく、ツ~~ンと来る程度まで…。「おっかしぃな~~。」キッチンに。幸乃、「また頭、痛むのかぃ。」柚香、「うん~~。…でも。な~~んかね~~。一番最初の頃とは、それほど…。」「ふんふんふん。そぅかぃ。」そしてその話を、今度は大学の講義の終わりに、またイートインで…。真輝の方から、「かかかかか。毎回ここで…。ごめんね。」その声に柚香、顔を右左に、「ううん。全然平気~~。私、バーガー好きだから。」ニッコリと。その顔を見て真輝も嬉しく、「うん。」けれども、「けど…。大変だね~~。そんな…、度々の朝の頭痛~~。」柚香、口を尖らせて、「うん。全然見当も付かない~~。」そして、「私…、どちらかというと、夜、一度寝てしまうと、滅多に朝まで起きないタイプなんだよね~~。おばあちゃんからはいつも言われる~~。あんたの夜はおばあちゃん助かるよ。朝までとにかくぐっすりだから…って。」「へぇ~~。凄いね~~。完璧に、熟睡タイプ。」「うん。だから、あんまり、夢を見るって言うのも、ないんだよね~~。」真輝、「へぇ~~。…と言う事は、案外、良質な眠りで健康体。」「なのかな~~。」柚香。「でも…、まぁ~~。そのお蔭かな…。朝は毎日、気持ちよく…。」真輝、思わず、「かかかか。そっか~~。俺なんて、どっちか…つぅと、3回はなんだかんだで目覚めるよね~~。…で、何て夢見てんだよって。時々、そんな時、あるよ。もぅ~~。アンバランスな夢ばかり。」そんな真輝を見て柚香、「へぇ~~。そうなんだ~~。ねね、どんな夢見るの…???夢なんて見る事ないから、全然分かんない。」「それこそバラバラだよ。…例えば…、目の前におっきなスクリーンがあるじゃない。」「うん。」「その中に、たくさんの画像があるとする。」「うん。」「しかも、全然バラバラで、その一枚の画像が内容も全く分かんない。」「うん。何とか…、理解できるかも…。」「…で~。夢の中では、そのバラバラの画像…と、言うか…、その内容が全く異なっているのが…。ある意味…、一本化しているっていう…。全く、何見てんのか分かんない。」瞬間、柚香、「はっ…???」そして顔を僅かに下に向けて、可笑しがりながら、「どうなってんの…???私も分かんないけど…。そういうのって…あり…???」その声に真輝、「いやいやいや。それ…、俺に言われても…、夢、コントロールできる訳じゃないから…。…だから、そんな夢見た後には、なんなんだよこの夢って…。」「あ、あ~~、なるほど。そういう訳かぁ~~。…でも、体、疲れない…???」真輝、その言葉に、「ん~~~???」腕組みして、「あん~~まり…???…それに…、もぅ慣れちゃってたから…。」その時、外の歩道を歩いていた男性。以前柚香に声掛けた男性。ファーストフードの店の中の女性を見て、「…あ、あいつ…。彼氏…、いたんだ…。ふ~~ん。」 LIBRA~リブラ~ vol,026 「うん。そんなんじゃない。…彼は…。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.26
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女性と一緒に食券の自販に、「おっかしぃなぁ~~。確かにあの子~~。間違いないんだけどな~~。」柚香、大学の友達2人とお喋りしながら、そして笑いながら弁当を食べている。深夜である。都内のバー。カウンターの中、バーテンダーの男性、「陽織ちゃん、3番さんに生、お願いね~~。」陽織、「は~~い。」そして、その席に生を…。客の男性、「あ、ありがと。うんうん。サンキュ~ね~~。」そして男性、「ママ、いい子、入ったね~~。」すると、ママと言われた女性、「違うよ、その子~~。店員でもバイトでもないよ~~。でも、ふふ。可愛いでしょ~~。駄目よ~~。惚れちゃあ~~。」ママと言われたこの女性、日本人女性ではない。そして陽織も、男性客に、「はい。私、店員でもバイトでもありませ~~ん。」すると客の男性、「え~~???…一体…、どういう事~~???」陽織、「私…、お金、もらってないので…。」「お金…、もらってない…???…って…???」深夜0時を少しだけ回っている。ここは、ある駅の近く。サラリーマンやオフィスレデイ、それに大学生も訪れるレストラン&バーである。朝まで営業している。「ちょっと彼女~~。このワイン、もう一本、いいかしら~~。」陽織に。陽織、「は~~い。分かりました~~。店長~~。」店長と呼ばれた男性。バーテンダーである。「あいよ。」席は20席ほどあるが、この時間で殆ど満席に近い。ママと言われた女性、「ふん。陽織ちゃんが手伝ってくれて、大正解だね~~。」カウンターの中のバーテンダーも、その女性に、「そのようで…。まっ、例え3時間であろうとも…。」女性、「ねぇ~~。」陽織、店の手伝いをしながらも、少し時間があれば隅の方で、お酒とスナックを。「ふふ。お~~いし。」そして…。午前3時。陽織は幾分客が落ち着いた店を、女性と男性にお辞儀をして出て行く。女性、「またね~~。」陽織、「ありがとうございました~~。」陽織、店の中では全く異なる洋服を着ていたが、今はまた家から出て来た洋服に着替えている。そして、一路来た道をそのまま。時には駆け足で…。そして、家に着けば、それこそ静かに自分の部屋に。そして、パジャマに着替えてベッドに潜り込むのである。日曜日に汀家のリビング。愛実が遊びに来ている。幸乃、「はいはい、メグちゃん、いらっしゃい。ささ、どうぞ~~。」愛実、「わ~~お、美味しそう~~。いっただっきま~~す。」愛実、更に盛り付けてあるカスタードプリンを一口。「ん~~~。」目を真ん丸にして、そして、いきなり細くして、「ふふ。お~~いし。」「んふ。じゃ、私も~~。」柚香。幸乃、「うんうん。じゃ、ゆっくりね~~。」愛実、顔をコクリと、「ありがとうございま~~す。…で、で…、柚~~。…その…、朝になって、目覚めると、頭が痛いっての…。」その声に柚香も、「うんうんうん。…でも…。」顔を左右に振りながら、「全然、分かんないよ~~。今までこんな事~~。もぅ~~。さっぱりだよ~~。なんなんだろ~~。あれから2週間以上経ってるけどさ~~。…けど…。そういうのが…、毎日じゃないから、余計、変なんだよね~~。…例えば、これが。毎日だったら、完璧に…、病院、精神科行き~~。」その声に愛実、思わず、「ぷ。何バカな事言ってるかな~~。」柚香、「だ~~って~~。とにかく、不規則なんだも~~ん。」愛実もプリンを食べながら、「う~~~ん。…なんとも、その…不規則…つぅのが…、厄介だね~~。」その時、柚香のスマホにライン。いきなり柚香、「わっ。」瞬間、愛実、「えっ…???」柚香、思わず慌てて、自分のスマホを大事そうに右手で持って体の前でクロス。そして、「あ…。は…。ははははは…。」顔を傾げて、照れ笑い。「な~~んでも…。」「ない。」愛実、いきなり右目を歪めて、柚香を見て、「…んな訳、あるか~~~。」そして、窓を見て、右手を窓に、「あっ。流れ星。」瞬間、柚香、「うそっ。どこ…???」すかさず愛実、柚香の右手からスマホを奪い取り、画面を…。途端に柚香、「わっ。ずる~~い、メグ~~。」愛実、「シッシッシッ。お昼に流れ星、ある訳ないでしょ。…って…、ほぅ~~。真輝君。…なんと…。いつの間に…。」そして愛実、「…って、言うか…、誰…???……って、聞くのも変だけどさぁ~~。」柚香にニコニコと…。柚香、観念したように、「あ~~ん。ほら、病院で知り合ったの~~。」「病院で…???」「ほら。売店で会った~~。」愛実、目をキョロキョロとさせて…。そして、次の瞬間、「あっ。あ~~、あ~~。うんうんうん。あの人~~。はいはいはい。何とか…、覚えてる~~。」「あれから病院で、また会って~~。偶然に~~。」愛実、口を尖らせて、「ふん。」 LIBRA~リブラ~ vol,025 深夜0時を少しだけ回っている。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.25
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自分の部屋に真輝、バッグから荷物を…。そしてスマホを…。すると…、1件の履歴、柚香から…。けれども…。顔を傾げて、「ふん。」でも、「まっ、いっか…。」中々、電話を掛けづらく…。そして、夕食後…。真輝のスマホにまた柚香から。真輝、今度は電話に出て、「はい。こんばんは。」スマホからの声、「あん。こんばんは~~。私~~。」特に、変化はなく柚香の声で。会話は続く。…そして…。1週間が経った。…けれども…。その1週間の中でも…、時折柚香、朝、目覚めれば、また、「頭…、痛…。」仕方なく柚香、幸乃と共に、世田谷長篠観音(ながしのかんのん)総合病院の熊沢の元に。症状を…。…けれども…、検査をしてもらっても…。熊沢、パソコンの画像を見ても、「ん~~~。特に…、何処も…、なんとも…。ないんですけどね~~。」腕組みしながらも…。「朝…、起きたら…、頭が…痛い…。…ただ…。これで…、何か…、薬を処方…したとして…。…万が一…、変に…、副作用…。」幸乃、熊沢に、「先生…。」熊沢も、厳しい表情をさせて…。「何かしら…、原因がハッキリとすれば…。…その対処は…。…けれども、今の段階では…。」そして、結論は…。「もう少し、様子を見てみましょう。その経過で、何かしら、分かるかも…知れません。」幸乃と柚香、そんな熊沢に、お辞儀をして、「ありがとうございました。」その後、ふたり共に、帰宅して、柚香は自分の部屋に。幸乃、自分のスマホで病院に…。そして熊沢に、「もしもし、先生。」そして、「いいえ…。退院してからは全く、陽織には…。」熊沢も、頷きながら、「そうですか~~。」そして、「とにかく、分かりました。…では、お話したように…。お願いします。」その後、柚香、大学の講義の後、また真輝といつも通りに…。更に1週間経ち…。そんなある日、大学のある男性が、大学の食堂で友達とお昼ご飯を食べている柚香を見て、「あれ~~~。あの子、確か~~。」その男性と一緒の女性、「ん~~???…どしたの~~???」男性、顔を傾げて、「あのさ。あの子…、確か…、店に、いなかった…???」女性も、その女性を見て、「ふん…???…ん~~~???…いたっけ…???」男性、「うんうんうん。いた。いたいた。」女性は顔を傾げて、「ん~~。私~~。全然、分かんないけど…。…って言うか、全然、話しした事ない子だけど…。」「まっ。確かに。」男性、弁当を食べている女性に近づき…。けれどもその男性の傍では女性、「ちょ…、ちょっと~~。止めなよ~~。」けれども、そんな女性の声を無視するように男性、女性に近づき、「ねぇ。」いきなり声に柚香、目をパチクリとしさせて顔を上げて、「あっ、はい。」男性、「あのさぁ。俺の事、見た事ない…???…2回程、俺、君の顏、見てんだけど…。」いきなりのその声に柚香、「はっ…???」そして両眉の先を吊り上げて、「は…ぁ…???」傍に立っている男性を見て柚香、思わず怯えるように、「あな…た…を…。」そして顔を傾げて、「ですか~~。」そしてまた…、顔を傾げて、恐る恐る、「どこかで…、お会いしました…???」正に、訳分からない状態の柚香。そんな女性の表情に男性、「おっかしぃな~~。…確かに、君だったような~~。」その時、男性の背中にピッタリと男性を抱き締めるようにしていた女性が、「ねね、亮輔(りょうすけ)~~。いいじゃん、行こう。」柚香、男性の顔を見て、ちょっと困ったような声で、「あのぉ~~。どなたか存じませんが…、人違いじゃ…。」今度は男性の隣の女性、「ほら~~。この子もこぅ、言ってんだし~~。」男性、「あのさ。エンカントって名前のお店、知ってる…???」柚香の同じテーブルで食事をしている女性友達も何やらソワソワと…。顔を見合わせながら…。柚香、またまた両眉の先端を吊り上げるようにして、「はっ…???…エンカン…???…なんですか、その…。」男性、「あぁ~~。僕がしょっちゅう行く店なんだけど~~。僕の顏…、見た事…、ない…???」柚香、いきなり顔を小刻みに右左に…。男性、「おっかしぃな~~。…確かに…、君だったような~~。…いや。服装は…、こんな感じじゃなく…。どちらかと言えば…、もっと、ファンキーな…。」隣の女性、「亮輔~~。」その声に、「あ、あ~~。うん。分かった~~。」柚香、「あのぉ~~。すみませんけど…。私~~。」すると男性、「あ、あ~~。ごめん。うんうんうん。」2度程頷きながら、「じゃあ~~。人違い…。…なのかも…。はは。うん。ごめんね。悪かった。」そして男性と女性、柚香たちの席を離れて行く。柚香の友達、「何、あの人~~。何か、気味悪い~~。柚~~。知ってる人~~???」口を尖らせている柚香、「全~~~ったく。初めて見た~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,024 大学のある男性…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.24
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7時過ぎになっても起きて来ない柚香。幸乃、顔を傾げて、「変ね~~。」2階に上がって柚香の部屋に…。ドアを開けて、ベッドに、「柚香~~。柚香。」完璧に熟睡状態。幸乃、ニッコリとして、「おやおや。」そして布団を僅かに捲って、「柚香~~。」その声に柚香、「う~~ん。ん~~。」僅かに寝返りを打つように…。幸乃、「もぅ、朝の7時過ぎだよ。ご飯。」柚香、また、「う~~ん。もぅ…少し~~。」幸乃、困ったような顔をして、「困った子だね~~。」すると柚香、いきなり、バッ。「今、何時…???」目をパチクリと。けれどもその瞬間、しかめっ面をして、「痛った~~~。」幸乃、キョトンとさせて、「どうしたんだぃ…???」柚香、前髪をダラリと、髪に指を入れるように、「頭痛~~。物凄、ズキズキ…。何なのこれ~~。」幸乃、両眉の先端を吊り上げて、「ん~~~???」柚香の額に左手を…。「ふん…???…けど…、特に…、熱は…???…風邪の症状でも…。」柚香、「あ~~~ん~~。」僅かに顔をもたげて…。その時、幸乃、一瞬、「…ん…???」そして幸乃、「変だね~~。」そんな幸乃に柚香、「ん~~~???」「お酒の…、匂いが…。」その声に柚香、「お酒…???…なんで…、お酒…???…訳分かんないけど…。」柚香の声に幸乃も、目をキョロキョロと。そして顔を傾げて、口を尖らせて、「うん。まぁ…。おばあちゃんにも分かんないけど…。おまえがお酒…。飲めないの分かってるから…。」「飲めない…んじゃ…ないけど…。飲まない。一杯も飲まない内に天国になる。」幸乃、「うんうんうん。」けれども…、「なんだ…けど~~。…確かに、お酒の匂い。」そして幸乃、「柚香、おま、ちょっと息、吐いてみな。」「うん…???…うん。はぁ~~。」すると、今度は…。幸乃、顔を傾げて、「ふん。今度は…全然。」柚香も、顔を歪めて、「何なの…???」そして、顔を歪めたままで、「あ~~ん。また、何だか、口の中、カラカラ。喉乾いてるよ~~。この前も何だか、同じような…感覚~~。」ベッドから起き上がって…。幸乃、「ご飯、どうする…???」その声に口を尖らせての柚香、「う~~ん…。頭はズキズキするし~~。…とは言え…。何か…、お腹の中には…。」幸乃、「入れ…たい。」柚香、口を尖らせて、「ふ~~~ん。」電車に乗りながら柚香、愛実に、「何だか、チョイ、体…、変なんだけど…。」ラインで送信。数秒後、「オッハ~~。何…、体…、どうしたの…???」「朝、起きると頭が痛い。…でも、風邪じゃない。」また数秒後、「何それ…???…何か…、疲れてる…???」「ううん…。」「うん。分かった。後で、電話するね。」「OK。」けれども、特段、何か変わった事などなく、またその日も無事に…。お昼に愛実とも電話で話したのだが、結局結論は出ず。その日の夜も普通に…。…けれども…。それから2日目だった。大学の帰りに電車で…。そこまで良かった。ホームに降りて…。けれども、その時、やけにホームも人込み。その時、真輝が柚香を発見。ニコニコしながら柚香に接近。人の間を潜るように…。…そして、ようやく柚香の右肩に右手を。思わず振り向く柚香…、だが…。真輝を見た途端に、両眉の先を吊り上げて、「…ん…???…誰…???…あんた…???…馴れ馴れしく人の肩に触れないでよね。」そう言ってすぐさま、急ぎ足で…。瞬間、真輝は目をパチクリと…。そのままその場に立ち尽くしたままで、「えっ…???…あれ…???」顔を傾げて…。右手で頭を掻きながら…。今さっきの状況が…。「…もしかし…て…、人…、違い…???」目をキョロキョロと…。…そして、考えながらも、「い~~や~~。そんな…訳は…。…確かに、柚香さん。…だったんだ…、けどな~~。」真輝、今度はスマホを出して、柚香にラインを…。あれからちょくちょくとメッセージは交換している。けれども、歩きながらも、返信は来ない。…というより…、既読にもならない。真輝、考え込みながら、「え~~~ぇえ~~???」けれども…。自宅前、僅かに数メートルで、柚香、思わず右膝がカックン。「わお。」その瞬間、「あれ…???…なんで私、家の前にいる…???…真輝君と会う…。へっ…???」そして柚香、思わずスマホを出して、「えっ…???」すぐさまラインの画面から真輝に。バッグの中でスマホの着メロが…。けれども真輝はイヤフォンで…。柚香、「あ~~~ん。マジか~~。多分、イヤフォン…しちゃってるね~~。」指先でトン。「…って言うか、なんで…、私…、家に帰ってる…???」そして柚香、玄関に…。「ただいま~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,023 7時過ぎになっても起きて来ない柚香。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.23
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カレーを食べながら柚香、「うんうんうん。はは。お〜〜いし。さっすがおばあちゃんのカレーだね〜〜。」 そんな柚香に幸乃、可笑しがりながら、「何言ってるんだぃ。半分は柚香が作ったじゃないかぃ〜〜。ははは。」そして幸乃、「まっ。あんたも料理、作れるようになった。おばあちゃん、嬉しいよ。」そこまで言って幸乃、目をパチクリとさせて、「…でも、珍しいじゃないかぁ〜〜。おまえがいきなり台所に来て、ご飯作るの手伝うなんて〜〜。なんか、あったか〜〜ぃ。」 そんな祖母に柚香、こちらも目をパチクリとさせて、スプーンを口に、「うん…???」そして、「いや…。何も…???」 幸乃、そんな柚香を見てニッコリと微笑んで、「そぅかぃ。うん。」 柚香、「はは。お〜〜いし。もぅいっぱい、おかわり。」 「うんうんうん。好きなだけおあがり。いっぱい作ったから。カレーはね。次の日がまた、美味しいから。」 その声に振り向きながら柚香、「そぅ言うよね〜〜〜。」そしてお皿にカレーを盛り付けて、「ふふふ。お〜〜いしそ。」 そして…。その夜。柚香、珍しくいつもよりは違った心地良さでベッドに。そしてゆっくりと眠りの淵に…。 翌朝、「柚香〜〜。柚香〜〜。」下からの声。 けれども、何故かスッキリしない感じでの柚香、部屋の中に幸乃が入ってくる。「柚香〜〜。朝ごはん、出来てるけど〜〜。」 その声に、まだベッドの中の柚香、「う〜〜〜ん…。分かった。ありがとう〜〜。うん。後で行く〜〜。」それから数分、柚香、ベッドの上、起きてはみるが、思わずしかめっ面をして、「ん〜〜〜。なんだろう…。頭、痛〜〜い。風邪でも…???」そのまま額に左手を…。けれどもそれほどとは…。 そして、パジャマ姿のままでキッチンに…。 幸乃、そんな柚香を見て、「おや。どうしたんだぃ…???」 柚香、キッチンに入るなり、すぐさまコップを片手に蛇口を。 柚香、幸乃に、「うん。…なんだか…、妙に喉が渇いてさ〜〜。それに…。」顔を傾げて、「なん〜〜とも、頭がズキズキ、それに…少し、体も怠〜いかな〜〜。」 幸乃、「あら。」 「…なんだ…、けど〜〜。」「ふん。」 「別に、これと言って、熱はなし…。」「あらら。…大丈夫かぃ〜〜???」 そんな幸乃にコップの中の水を飲んで、「うん。」 心配そうに柚香を見つめる幸乃。「朝ごはん、どうする…???」 「あん。今は…。」顔を傾げて、そして無理に笑顔を…。「食べ…、られそうに…、ないかも…。」 「ふん。分かった。んじゃ、お弁当、作っておく。」 その声にニッコリと柚香、「うん。ありがとう〜〜。」 そして…。大学に向かう柚香。駅に着いて、あちらこちらを見回しながらも…。体の具合は、何とか、少しずつ楽にはなってきてはいた。 柚香、チロリと舌を出して、「はは。そんな…簡単に…、いる訳は…ないか…。」 いつも通りの大学の授業。そして、いつも通りの友達との会話と昼食。取り留め、特に変わった事もなく、また帰路に。 友達からはちょっとお茶して行こうと誘われるが、「おばあちゃんが心配するから…。退院してまだ日が…。」そうやって、もう少し日が経ってたから…。その時になったらお願い。…と、友達に言い渡して…。そんな柚香を友達も笑顔で快く応えてくれる。 家に帰ってすぐに、幸乃から、「おかえり〜〜。体の方…。」 「う〜〜ん。全然平気〜〜。お昼前には、完璧〜〜。」 幸乃ニッコリとして、「そぅ〜〜かぃ。」 そして夜には、2日目のカレーを食べて…。「うん。かかかか、ほ〜〜んと。2日目もおいしい〜〜。」 ニコニコと幸乃、「だろ〜〜〜。」 夜は天文学の勉強をしながら…。そして、いつも通りの就寝。翌朝は特に問題なく…。 そして…。 今度は、駅で真輝にバッタリ。「お〜〜っと〜〜。かかかか。おはよう〜〜。遂に、朝に…。」 その声に柚香もニッコリと、「うん。だ〜〜ね。おはよ。」 そしてふたり、並びながら歩いて…。 けれども柚香、真輝に、両手を合わせて、「真輝君ごめ〜〜ん。私の方から、ライン。…でも、全然送れなくって〜〜。」 その声に真輝、ニッコリと、「ふん…???…あ、あ〜〜ははは、気にしない、気にしない。うん。いつでもいいからさ。」 柚香、下唇をビロンと、「ありがとう〜〜。」 そして、大学で真輝と別れて…。「じゃあ〜。ラインするね。」 真輝も、「うん。ありがと。じゃ。」 そして…。講義が終わって…。また柚香、いつものベンチに…。 ニッコリとしながら、「はは。いたいた〜〜。」 そしてまた、前回同様に、ファーストフードのイートイン。ここでもふたり共に、にこやかにお喋りを…。凡そ1時間程度。そしてまた一緒に世田谷の駅まで…。前回同様に別れての…帰宅。 そして、また次の日。この日は空振り。 そしてまた夜を迎え。そして、翌朝…。 LIBRA~リブラ~ vol,022 「ご飯作るの手伝うなんて〜〜。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.22
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そして真輝、顔をあちらこちらに…。そして、「ハンデ…、16…。ふ〜〜ん。どんなん、だろうねぇ〜〜。」 吾大、いきなりその声に、「はぁ〜〜あ〜〜???」 真輝、テーブルの上を…。そして…、「かあさん、今日…、遅いんだ…???」 吾大、「あぁ〜。うん。…多分、9時は…過ぎるかな〜〜。仕事が間に合わないんだと〜〜。」 「…と、言う事は〜〜。夜…。」そして、チラリと吾大を見て…。 吾大、クラブを磨きながら…、「俺が、作る。焼きそばでいいかぁ〜。まっ。それなりに、食材はあるから、食べたいもの、なんでもいいぞぉ〜〜。どっちみち、咲耶は泊まり込みのセミナーってたから、明後日の夕方までは、いない。」 その声に真輝、「俺は〜〜。うん。焼きそばでいいや。」 「おぅ〜〜〜。」 勝巳家。大黒柱でもある勝巳吾大。そして、妻の勝巳愛佳(かつみまなか)。真輝の母親であるが…。どちらも料理は出来る。特に吾大は、大学時代に、航空整備士の勉強に熱中し過ぎて食事どころではなく、今度は、腹が減って勉強どころではなく、近所に駆け込んだ定食屋のかつ丼の余りの旨さに、惚れ惚れして、自分でも一度作ってみたい。…それが、料理の切っ掛けとなり、ひとつできれば、またひとつ、全く別の物を…。それが航空整備士の勉強にも影響して、逆に生活のリズムも安定した時期があった。そして、その後も料理は自分の趣味の範疇で続いている。 そんな…、吾大と愛佳(かつみまなか)の、出会いは…???…たった一瞬の出来事である。しかも…、吾大の一目惚れ。そんな愛佳は、雑誌社、奥羅(おくら)出版社の校閲部に所属している。勤続30年以上のベテラン校閲者でもある。子供の頃から読書が好きで、そのままその道を進んだという事になる。ただ…、テレビドラマのような校閲を題材としたような…。あの主人公…みたいな…、感じとは全く異質。強いて言えば…、主婦が校閲者になった…ような…。感じで…。全くと言うほど、表舞台には現れない。家庭でも、常に、夫の裏で慎まやかに過ごしている。 そんな母親を見て、「かあさん、もぅ〜〜。もっと前に出てもいいんじゃない〜〜。そんな、とうさんの後ろで〜〜。おしとやかにしてないでさ〜〜。まっ、とうさんも料理や家事は出来るから、何も言えないのは分かるけど〜〜。もっと堂々としてよ〜〜。私のおかあさんなんだから〜〜。」 と、威勢の良いのが、勝巳家の長女、真輝の妹の、勝巳咲耶(さや)。航空整備士専門の大学、運慶(うんけい)大学に通っている。子供の頃から飛行機に憧れて…。その影響か、全く人形などの普通の女の子のような遊びは全く好まず、とにかく、目の前で動くものが好き。しかも、それを分解して楽しむという、正に男勝りなところもある。 いつだったか、兄の真輝の作ったプラモデルを分解して兄を泣かせた時もあった。ただニコニコ顔の咲耶。 「咲耶がやったんだよ〜〜。凄いでしょ〜〜。」 この時は両親共々、一瞬、何も声が出なかったという。 五大、「…って言うか、おま…。どうしたの…???…いつも、帰ったらすぐに2階に…、かあさんも…。言ってたけど…。…なんか…、珍しくねぇ…???」 その声に真輝、「えっ…???」顔を傾げて、「そ…、そうかな…???…いや…。別に…。」そして、頭の後ろ、うなじを左手で掻きながら、「ふんふんふん。ふんふんふん。」そして2階に。 そんな真輝の後ろ姿を見ながらも吾大、こちらも顔を傾げて、「ふ〜〜ん…。」そして小声で、「…なんか…、あったか〜〜。…な〜〜んか、気味悪ぃぞ〜〜。」 階段を上り、2階へ。「…いや…。別に、何かって言われれば…。」独り言。「ふ〜〜〜ん。汀…、柚香…。」そして、「へぇ〜〜〜。…まさか…、大学で、会えるなんて、全然思ってなかった〜〜〜。」 部屋の中、バッグの中から机の上にスマホを…。そのスマホを見て、僅かに、「ふふん。」そしてベッドに腰掛けて、両手を頭の後ろで組んで、「そっか〜〜〜。」 「おばあちゃん。手伝うよ。」いきなり柚香、台所に入ってきて、夕飯の準備をしている幸乃に。 「えっ…???」いきなり幸乃、目をパチクリとさせて…、「あはははは。どう〜〜したんだぃ、いきなり〜〜。ご飯作る、手伝うなんて〜〜。」 そんな幸乃に柚香、「だ〜〜って、私、全然、おばあちゃんに甘えてばかりで〜〜。何も手伝ってないし〜〜。それに、事故で病院〜〜。入院〜〜。」 その話に幸乃、つい可笑しくなり、「かかかか。それは柚香のせいじゃないし〜〜。」けれども幸乃、ニッコリと、そして、「うん。そっか。だ〜〜ね〜〜。んじゃ、そこにある人参、切ってもらおぅか。今夜はカレー。」 柚香、「わお。」 LIBRA~リブラ~ vol,021 「俺が、作る。焼きそばでいいかぁ~。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.21
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そして、お互いに、真輝から、「ごめん、ごめん。何かしら…。」柚香、「かかかか。ううん。ううん。私の方こそ…、話し~~。」「いやいやいや。ついつい、話しに夢中になっちゃって。」柚香、顔を左右に、「ううん。私の方こそ。男の人と、こんな風に話し込むなんて、今までなかったから、つい。」その声に目を真ん丸にして真輝、「うそ~~~。全然そんな風に見えないけど…。なんか…、こぅ~~。話し上手って言うか~~。」「え、え~~ぇ~???…私が、話し上手~~。そんな事、全~~然~~。」そして、自然に腕時計を見て、「わっと~~。…そろそろ、帰んないと。おばあちゃん。」真輝、そんな柚香を見て、「あ。うん。そうだね。」柚香、チロリと舌を出して、「退院して、大学、復帰して、今日まで、講義終わったら、すぐに家に帰る習慣。休みとかは友達と出掛けてはいるけどね~~。」「うんうん。…じゃ、そろそろ。」そしてふたりは店を出る。そして、向かう先は…、同じ駅。そして改札を…。そして、ふたり、共に歩きながら…。その内に、柚香、真輝を見て。真輝も柚香を見て。そしてまたふたりで、顔を歪めて…。真輝、「へっ…???」柚香も、「えっ…???」そしてホームの入口、柚香、「うそ…。」真輝、「はぁ~~あ~~???」そして、ふたり共に、ホームに。柚香、瞬間、顔を伏せて、笑いながら…。真輝も顔を下に、そして左右に傾げて…。柚香、今度は顔を両手で伏せて…。ふたり共に、「うっそだ~~~。」柚香、真輝に、「…もしかして…。」真輝も、「もしかして…。」「家って…。」真輝、その声に…。けれどもふたり共に、「世田谷~~???」ふたり共に、目を真ん丸に、「な~~んだ~~。」柚香、「同じ方向~~。」そして、「あ~~ん。だから~~。」またふたり、共に、「長篠観音(ながしのかんのん)総合病院。」そして真輝、「確かに。近くだもんね~~。」柚香も、「うんうんうん。確かに。」そして、自然に電車でもふたり、隣同士に。けれども今度は、ふたり…共に…。何も喋らずに、数分。そして…。お互いに、ギクシャクしたような…、感じでもあり…。…けれども…、いつの間にか…、顔が…。視線が…。合って。そして、お互いに、「あっ。」そして…、お互いが、僅かながらも顔を赤く…、そして口を尖らせて…。そうこう…、している間に…、電車はある駅に到着。すると、ふたり、共にシートから体を…。ホームに降りて…。改札を出て…。そこで初めて、ふたり共に、「じゃ、じゃあ…、僕。」「じゃ、じゃあ…、私…。」「こっち…。」「こっちだから…。」瞬間、柚香、「な~~んだ~~。真輝君、そっちなんだ~~。」その声に真輝も、笑いながら、「いやいやいや。住んでいるのが、こんなに近かったなんて…。」「ねぇ~~~。今まで、全~~然。はははは。じゃね~~。後で、ラインする~~。」真輝、そんな柚香に、ニコニコと、「うん。分かった。じゃ。」柚香も右手を掲げて、「じゃあね~~。」ゆっくりと自分の家の方向に歩いて行くふたり。…そして、お互いに、姿は見えなくなる。真輝はまたバッグのポケットの中からイヤフォンを…。柚香は鼻歌を口ずさみながらも…。時にはステップを踏んで…。そして…、何かしら、「ははは。イヒヒヒヒ。…ふ~~~ん…。そうなんだ~~。」そして数分後…。柚香、自宅のアプローチを…。その数分後、真輝も自宅のドアを…。「ただ~いま~~。と~~。…誰も、いる訳が…ないかぁ~~。」玄関で靴を脱ぎ、そのまま、まずはリビングへ…。「おっと…。いたんだ~~。」リビングでゴルフクラブを磨いている男性。帰ってきた真輝を見て、「おぅ、おかえり~~。な~~にが、おっと、いたんだ~~だ~~。幽霊でもあるまいし~~。」真輝の父親、勝巳吾大(ごだい)である。羽田空港勤務の航空機整備士、その1等整備士である。真輝、「いや…。親父が日中、家にいる事なんて、珍しいから…。」その声に、「な~~に言ってる~~。父さんだってな。たま~~には、平日休みって~~、ときもある。ん~~。」「ふ~~~ん。…で、また、ゴルフでも行くの…???」その声に吾大、「まぁな。来月の初めにラウンドがある。まっ、その準備だな。」「親父って、ゴルフ、上手いんだっけ…???」その声に吾大、真輝を見て、「おまえ…。何気に…。何て言うか~~。」そして般若のような顔で、「聞捨て成らぬ事を言うな~~。」そんな父の声に真輝、立ったままで、「いやいやいや。…何て言うの…、単純に、親父のゴルフの腕、知らないだけだから…。」いきなり吾大、その声に嘆くように、「あのな~~。」口をへの字にして…。「ハンデ…16が…、泣くよな~~。」そして、ドライバーのヘッドを丁寧に磨きながら、「なぁ~~。相棒~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,020 「男の人と、こんな風に話し込むなんて…。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.20
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柚香、ちいさな声で、「おとうさん、羽田空港の…。……。…でぇ~~。」また柚香、顔を傾げて、「…って言うか…、羽田空港…、そんな…、現場って、見学…。」真輝、「うん。全然OK。」「うそ――――――っ!!!私、行ってみた~~~い。」その声に真輝、一瞬、「えっ…???」そして、「あっ。ははははは。あ~~。機会が…、あったら…、ね。」柚香、既に夢中になり、時間も忘れて…。「でででで…。羽田空港に見学…。整備士の…。」「あ~~、うん。」真輝。「まぁ~~。詳しくは、機体工場見学って言うらしいけど…。おじさんとウチの家族、4人でね~~。まっ、かあさんは何回も見た事あるっては言ってたけど…。親父と結婚する前に…。でぇ~~。機体工場見学に行った瞬間。」柚香、「うんうんうん。」「妹がいきなりはしゃぎだした。」「あは。」「とにかく物凄いはしゃぎぶりで、周りにいた整備士たちもビックリして、親父、妹を肩車してあちこち連れまわしたんだ。それ以来、もぅ~~。妹は飛行機に憧れてねぇ~~。」話を聞きながら柚香、「へぇ~~。」「…で、それからしょっちゅう~~、妹は親父が仕事の休みにも仕事場に連れまわされて…。はは。何のための休日なのか…。」「凄いよね~~。」「まっ。妹のはしゃぎようにも驚いたと言ってるけど…。何々、工場の整備士の人たちが物凄い親切で優しかったんだって。みんなから抱っこしてもらったって言ってたから…。…妹が言うには、確かに飛行機はカッコいい。でも…、外見から見た飛行機より、目の前でドカ~~ンと、全部を曝け出している。そんな飛行機の中、何とも惹かれる~~。感動しかない。…な~~んて言ってるからね~~。完璧に、男勝り。」柚香、「へぇ~~。男勝りかぁ~~。会ってみたいね~~。」真輝、可笑しがりながら、「かかかかか。うんうん。機会があったらね~~。」「でも。真輝君の家族、凄いよね~~。おとうさんが航空整備士で、妹さんも同じ道…???…おかあさんは…???」真輝、「あん。お袋は、校正者。」その声にまた柚香、両眉の先端を吊り上げながら、「校…正…者…。」右目を歪めて…。そんな表情を見て真輝、またもや、「ぷふ。かかかか。」柚香、「うん…???」そして、「あっ。ごめ~~~ん、また、私…、変な顔。」真輝、可笑しがりながら右手を振って、「かかかかか。いやいやいや。別に…。うん。」そしてカップに口を付けて。柚香、バーガーを一口。「…って言うか…、おかあさん、テレビか雑誌、ラジオとかの構成者…???」目をパチクリの真輝、「あ、あ~~~。企画…、構成とかの…。あぁ、そうか。そっちの構成ね。」キョトンとして柚香、目をパチクリと、「へっ…???…違うの…???」真輝、思いっきり顔を左右に。「ふん。全然。」柚香、途端に、「はい…???」「構成は構成でも、俺のおふくろ、文字の校正だから…。」その声に柚香、「文字の校正…って…。学校の校(こう)に正すの正(せい)。」真輝、キッパリと、「そぅ。奥羅(おくら)出版社の校閲部で、校閲の仕事、してる。」目をパチクリの柚香、「校閲…って言うと~~。」「うん。出版する、その原稿…???…その原稿の文章、間違いがないか、どうかを調べる仕事。」柚香、またもや両目をキョロキョロと。そして小声で、「校正…、校閲…。文字…。文章、漢字、平仮名…。」そして数秒…。「何、滅茶苦茶凄い仕事じゃんよ~~。」その声に真樹は、顔を傾げて、「ま、まぁ~~。確かに、凄い仕事で…、ある…かも…、知れないけど…。敢えて、言わせれば…。…物凄~~い、地味な仕事って…。」「えっ…???…そうなの…???」「うん。ほら。出版社って、編集者や記者だったら、あちこち動いて写真撮ったり、インタビュー、取材ってあるけど…。それに…、作家の場合も…、編集者、付くでしょ。」柚香、「うんうんうん。…でしょうね~~。ドラマやなんか、見てると…。」「…でも、校正、校閲って…。表舞台にはまず出ない。完璧に、裏方。しかも…、静かなところでコツコツと…、周りは本の山。そういう中でのお仕事。」柚香、聞きながらもキョトンとして…。「そういう女性が…、俺のおふくろ~~。」柚香、「へぇ~~。凄いんだ~~。航空…整備士の…、おとうさんと~~、出版社の~~校閲の…お仕事のおかあさん。ん~~~。」腕組みしながらの真輝、「ん~~~。なんで、ふたりは結婚して…、俺と妹が…生まれた…か。」柚香も一緒になって腕組みして、「う~~~ん~~。」数秒後…。ふたり、共に、お互いを見て…。「ぶっ。」「ぷ。」そして、お互いに、「かかかかか。」「はははははは。」 LIBRA~リブラ~ vol,019 「おとうさん、羽田空港の…。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.19
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そして真輝、ハンバーガーを食べながら、「じゃあ〜〜。柚香さん、家族はおばあちゃんだけ…で、兄弟か姉妹も…???」 柚香、コーヒーを飲みながら、「うん。私だけ…。真輝君は…???」 「僕は下に、妹がいる。今、大学1年。」「へぇ〜〜。大学1年の妹さ〜〜ん。」 「そっ。」何気に困ったような顔をしての真輝。 柚香、そんな真輝の顏を見て、「ふん…???…妹さんが…、何か…???」 その声に真輝、慌てて申し訳ないように、「あ、はははは。ごめん、俺…。あっ、いや…、僕、つい変な…。」 柚香、可笑しがりながら、「ううん。ちっとも…。…って、言うか…。」 「僕の妹ね。」 また柚香、カップに口を近づけて、顔をコクリと、「ふん。」 「通っている大学が、航空整備士専門の大学。」 いきなり柚香、「へっ…???」そして目をパチクリ。そして目をキョロキョロと、「航空…整備士…。…ぃ〜〜〜〜???」 その変な調子に真輝、途端に、「かかかか。くくくく。」 柚香は途端に右目を歪めて、両眉の先端を吊り上げる。そして口を尖らせて、「ん〜〜〜???」口を真一文字に…。「ん〜〜〜〜???」 真輝、ニコニコ顔で、「かかかかかか。」 ついに…。柚香、顔を大きく傾げて…。「航空…整備士…だよね。」 真輝、コクリと、「うん。航空整備士。」 「………って、言うか〜〜〜。…って…。なれんの…???」 その声に真輝、「なれる…、らしぃ…。」 「へぇ〜〜〜〜。」目をキョロキョロと、そして軽く頷きながら…。そしてまたカップに口を、「ふんふんふん。なれるんだ〜〜〜。へぇ〜〜。」 「…って言うか…。柚香さん。その表情。」 瞬間、柚香、「へっ…???…どうかした…???…何…???…私…、何か…???」 可笑しがりながら真輝、「いやいやいや。…なんかさ…。凄い、可愛かった。かかか。」 いきなり柚香、目を真ん丸に、「へっ…???…はっ…???」いきなり顔を赤くして…。そして今度は口を尖らせて、両眉の先を吊り上げて、左手で真輝を、「や〜〜だ〜〜。もぅ〜〜。何言うかとおもったら〜〜。」 真輝、可笑しがりながら、「いやいやいや。ごめん、ごめん。…って言うか、俺…。女子とこんな風に、外で飲んで食べたり。…で、話しする事なんて、なかったから…。」 「うっそ〜〜〜。」いきなり柚香、「こんな、かっこいいのに〜〜。」 「ややややや。俺なんて…、全然。」右手を顔の前で振りながら…。 柚香、「じゃあ…、中学の時や高校の時は…???…まさか…、バレンタイン…。」 首を振る真輝、「全然。」 「うっそだ〜〜〜〜。」「いやいやいや。嘘じゃないって。ほんとほんと。」 「世の中の女子、見る目…、ないのか…。」ボソリと…。「いや。だって、身長って…???」 真輝、「あ〜〜。175。」 「ふんふんふん。…てかさ。真輝君の妹、なんで航空整備士。…って…???」「うん。まぁ〜〜。これは…ちょっと…。あっ、ほら。病院で話したけど…。子供の頃、親戚の叔父さん。」 柚香、「あんあん。うん。カーレース。」 「そう。一度、そういう事があって。…まっ。親戚のおじさんは、かあさんの弟なんだけど…。かあさんが言うには、弟がカーレースを見せに連れてって、おとうさんは…???…って、とうさんに言ったんだって…。」 柚香、聞きながら、「うん。」 「つまりはとうさん、ある意味…、弟から触発されたような感じで…。」 目をキョロキョロと柚香、「あ〜〜。うん。確かに。…そぅ…なるかも…。」 「でぇ〜〜。」真輝、「そしたら、とうさんが…。よし。今度はとうさんが働いている現場に、連れてってやるって…。」 途端に柚香、「へぇ〜〜〜。」 「そしたらかあさんが…。うそ。そんな事、出来るのって…???」 柚香、瞬間、「えっ…???…って、言うか、真輝君のおとうさんって、仕事…。」 「あ〜〜ん。うん。俺の親父、航空整備士。」 「うっそ——————っ!!!どっひゃ〜〜〜〜。」そして柚香、「すんご〜〜〜。なんともまぁ〜〜。航空整備士〜〜。」そこまで言って柚香、真輝に、何かしら変顔で…、「ねねねね。…もしかして…、例えばさぁ〜〜。羽田だったり、成田だったり…する…???」 間髪入れずに真輝、「羽田。」 「うっひょ〜〜〜〜。すご〜〜〜。かかかか。私…、羽田の航空整備士の人の息子さんと話し、してんだ。」ニコニコ顔で…。 そんな柚香を可笑しがりながら、「いやいやいや。別に…。芸能人じゃないんだから〜〜。」 「いやいやいや。でも、凄いよ。航空整備士。車の整備士じゃないんだよ、飛行機だよ飛行機。」そこまで言って柚香、ピタリ声が止まった。真輝を見て、「あ。」 ふたりの会話も止まる。 柚香、目をパチクリとさせて、右左を…。そして、真輝に、「ごめんなさ〜〜い。」 途端に真輝、「へっ…???…何が…???」キョトンとしながら…。 途端に柚香、顔を小刻みに、「あ〜〜。いい。なんでもない。あ…、はははははは。」 LIBRA~リブラ~ vol,018 「じゃあ~~。柚香さん、家族はおばあちゃんだけ…で…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.18
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それからまた1か月が過ぎた。既に大学ではいつもと同じように。事故からは4か月が経っている。事故当時、かなりの重症だった体も、柚香の強い精神力だったのか、はたまた、柚香の亡くなった両親の御加護があったのか、どうかは分からないが、見事な改善ぶりで4か月前に事故に遭った人には見えないほどに…。ただ…。そんな柚香を近くで見ている幸乃は、柚香が退院してからも、定期的に、病院には顔を出していた。熊沢に…。熊沢、幸乃からの話に、「そうですか~~。いや。お話を聞いて、安心しました。あれから…。退院して1か月。お変わりないのであれば…。うん。…ただ…。もし、何かありましたら、その時は是非。」幸乃、熊沢に深々とお辞儀をして。そして、ナースステーションにも、看護師たちに深々と…。看護師たちからも労いの言葉を…。そして…、それからまた…、2週間後…。柚香、大学のキャンパスを…。「…ん…???」顔を傾げて…、「あれ…???」記憶の片隅にある…、「え…と~~。」歩きながら…。顔を右に左に…。「確か~~。」…すると…。思わず、「あ~~~。」ベンチに座っている男性。自分に近づいてくる女性に全く気付いていない。柚香、気付かれないように、静かに後ろから…。男性は耳にイヤフォンをしている。柚香、男性の後ろに回って…。いきなり後ろから男性の目を両手で…。いきなりビクンとする男性…だが…。頭を右左に。そして、両手を顔から解いて…。チラリと後ろを。柚香、「だ~~れだ…。」男性、ニッコリと、「び~~っくり~~。かかかか。君だったか~~。」柚香、男性に向かって、ニコニコ、「うん。私~~。覚えてる…???汀柚香~~。」ベンチの背もたれに両手を。男性も、「うんうん。しっかりと覚えてる。僕は、勝巳真輝。」柚香、「うんうんうん。真輝君、将来は車のエンジニア、ただいま、機械工学と電気工学の勉強中~~。」すると真輝、「汀柚香さんは、将来は宇宙に、天文学を学んで、その道を…。いいねぇ~~。スケールが大きい。はは。」「それを言うんなら真輝君もでしょ~~。凄いよエンジニア。」真輝、「はは。まっ。確かに…。…って言うか、いや…。初めて会ったね~~。大学で~~。」柚香も、「うんうんうん。初めて、初めて…。真輝君、いつ、退院…???」「うん。2週間前かな…。柚香さんが退院して、少ししてから…。」「へぇ~~。そっか~~。うん。じゃ、お互いに、退院おめでとうだね。」「はは。うん。」柚香、「あっ。ねね。」真輝、「うん…???」「スマホ、出して…。」「あ、あ~~。」そして柚香、真輝のスマホを…。バーコードを出して…。真輝、瞬間、「えっ…???」柚香、そのバーコードに自分のを…。真輝、「えっ…???えへ…???…いいの…???」柚香、スマホを見ながら、「うん。いい。」そして、「おし。これでOK。」真輝、「僕なんかが…。」そんな真輝に柚香、顔を右左に振って、「ううん。友達は、多い方が、いいもん。」「まっ。確かに。」そして真輝、「今日の講義は…???」柚香、「うん。終わった~~。これから…、帰るトコ…、なんだけど…。」「あは。じゃ~~。同じじゃん。」そう言いながら真輝、道具をバッグに。そして耳から外れたイヤフォンもバッグに。柚香、「何聴いてたの…???」真輝、バッグのショルダーを肩に、「うん…???…ヒゲダン。」その声に柚香、顔を上下に、「あ~~ん。な~~るほど…。」「ヒゲダン、嫌い…???」柚香、ニコニコとしながら、「ううん。全然、そんな事ない。…私は…、どっちかと…、言えば~~。キンプリ。と~~。バックナンバー。」真輝、「はいはいはい。確かに。いいよね~~。」話しながらキャンパスを歩く。駅前のファーストフードのイートインで…。柚香、「うそ。凄~~い。もぅ…免許…???」真輝、「うん。取った。」「はや~~~。」「柚香さんは…???」いきなり右手を小刻みに振って柚香、「いやいやいやいやいや。私なんて…。自動車免許。とんでもない。全く無理。」思わず真輝、「へっ…???…なんで…???」「いやいやいや。なんでって…。…ってか…、私、家族、おばあちゃんしかいないから…。そんな…。…大学行くのだって…。結構…。」真輝、いきなり、「あっ。えっ…。…ふんふん。そっか~~。そうだったんだ~~。ごめん、余計な事、訊いて…。」柚香、そんな真輝に、「あん。全~ん然平気~~。…でも。凄いね、もぅ免許取って…。…と、言う事は、車…。」その声に真輝、思わず困ったような顔をして、「それが~~。はは…。ま。確かに、免許は取ったけど~~。中々、車…まではね。大学に通わせてもらっている…、身分で…。」柚香、目をパチクリと。そして、いきなり、「ぷっ。…ですよね~~~。」真輝、照れながらも、「そんな…、訳で…。」柚香、ニッコリと、「うん。」 LIBRA~リブラ~ vol,017 柚香、大学のキャンパスを…。「…ん…???」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.17
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近くのスーパーで…。中には…、珍しく2人で買い物をしている姿を見て視線を投げ掛ける人もいる。そして…、「あら、柚香ちゃ~~ん。へっ…???…退院したんだ~~。おめでとうね~~。」近所のおばちゃんのひとりである。幸乃、ニッコリと、「お蔭様で、今日、退院出来て。これからもよろしく。」「うんうんうん。幸乃さんも、大変だったわよね~~。ひとりっきりの柚香ちゃ~~ん。」その後、数名と挨拶して…。車に乗るなり、柚香、「ふぅ~~~。会う人、会う人。退院おめでとう~~。」そんな柚香に幸乃、「ははは。うんうん。まっ。当然、そうなるかな~~。みんな…、ニュースを見て、知ってる訳だから…。…まっ。でも…、逆に、退院おめでとう~~って、言ってくれるだけ、ありがたいさ。にべもなく無視されたりしたら、それこそ…、逆に気分悪いだろ。」「まっ。確かにね~~。」そこまで言って柚香、「うん。そうだね~~。感謝だよね~~。」ニッコリと幸乃、「その通り。」車は駐車場から出る。車の中で柚香、スマホで文字打ち。「送信、と。」幸乃、「メグちゃんかぃ。」「うん。退院日は知ってるけどね~~。一応…。と~~。ほぃ、来た~~。退院おめでとう~~。今度、柚香んち、遊びに行くね~~。やっほぅ~~。かかかか。」運転しながら幸乃、「ははははは。ありがたいね~~。メグちゃん、優しいね~~。」柚香、「私の、大親友ですから…。はははは。」「うんうんうん。」そして……。「う~~わ~~~。お~いしそう~~。」ニコニコ顔の柚香。幸乃、「ま。ふたりだけだし、そんなに量は作れないけど…。柚香の退院を祝しての退院祝い。」柚香、「うんうんうん。はは。お~~いしそう~~。」幸乃、グラスにジュースを。「んじゃ、乾杯。」「うん。乾杯~~ぃ。」食べながら柚香、「うんうんうん。美味しい、美味しい。」「どうだい、病院のご飯とは…???」その声に柚香、一言、「断然、おばあちゃんのご飯。かかか。適う訳ないっしょ。」幸乃、ジュースを飲みながら、「そんなに…???」「…って言うか…。まっ。美味しくないって言ったら、誤解されるけどさ。」「うん。」「ま。ひとつ。味は薄いよね。如何にも、計算されているっていうの~~。」幸乃、「あ~~ん。」「それに…。」「うん。」「体の自由が利かない。そんな中でパジャマでベッド上でご飯。しかも…、容器はプラスチック。しかも…、確かに。しっかりと洗浄されて、消毒も行き届いて、いる…かも…知れない。食器。…けど…。他の誰かが前に、その食器でご飯…。…どう~~しても…。そこまで考えちゃうとな~~。」その話を聞いて幸乃、いきなり可笑しくなって、「かかかかか。柚香~~。おま、そんな事まで考えてんの~~~。かかか。凄いね~~。」柚香、いきなり、「だ~~って。だって、だって、だってさ。今まで、家での食事がメインだったんだよ。それがいきなり、病院で…。」幸乃、クスクスと笑いながら、「じゃ~~。レストランやホテル、お食事処はどうなんだぃ…???それだって、前に誰かがそれで食べた~~。」「いやいやいや。」柚香。「…でも、それは、食べる事を目的としてるから…。しかも…、味を売りにしてるし、見栄えも…。逆に食べてみたい。食べた~~ぃって、なるじゃん。…でも~~。病院は~~。」「まっ。確かに、病院は病気を治してくれる、ところだからね~~。」「まっ。美味しく…ない事は…、ないけどね~~。食欲をそそる…と、言う意味では…。厳しいかな~~。」「おはあちゃんも、食べてみたくなったね~~。」「あ~~。やめといた方がいい~~。そぅなったら、私、毎日ご飯作んなきゃなんない~~。朝、やばいのに~~。」「確かに。時間、ギリギリの柚香様で、ありますから…。」「仕方ないよ~~。まぁ…。でも、病院で…。入院してて、またかな~~り、寝坊癖、付いたような~~。ちゃんと、起こしてよね~~。」幸乃、「スマホのアラーム、あるだろうに~~。」「なんだけど~~。アラーム鳴っても、すぐにうるさいって、消しちゃうから~~。」「それじゃあ、意味ないでしょ~~。」「だから~~。」柚香、幸乃の前で両手を合わせて、「お願い。」「全く…、困った子だね~~。二十歳前の娘が~~。…これで彼氏なんか出来たら、どうすることやら。」その声に思わず柚香、下唇をビロンと。そして、「彼氏なんて…。」瞬間、口を尖らせて、目をキョロキョロと。そんな柚香を見て幸乃、僅かに顔を傾げて、「彼氏なんて…???…なんだぃ…???」今度は柚香、僅かに口を窄ませて、また目をキョロキョロと…。着メロ。「あっ。メグ。はいは~~い。……。うん。今、おばあちゃんとご飯。」そんな柚香を見て幸乃、「ふふふ。」柚香、スマホを耳に、「うんうんうん。…え~~~。ははは。…そっか~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,016 「お蔭様で、今日、退院出来て。これからもよろしく。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.16
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病室には幸乃。「へっ…???…おばあちゃん、珍しい~~。いつも、午後からなのに~~。」ベッドでキョトンとして祖母の幸乃を見る柚香。その声に幸乃、「へっへっへっへっ。実は~~。近くのシェルフドール。今日から限定販売のショートケーキ。出たんで、柚香にって思って、早速買ってきたんだよ~~。食べる…???」いきなり柚香、目を真ん丸にして、「うそ――――――っ!!!うんうんうん。食べる食べる。もぅ~~、何だか分かんないけど、さっきからお腹空いて、空いて~~。」幸乃、嬉しそうに、「ははは。そうだろ、そうだろ。うんうんうん。」そして、ケースを開けて、その中身を…。柚香、「うわ~~~。かかかか。美味しそう~~。」幸乃、キャビネットから小皿を出して。柚香に、「はい、どうぞ~~。」柚香、「かかか。あ~~ん、メグにも、食べさせた~~い。」その声に幸乃、ニッコリと笑って、「そうだね~~。でも…。まっ。いつ来てくれるか…、分かんないから…。」「な~~んだよね~~。」そんな柚香を見て幸乃、思わず目頭が熱くなり…。「はは。おばあちゃん、ちょっと先生に…。」下を向きながら…。柚香、「あっ。うん。」そして幸乃、病室から出てドアを閉めてドアに背中を…。瞬間、瞼を落として…、涙が頬を…。一言、「良かった~~。」ゆっくりと歩きながら幸乃、ナースステーションの方に…。柚香、ケーキを食べながら、「んふ。お~~いし。」ナースステーションに幸乃。看護師たち一礼して、「連絡、ありがとうございます。」上平、幸乃を見て、「こんにちは~~。今、先生呼びますね~~。」渡り廊下のベンチで幸乃、松峰から事情を聞いて…。そして…、口を真一文字に…。「そう…ですか~~。そんな事が…。」「まま。確かに、柚香さん、戻られた事は安堵しているんですが…。今も申し上げたように…。」幸乃、松峰の話を聞きながら頷いて…。「万が一にも…。また…体が…、陽織に…。」「確証はありません。…ただ…、一度、こうなってしまった以上…。」幸乃、松峰の顔を見て、「ありがとうございます。」松峰、「けれども汀さん。」幸乃、一度瞬きをして、「あ、はい。」「けれども…。今、柚香さんの体の中で、何が起きているのかは分かりません。…もし万が一にも、陽織さんが…。…けれども、決して、諦めないでください。体自体は、何も問題なく、柚香さん自身なんです。これだけは…一生涯。間違いなく。」その言葉に幸乃、唇をきつく閉じて、医師に僅かに頭を…。…ところが…。丁度その日を境にして、3日。そして1週間経ち…。10日経ち、一向に柚香の身体に異変はなく、以前に見られた陽織の症状を垣間見る事はなく…。2週間。そして3週間。1か月…が、過ぎた。しかも…、柚香の病状は著しく改善されていた。医師たちも、喜んでいいのかどうなのか…。意見を投じてはきたのだが…。これ以上、何事も起こらないというのであれば入院しているというのが適当ではない。との、判断で、晴れて柚香、退院。真輝とも退院の前日に会い、退院の報告、喜んでくれた。既に車椅子は卒業。自分の足で歩いていた。久しぶりの我が家。凡そ3か月振りである。柚香、家に入るなり、仏壇に。そして、「おとうさん、おかあさん、陽織、帰ってきたよ。」仏壇には若き日の父、裕司の顔と、母、萌衣の顔。そして2歳の陽織の顔。その3人の写真が柚香を見て、笑っているようだった。柚香、「さて…と。」幸乃、「部屋かぃ。」「うん。随分と久しぶり~~。窓開けて、換気しなきゃ。」その声に幸乃、「かかかか。そんなのおばあちゃん、毎日やってるよ~~。毎日、ここにいるんだから~~。」その声に、目をパチクリとさせて柚香、「あれ…???…あっ、そっか~~。…だよね~~~。てへっ。」けれども幸乃、ニッコリとして、「うん。でも、行っといで。久しぶりの自分の部屋。」そこまで言って幸乃、「ははは。何も変わっちゃあいないけどね。」柚香、階段を上りながら、「うん。」そして…、部屋に入るなり、「帰ってきた~~~。」窓を開けて、とにかく空気を…。そして机の上。壁に掛けてある洋服たち。そして本棚にキャビネット。そしてベッド。「あ~~~~。」そのまま両腕を横に伸ばしたままで、背中からベッドに、バン。「ふぅ~~~。」久しぶりの自分のベッド。「気持ちいい~~~。」それから30分程。様子を見に来た幸乃が、ベッドの上で眠っている柚香に微笑んで、「ふふ。」それから…、2時間も経っただろうか、下から、「柚香~~。おばあちゃんと買い物行くか~~ぃ。」その声でハタと目が覚めて柚香、「行く~~~~。」台所に降りてきて、「行こ、行こ。私も久しぶりに。」幸乃、ニッコリと、「うん。」 LIBRA~リブラ~ vol,015 瞬間、瞼を落として…、涙が頬を…。一言、「良かった~~。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.15
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その表現に柚香、いきなり、「キャハハハハハハ。…かかかか。病院の先生も、そういう事、するんだ~~。かかかか。面白~~い。」松峰、ニコニコと、「まね~~。こういう事もたまにはしないと、ストレス溜まりますんで。…さて。エレベーターでございます。」松峰、車椅子のハンドルを持ち、エレベーターの中に後ろ向きに。その時柚香、「あ、ねね、先生。」「ん~~~???」「病院に、松田龍平がいる。」「松田龍平…???…あの…、俳優の…???…おやおや。」瞬間、柚香、「ぷっ。…先生…、本当に相棒の杉下右京、好きだよね。今度は、おやおや。なんて…。」松峰、思わず目をパチクリと…。「えっ…???」そして、顔を傾げて、「ははは。これは、これは…。」またまた柚香、「ほ~~ら、また~~。これは、これは…って~~。」すると松峰、今度は、「はい…???」柚香、可笑しがりながら松峰の腰の辺りを左手で押して、「もぅ~~~。」松峰、思わず、「ごめん、ごめん。んんん。…で、はい。5階。へぇ~~。松田龍平…。松田優作の~~。」瞬間、柚香、「へっ…???…松田優作って…???」その声に松峰、「うん。松田龍平のおとうさん。」「へぇ~~~。そこまでは…知らな~~い。」「まっ。確かにね~~。柚香さん、生まれる前に、亡くなっちゃってるから…。伝説の俳優。…と、だけ、言っとこうか。」柚香、「ふ~~ん。そうなんだ~~。」「因みに、松田龍平のおかあさんの名前は、松田美由紀ね。今も現役~~。凄いよ、マルチの仕事してるから…。しかも、奇麗な人でね~~。」エレベーターは5階で止まる。松峰、「さてと。ご到着~~。」エレベーターから廊下に車椅子を…。松峰、「もうすぐ、お昼ご飯。」柚香、「うん。…あ~~ん。何だか、物凄いお腹空いてきた~~。」「はははは。…では、楽しみに待ってましょう~~。」そして病室の前まで。「では、先生は、これから、仕事に復帰致しま~~す。」柚香、そんな医師に、ニッコリと、「ありがとうございました~~。」病室に戻った柚香、数冊の本をテーブルに。そして車椅子を動かして窓際に。外の景色を見ながら、「おぃ。スカイツリーよ。いつ出られる、ここ~~。大学、行きたいよ~~。…もぅ~~。…それに、友達も…、私が病院…、入院してるからって…、気を利かして連絡も来ないし…。来てくれるのはメグだけだし…。」ナースステーションに顔を出した松峰。彩芽、「先生、電話連絡は済んでます。汀さん。おばあちゃんはこれからこっちへ…。もぅ、出てるはずですけど…。みなさん、ビックリしてました。」その声に松峰、「…で、しょうね~~。…私も今まで柚香さんに…。」看護師たち、「先生…。」「うん。今まで一緒で、話しをしてたけど…。まず間違いない。柚香さんだ。記憶も今の状態のまま。」看護師たち、笑みを浮かべて…。けれども松峰、「なん…だ…、けど~~~。問題は…これから…。」瞬間、看護師たち、「あっ。」松峰、厳しい表情をして、「万が一でも…。また…、陽織さんに…。と…、言うのが…。なんとも…。…有り得ない話では…。一度…、そういう状態になってしまったからには…。どこにも保証はないんでね~~。」その声に落胆した表情の看護師たち。けれども、そんな中で看護師主任の上平加寿美(かみだいらかずみ)が、いきなり両手を打って、「はいはいはい。私たち看護師がそんな…落ち込んだ顔してたら、患者さん、どうするの~~。もっとシャキッとシャキッと~~。一番大変なのは患者さんなんだから~~~。ねぇ、先生~~。」松峰に顔を…。松峰、コクリと、「正に。その通り。」看護師たち、互いを見合わせながらも、「はい。」松峰、「それから…。…これが一番、肝心なのですが~~。」上平、「先生…???」「つまりは…。」一度右手で顎を撫でて、「柚香さん…自身が…。自分が…、陽織さんに変わってしまった事実を、知らない。…と、言う事。」その一言で看護師たち。「確かに~~~。」上平、「みなさん。そういう事も、踏まえた上で、しっかりと対応、お願いしますよ。」看護師たち、「はい。分かりました。」看護師たち、また元の仕事に戻る。松峰、上平に近づいて、「主任。」「あ。はい。」「ひとつだけ。」その声に上平、思わず、「ぷっ。くくくく。」その笑いに松峰、キョトンとして、「どうされました…???」その声にいきなり顔を上げて、右手を振って、「いえいえいえいえ。」「なんとも晴れやかな景色が…。」その声に上平、「晴れやかな…。」そこまで言って、すぐさま、「あぁ~~~ん。はいはい。」松峰、「へっ…???上平主任…???」上平、松峰に、「そんな…先生~~。看護師たちみんな、ナースステーションに戻って来ては、その話で持ち切り。」松峰、目をパチクリと、「へぇ~~~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,014 「では、先生は、これから、仕事に復帰致しま~~す。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.14
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思いっきり体を崩している看護師たちと医師を見て、柚香も真輝も、顔を見合わせて、「…???」柚香、看護師のひとりに、「どうか…、したんですか…???」その声に彩芽、困ったような笑顔で、「あ…。はは…。ううん。なんでもないの。…うん。とにかく、柚香さん、見つかって良かった。はは。」そして彩芽、松峰に、「先生。」松峰、「あぁ。」そして、「あ~~ごめん。」他の看護師に、「戻っていいから。…また、何かあったら…お願いします。」看護師たち、松峰に一礼をしてその場を…。柚香は真輝と楽しそうに会話をしている。まるで昨日の事は何処に行ったのか…???それに陽織は…???松峰、「とにかく、熊沢先生に連絡を…。」彩芽、「あ、はい。」「あっ。それと…。昨日の件で、一緒だった看護師は…、美祢君。石垣君だったね。」「あ、はい。」「彼女にも、一応、連絡は…、頼むよ。」「あ、はい。」そして松峰、「あっと~~。それから~~。」彩芽、声の前に、「おばあちゃん。汀、幸乃さん。ですね。」「あ~~、うん。頼むよ。」彩芽、ニッコリと、「分かりました。」松峰、ふたりに近づいて、「はは。それにしても、熱心だ。うん。…と、言う事は~~。柚香さんも、真輝君も…、同じ…???…大学は…。」僅かに前屈みになりながら…。「確か…。」真輝が、「慶稜です。」柚香も、「うん。…私が2年で、真輝君が3年。」松峰、笑顔で、「そっか~~。」柚香、松峰に、「先生。」「うん…???…何かな…???」「私って、いつ頃退院できるんですか…???…おばあちゃんからも、術後は順調だって、聞いてるんですけど…。」その声に松峰、今度は口を尖らせて、「うん。そうだね~~。確かに、それほど遠くない時期には退院、見込んではいるんだけど~~。…但し、こればっかりはね~~。検査結果で、間違いなし。後は自宅療養でOK。そういう紋所が手に入らないと。だね。」その声に真輝も柚香もクスクスと…。柚香、「紋所って…、テレビの水戸黄門みたい。かかかか。」真輝もその声に、そして柚香を見て笑いながら…。松峰、「…で…???真輝君は慶稜で専攻は…???」「僕は機械工学です。」柚香が、「私は理工学。将来、天文に関する仕事に就きたくって。」その声に松峰、「おやおやおや。柚香さん、天文学、いいね~~。正に、宇宙~~。…と、言う事は…、星が好きなんだ~~。」その声に柚香、ニッコリと、「はい。小っちゃい頃に、おかあさんの実家の群馬で、星を見て以来、もぅ~~。星を見るのが大好き~~。」「かかかかか。そぅか~~。ん~~。確かに…、東京では、あんまり…。う~~ん。群馬、星、奇麗だろうな~~。」そこまで言って、今度は、「じゃあ~~。真輝君は…、機械工学。」真輝、「あ、はい。」また柚香、「真輝君、凄いんだよ先生。」松峰、「ん~~~???」「将来、車のエンジニアになるんだって。」松峰、瞬間、体を…。腕組みして、背中だけ後ろに、「おや。これまた凄い。エンジニア。へぇ~~~。いやいやいや。最近の大学生、凄い将来…。うんうんうん。先生も、見習わないと…。」その頃、窪谷彩芽、ナースステーションの電話から熊沢と石垣、そして幸乃に電話を…。3人、共に、開口一番、「えっ…???…本当ですか…???」そして…、幸乃だけは…。暫くの沈黙。…そして、ようやく、スマホに、「わざわざ、ご連絡、ありがとうございました。私、これからそちらに向かいます。」通話を切って幸乃、テーブルにうつ伏せ状態になり、「柚香に…、戻った~~~。あ~~~。神様~~~。」松峰、何とかスマホに連絡が来るまでは柚香と一緒にいたかった。話の途中で真輝とは検査と言う事で別れている。柚香、珍しく自分と一緒にいる医師に、「先生、珍しいね。ずっと私たちと一緒だなんて…。しかも、今度は私と…。はは。」そんな声に松峰、「はは。そうだね~~。まっ。気晴らしと言う事で、たま~~には、いいかも。」けれども柚香、僅かに顔を傾げて松峰を…。「もしかして…、先生…???…私…、どっか、悪いトコ…???」今度は意地悪そうな顔で医師を…。「あったりして…???」その声に松峰、車椅子の柚香に、見下ろすように、「はっ…???」そして顔を上げて、「ひとつだけ。」その声に柚香、「テレビの相棒の、杉下右京みたい。ひとつだけ。な~~んて…。」瞬間、松峰、「かかかか。あんなに頭は良くないよ。それに…、先生は東大出でもない。」そして松峰、再び、「ひとつだけ。…もし、体に悪いとこがあるとしたら~~。」柚香、車椅子の中から顔だけ左上に、「あるとしたら~~。」松峰、顔をグシャリとさせて体を躍らせながら、「先生の方が、聞きたいよ。どこだ―――――ってね。」 LIBRA~リブラ~ vol,013 昨日の事は何処に行ったのか…???※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.13
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熊沢の話に看護師たち。そして、その場に居合わせた研修医たちも、「解離性同一性障害。」研修医のひとりが、「熊沢先生…、PTSD…では…???」その声に熊沢、目を閉じて顔を左右に。「いいえ。…私も最初は、それが頭に…。…けれども、彼女を見て、そして話しを聞きながらにして…。紛れもなく…、柚香さんの…、今の身体に中には…、その…、彼女の妹である、陽織さんが…。…しかも…、決定的な事が…。…陽織さんには…、過去の記憶が、全くない。」みな一同に、「…そ、そんな…。」熊沢、「まずは、汀さん。幸乃さん。おばあちゃんから聞いた話を…。」「は、はい。」病室では…。あれから陽織と幸乃は…。会話はなく…。陽織はまた…、ベッドの中で…、布団を被ったまま…。幸乃の頭を混乱していた…。あの時の事故の事から…。頭の中で走馬灯のように、駆け巡っていた。柚香の…、天文学の本を見ながら…。頭に入る事なく…。そして、時には涙がページにポツリ、ポツリと…。…その度に、「はぁ~~~。」どのくらい時間が、過ぎたろぅ…。看護師が病室に…。そしてベッドにうつ伏せになっている幸乃を見て、「おばあちゃん…。」その声に気付き、はたと目が覚める幸乃。「あぁ…、看護婦さん。」「お疲れでは…???」「あ、はぁ~~。はは。えぇ…。…でも…、もう少し。」その声に看護師、笑顔で、「はい。分かりました。…でも、あまり、ご無理は…。」幸乃、笑顔で、「はい。ありがとうございます。」ベッドの陽織は静かに眠っている。食事は…、ショックからか…、一口も…、手を付けられていない…。既に面会時間を過ぎて…。幸乃、看護師から…。「申し訳ありません。それでは…、お言葉に甘えて…。」看護師、ニッコリと、「はい。分かりました。お気を付けて。」看護師に丁寧にお辞儀をして病室を出る幸乃。看護師もエレベーターに入っていく幸乃を病死の前から見送って一礼を…。その時、ベッドの中から…、「おばあちゃん…。」その声に看護師、「おばあちゃん、今、帰りましたよ。…大丈夫…???」ベッドの中からは、返事が…、「う…、うん。」看護師、「また、来るね。」翌朝も…、朝食…、ベッドの中でもぞもぞとはしているが…。起きようとする動きはなく…。ナースステーションでは…。「夕食に続き…、朝…もかぁ…。」「確かに…ねぇ~~。」そして…、午前10時。看護師が病室を…。すると…、「大~~ぃ変。」またベッドの中がもぬけの殻。すぐさまスマホで…。ナースステーション、電話を取って…。「また汀さん。病室から出たようです。」一同、すぐさま屋上に…。…けれども、数人の患者と看護師以外に車椅子に乗っているはずの陽織の姿はなし。看護師と医師、「…今度は…何処に…???」5分後…。医師の松峰忠司(まつみねただし)のスマホに、「いました。1階の売店の前のペンチです。」松峰、「分かった。」看護師の窪谷彩芽(くぽたにあやめ)が陽織を見つけて、「汀さん。汀さん。」名前を呼ばれて陽織、看護師を見つけて、「や~~っば。見つかっちゃった~~。」隣に座っている真輝、「おっと~~~。」彩芽、「心配した~~。病室にいなくって~~。」真輝、看護師の前で、「見つかっちゃいましたね~~。」陽織も、ニコニコと、「見つかっちゃいましたね~~。」けれども陽織の隣に座っている男性を見て彩芽、「あれ…???…君は…???…勝巳君。真輝君。」真輝、看護師に、「おはようございます。」陽織、看護師に、「今ね、看護師さん。真輝君に、天文学の本。見せてるの。」そして陽織、「…で、看護師さん、凄いんだよ。真輝君、私と同じ大学。いやいやいやいや。び~~っくり~~。」そして真輝を見て、「ねっ。」真輝もその声に、「えぇ。…って言うか、僕もびっくりで、柚香さん。汀さんと同じなんて…。凄い偶然。僕の1個、後輩。」その話に、彩芽、「はっ…???」そして彩芽の下には他の看護師や松峰も、「いたか~~~。」ぞろぞろと柚香の元に集まる看護師たち。それを見て陽織、「えぇ…???…一体何…???」彩芽、他の看護師と松峰の前に、「ちょ…、ちょっと…お待ちください。」他の看護師と松峰、彩芽を見て、「…ん…???」「何…???」彩芽、陽織を見て、「汀さん。」陽織、「あ、はい…。」キョトンと…。彩芽、「汀…、柚香…さんで…。」その声に他の看護師と松峰、「はっ…???」彩芽、「…いいんだよね…???」その声に柚香、顰めた顔で、「はっ…???」隣に座っている真輝も…、両眉の先端を吊り上げて、「…ん…???」柚香、目をパチクリと、「あ…???…えっ…???…と…。」そして、「はっ…???」顔を傾げて、「えっ…???…すみません…。柚香…、ですけど…。何か…???」瞬間、看護師も松峰も、一気に体を崩して、「お~~~~。」「あ~~~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,012 「過去の記憶が、全くない。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.12
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「そして。申し訳ないが…。通常、持っていなければならないものを…。ちょっと、お借りして…。」熊沢。陽織、「通常、持っていなければならないもの…。」「スマホだよ。」そこまで言って熊沢、「…そんな訳で、つまりは、君の荷物を、申し訳ないけど…、家族に連絡手段として、拝見させて頂いた。…、そして、おばあちゃん。汀さんに辿り着けたと…。」陽織、内容を飲み込めたようで、「そぅだったんだ~~。…でも…、さっきも言ったけど…。私…。」小刻みに顔を振り、「全~~然、交通事故…???…全く記憶にない。」「そぅか~~。交通事故、全く記憶にないかぁ~~。…そぅなると先生たちも、大ぃに困る。」いきなり陽織、「へっ…???…どうして…???…先生たちも困っちゃうの~~???」熊沢、「うん。だって。先生、さっきも言った通り、君が柚香さんじゃなくって、陽織さん。」陽織、顔をコクリと…。「その場合、先生たちが最初に救急車から運び込まれた人は、柚香さんだったからだよ。」その声に陽織が今度は…、「あっ。」「そして、先生たちは、その、柚香さんの体の治療を施した。さっきも言った通りに、君の身分も確認しながら。ねっ。」陽織、少しずつ顔を曇らせて、「う…、うん。」「検査をして、手術して…。そして、体のあちらこちらの状態を日々観察して、術後の経過を見る。…そして、その結果。…今、先生の目の前にいるのは陽織さんではなく、柚香さんとしよう。」陽織、そんな医師を見て、口を尖らせながらも、「う…、うん。」「手術後、柚香さんは3日間、目を覚まさなかった。…覚醒…、出来なかったんだよ。…それがようやく目を覚まして、経過も順調。ようやく体も改善されてきて、車椅子にも乗って病室の外にも出られるようになった。」陽織、何とか数時間前の事が納得できたような感じで、「そ…、そぅか~~。…それで、ここに…。そして車椅子。」「分かって…もらえたかな…???」車椅子で陽織、「…分かって…。分かってって…。」そこまで言って陽織、今度は…。いきなり涙を浮かべて、「じゃあ~~。私は一体…、何なの…???…私は陽織。柚香じゃない。今までの記憶がない。おとうさんもおかあさんも分からない。どうしてなの。私…、一体…。なんでこの体なの…???」みるみるうちに涙が出て来る。そして体を縮こまらせる。車椅子の中で顔を下に。そんな陽織を見て幸乃、今まで泣いていた顔を、今度は陽織を見て、「……。」美祢も熊沢を見て…、「……。」熊沢、優しく微笑んで陽織の左肩を。「陽織さん。」優しい声で。「それを…、陽織さんとおばあちゃんと。そして…、私たち医師と看護師。みんなで考えて行こう。…そう言っているんですよ。」車椅子の中で泣き崩れる陽織。周りには先ほどまでに数人いたのだが…。既に、屋上には4人だけに…。熊沢、陽織に腰を下ろして、陽織の頭に近づくように体を落として、肩を撫でながら、「一緒に考えて行きましょう。それが私たちの仕事です。」幸乃、「陽織…。…おまえ…。陽織…なのかぃ???」その声に陽織、車椅子の中から顔を後ろに…。そして上ずった声で、「おばあちゃん…。…私…。」幸乃、陽織に両手を差し出して、「うん。うんうんうん。陽織かぃ。」「おばあちゃん。」熊沢、車椅子を幸乃の前に。幸乃、陽織の膝に手を…。そして両手に手を…。そして二の腕から肩、顎、顔、そして陽織を抱き締めるように、「陽織かぃ。陽織かぃ。」もはや、陽織と認めるしかなかった。「おばあちゃん…。」そんなふたりを見ながら美祢、熊沢を見て、「先生…。」熊沢、「う~~~ん。こういう事が…、目の前で…、現実に…。」美祢、「柚香さんの身体に…、ひおり…さん…。先生…、これって…???…もしかして…???」熊沢、「えぇ…。もしかして…。…けれども、それは、後で…、全員に…。」「分かりました…。」ゆっくりと4人は屋上から…。そして、病室に…。熊沢、幸乃に、「…では、ここからは、おばあちゃんと陽織さんとの時間を…。お願いします。」幸乃、「先生…。」熊沢、幸乃に、「大丈夫です。もし、何かありましたら、遠慮なく、呼んでください。」そしてニコリと…。そして廊下に…。美祢、「大丈夫なんですか~~。ふたりだけにさせて~~。」「大丈夫です。…むしろ、その方がいい。私たちには、踏み込めない部分もあるはずです。家族なんですから。…そして…。もし…、これから、何かがあったとしても…。これは、事実だと、認めざるを得ない。…悲しいですけど…。見守るしか出来ないんです。今の医学では…。」美祢、「先生…。」廊下を歩きながら…。そして熊沢、「周知しましょう。」「あ、はい。」 LIBRA~リブラ~ vol,011 陽織、内容を飲み込めたようで…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.11
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今度は少し歩を早めて幸乃、「柚香、柚香。」柚香、「おばあちゃん、おばあちゃん。」美祢もふたりに駆け寄り、「うんうん。良かった~~。ここにいたんだ~~。」車椅子の上から柚香を抱き締める幸乃。車椅子の中で、「おばあちゃん。おばあちゃん。」幸乃、「うんうん。大丈夫だよ~~。おばあちゃん、傍にいる。傍にいる。うんうんうん。」美祢、「ここにいたのね。うん。良かった~~。」幸乃、抱き締めた両の手を解いて、「景色、見てたのかぃ。」その声に、「うん。」そして、幸乃を見ながら、「おばあちゃん…。」少し顔を傾げて、「老けた…???」その声に幸乃、思わず目をパチクリとさせて…。けれども、いきなり笑顔で、「ははは。な~~に、言ってる~~。まっ。確かにね~~。」美祢も笑顔で…、「……。」「おばあちゃんだって、いつまでも、若くは…はは。」そして幸乃、「景色、見てたのかい。」その声に、「うん。」そして、「初めて見る景色。」幸乃、そんな声に、「うんうんうん。そうだろ、そうだろ、初めてだよね~~。病院の屋上から見る景色。」「ううん。違う。私、初めて見るの、こういう景色。何だか…。私、今まで、ず~~~っと、長い間、眠っていたような…。…だから、見るもの、見るもの、全部が初めて。」その声に幸乃、「えっ…???」美祢も、「…ん…???」「ねね、おばあちゃん、あの高~~い、細~~い、棒みたいなの、何…???」幸乃、目をパチクリとさせながら、「あ、あ~~。あれかぃ。あれは…、スカイツリーって言って…。」そして幸乃、看護師を見る。美祢、幸乃を見て、俄かに顔を曇らせる。「凄~~い、おっきぃ~~。背ぇ高のっぽだ~~。へぇ~~。ねね、おばあちゃん、あれは…???あの…、赤いの…???」その声に幸乃、「あぁ。あれは…、東京タワー。」そして幸乃、看護師に、「看護婦さん。」美祢、僅かに頷くように。幸乃、「柚香~~。そろそろ病室、戻らないと…。ね。」その声に、「だから~~。私は、柚香じゃなくって~~。陽織~~。そもそも、お姉ちゃん、何処…???…それに、おかあさん、おとうさんも…。何処にいるの…???」幸乃、自分の耳に入ってきたその声に、いきなり目を見開いて…。美祢、すぐさまスマホで…。「…先生…。すみません。……。」熊沢、スマホに、「分かりました。屋上ですね。今行きます。」屋上に辿り着いた熊沢、数名がいる屋上で、ベンチに座って項垂れている老婆と、その老婆の傍の看護師。車椅子に乗ってる女性は遠くの景色を見ている。熊沢、「ここにいましたか。」幸乃、熊沢の顔を見るなり、「先生~~。」美祢も、「先生…。」熊沢、車椅子に乗っている女性に、「汀さん。柚香さん。そっか、景色、見ていたか。」そんな白衣を来た男性に、「うん。私、こういうの、初めて見た~~。凄いね~~。全然、こういうの、見た事ないから…。」熊沢、ニコリとさせて、「そっか、そっか。」「でもね。」「うん。なんだろ…???」「私…、どうして…、車椅子に乗らなきゃ…なんないの…???」その声にベンチに座って項垂れている幸乃が、両手で顔を覆って、「あぁ~~。」看護師が両手で肩を抱く。熊沢、そんな幸乃を見て、そして柚香を見て、「そうだね~~。汀さん。柚香さん。…この病院に来たのは、事故に遭ったからなんだ。」「事故…???」熊沢、柚香を見て、「そぅ~~。事故。」「でもさ~~。私…、そんな…事故って…。全然、記憶ないんだけど…。体…、どこも全く痛くもないし。…でね…???」熊沢、「はい。なんでしょう~~。」「さっきから言ってるけど~~。私~~。柚香じゃなくって~~。陽織だから。」またもや幸乃、小さな声で、「あ~~~。」けれども熊沢、「あっ。そぅか、そぅか。柚香さんじゃなくって、陽織さん。じゃあ。僕が悪かった、先生が悪かった。ごめんね。許してもらえるかな…???」その声に陽織、「許すっていうか~~。そういうのじゃなくって~~。私が事故に遭ったんじゃなくって…。もしかして…、お姉ちゃん。柚香が事故に遭ったの…???ベッドの名前も、私じゃなくって、柚香だし。」そこまで言って陽織、「何がなんだか、全く分かんない。」熊沢、思わず、「ん~~~。そぅか~~。分かんないか~~。そぅなると~~。先生たちも、一緒に考えなくちゃ、いけなくなるな~~。」「えっ…???…どうして…???」「うん。つまりはこういう事だ。この病院に運ばれてきた時の君は…。交通事故で車に撥ねられ、正に重症の状態で運ばれてきた。」その話に陽織、「へぇ~~~。じゃあ…。あちこち体…。」両手の平で体の前でぶらぶらと。熊沢、「うんうんうん。物凄い大変な状態。…でぇ~~。家族にも連絡しなきゃならない。申し訳ないけど…。君の学生証。」「学生証…???」 LIBRA~リブラ~ vol,010 幸乃、抱き締めた両の手を解いて、「景色、見てたのかぃ。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.10
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「その家庭の家庭環境、或るいは、生活を別の拠点にすると、また元に戻るというケース。実際に、ございます。ただ…。そういう症状と異なる、また別の症状。」熊沢。 幸乃、「先生…。そんな症状って…。まさか…、柚香に…。」 「そうあって、欲しくない。…と。言うのが、今の私の、思いでも、あるんですが…。解離性同一性障害。…もしかしたら…。柚香さんの身体に…、その…、二卵性双生児の陽織さんが…、入り込んだ。何等かの原因で…。」 その話に幸乃、「はっ…???…柚香の体に、陽織が…。」目をパチクリとさせて…。けれども、いきなり、「ぷっ。」 笑いながら、「いやいやいや。先生。そんなバカな…。陽織は2歳の時に亡くなっているんです。そんな…、死んだ人間が、まさか…、今、生きている柚香の身体になんて…。そんな…。」そして幸乃、笑いながら、左手を…。熊沢に、「先生…。下手な冗談。柚香、もしかしたら…、夢を見ているだけですって…。そんな…。そんな…、かいり…なんとかって…。」 熊沢、そんな幸乃にニコリとして、「まっ。信じられないのも…仕方のない事…。なのですが…。」そこまで言って熊沢、一度唇を搾って、「まま。…いや…。」そして幸乃を見て、「はは。…そうですね。単に、気のせいかも知れない。…そんな…、既に死んでいる人が体に乗り移ったなんて…。悪い冗談。」 幸乃、熊沢の話を聞きながら、「そうですよぉ〜、先生〜〜。もぅ〜〜。…そんな…、柚香に陽織が乗り移ったなんて…。そんな…、今のこの、現代社会に…。そんなオカルトみたいな事、ある訳ないじゃありませんか〜〜。」 「はは。確かに。」そして熊沢、「申し訳ない、おばあちゃん、汀さん。大事な時間を割いていただいて。」 「いえいえ。とんでもありませんよ先生。はい〜〜。」そして幸乃、顔だけ熊沢にペコリとさせて、「じゃ、私は柚香のところに。」椅子から立ち上がり…。 そんな幸乃を見ながら熊沢、微笑んで…。幸乃ドアの前でまた熊沢に振り返って一礼を。熊沢も頭を…。 そしてドアは開いて閉じられる。 「さてさて。」熊沢、一度腕組みをしながらも、それを解いて右手で頭を掻きながら、「私は柚香じゃない。陽織。…ですか〜〜。」そして息を吐いて、「とんでもない事に、ならなければいいんですが…。」 廊下を歩きながら、数人の人とすれ違う。病室のドアを開ける。けれどもベッドの掛布団が捲られ柚香の姿はない。そして、車椅子も…。 幸乃、目をキョトンとさせて、「あれ…???…柚香…。」そして、「変ねぇ…。先生と、出て来るって、言っておいたん…だけど…。」廊下には…見覚えがない。「もしかして…、また…、売店…???」病院を出て、近くのエレベーターで階下に。1階の売店に…。けれども柚香の姿はない。今度は、1階のあちらこちらを車椅子の女性はいないかと隈なく探す幸乃。けれども、そういう姿は見えない。幸乃、「ん〜〜〜???…じゃ…どこ…???…車椅子に乗ってまだ…。そんな遠くには…、いけないはず…。しかも…。」 一度、病室に戻ってはみるが…。考えても、埒が明かない。そのままナースステーションに。 看護師に、頭を下げて、「すみません。柚香が…。病室に…いないんですよ。私、今まで熊沢先生と話をしていたんですが…。何だか、その隙に、病室から車椅子で出てしまったようで…。」 その話に看護師たち、いきなり厳しい顔をして…。「分かりました。すぐに。」 看護師たち、顔を見合わせながら…、すぐに動き出す。 幸乃、「私。今、1階の方は…見て来たんですけど…。」そこまで言って首を振る。 看護師、「分かりました。では…。」 看護師同士、「私は別の棟に。」「私は脳神経外科の方に…。」「私は放射線科に。」「じゃ、私は、内科と小児科。」 幸乃、看護師の石垣美祢と一緒に。 石垣、「じゃ、私たちは屋上に。」 エレベーターに乗って。 そして…。 幸乃、「へぇ〜〜。エレベーターで、屋上に〜〜。」 美祢、「はい。」 そして、「中庭の方へは…、多分、ひとりではいけないと思います。誰かかしら、声を掛けると思いますので…。」 幸乃、頷きながら…。 そして…。屋上にも、数人の患者が…。ベンチに座って本を読んだり、点滴台を傍に景色を眺めたり。そんな中で…、ひとりだけ。車椅子に乗って遠くを見ている柚香の姿が…。 幸乃、「柚香。」 美祢、「いましたね。」そしてスマホで…。それぞれの看護師のスマホにも着信。 そして、それぞれが…、「ふぅ〜〜。屋上ね〜〜。」「了解。」「オッケイ〜〜。」「見つけました〜〜。」 幸乃、柚香に近づきながら、「柚香〜〜。」 その名前に…。その声の方に顔を…。「おばあちゃん…???」 LIBRA~リブラ~ vol,009 幸乃、「先生…。そんな症状って…。まさか…、柚香に…。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.09
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その報せを自宅に掛ってきた電話で知った幸乃は大急ぎで指定の病院に。 霊安室で白い布に覆われている3人。柚香以外の他3名。汀裕司(みぎわゆうじ)、柚香の父親。享年25歳。汀萌衣(みぎわもえ)、柚香の母親。享年25歳。そして、汀陽織(みぎわひおり)、2歳で死亡と言う、余りにも痛ましい事故だった。 幸乃から話を聞いた熊沢は、「そうでしたか〜〜。そんな…事故が…。…で、後ろからのそのダンプカーの運転手は…???」 幸乃、「えぇ。そのまま、現行犯逮捕。つまりは、飲酒運転。仕事から帰って、ドライブインかそこらでアルコール摂取。仕舞には、そのままでダンプカーを運転して40キロ制限のところを60キロのスピードで。20キロのスピードオーバー。それで信号待ちの車にそのスピードのままドカ〜〜ン。そのショックででしょう。追突した後、車の中から救出された時には、確かに大怪我は負っていたそうですが、かなりの泥酔だったようです。しかも…、年齢が70過ぎ。…地元の建設会社の人と言う話でしたが…。堪りませんよ。」 その話は熊沢も、顔を僅かに崩して、「全くです。」そして、「この病院にも、緊急救命室と言う場所がありまして、異常なほどの事故で運び込まれてくる患者さん。多いですから…。いつまで経っても、そういう…事故というものは…。」と、そこまで言って熊沢、「…と、言う訳で…、汀さん。柚香さんの話に戻りますが…。」 熊沢の声に幸乃、「あ、はい。」 「柚香さん、私は柚香じゃない。陽織って…。さっき…。」 幸乃、熊沢を見て、「え、え〜〜。私…、あの子…、何を言っているのか…。さっぱり。全然…訳が分からなくって…。」そして幸乃、熊沢に、「先生…???…あの子…。もしかして…、何か、大変な病気…???…それとも…。」俯き加減に…。「…もしか…したら…。あの子…、記憶が…。」 熊沢、幸乃を見て、「おばあちゃん。…汀さん。…もしかしたら…。記憶喪失…か…と…???」 その声に幸乃、険しい表情をして、「えぇ。」顔をコクリと。 そして…。暫くの沈黙。 やがて、腕組みしながらの熊沢。「ん〜〜〜〜。」腕組みを解いて、左手で口を撫でて…。そして口を搾って…。「汀さん…。」 幸乃、俯いた顔が熊沢の顔に、「はい。」 熊沢、幸乃の顔を見て、「…あくまでも…。これは…、私の憶測でも、あるんですが…。」 「はい。なんでしょう。」「柚香さん。おばあちゃんに。…私は…、柚香じゃない。陽織。おかあさんとおとうさんはどこ…???…と、言ったんでしたよね。」 その声に幸乃、「え…???…あ、はい。」 「もし、万が一…。自分を…。柚香さん本人が、自分を…、陽織…と、思っているとしたら…。」 幸乃、いきなり、「いえ…。先生。…そんなはずは…、決して…。」 「いや…。まま。そんなに…。」「あ、あ〜〜。」 「これは…、あくまでも…、私の…、憶測でも…、あります。柚香さんが…、今、ご自身を…、そぅ…。陽織と…、思っているの…だと…したら…。」「あ、はい。」 熊沢、幸乃の顔を見ながら、「考えられる事は…。」 幸乃、「先生…。」 熊沢、息を吸って、顔を空に…。そして、「世の中、まだ医療の分野でも、到底太刀打ちできない病気、そして症状が、幾らでもあります。どんなに治療を施しても、改善出来ない病気、症状。まっ。確かに…。その中に、記憶喪失…と、言う症状もあります。」 「先生。」 「私たち、医療受持者と言えども、患者本人に、なんらかの兆し、または機会、その瞬間、タイミングがもたらされて、ようやく改善にいたる病気。」そこまで言って熊沢、「とにかく。ひたすらそのチャンスを待つ以外に方法のない病気、症状、幾らでもあります。…けれども、常に、そのチャンスを…、希望を信じて…。」 そんな熊沢を見て幸乃、「先生…。何を…???」 「今…。いや…。まだ、憶測の領域ではありますが…。私は柚香じゃない。陽織と…、思っているのであれば…。…恐らく…。」「おそらく…???」 「解離性同一性障害。」 その声に幸乃、両眉の先端を吊り上げて…、「かいり…せい…。…はっ…???」 熊沢、再び、「解離性同一性障害。…つまりは…。…多重人格。」 「多重人格。」「えぇ…。」 熊沢。「まっ。症状には様々あります。いままで優しかった人間が、急に怒り出して、今までの性格とはガラリと違っていたり。また、その逆も…。けれども、いつの間にかまた元の状態に戻っていたり…。まっ。確かに、今までのその生活環境など、変えれば元に戻る場合もあり…ます…が…。汀さんも、聞いたことはあるでしょう。俗に言われる二重人格。」 幸乃、ポカンとしながらも熊沢に、「あぁ。えぇ。二重人格なら、その人の性格が全く別人に…。」 熊沢、「はい。」 LIBRA~リブラ~ vol,008 柚香以外の他3名。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.08
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ナースステーションで、柚香の部屋のナースコールが…。 看護師の石垣、「汀…さん…???…柚香さん。」 丁度その場にいた医師の熊沢も、「行ってみましょう。」 ドアをノックして、「どうしました…???」 幸乃、ドアに振り向いて、「先生…。」 その瞬間、また陽織は布団を頭まで被って…。熊沢、幸乃を見て、そして看護師の石垣を見て…。 石垣、顔を傾げて幸乃に、「汀さん…。おばあちゃん。どうしました…???」 幸乃、医師を見て看護師を見て、そして布団を被っているままの…。見て…。「それが…。」 熊沢、石垣を見て、「…???」 石垣も、「…???」 熊沢、布団に向かって、「汀さん。柚香さん。どうしちゃったかな…???」 石垣も、「柚香さん、どうしたのかな…???」 返事がない。 熊沢、「汀さん…???」幸乃に。 幸乃、困ったような表情で…。「いきなりこの子。…私は柚香じゃない。陽織だ。…って…。…おかあさんとおとうさんはどこ…???…って…。」 その声に思わず熊沢、「はっ…???」 石垣も、ビックリして、「えっ…???」 熊沢、いきなり目をパチクリと…。そして、顔を傾げて、幸乃に、「あ、あのぉ〜〜〜。申し訳ありませんが…。仰っている事が…なんとも…。」 石垣、熊沢に、「先生…。」 看護師の声に熊沢、「あ、あ〜〜。」そして、「汀さん…。あの…、別室で…。」 幸乃、「え、え〜〜。」そして幸乃、一旦は椅子から立ち上がる…が…。「あっ。…でも、先生…。…私…。いえ…。柚香と私は…。実は…、その…。たったふたりの…、家族なんです。」 その声に布団の中の陽織、小さな声で、「たったふたりの…家族…???」 「こう言っちゃあ…なんですけど…。ふたりだけの家族で…、そんな…、隠し事…。」幸乃、ベッドの布団を見て…。「それに…、この子も…、もぅ…19。大学2年。」 また陽織、布団の中、頭の中で…、「…私…。今、大学…2年生。」 幸乃、続ける。「もぅ…、この子だって…。医者の話している事…。」 幸乃の話に熊沢、ニッコリと。「汀さん。仰る事は重々。…けれども、我々医療に従事する者。どんな病状の患者に対しても、病院にいる限りは、その安全を保証する責任があります。どんな状況に於いても、その安全を保証するためにも、患者の現在の容体、そして心理までも鑑みて行動を取っていかないと…。そのために…、仮に、事実であっても、患者にとっては、その事が身体に、何かしらの影響をもたらしては…。…それが…、原則となります。…患者の身体を思ってこその、我々、医療従事者です。…ご理解、頂ければ…。」 熊沢の話に幸乃、一旦躊躇はするが…。顔をペコリと。そして、「分かりました。」ベッドを見て、「柚香、ちょっと、おばあちゃん、先生と、出て来るからね。」そう言って熊沢に、「お願いします。」 熊沢、笑顔で、「どうぞ。」 布団の中で陽織、頭の中で、「…なんで…???…私も聞きたい。知りたいのに…。」 別室にて熊沢、幸乃に椅子に座るように勧めて、「どうぞ。」 幸乃、ペコリと、「失礼します。」 熊沢、「…では、お話を…。」 幸乃、思い出すように、「実は……。」 瞬間、熊沢、幸乃声に、「えっ…???…二卵性双生児…。」 幸乃、顔をコクリと、「え〜〜〜。柚香が、姉で、陽織と言う、娘が…、妹で…。」 「そうでしたか〜〜〜。」 「けれども…。」幸乃、「ある交通事故で…。…ですけど…。奇跡的に柚香は…。」 汀柚香、父は汀裕司(みぎわゆうじ)、そして母に汀萌衣(みぎわもえ)。そして妹には汀陽織(みぎわひおり)。この姉妹は二卵性双生児である。 柚香と陽織、年齢2歳。父の海外出張からの帰りに、久しぶりに家族で旅行に行くことになった。少し遠出と言う事で観光したり、水族館を見たりと言う計画だった。時期はゴールデンウィークたけなわ。どこもかしこも何とか工夫を凝らしてのナビ案内で何とか渋滞を避けながら…、ではあったのだが…。 ある場所での…、何とも不運の事故。 信号待ちの数メートル車の列。柚香たちを乗せた父の運転する車の目の前には大型貨物車が止まっていた。突然の事故だったのである。 いきなり後ろから…。ダンプカーであろう、そのまま柚香たちの乗った白い乗用車に追突。乗用車は停車しており、サイドブレーキも掛けられてはいたが、それでも、その後ろからの追突で車は大破。乗っている運転手含め、その他、全員死亡…。 …と、思われたのだが…。…奇跡的に、助手席のシートから救い出された女の子1名だけが、何とか病院に搬送された後も微妙ではあったが、心拍ありで、懸命な医師たちの努力の結果、命を取り留めたのだった。 その子が、汀柚香である。 LIBRA~リブラ~ vol,007 「汀さん。柚香さん。どうしちゃったかな…???」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.07
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車椅子を自操してゆっくりと元来た通路を…。そして、自分の部屋の…。その時、通路の端の方にひとりの男性。こっちを見て笑顔で右手を…。そんな男性を見て陽織、「誰…???…あの人…???」そのままドアに手を。そして…病室の中に…。真輝、遠くから見ていて、顔を傾げる。「…あれ…???」車椅子からまたベッドに。端坐位のまま、「さ~~て~~。どぅすっかな~~。」そのままベッドにバン。「とにかく…。おばあちゃんが来ないと…。」そこまで言って、「えっ…???…今、私、何て言った…???…おばあちゃんが…来ない…と…って…???…んじゃ…。私のおかあさんとおとうさんは…???」両目をキョロキョロと…。「えっ…???…それまた、一体…、どうなってる~~~???」思わず小鼻がツ~~ンと来て、「うそうそうそうそ。」そしてまた布団を顔まで、「あ~~~ん。」そしてまた…、あれこれと考えながらも…。次第に…うとうとと…。眠りに…引き釣り困れた…かと…。その時、ドアが開いて、「柚香~~。おばあちゃん、来たよ~~~。はは、病院の前でメグちゃんとバッタリ会ってね~~。」ハタと布団の中で目を覚ます陽織、「…ん…???…確かに。おばあちゃんの声。…でも…。誰…???メグちゃんって…???」「柚香~~。ジュース買ってきた~~。一緒に飲も。」陽織、鼓動が一気に高鳴る。そして、頭の中で、「…どうしよ。どうしよ。頭の中、めちゃくちゃ~~。一体、なんなの~~???」幸乃、布団を頭から被っている柚香を見て、「あら。どうしたんだい…???布団、頭から被って…。はははは。」愛実、ベッドを回って顔の方に、布団をチラリと捲って、「柚香~~。」顔を凹ませている陽織、「……。」愛実、「はは。どうしたの~~。そんな顔して~~???」幸乃もチラリと柚香の顔を見て、「ん~~~???」そして、「どうしたんだい、そんな顔して~~???…何か…あったかぃ…???」その声に陽織、ぶすっとした顔で、「何でもない。」そしてまた布団を頭まで。愛実はキョトンとして…。幸乃、思わず困ったような顔を、「変な子だね~~。折角メグちゃん、来てくれたのに~~。昨日に続いて、今日も~~。ありがたいよ~~。」けれども陽織、布団の中から、「ありがと。」そんな柚香に愛実、口を真一文字にして…。けれども、「はは。うん。まっ。そういうときもあるよ。うん。…病院にいたらね~~。とにかく、外にも出れないから…。」全く、見ず知らずの女性に言葉すらなく、布団の中、頭の中で、「…いやいやいや。だから、あんた、一体、誰…???…分かんないから声も出ないよ。…だから、私は柚香じゃなくって、陽織だって…。」布団を頭から被って、そのままの柚香に愛実も、仕方なく、「ふふ。うん。分かった。」そして、「おばあちゃん、私、今日は、これで帰るね。柚香、何かしら、調子、悪いような…。はは。…また、今度来るよ。うん。」ニッコリと。そんな愛実に幸乃、謝るように、「ごめんね~~~。折角来てくれたのに~~。」「ううん…。大丈夫、顔、ちょっと見れただけでも…。うん。」そして椅子から立ち上がりドアに。そして振り向いて、「じゃね~~。また。」ドアが開いて、そのまま廊下に、「バイバ~~イ。」幸乃ニッコリと恵に手を振って。数秒後、幸乃、「さて。どうしたものやら。」幸乃、床頭台にある天文学の本を手に取り、そして開いて、「ふ~~~ん。柚香、将来は…、きっと、天文学者だね~~~。ふふ。」そんな幸乃に陽織、まだ被った布団の中で、「おばあちゃん。」「う~~~ん…???」「メグちゃんって…誰…???」その声に幸乃、「へっ…???」「だから。メグちゃんって…誰…???」その声に幸乃、「はっ…???…へっ…???…メグちゃんって…誰って…???…おま…。」「私…、メグちゃんって…、知らないんだけど…。…そもそも、ここ…、病院…???…なんで私、病院にいる…???…それに…。私のおかあさんとおとうさんは…???…どこ…???」いきなり目をパチクリと幸乃、「あっ…。えっ…???…へっ…???…何…???…どうしたの…柚香~~。おま…。」「だから。…私、柚香じゃない。私の名前は陽織。」いきなり幸乃、鼓動が高鳴る。そして体全身に震えが…。「何言ってる。あんた。おま…。なんで…???…そんな…。柚香。あんたは、柚香。陽織じゃ。」そして幸乃、布団を首まで捲って、「何をおま。おまえは、柚香。陽織は…。陽織がなんで…???」「私は陽織。汀陽織(みぎわひおり)。柚香の妹の陽織だよ。」その声に幸乃は顔を真っ青にして、「陽織な訳がない。あんたは柚香。汀柚香だよ。」その声に陽織、「違う。絶対に違う。私は陽織。おばあちゃ~~ん。」幸乃、困ってしまって…、いきなりそわそわと…。そして…。 LIBRA~リブラ~ vol,006 車椅子を自操してゆっくりと元来た通路を…。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.06
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看護師が体温計を…。そして…、「うん。オッケー。大丈夫。…また、後でね。」その瞬間、「あの…。」そこまで声に出たが…、思わず目が小刻みに…。看護師、にこやかに、「うん…???」そして、「ふふ。じゃあね。また。」「あ。はい。」看護師はドアに向かって、そして振り返って一礼をしてドアの外に。2秒後、「ちょっとちょっとちょっと~~。何々何…???…どういう事…???…私今、ここで、何してる…???…看護婦が来るって事自体、ここは病院。」布団をバンと捲って、ベッド上で胡坐を掻いて。右手で髪を掻きながら…、「何が何だか、分かんないんだけど…。…しかも…、生まれて初めて見る景色なんだ…よ…な…。…って言うか…。」泣きそうな顔で、「私…、今、何歳なんだよ~~。」そして、ベッドのすぐ傍を見て、「…ん…???…車椅子…???…何で…、私がこれに…???」そして、またベッドの名前を見て、「汀…柚香。」目をキョロキョロとさせて、「…もしかして…、お姉ちゃんに、何か…あった…???」そして、拳を額に、顔をきつくグシャリとさせて、「ん~~~~~。」そして、「か~~~~~。だめだ。全~~然っ、分かんない。」また泣きそうな顔で、「…だよな~~。実際、私、体が、こんなになっていること自体…。」ぶすっとした顔で、「有り得ないでしょ。」口を尖らせたままで、「記憶が…、な~~~い~~~。」その時、一瞬、頭の中である衝撃が…。「あっ、痛~~~~。」激しく感じる激痛。「痛った~~~~。」凡そ数秒。けれども、その痛みも次第に和らぎ、「ふ~~~~。何なんの、今の痛み。何か、カナヅチかなんかで頭をぶん殴られた感じ~~~。いやいやいや。…って、私、車椅子に乗んなきゃなんない病気…???…こんなに元気なのに…。」そしてまた、ベッドの名前を見て、「だから。私は、柚香じゃない。陽織。」ベッドに端坐位になりスリッパを履いて、そしてゆっくりと歩いて窓に。目に飛び込んでくる景色。「すんご~~~。初めて見るわ、こんな景色~~。」そこまで言って、「…てか…。私、今まで、何処にいた…???」病室の中を見渡し、そして、テーブルの上にある書物やノート。そして床頭台にある、こちらも書物。「ふん…???…何、この本…???…自然科学…。星座の誕生から…。…宇宙の…。天文学…。…はっ…???天文学って…???はっ…???…何…???…どういう事…???」そして、ペラペラとページを繰ってはみるが…。バシッと、ページを閉じて、「全く分からん。…って、言うか、お姉ちゃん、今、何歳…???」そうこうしているうちに、歩いてドアに。その時、ふと頭に、「あっ。」すると体を後ろに、足をすりすりと…、車椅子に…。「看護婦、言ってたよな~~。これからはもっと病室の外に…。…って事は、もしかして、この車椅子で…???…まっ。念のため…。」車椅子に乗ってドアまで、そして静かにドアを開けて。廊下に。「ヨシっと。」そして、「ふ~~ん。」渡り廊下を通って、別棟に。数人の入院患者を見掛ける。そして…。目の前には看護師が、自分を見てニッコリと。そして右手を振る。そして、見えてきたのが、「ナースステーション。」その瞬間、小声で、「おっと、ヤバッ。」と思った矢先に、後ろから、「あら、柚香さん。」声を掛けられ後ろを…。そして自分の前に姿を現す看護師。「車椅子、頑張ってるね~~。」その声に、思わず、何とか笑顔で、「あははははは。はい。」するとナースステーションから次々に看護師が…。「あら~~。汀さ~~ん。」「あは。柚香さ~~ん。」「うんうんうん。元気、元気~~。」そんな看護師の声に、頭の中で、「…なんで、こうなる…???…って言うか…、ま。こう…なるか…。」看護師のひとりが、「うんうんうん。体、動けるようになった。いいぞぉ~~。」他の看護師も頷いて、「うんうんうん。」その声に、「あのぉ~~。私~~。」「うん…???…どうしたの…???」さっきの看護師。ネームを見ると、「石垣美祢(いしがきみね)」頭の中で、「…あ、病室に来た看護婦。」石垣、「うん。どうした~~???…病気の事以外なら…、なんでもいいよ。」そんな風に言われて、思わず、どんな顔をすればいいのか迷い、「あっ。あっ、あ~~~。ははは。ううん。なんでもありませ~~ん。もうちょっと、動いて、病室、戻りま~~す。」その声に石垣、「うん。じゃ、行ってらっしゃい。」ゆっくりと動く車椅子。その中で、思わず顔を崩して…。「とほほほほほ。言える訳ないじゃんよ~~。私は柚香じゃありません。陽織です。な~~んて。」そこまで言って、「…って、言うか~~~。私、ほんとに、どうなってんの~~。この体~~~。」 LIBRA~リブラ~ vol,004 「私今、ここで、何してる…???」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.05
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柚香、思わず可笑しがりながら、「何…???この偶然。かかかか。」真輝も、「いやいやいや。かかかか。…どうなってんだか…。今まで、全然…。…気づかなった~~。…って、言うか…。同じ階で、端と端…???」笑いながら。柚香、「うんうんうん。そうだよ。」そこまで言って…。けれども顔を傾げて…。「ん~~。…でも、仕方ないかも…。」廊下を見ながら、「私、この病院来て、昨日、初めて車椅子に乗って病室の外、出たから。」その声に真輝、「あっ。そっか。はいはい。…で、昨日…、売店で…。」柚香、その声に、「あ~~。うんうんうん。そぅ。」「そっか~~。…でも…。もしかして…、僕より早く、退院…???」「ん~~。どうだろ…???…その辺の事は…先生と看護婦さんに…聞いてみないと…。おばあちゃんが言うには、そんなに長く入院する必要は、ないかも…って、言ってたけどね~~。」真輝、そんな柚香にニッコリと、「そっか。うん。」そして柚香、真輝にニッコリと、「うん。じゃ、私…、病室、戻るから…。」真輝、「うん。じゃまた…。」そしてエレベーターに。そこに…、30代後半くらいの男性。柚香の前でエレベーターのボタンを。エレベーターのドアが開く。「お嬢さん、ちょっとごめんなさいね~~。」そう言って車椅子のハンドルを…。柚香、思わず目をパチクリと、「あっ、すみません。」男性、車椅子を押して、エレベーターの中に…。「何階ですか…???」柚香、ペコリと頭を下げて、「5階…です、けど…。」「分かりました。」そして、5階に…。ドアが開き、また男性、車椅子のハンドルを、今度は引いて、エレベーターから出て、「はい、どうぞ。」そして男性、またエレベーターの中に。柚香、エレベーターの男性にペコリとお辞儀を、「ありがとうございました。」そして顔を見た途端に、「へっ!!!」エレベーターの男性は閉まるドアから軽く右手を振る。柚香、思わず目を真ん丸に、そして、両手で口を塞いで、「え―――――――っ!!!うそうそうそ。松田龍平~~~っ!!!」そこまで言って、「いやいやいや。…んな訳ないでしょ。ここに、松田龍平…???…って言うか…。もしかして…、そっくりさん…???」そして、「わお。発~~~っ見~~~。いやいやいや。び~~~っくり~~。」そして、病室に…。…だれもいない病室。ベッドに車椅子を付けて、「ヨッコイショ。」僅か、30分の病室の外。ベッドに入り、布団を…。そして、ポツリと…。「そっか~~。…じゃ、同じ階に…、いるんだ~~彼。へぇ~~。…しかも…同じ大学って…、何…それ…???マジ…???…いるもんだね~~。」何故か、さっきの事を思い出しながら自然に、うとうとと…。…1時間は眠ったろうか…。…そして…、再び、目が覚めた。しかも、パチクリと…。…ただ…。瞬間、顔が小刻みに左右に…。開口一番、「ここ、どこ…???」そして体を動かし…、「へっ…???…私…、なんでこんなとこにいる…???」そして、身なりを見て、「…で、パジャマだし…。なんで…???」部屋の中をあちこちと、見ながら…。「へっ…???…いやいやいや。ここ、何処よ…???」瞬間、体を捩じってベッドを見る。…すると、ベッドの名札に、「汀柚香様」の文字。「へっ…???…いやいやいや。汀柚香って…。私…、柚香じゃないし…。…ってか…。柚香って…???…もしかして…、お姉ちゃん…???」そこまで言って顔を傾げて、「えっ…???…って言うか、何々…???…どうなってる…???…私…???…え~~~~???…私…。私…、柚香じゃな~~い。陽織(ひおり)だよ~~~。」嘆くように…。…けれども…、自分の着ているもの。パジャマ、襟元に目を…。そしてパジャマの中から自分の体を…。すると…。「うそ…。私…、今、何歳…???」そして、つい大声を出して、ベッド上で、「えぇ~~~。どうなってる~~~???」その声が廊下まで…。近くにいた看護師が…、その声に…、「???」部屋に近づく。そしてドアをノック。柚香…???…いや…。陽織…???瞬間、「ヤバッ。」いきなりベッドに…。そして布団を顔まで…。ドアが開いて、看護師、「汀さん。柚香さん、どうしました…???」顔まで布団を被ったままで…。その中で、「あっ。いえ…。いや…。な…、なんでもありませ~~ん。」そこまで言って、柚香…???…いや…。陽織…???小声で、「何…???…って、ここ…、病院…???…なんで…???」看護師が、「戻ってきてたのね。うんうん。まっ。これからは…、出来るだけ、病室の外、出てみようっか。その方が、体にはいいかも…。」布団の中で、「だから…、私は、なんでここにいるんだっつぅの。訳分かんないし…。」そして看護師、布団の上から、トントンと。仕方なく…布団を…。柚香…???陽織…???…自分で捲って…。「はい。」「お熱…、計らせてくれるかな…。」「あ、あ~~。はぃ。」頭の中で、「…もぅ~~。何にも言えないじゃん。」 LIBRA~リブラ~ vol,004 「初めて車椅子に乗って病室の外、出たから。」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.04
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その声に柚香、「機械工学と電気工学の本…。…って、凄い。難しそう〜〜。」 男性、目の前の女性にニッコリと、「はは。」そして、僅かに顔を傾げて、「そぅ…かも、知れないね。」 柚香、男性の傍に置いてある電気工学の本に目を。「何か、凄い。何か…こぅ〜〜。エンジニアって感じで…。」 その声に男性、思わず、「そう、それ。僕…、エンジニアになりたくって。」 瞬間、柚香、「へっ…???うそ…???」 男性、ニッコリと、「うんうんうん。そう。エンジニア。自動車のね〜〜。」 柚香、男性を見てニッコリと、「へぇ〜〜。そうなんだ〜〜。自動車のエンジニア〜〜。はは。なんか、凄い。」 「だから勉強中。」 柚香、まだ本を見ながら、「凄っ。頭…、良さそう〜〜。」 その声に男性、「えへぇ〜〜〜???」 「だって…。エンジニアって、聞いただけで、凄いって思っちゃう。」 男性、顔を空に、「ん〜〜〜。そんな…感じ…なのかな…???…元々、僕って、車、好きだったから…。子供の頃からの夢…。」「へっ…???…そうなんだ…???」 「うん。親戚のおじさんから子供の頃は良く、カーレース観に連れてかれて、それからだよね。」「…と、言う事は、君のその…、親戚の叔父さんも…、車好き…。」 「うん。そう。ヤマセ自動車って知ってる…???」 「あぁ、うん。自動車メーカー。知ってる〜〜。」そこまで言って柚香、男性を見て、「へっ…???…もしかして…、ヤマセ自動車の…???」 男性コクリと頭を、「うん。エンジニア、してる。」 瞬間、柚香、目を真ん丸に、「すんごぉ〜〜〜。へぇ〜〜。凄いんだね〜〜。…エンジニアか〜〜。機械工学…。そして…電気工学。」そう言いながら柚香、いきなり口からブルルルル。顔を左右に、「私には、全く、未知の分野だわ。難し過ぎて…。」 そんな女性を見て男性、ニッコリと。「はは。」 その時、柚香、いきなり気付いて、「あっ。いきなり私。ごめんなさい。」思わず恥ずかしそうに、「汀…、柚香って言います。」 男性、女性を見て、「みぎわ…、ゆずか…さん。」そして男性、「あっ。…僕は…。勝巳真輝(かつみまき)。」 柚香、「かつみ…、まき…さん。」 男性、いきなり、「はは。…さんはいいよ。…そんな…。社会人でも、ないから。」 「へっ…???」「都内の…、大学に通ってる。大学生。」 「わお。大学生なんだ。」キョトンとして柚香。「へぇ〜〜。…じゃあ、私と同じ。大学生。」 「君も…???」真輝、「大学…。生…。」 柚香、「うん。慶稜(けいりょう)大学、2年。」 一瞬、真輝、「うそ。…へっ…???」 柚香、「うん…???」顔を傾げて…。 真輝、そんな柚香に、「いやいやいや。…って…。はは。僕も、その…慶稜(けいりょう)大学。…3年だけど…。」 瞬間、柚香、「うそ。私と同じ大学…???…えへ…???」 真輝、ニコニコしながら、「いやいやいや。まさか…。ここで同じ大学の人と会うなんて…。…って言うか。」顔を傾げて、「いや〜〜。まさか…。…でも…。何々…???…全然。全く、会った事もない。」 柚香も真輝の顔を見て、「私も〜〜。慶稜に、2年もいるけど…。うんうん。確かに。一度も会った事、ない。」 真輝、「まっ。専攻も違うから…、かも…、知れないけど…。僕は…、機械工学科。」そこまで言って、「君は…???」 「あん。」柚香、「私は…、理工学部。」 「理工学部…。」「うん。私…、星を見るのが好きなの。」 その声に真輝、「へぇ〜〜〜。…と、言う事は…、もしかして…、天文学…???」 「うん。」頷いて柚香。「だから…、私…。…将来、星に関する仕事に就けたらって…思って…。」 「いやいやいや。すげぇ。」そしてニッコリと、「なんか…。凄い。完璧に…、宇宙って感じ…。スケール、あるねぇ〜〜。」 そんな風に言われて柚香、何とも照れ臭そうに、「…そぅ…かなぁ〜〜。」真輝を見て、「…でも、はは。うん。ありがと。そんな風に言ってくれて…。」 真輝、ニッコリと、「はは。」 「あっ。私…、もぅ、戻らなくっちゃ。」舌をチロリと出して。「看護婦さんに、怒られちゃう。」 真輝、そんな柚香に、「体…、何処が悪いの…???」 その声に柚香、空を見て、「え…っと〜〜。私…、元々、事故でここに来て…。交通事故ね。車に、撥ねられちゃって…。」 いきなり真輝、「わっちゃ〜〜。」 「…で、全身打撲。特に、頭、強く打ったらしい。足にも…、ひびが入ったみたいで…。ただ…、後々、血液がどうとか…で…。最初は、脳神経外科…。…でぇ〜〜。今は…、循環器の…方…???」 思わず真輝、目をパチクリとさせて…。「…って…???…僕と同じ病棟…???」 その声に柚香も目をパチクリさせて、「はい…???」 「病室は…???」 柚香、「私…、521。」 真輝、「僕…、530。」 柚香、口を開けて、「わお。」 LIBRA~リブラ~ vol,003. その声に柚香、「機械工学と電気工学の本…。」 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.03
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愛実も男性に頭を下げて、「ごめんなさい。」そんな女子ふたりから頭を下げられて男性、「いやいやいや。いぃって。はは。うんうん。気にしないで…。」その後、柚香はレジにノート数冊。愛実、「もぅ~~。頼んだら買って来たのに~~。」そんな愛実に柚香、「いいの。…だ~~って、病室から出る口実、なくなっちゃうでしょ。」その声に愛実、「あっ。そっか~~。うんうんうん。確かに。そういうのも、あるよね~~。」レジを済ませて売店から出るとき、まださっきの男性は何かしら商品を選んで。その時、視線を感じたのか、柚香の方を向いて。瞬間、柚香、ドキン。男性がニッコリとお辞儀を…。柚香もそれに合わせてお辞儀を…。愛実、「彼…、病気、何なんだろうね~~。」柚香、「…さぁ。」椅子に座って待っていた幸乃、目の前に近づいてきた柚香と愛実に、「はい、おかえり~~。…もしかして…、ノート…???…それくらいおばあちゃん、買ってきたのに~~。」柚香、口を尖らせて、「だ~~って。」愛実、クスクスと、幸乃に、「でしょ、でしょ。や~~っぱり私と同じ事~~。」柚香、「だから~~。」愛実、「病室から出る口実がなくなる。と、申しております。」その声に幸乃、ニッコリと、「あ~~ん~~。な~~るほどね~~。」幸乃、「もう少し、回ってみる…???」その声に柚香、「うん。」汀柚香(みぎわゆずか)都内、慶稜(けいりょう)大学の2年。そして、その祖母、汀幸乃(みぎわゆきの)。そして柚香の親友の井島愛実(いじまめぐみ)。こちらは都内の甲南(こうなん)大学の2年である。汀柚香。実は、東京世田谷にある一軒家に住んでいる。家族は祖母の汀幸乃と二人暮らし。両親はいない。柚香、2歳の時に車の事故で亡くなっている。その時点で祖母の幸乃が柚香の母親代わりになっている。病室に戻っての柚香、「全然、勉強…。」そんな柚香に愛実、「夜空のほ~~しを~~ってね~~。天文学かぁ~~。」柚香は都内の大学、慶稜大学の理工学部。そして愛実も都内ではあるが、甲南大学。こちらは特に、演劇を学べる大学として有名。愛実、「柚香、星見るの、好きだからね~~。かかかか。何度も一緒にプラネタリウム、連れてかれた~~。」「そういうメグも、女優になりたいって、いっつも映画館。」柚香。「かかかか。お互い様~~。まま、お互いに、一人っ子でもある訳だし…。」瞬間、愛実、思わず幸乃の顔を見て、「わっ!!!…ヤバかった、幸乃おばあちゃんに…。」顔をクシャリとさせて…。そんな愛実を見ての幸乃、ニッコリと、顔を傾げて、「はは。いいのよ。メグちゃん。もぅ~~。と~~っくの昔。全然…、気にしなくて大丈夫~~。はは。」愛実、思わず幸乃に両手を合わせて…。幸乃、ニコニコしながら顔を左右に。愛実、天文学の著書のページを繰っている柚香に、「さてさて。入院生活、どのくらいになるのか…。」その声に柚香、「うん。それほど…、掛かんないって、私自身は、思うんだけど…ねぇ~~。」そして幸乃を見て、「ねっ、おばあちゃん。」幸乃、口を真一文字にして、「うん。当初は長引くかな~~って、思われたんだけど…。なんたって、体毎、吹っ飛ばされたんだから~~。あちこちもぅ~~。全身打撲だよ~~。アスファルトに叩きつけられてゴロゴロ回って~~。頭から血は流れてるわ。大変だったらしいんだから~~。」愛実もその話を聞いて頷く、「うんうん。」「私が来た時にはまだ手術のランプが…。3日間は、気を失ったまま。目が覚めて、ホッとして…。体の力が一気に抜けて~~。」柚香、申し訳なさそうな顔で、「みたいだよね~~。」幸乃、そんな柚香に、「まっ。でも…、お蔭で、轢き逃げした犯人も逮捕されて~~。良かったよ~~。あれから…。柚が助けた女の子も見舞いに来て。おかあさんが泣いてありがとうございましたって…。」愛実、「うんうん。」「まっ。もしかしたら、柚が助けなかったら、あの、女の子…。」そこまで言って幸乃、いきなり顔を左右に小刻みに、「うぅ~~。冗談じゃない、縁起でもない。」そして幸乃、「とにかく、早く退院して、いつも通りに。」柚香、「うん。だよね~~。」翌日、柚香、今度はひとりで車椅子で…。看護師には許可を取って。院内を見学。…すると、近くのベンチに昨日の男性が…。座って本を読んでいる。柚香、男性に、「こんにちは~~。」すると男子も声に気付いて柚香の顔を…。「あぁ。こんにちは~~。」柚香、男性に、「何読んでいるんですか~~???」「あぁ…、これ…???」一旦著書に目を落として、「機械工学と電気工学の本。」柚香、キョトンとして、「機械工学と電気工学の本…。」 LIBRA~リブラ~ vol,002. 愛実も男性に頭を下げて、「ごめんなさい。」 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.02
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救急車がサイレンを鳴らして都内の病院へ。ひとりの女性が救急車から…。緊急救命士、医師と看護師に、「汀柚香(みぎわゆずか)。都内の大学生のようです。交差点で信号が赤に変わった途端に飛び出した犬を助けようと走り出した女の子を助けようと、走ってきた車から撥ねられ重傷。意識消失。バイタル、88の53の96。」ストレッチャーが緊急救命室の入り口通路を…。医師と看護師、ストレッチャーからベッドへ、「1、2、3。」5分後…、医師のひとり、「気道確保。」そしてまた別の女性医師、「血圧、76。下がって来てます。」「まずいな~~。MRI。」「はい。既に。」「よ~~し。」1時間後…。緊急手術。都内の一軒家。その家に住むひとりの女性、電話の音に、「はいはいはい。もしもし。汀(みぎわ)ですけど…。」そして…、声を聞くなり、「え――――――っ!!!」2時間後には病院へ。緊急外来へ。看護師に、「すみません。ここに運び込まれた…、汀…柚香の、祖母ですけど…。柚香は…???」看護師、「あ、はい。ただいま、緊急オペで…。こちらにどうぞ。」老婆、ペコリとお辞儀をして、「すみません。」そして…。「手術中」の灯りはまだ点灯のまま…。そして…。3日が過ぎた。頭部は包帯。ベッドの中で…。握っていた手が…、ピクリと…。そして…、やがて目が…。目の前が朧に…。そして…、「ここ…って…???」けれども、体には痛みが…。「あ痛~~~。体…。」けれども手は…、何とか…。少しずつ、感覚が…。誰かが自分の右手を握っている。ゆっくりゆっくりと、力のない手を握りしめて…。その時、はたと目が覚める老婆、「…ん…???」そして、ベッドから顔を上げて、名前を言う、「柚香っ。柚香っ。」その声に気付き、「えっ…???…おばあちゃん…???」老婆、「柚香、柚香。ようやく目を覚ました~~。」そしてすぐにベッドにあるボタンを…。病室に駆け付ける医師と看護師。ドアを開けて、「どうしました…???」「柚香が、目を覚ましました~~。」医師と看護師がベッドに。医師、「そうですか~~。ようやく、意識が…。」看護師が医師に頷いて、「安定してます。」医師、老婆に、「はは、汀さん、おばあちゃん、良かった~~。うんうんうん。」老婆、涙ながらに医師に頭を2度ほど、「ありがとうございます。」「とにかく、これで一安心。」ようやく口を動かせての柚香、目の前の医師と看護師に、「あのぉ…。私…。」その声に医師、「うんうん。まずはゆっくりと…。意識が戻ったばかりだ…。体はまだ、動けないと思う。もう少し…。…それから、詳しく、説明を…。」看護師も医師の声掛けにニッコリと頷いて、「今は、もう少し、休みましょ。」医師、老婆に向かって笑顔で、「良かったです。安心しました。また、参りますので。その時に。」老婆、丁寧に頭を下げて、「ありがとうございます。」医師と看護師、ドアの前で向き直って一礼をしてドアの外に。柚香、ゆっくりと顔を右に向けて、「おばあちゃん…???」そんな柚香の顔を見て老婆、「うんうんうん。とにかく安心した。」柚香の頭を撫でて…。「柚香、3日間、眠ってたんだ。このベッドの中で…。」柚香、目をパチクリと、「3日間…。」その日の夕方、テレビでは事故のあった交差点がテレビ画面に。そして、轢き逃げした容疑者が発見されて道路交通法違反、及び傷害罪で逮捕。21歳の無職の男性であった。それから1か月…。ようやく車椅子に乗る許可を得ての、病院の散策。車椅子を押す井島愛実(いじまめぐみ)。柚香の幼馴染であり、唯一の親友でもある。「メグちゃん、ごめんね~~。」柚香の祖母、汀幸乃(みぎわゆきの)。愛実、顔を左右に振り、「ううん~~。全~~然。この前来た時より、感じいいもん。さすがは柚香、回復力、いいね。」そんな愛実の方に顔を傾げて柚香、「当たり前だよ。そんなにイジケテらんないもん。」そして…。病院の売店に入って…。愛実と柚香、共に、「さ~~てと~~。」今度は柚香、自身で車椅子であちこちと移動して。愛実はその後ろを…。…と、その時、思わず車椅子のステップの角が点滴台にぶつかって…。「あ~~~。」「お~~~っと。」あやうく、点滴台が斜めに傾いた、その時点で支柱を手に。「や~~べぇ、やべぇ。」ひとりの男性。いきなり柚香、男性に向かって頭を下げて、「ごめんなさい。」愛実、「柚~~。大丈夫~~???」男性、笑いながら、「ははは。ごめん、ごめん。僕の方こそ、こんなところに…。車椅子に邪魔だった。はは。」柚香、男性に、また頭を下げて、「ううん…。私の方こそ…、よそ見しならがら…。」男性、「はは。気にしない、気にしない。」 LIBRA~リブラ~ vol, 001 「緊急オペ」※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
2023.01.01
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