真夜中乙女戦争 [ F ]
我々の日常の90%は頭の中で起こっていて、記憶の殆どは都合の良い脳内想像の「残り香」である。そんな悪戯な想像域の世界を小説で言語化した独自性に溢れた作品。Aがあれば必ず裏のA’があるといった表現は哲学的だ。例えば、引用「清楚なふりをする子は清楚なふりをする理由があるから」とか「挫折経験がない人の唯一の挫折は挫折経験がないこと」とかである。本作が内乱やテロの実現の難しさや、憧れの異性との諸行無常を主題としているのなら、平凡な毎日に飽きている人には刺激的に感じるだろう。黒服は主人公「私」のメタファだと思う。