ブログ版 南堀江法律事務所

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Bar UKからのお知ら… うらんかんろさん

2008/02/21
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カテゴリ: 判例、事件
「わいせつ」表現に関して、最高裁が注目すべき判断。

アメリカの写真家が出版した写真集に男性の性器が写っていたため国内持込み禁止にされた処分の当否が争われた裁判で、裁判所は、わいせつ図画にあたらない(税関が持込みを禁じたのは違法)と判断しました。

わいせつな文書や図画は、関税法によりその国内持込みが禁止されており、また国内で販売したりするとわいせつ物販売罪で処罰される。
では、わいせつなモノとは何か、と言いますと、条文にはそれ以上の定義はされていないのですが、最高裁は昔から、こう定義しています。

「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反すること」と。
これだけでは何のことかわかりませんが、要するに、曖昧に定義しておけば後々問題となったケースごとに柔軟に判断できるということでしょう。

この判決が出されたのが昭和32年で、「チャタレイ夫人の恋人」という外国小説を翻訳した作家と、それを出版した会社がわいせつ物販売罪で起訴された事件です。

この小説は、チャタレイさんという男性が戦争で怪我をして性的不能になり、妻であるチャタレイ夫人が屋敷の門番と肉体関係に至るという話で(もちろんそれだけではありませんが省略)、描写が具体的すぎてわいせつだとされました。
それで当時は、一部を伏字にして出版されたそうです。


たしかに生々しい描写はあるけど、生々しすぎて却って興奮しない。

「チャタレイ夫人の恋人」の翻訳者は罰金刑になったそうですが、それなら「愛の流刑地」の作者なんて死刑になるのではないか、と思うくらいでした。

かように、わいせつ観念というのは時代と共に移ろうものなのでしょうか。
現に、「チャタレイ夫人の恋人」は上記のとおり最近になって完訳版が出されていますが、関係者が処罰されたといった話は聞かない。「愛の流刑地」だって、堂々と日経新聞に連載されていたし、映画にもなった。

この最高裁判決は、写真集の芸術性もあわせ検討して、この件に限っては許されるとしたはずで、これをもって性器の表現が解禁されたと考えるべきではないでしょう。

私自身は、いかに芸術だと言われても男性の性器などみたいとも思わないし、アダルト雑誌の氾濫など、わいせつ規制は現在でも緩いくらいだと思うほうです。
もっとも、表現の自由の慎重な保護という観点からすれば、わいせつ性を慎重に判断していこうという最高裁の立場は望ましいと思います。





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Last updated  2008/02/21 12:59:02 PM


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