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さて大変勉強になった「眼科臨床実践講座2013」ですが、最後は「加齢黄班変性(AMD)の治療」のセッションでした。ここでは1つ衝撃的な話がありました。 現在AMDの標準的な治療は抗VEGF薬というものを 目の玉の奥(硝子体:しょうしたい)に直接注射するものとなっています。効き目は抜群ですが、それがずっとは持続せず数カ月おきに怖い注射を打たなくてはならず、しかもお薬が極めて高額(1本10万円以上!)なのが患者様にとっても我々眼科専門医にとっても悩みの種になっています。 そしてこの抗VEGF薬には無効例もありますし、もっと問題なのが耐性(使っているうちに効かなくなってくる)があることでした。実際に毎日臨床の現場にいても、「あぁ、もうこの患者様はいくら注射を打ってもダメだろうな。」と感じることというのは割りと頻繁にあることだったのです。 今回のセッションでは抗VEGF薬の中でも現在売上ナンバーワンのラニビズマブ(商品名ルセンティス)の長期成績が発表されました。 そしてその結果は衝撃的なものでした。お薬を使って2年間くらいは症状が改善するものの、4年目くらいには元に戻ってしまい、7年後には薬を使っていても著明に悪化してしまう、という内容だったからです。 抗VEGF薬は最近になって新しいものが増えている(参天製薬から発売された商品名アイリーアなど)ので、それらを順繰りに使って耐性化を防いだり、まだまだ様々な工夫をしていかなくてはならないんだな、と痛感しました。 それにしても今年から始まったこの「眼科臨床実践講座」、本当に素晴らしい内容でした。来年も自分の葬式がない限りは (笑)、絶対に参戦したいと思っています。 眼科臨床実践講座2013参戦記 終
2013.11.30
さて本日11月25日、日本を代表する点眼薬メーカーの参天製薬から、アレルギー性結膜炎の大型新薬であるアレジオン点眼液が発売されました。未確認情報では、このお薬、実は以前は他の会社が点眼薬にしようと思って頑張っていたのですが、どうしてもうまく溶けず目薬に仕立て上げることが出来ずに投げ出し、それを引き取った参天製薬が無事に開発完了したという話です。「クスリを溶かして目薬に仕立て上げる」技術では世界一と言われる、参天製薬ならではの目薬ですね。 ところで、アレルギー性結膜炎の治療では副作用が少ない「抗アレルギー点眼薬」が第一選択なのですが、その中には実はたくさんの目薬があります。 ただ、実際の臨床の現場では、かゆみに即効性を持つ抗ヒスタミン作用のある「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」の中で最強のパワーを持ち、現在アレルギー点眼剤で売上ダントツナンバーワンのパタノール点眼液(日本アルコン社)がpHが中性で点眼しやすく、また実際の効果も図抜けており、 実際には1人勝ちでライバル不在の状況でした。 そんな中、今回発売になったアレジオン点眼液は、その現役最強のアレルギー点眼薬「パタノール点眼液」と肩を並べる薬効を持っています。更に目に様々なダメージを与える防腐剤の濃度もパタノールが0.01%(これでも十分に低くて安全)なのに対し、アレジオンはその3分の1の0.003%と極限の低さを誇っており、日本のメーカーらしい細やかな配慮が行き届いた目薬となっています。また内服薬のアレジオンは効き目が長いことで知られており、もしかすると点眼でもその長所が受け継がれているかもしれません。 アレジオン点眼とパタノール点眼では実際にはどちらがより優れているのか、「アレルギー性結膜炎点眼薬、頂上決戦」がいよいよ始まります。楽しみですね。
2013.11.25
さて、今日は前回の日記の続きです。気になるこの「AREDS2」の結果ですね。その内容は、、、 なんと、、、、、、 プラセボ(偽薬)群と較べて有意差なし という衝撃的なものでした。サプリメントとしてルテインとEPAを加えても、AMDの進行予防の効果は認められなかったということなのです。残念でしたね。 つまりAMDの進行予防には、従来型のAREDS1に準拠したサプリメントで良いということになります。当院では元々この「AREDS1」型のものを患者様にオススメしていたので、今後も同じものを自信を持って推奨していくと言うことになります。 具体的には、サプリメントとしては上記の「オキュバイトシリーズ」というメジャーなもので言うと、一番左端の「オキュバイト+ルテイン」という一番シンプルで安いもので必要十分(ARED1準拠)ということになります。 AMDの患者様の参考になれば幸いです。
2013.11.21
さて次は日本でも患者様数が激増の一途を辿っている加齢黄班変性(AMD)の最新の話題の中で印象に残った話です。 病気は何でもそうですが、「未病」の状態で進行しないのが一番です。その意味でAMDは初期であれば進行予防の専用のサプリメントが一番お勧めです。もちろんある程度進行してしまっていてもサプリメントは非常にお勧めできます。というのは、AMDに関しては「サプリメントが効く」ことが実証されている からです。 2001年にアメリカで画期的な大規模なスタディ、AREDS1(エーレッズワン)が行われました。そして上記のスライドのように、 抗酸化ビタミン(ビタミンA+C+E)+亜鉛 を投与するとAMDの発生が約25%少なくなることが分かった のです。これは「レベル1エビデンス」の凄いデータでした。そしてこのことよりAMDの患者様は専用のサプリメントを飲んだほうが良いと我々眼科専門医は自信を持ってお勧めできるようになりました。 そしてその後サプリメントの内容を更に改善するべく、 AREDS2が進行中でした。これは分かりやすく言うと ルテインとEPAの効果を見よう というものでした。 ルテインは、ほうれん草やブロッコリーなどの色の濃い緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種で、目の「水晶体」と「黄斑部」に多く存在しています。ルテインの働きとして、まずは光そのものを遮る働きがあります。また、紫外線などの有害な光の一部が網膜に達してしまいそれにより酸化ダメージを受ける危険性が生じた場合でも、抗酸化作用によってそれを防止します。ところが体内のルテインは、加齢や、紫外線を浴びたり、煙草を吸ったりすることで少しずつ消費され、減少していきます。そしてルテインは体内で自力では生成できないため、日々の食事を通じて継続的に摂取することが大切なのです。 逆に言うと、最近の我々日本人は食生活の欧米化で慢性野菜不足に陥り、目にとって大切な成分であるルテインが足りなくなっているせいでAMDが激増している可能性があるわけです。ルテインは具体的には網膜にAMDを引き起こす新生血管(CNV)の発生を抑制してくれます。 ちなみにこのルテイン、まずいことで有名な青汁に大量に含まれています。私は眼科専門医として末永く八幡浜地域の皆様のお役に立てるよう、毎日2本ずつ宅配してもらってクリニックで飲んでいます。本当はクリニックのスタッフの皆にも目の健康維持のために強く勧めているのですが、「臭いから絶対イヤ。」と言って誰も飲んでくれないので、仕方なく毎日1人で飲んでいます。(笑) 次にEPAですが、ブリやマグロ、カツオ、サバなどの青魚や、ウナギ、アナゴに多く含まれる栄養素です。このEPAは血液をサラサラにして血行を良くして、血栓症や動脈硬化を防ぐ効果があります。また、炎症が起こりにくい体質になる効果があり、これがAMDの進行予防に大きな効果があると考えられています。 以上をまとめると、 ルテイン摂取で新生血管(CNV)を抑制し、EPA摂取で目の中に炎症を起こさない体を作ることで、怖い病気AMDの進行をより強力に抑えるサプリメントが出来るだろうと期待されていたわけです。 そして今回のセミナーではこの期待の「AREDS2」の結果がついに発表されました。その驚くべき内容は、、、、(続く)
2013.11.15
さて今日は「眼科臨床実践講座2013」の緑内障のセッションの中で特に印象に残った話を自分用のメモとして残しておきます。眼科専門医向けのやや特殊な内容となることを御了承下さい。 緑内障では除外診断が重要。早期の緑内障は「全てのデータを把握してから」治療するので、全く問題は無い。(緑内障と言うのは超慢性疾患なゆっくりとしか病気は進行しないので。) そして緑内障の除外診断としては、眼球打撲(強く目をぶつけたことによって視神経が痛むことがある。具体的に言うとボクサー、柔道選手などに良くある。)、脳疾患、副鼻腔疾患、LASIK後などが重要。 OCTで異常所見が出てもそれを緑内障として「治療するかどうかは別」。OCTは所詮は機械に過ぎず、目の視神経は個体差が大きいのでOCT判定が絶対と言うわけでない。直接自分の目で視神経を観察して総合的に判断することが大切。 年齢と余命のことも考える。例えば80歳で初期の緑内障患者様であれば、その平均余命を考慮すればアグレッシブな治療はいらない。(緑内障が初期から末期まで進行するのには一般的に言って何十年もかかる。つまりマイルドで優しい治療だけで死ぬまで目を元気に使えて、天寿を全うできる可能性が高いと言うこと。) 非常に良い話の多いセッションでした。
2013.11.07
さて次の日に一番勉強になったのは緑内障のセッションでした。 緑内障には大きく分けて2つのタイプがあります。目の中の水の出口(隅角:ぐうかく)が広い開放隅角緑内障(POAG)と、その出口が狭い閉塞隅角緑内障(PACG)です。そしてこの閉塞隅角緑内障は水の出口の状態が不安定なので眼圧が変動しやすく、その結果失明率が高いので要注意の病態なのです。 そしてこの隅角が閉塞しているかどうかの判定に最近ではOCTという全国の眼科クリニックで急激に普及してきている機器を使うことが多くなっているのですが、 このOCTで隅角が閉塞している時には閉塞は確実なのだが、開放しているが狭い時には要注意 という話が非常に印象に残ると同時に勉強になりました。 具体的には、 ↑ この症例はOCTではギリギリ隅角は開放しているように見えるのですが、 ↑ UBMという隅角を見る専用の機械で調べると実は閉塞していることが分かります。 明日からの毎日の臨床に直ぐに、そして深く役立つ、「ハッとする」凄く良い話でした。こういうことがあるからやはり様々な学会にドンドン顔を出すことは大切なんですね。
2013.11.01
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