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さて今日の日記は「ぶどう膜炎の治療のポイント」の続編です。 ぶどう膜炎では、強いステロイド治療よりも「ほどほどの治療」が大切というのが前回のお話でした。そして同時に大切なのは、 きめ細かく診察をし、適切な散瞳薬(さんどうやく:瞳を広げる作用のある目薬)使用で、虹彩(こうさい:茶目のこと)とその後ろの水晶体が癒着してくっついてしまう事を防ぐことであると強調されていました。 またぶどう膜炎が長引いて眼圧(目の血圧)が上がると、2次的な続発緑内障という状態になることがあるのですが、 その場合、隅角(ぐうかく:目の中の水の出口のこと)をしっかり見て、それぞれの状態に合わせた治療が必要であることが説明されました。 またやむを得ず眼圧を下げる手術が必要になった場合にはトラベクトロミー(繊維柱帯切開術:せんいちゅうたいという目の中を流れている水の排水溝の切開術)、トラベクレクトミー(繊維柱帯切除術:同じ場所を切開するのではなく一部切り取る手術。眼圧を下げる効果は高いが同時に合併症も多い。)という手術があるのですが、この中のトラベクロトミーに関して、 北海道大学の陳(ちん)先生が開発した、「360°suture-トラベクロトミー」という眼球全体に渡って切開する手術の効果が凄いと言う話も印象に残りました。 この陳先生というのは、我々眼科専門医にとっては「グルメ」で有名で、その土地の美味しいお店を詳細に教えてくれるグルメガイドを様々な学会で発行していることで知られていたのですが、実は北海道大学に常勤医として勤務されている凄腕眼科医ということでした。私は全国のグルメスポットを年中飛び回って探している謎のフリーターの眼科医かと思っていたので、申し訳なかったです。
2013.10.25
さて次は同じく「ぶどう膜炎」のセッションから、印象に残った話をまとめておきます。 ぶどう膜炎の治療では基本的にどうしても「ステロイド点眼薬」を使わざるを得ないのですが、その際に抗菌点眼剤を一緒に処方されることが臨床の現場ではままあります。 今回講演されたのは日本のぶどう膜炎治療の第一人者の先生だったのですが、 そのありがちなぶどう膜炎に対しての抗菌点眼薬治療について、明白に「無効・無用である」と断言されていたのが印象的でした。 「ステロイド点眼薬により免疫が抑制されて感染を起こしやすくなるので、予防的に抗菌剤を点眼する。」という意見に対しては、「まず感染症は起こさない。私は毎週100人以上のぶどう膜炎患者様を診ているが、抗菌剤点眼が必要な方など一人もいない。」と断言されていました。 また、「ぶどう膜炎の中の細菌性眼内炎という眼の奥にまで最近による感染が起こっているタイプかもしれないので、抗菌点眼薬を使う。」という意見に対しては、「そもそも抗菌点眼薬はそこまで届かない。効かない。」と一刀両断にされていました。 点眼薬に限らずお薬と言うのは、 「少なければ少ないほど良い。」 訳ですし、 「出来の悪い医者ほど薬が多い。」 のは明白な事実ですから、私もこの言葉を肝に銘じて、無駄で余分な抗菌剤点眼を処方しないことをこれからも常に意識していこうと思いました。 次に印象に残ったのは、 「ぶどう膜炎治療では、ほどほどが大切。」 というお話でした。これはぶどう膜炎の専門家の先生方からは良く聞く意見なのですが、病気を徹底的に強いステロイドで叩くよりも、ある程度の炎症の持続は大目に見てそれよりも「最小限のステロイド点眼薬治療に留める」ことの方が、トータルで見て患者様のメリットが大きいということなんですね。私も毎日の診療でいつも心掛けています。
2013.10.20
さて続いては、「ぶどう膜炎」のセッションで印象に残った話題です。 ぶどう膜炎という言葉に聞き覚えが無い方も多いでしょうから最初に説明しておきます。これは、「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、実はその患者様の総数は膨大です。 そしてこのぶどう膜炎の診断と治療は良く「推理小説と同じ」と例えられます。なぜかというと、ひとくくりにぶどう膜炎といっても実はその中には、 200近い別の病気があり、その中でメジャーなものだけでも50くらいはあるからです。つまり、ぶどう膜炎の原因は多岐にわたり、当然治療法もそれぞれに異なるわけです。しかも、これだけ医学が進んだ現在でも確定診断に至るぶどう膜炎はせいぜい全体の50%に過ぎず、未だにこのぶどう膜炎は 眼科界の巨大なミステリー であり続けているのです。 このように神秘的で深遠なぶどう膜炎の世界ですが、「良くあるぶどう膜炎」というのは決まってもいます。 そしてぶどう膜炎の診断には、 角膜後面沈着物(KP)というものの性状をじーっと良く見ることが役立ちます。 現在ぶどう膜炎の原因疾患1位のサルコイドーシスでは、 このように大きめで豚の脂のような、大小不同のKPが特徴ですし、 原因疾患5位のヘルペス性虹彩炎では、 同じ「豚脂様」でも、それが整然と配列しているのが特徴です。 講師の先生がこの2つの違いを、 ヘルペス性虹彩炎は少しスカスカしている。例えるならば「少ししょうゆの入った東京のとんこつラーメン」である。 一方のサルコイドーシスはギトギトに脂ぎっている。例えるならば「本場九州のとんこつラーメン」である。 と表現されていたのが、抜群に分かりやすく、かつ面白くて深く印象に残りました。
2013.10.14
さて次に勉強になったのは、白内障のセッションでの「レーシック術後の眼内レンズ選択の難しさ」のお話でした。 レーシックでは角膜(黒目)の真ん中を削るので、術後には中心がフラット(平ら)で周辺部がスティープ(傾斜が急)な特殊なOblate(オブラート)形になります。 白内障の手術では、濁った水晶体を取り除いて代わりに人工の眼内レンズを挿入します。この時、通常ではSRK/T式という数式を使って眼に入れるレンズをそれぞれの患者様に合わせて計算します。実際に当院でもほぼ100%このSRK/T式を使っています。 ところがレーシックを受けられている患者様にこのSRK/T式を使うとうまく行かず、検査データが遠視の方に著明にずれてしまう(具体的には+3.0Dくらい)のです。 そのためレーシック術後の場合は、OKULIX(光線追跡法を用いた新しい眼内レンズ度数計算ソフトを使用する方法。)などの別の数式を使う必要があります。そうしないと「度数ズレ」を来たしやすいんですね。 それ以外でもレーシックには、角膜の知覚神経を切ってしまうために術後にドライアイが必発する、通常の眼圧計で測定すると眼圧が平均4くらい低く出るので緑内障を見逃されたり過小評価されたりする可能性がある、などの問題点があります。 なので、レーシック術後の患者様は眼科を受診する際には必ずそのことを問診時にお伝え下さいね。
2013.10.09
さて次は、この怖い怖い病気、アカントアメーバ角膜炎の治療の実際です。 治療には「ブロレン+PHMBあるいはクロルヘキシジン+抗真菌薬」を組み合わせて使います。特殊なお薬を、しかも複数使わなくては退治できないところに、このアカントアメーバ角膜炎治療の難しさが端的に現れていますね。 このうち、ブロレンはイギリスでは市販薬として売られていますが日本では普通には入手できません。ただ「熱帯病の治療薬」として厚生労働省のホームページで手に入れることが出来るとの事でした。私は全く知らず非常に勉強になりました。 次にクロルヘキシジンですが、これは国内で簡単に手に入ります。なぜなら、 実は「ただの消毒薬」 だからです。でもアカントアメーバ角膜炎になってしまうと、超しみる消毒薬を目に1時間ごとに点さなくてはならなくなると言うことです。コンタクトレンズを適正に使用さえしていればこんな恐ろしい目にあうことはまずない訳ですから、良い子の皆様は少なくとも「ネットで買ったカラコンを1週間入れっぱなしにする」などの無茶は絶対に避けてくださいね。 以上をまとめると、アカントアメーバの治療は上記のようになります。酸素透過度の低い粗悪なカラコンをネットやドン○ホーテで買って、それを手入れもせず滅茶苦茶な使い方をする方が若い女性を中心に爆発的に増えていますし、それに比例してこのアカントアメーバ角膜炎もこれから更に激増すると思います。その意味でもこのセッションは本当に勉強になりました。
2013.10.06
さて今日は「眼科臨床実践講座2013参戦記の」続きです。 いよいよ初日の勉強会が始まりました。 最初のセッションは角結膜感染症をオーバービューするものでしたが、この中で特に勉強になったのは「アメーバ・真菌感染」のお話でした。今日は自分用のメモ書きとして印象深かったところをピックアップしておきます。以下、眼科専門医向けのやや特殊な内容となることを御了承下さい。 最近「粗悪なカラコン」の大流行により激増しているコンタクトレンズ関連の角膜炎ですが、その原因として約3分の1がアカントアメーバによるものとのことでした。これはアメーバの一種であるアカントアメーバが角膜に感染して起こる病気で、角膜の感染症のなかでは極めて重篤なものです。以前は稀な病気と言われていましたが、女子中高生の「3種の神器」が「カラコン、つけま(付けまつ毛)、スマホ」と言われる現在、恐ろしいことに増えているんですね。 このアカントアメーバ角膜炎の恐ろしさは、まずは診断が非常に難しくて治療が後手に回りやすいこと、次に診断がついても通常の抗生物質の目薬が効かないのでなかなか退治することが出来ずその間に重症化しやすいことです。 今回の勉強会ではそんな恐ろしいアカントアメーバについて、最新の診断と治療法について学ぶことが出来ました。具体的に見て行きましょう。 まずアカントアメーバを疑うきっかけとしては、 治療しても良くならないコンタクトレンズ関連の角膜炎が怪しいということでした。ただ、普通の外来顕微鏡で見ただけでは診断は難しく、アメーバの検出には蛍光試薬と蛍光顕微鏡が必要になります。そしてこれらのアイテムは実は、 ネットで安くで買えることが紹介され、勉強になりました。そしてこれを実際に使うと、 一発で判定できるとの事でした。(続く)
2013.10.03
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