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近年、殊になのか、ドキュメンタリーがおもしろい。いつか、好きな映画を「ドキュメンタリー映画」とおっしゃった方がいて、以来ますますこのジャンルが気になるようになった。札幌ではミニシアター "蠍座" で上映されていたこちら。館主さんのコラムには「私はブランドものには一切興味ないが、本作はドキュメンタリー映画としてすばらしい」というような感想が綴られていた。それもあってか、多少なりとも期待していたわけだけれど、じっさい、とてもおもしろかった。45年間にわたって、モード界を牽引し、頂点に君臨した天才デザイナー、イヴ・サンローランの実像に迫ったドキュメンタリー。彼の公私にわたるパートナーとして、サンローランを支え続けたピエール・ベルジェを語り手に、その華々しい生涯を振り返るとともに、想像を絶する注目とプレッシャーの中に身をさらし続けた天才デザイナーの苦悩と孤独を明らかにしていく――。線の細い人一倍シャイな青年が、ディオールの後任デザイナーとなったのは弱冠21歳。それからアルジェリア独立戦争に出征して神経を病み、完治したのちディオールを去って、生涯の伴侶となるピエール・ベルジェの出資で自身のレーベル「イヴ・サンローラン」を設立したのが26歳のとき。どこまでも絵になるプライベート写真の数々と、在りし日の映像と、ピエール・ベルジェによる語りで(ふたりはゲイカップル)綴ったトップデザイナーの真実は、そこはかとない虚無感に覆われている。 華々しい表舞台に、美術品に囲まれた絢爛豪華な私生活、そして、アルコールと薬に逃れるしかなかった孤独な素顔。時代を創るのは、簡単なことではないんだね、当たり前だけれど。数々のモードを生みだした天才にも引退のときはやがて訪れて、オートクチュールの時代は静かに終わりを告げていく。印象的だったのは、サンローランが遺した貴重な美術品の数々が、自らの死後散り散りになることを恐れたベルジェ氏の判断によって競売にかけられるシーン。ふたりが過ごした煌びやかな部屋が、ゆっくりと空っぽになっていくのを眺めるうちに、諸行無常の想いでいっぱいになるのを止めようがなかった。流行も芸術も人も、みんな同じようにいつかは無に帰る。華やかな世界に生きた人生にさえ漂う抑えようのない虚無感、、庶民はどうしたって溜息が出てしまう。ブランド志向がまったくなくっても楽しめる上質のドキュメンタリー。画面の美しさがまたいい。 監督・脚本 ピエール・トレトン エヴ・ギルー 撮影 レオ・アンスタン 音楽 コム・アギアル 出演 イヴ・サン=ローラン(アーカイヴ映像) ピエール・ベルジェ (103min)
2012.01.05
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数年前手に取ってから、さり気なく記憶に残ってきた本(と映画)。いつか読み返したいなと思いながら、このお正月休みに、一気に読み終えた。長い長い650ページ。ノルウェー発の不思議な哲学ファンタジーは、「一番やさしい哲学の本」。ソフィーはごく普通の14歳の少女。ある日、ソフィーのもとへ1通の手紙が舞い込みます。消印も差出人の名もないその手紙にはたった1行、『あなたはだれ』と書かれていました。おもいがけない問いかけに、ソフィーは改めて自分をみつめ直します。「わたしっていったいだれなんだろう」 今まで当たり前だと思っていたことが、ソフィーにはとても不思議なことのように思えてくるのです。その日からソフィーの周りでは奇妙な出来事が次々と起こります…。ソクラテス、アリストテレス、デカルト、カント、ヘーゲル、ダーウィン・・・終盤にはニーチェやフロイトまでが語られていく。誕生日を迎えて15歳になったばかりのソフィーと、謎の少女ヒルデを結びつけるミステリアスな哲学講座は、不思議で味わい深い読書感。天動説に地動説、実存主義や進化論、イエスキリストや深層心理や宇宙・・・もうありとあらゆることが、わかりやすい簡単な言葉で考察されているのでした。中学生くらいから、大人も楽しめる一冊。2度目なのにちっとも理解しきれないし、すぐに忘れていくのだけれど、気がつけば人として存在してしまっている自分を、ふと見つめ返すのにはもってこい。1999年の映画バージョンが久しぶりに観たくなりました。 そして来週、冬休みのさいごは旅行を予定しています。香港です。お供にと選んだ『須賀敦子全集』、しかし待ち切れずに読んでしまう。旅情を誘うすてきな語り口は、旅先にぴったり。こんなに読み心地の良い本には、なかなか巡り会えないなー。須賀敦子さん翻訳のアントニオ・タブッキ作品はとても好きで、先日、タブッキの処女作『イタリア広場』をはじめて須賀さん以外の訳者で読んだら面白くなかった、、。これはもう相性というより他ないのでしょう。来週までに読み終えてしまったら、2巻か3巻をお供にしましょう。それといまは職場の女の子から借りてる『スラムダンク』も読んでいます。すごくいいのだそうで、後々がたのしみ。
2012.01.04
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覚悟してはいたものの、なんともおぞましい園子温ワールド。実際に起こった " 埼玉愛犬家殺人事件 " をベースに、ふとしたはずみから極悪非道な男の片棒を担がされ、後戻りの出来ない殺人事件に巻き込まれていく男の姿を描く。小さな熱帯魚屋を経営する信行(吹越)は、妻・妙子(神楽坂)と、前妻の娘・美津子との三人で細々と暮らす善良なだけが取柄の男。ある時、娘の万引事件をきっかけに、大手熱帯魚店のオーナー村田幸雄(でんでん)と知りあう。彼は、言葉巧みにその場を治め、娘の美津子は自分の店で預かって更生させよう、と申し出る。しかし、この村田と妻の愛子(黒沢)は、何十ものバラバラ殺人事件を繰り返す狂気の極悪人だった――。性格俳優、吹越満氏の怪演といい、でんでん氏のこんなおやじいます! 的なイカレタ殺人鬼といい、お色気ムンムンの黒沢あすかといい、ガンガン役者の魅力を引き出すのが園子温監督なのだなぁ。とにかくものすごい。あれよあれよという間に、村田夫婦の魔の手にかかり、ヒト殺しの手助けをするはめとなった信行は、愛する家族のため、おぞましい血みどろの裏世界に足を踏み入れていく。いつしか、夫妻を凌ぐ強靭狂気の男へと変貌を遂げるところなど、敬愛する塚本晋也作品にも通ずるところがあってぞくぞくした。エログロなところも似てる。さいきんの韓国映画を観ていると、究極までエグサを追及していて圧倒されてしまうけれど、日本にもこういった監督さんがいることで、そっち方面の未来は明るい気がしてしまいます。映画にでてくる熱帯魚って、いいね。『シュリ』(古っ!)とか『FRIED DRAGON FISH --』とか、ドラマ『ケイゾク』も真山さんが金魚飼ってたっけ。魚を飼ってる人物を偏愛する傾向があるかもしれない。でんでんさんはともかく、この吹越満さんがブチ切れた果てにみせる男ぶりに惚れぼれした。それに負けないのが、『六月の蛇』が素晴らしかった黒沢あすかさん。彼女の色気と狂気の凄味は、もう半端ないです。 蛇足ですが、園作品に出演目白押しの女優・神楽坂恵さん、本作撮影後、監督とご結婚なされたそう。 監督 園子温 脚本 園子温 高橋ヨシキ 出演 吹越満 でんでん 黒沢あすか 神楽坂恵 (146min)
2012.01.03
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久しぶりに観ましたがやはりおもしろい、文句のつけどころない傑作。昨年公開された『一命』とおなじ原作、滝口康彦の『異聞浪人記』を映画化した時代劇サスペンス。 (あらすじ) 彦根藩井伊家の上屋敷に、津雲半四郎(仲代)なる浪人ものが現れ、切腹のためにお庭を拝借したいと申し出る。家老(三國)は当世の流行である切腹をタネにたかりに来た若侍・千々岩求女(石浜)が、竹光で腹も切れず舌を噛み切って死んでいった顛末を語る。ところが、その若侍は半四郎の娘(岩下)の婿で、病気の妻と子を抱えいたことが、半四郎の口から次第に明らかになっていく・・・・。回想形式でぐいぐい引き込まれていく。淡々と語る仲代達矢の語り口にしびれる。三國連太郎をはじめとした井伊家の非情な仕打ち、武士道の悲惨な一面を批判しつつ、サスペンスあり復讐劇ありの、面白さ揃い踏みといったかんじ。竹光で腹を切る苦悶に満ちた求女の表情、流れる血・・・・・隙のないモノクロ画面に、ドロっとした血の黒さが怖ろしさを倍増させる。この役、『一命』では瑛太が演じています。義父の半四郎には市川海老蔵。『切腹』の完成度があまりにも高いので、俳優として好きな瑛太に、がっかりするのでは・・・なんて杞憂からなんとなく敬遠していたけれど、評価サイトを眺めると案外悪くない。レンタルが出たら手に取ってみようとおもう。わたしはふだんあまり時代劇を観ないのだけれど、黒澤明監督の一連の時代劇はすきです。本作は、クロサワ時代劇とは一味違ったストーリ展開の小気味よさとスマートな間があって、そこがいいのかもしれない。ところで役者陣の撮影当時の年齢、ご存知でしょうか。仲代達矢30歳、岩下志摩21歳、三國連太郎39歳。貫禄がすごくて、とても見えませんねー。丹波哲郎氏は、いつから霊界と通じてしまったのかわからないけれど、当時は威風の人だったのだなぁ。一風変わった脚本の妙、怖ろしい切腹に纏わる復讐劇は、時代劇の傑作で、これから何度観てもきっと飽きないとおもう。 監督 小林正樹 原作 滝口康彦 脚本 橋本忍 出演 仲代達矢 岩下志麻 石浜朗 三國連太郎 丹波哲郎 (モノクロ/134min)
2012.01.02
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