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とある2DKのアパートに引っ越してきた母けい子と4人の子供たち。けい子は、大家に自分と長男・明の二人暮しと嘘をつき、子供たちにも近所にバレないようにと言い聞かせる。兄妹たちは学校に通ったこともなく、けい子が働いている間は、明が母親代わりとなって家事をし兄妹の面倒を見ていた。そんなある日、新しい男ができたけい子は、わずかな現金を残して突然家を出ていってしまうのだった…。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1980年代に東京で起こった事件を基にして作られた社会派のドラマ。実際の事件と設定など変えていますが、それはかまわないと思う。このドラマが静かに痛く伝えているのは、命の重さ。「私は幸せになっちゃいけないの?」そういって帰ってこなくなる母親の身勝手で、家に残された4人の子どもたち。幼いふたりは、無邪気に遊びながら日々を送るけれど、長男の明(柳楽)と長女・京子は、家事と育児をまかされる分、とても苦しくなってきます。 お金が尽きれば、別れた父親に頼っていくしかありません。そうはいっても、父親という人たちもみんなロクデナシ。いつしか電気もガスも水道も止められて、公園で水を汲んだり洗濯するようになります。狭いベランダでインスタントラーメンの空カップに、雑草の種を拾ってきては育てる兄妹たち。身綺麗にすることもできなくなり、空腹からどんな気力も尽きて、それでも雑草のように誰にも気づかれずに生き続けている彼らの生の悲しさは、なんなんだろう。ファンタジックに時に優しく穏やかに描かれるのが、余計に辛く感じます。冒頭でバスに揺られる明が、大切そうに手を添えているピンクの鞄。その中身がなんなのか、破れた服と汚れた体のわけも、すこしずつ語られていきます。とても悲しくて、無力な命の火が消えたとき、私はただ涙を流すしかできなかった。誰も知らない――本当に、知らないんだと思う。今こうしてる間も、大人の身勝手で苦しい悲しい目にあってる子がいても、誰も知らないんだと思う。それでもひっそり生きてるその子は、なんのために生まれてきて、生きてかなければいけないのかわからなくなる。長男と長女の、しっかりしてるだけに分かってしまう、感じてしまう、たくさんの苦悩がいたたまれない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督・脚本 是枝裕和 撮影 山崎裕 音楽 ゴンチチ 出演 柳楽優弥 、北浦愛 、木村飛影 、清水萌々子 韓英恵 、YOU 、串田和美 (カラー/141分)
2007.01.27
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幕末の京都。時代の流れに逆行して抗争に明け暮れる新撰組に、惣三郎という新人が入隊する。妖しい魅力を放つ美少年・惣三郎に対し、次第に心を惑わす血気盛んな剣士たち。やがて隊内は、嫉妬や羨望を交えた不穏な空気に包まれるが・・・。 大島渚監督の作品を観るのは初めてです。バイプレイヤーたちの魅力、役者として今まで知っていた以上の魅力を感じて、驚きました。本作がデビュー作となった松田龍平は、幼さ残る初々しさがすごく良く、男たちを魅了する難しい役どころを見事に演じていました。新人賞受賞もこれなら納得。それぞれに持ち味を出し切れるのは、きっと監督の才能に他ならないのでしょう。巨匠といわれる所以も納得です。 思わず、ぷぷっと吹き出してしまうような可笑しさあり、それでいて細部はきっちりしていて、時代ものとしての見ごたえも十分です。‘新撰組’は最近人気ですねー。衆道(男色)に関する真否はそれこそ不明だけれど、きっとあったに違いない。かといってここまで横行すると、コメディの域に達してしまいそうなくらいですが剣の達人である美少年の惣三郎は、温厚である側面と冷酷な側面を合わせ持つ男。人を斬れることが新撰組に入隊した理由――そう話す彼の本当の目的は、なにも語られません。そもそも本当にないのかもしれない。たった一人の青年剣士に翻弄される、組織の有様が見どころ。浅野忠信は昔から大好きなのですが、早々に惣三郎の寝込みを襲う件にびっくり(笑)恋人となってからはあまり登場してきませんが、やはり素晴らしい役者さんですねー。ラストの対決での、ふたりの絡みは謎も残って好きです。それから武田真治が土方に語って聴かせる雨月物語「菊花の約(ちぎり)」の、独自の解釈が物語に絡んで、こちらもいいです。映画自体の内容も、昔話のような怪談のような、不思議な魅力に包まれて終わるのが私的にはとても好みでありました。 監督・脚本 大島渚 原作 司馬遼太郎音楽 坂本龍一 出演 松田龍平 、ビートたけし 、武田真治 、浅野忠信 、崔洋一 (カラー/100分)
2007.01.24
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徳川家康が天下を統一し、時代は太平の世へと向かい始めていた1614年。宿敵である伊賀と甲賀が互いの存亡をかけて壮絶な戦いを繰り広げる中、自らの宿命と許されぬ愛の間で苦悩する朧と弦之介の姿を描く。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 天下太平の世。これまで敵対してきた伊賀と甲賀双方の忍びは、家康の命を受け、精鋭5人を戦わせることとなる。彼らの持つ能力が民として生きることを許さず、単に彼らを滅ぼさんとする幕府の策略でもある最後の戦い・・・伊賀と甲賀の新しい頭領となった朧と弦之介は否応なく、殺し合いに巻き込まれていく―― 個性ある忍者たちの戦いぶりと、日本の美を楽しめる作品でした。ビジュアル的な美しさは、主演二人をはじめ各所に散りばめられています。真新しいものはありませんが、恋愛とアクションを無難に盛り込んだ内容は、全体にキレイでこざっぱりしてる印象。それぞれの頭首となっても頼りなげな愛し合うふたりからは、気迫というものが感じられないのが残念でした。強いのか弱いのか分からないくらいですが、周りの忍者たちが体を張った術をふんだんに見せてくれるので、見所はそちらに。朧と弦之介の役目的には、見た目も心も美しい作品に仕上げたこと、という感じを受けました。それが気に入るかどうかは好みによるのでしょう。どちらにしても物足りないというのが感想です。ただ、新作でも大胆な演技を披露しているという黒谷友香の好演など、思いがけない良さが見つけられる作品かもしれません。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 下山天 製作 久松猛朗 製作総指揮 迫本淳一 原作 山田風太郎 『甲賀忍法帖』 脚本 平田研也 音楽 岩代太郎 出演 仲間由紀恵 、オダギリジョー 、黒谷友香 椎名桔平 、沢尻エリカ
2007.01.22
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僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない―― 本棚で眠っていた懐かしい文庫本を久しぶりに読み返す。冒頭の台詞は、いまでも諳んじることができるし、中学生のころに買った本がいまも手元にあるなんて、いっぱい好きな証拠。「ベジテリアン大祭」「よだかの星」「オツベルと象」「銀河鉄道の夜」・・・どれもこれも切なくてたのしくて、なつかしい。童話の宮沢賢治と思ってきたのがそうではないと知って、なんだか以前とはまったく違う受け止め方ができたみたい。素直で率直でいじらしい主人公たちが、猫であれ人であれ草木であれ、みんな愛しく思える不思議な世界感。純粋すぎて痛々しかったりするけれど、風刺やユーモアに救われる。先日、「ブッダの夢」で、"カムパネルラは本当は女性なのです"と読んだ。それでもわたしには線の細い少年像が浮かんでくるばかりで、もちろん内的になのだけれど、女性と感じとることはできなかった。病弱で37歳という短い生涯を終えた宮沢賢治。根っからの仏教徒であった氏の、どの宗教にも通じるような心身の置き方がいい。
2007.01.21
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バレンタインデー目前のある日、ジョエルは、最近ケンカ別れした恋人クレメンタインについての、不思議な手紙を受け取る。 「クレメンタインはジョエルの記憶を全て消し去りました。今後、彼女の過去について絶対触れないようにお願いします。ラクーナ社」。仲直りしようと思っていた矢先にそんな知らせを受け、立ち直れないジョエル。彼は、彼女と同じくの記憶を消すことを決意し、ラクーナ医院を訪れるのだが・・・。 ジム・キャリーにケイト・ウィンスレット、演技派ふたりの競演です。DVDの写真はこのふたりに見えませんね。若い男女の甘い物語を連想してしまいそうですが、ひと捻りある、なかなか素敵な作品でした。代わり映えのない人生を送ってきた平凡な男ジョエル(ジム)と、安定した生活に飢えている気分屋のクレメンタイン(ケイト)は、出逢ってすぐに恋に落ちます。お互いちょっと変わったところも好きで、お似合いの二人となりますが、付き合っていくうち募り募った不満から大喧嘩をしてしまうのです。衝動で彼の記憶を消してしまったクレメンタインと、それを知って、同じように彼女の記憶を消去しようとするジョエル・・・しかし記憶から消えていく彼女の姿に耐えられず、どんなに辛くても覚えている方を選んだ彼は、消去作業が行われている夢うつつの中で、無意識の中を夢の中を、懸命にクレメンタインの手を引き逃げるのでした――― 「思い出せば小さなことが幸せだった・・」 「ジョエルの記憶のなか 二人が出会った海」 ‘部分的に記憶を消す’そんなことができる架空の設定で繰り広げられるラブストーリー。冒頭ノーマルに始まるけれど、『ラクーナ社』の介入で突如風変わりなお話となります。依頼主の忘れたい記憶を消し、開放させるのが『ラクーナ社』の仕事。この奇妙な会社が平凡なジョエルを変えていくわけですが、コメディタッチでもあり幻想的でもあり、サスペンスフルでもありました。脚本がチャーリー・カウフマンらしく「マルコヴィッチの穴」にちょっと似ていると思います。記憶の中で逃げ回るうち、出会いの思い出や些細な日常が記憶から呼び起こされて、そこに愛おしさをいっぱい見つけてしまう。すでに彼女に消された自分、そして自らの中でも、消え入りそうな彼女の存在が、いま切実に忘れがたいものと感じられる―――そういうくだりが上手いです。再会というシチュエーションも。倦怠期の乗り越え方を見ているようでもありました。恋について記憶を消したいだなんて、そうとう辛くないと思えないことでしょう・・・この作品の中では、簡単にそれができる設定だというのもふたりに感情移入するポイントとなるのかもしれません。そしてもうひとつ、『ラクーナ社』内での恋愛エピソードもサプライズを秘めていて楽しめました。記憶の中を逃げ回るシーンは、曖昧な上に不確かで、めまぐるしく変動していきます。幼少時代にいけば、小さなジョエルになり、氷の上に寝転んで星を見ていたと思ったら、道端で寝ていたり。あれよあれよという間に存在する世界が変わって、すごく臨機応変。CGが多く使われていますが、どれも効果的でした。懐かしいカンジの音楽、恋する気持ち、思わずぐっとくる作品。臨機応変すぎてか、突拍子なくてか、脚本の複雑さか、分かりにくさはあるけれど、喧嘩して仲直りしたり、別れても元サヤに戻ったり、すごく好きあうふたりの間に生まれるたくさんの感情はとても身近で好きでした。ジム・キャリーが普通の役?と多少疑問でしたが、なんのなんの彼の多様な演技の幅が生かされる役柄でしたね。それにしても主演ふたりはお上手! 変わってるけれど結構ロマンチックです。監督 ミシェル・ゴンドリー 製作 アンソニー・ブレグマン 、スティーヴ・ゴリン 脚本 チャーリー・カウフマン 音楽 ジョン・ブライオン 出演 ジム・キャリー 、ケイト・ウィンスレット 、キルステン・ダンスト マーク・ラファロ 、イライジャ・ウッド (カラー/107分)
2007.01.18
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一年ぶりの帰省から帰りました。行きも帰りもJRでの旅です。いつも荷物が大きくなって、肩に食い込むほどの旅行かばんと格闘して帰ります。今回は10年ぶりに行く‘どんど焼き’のお正月飾りを持つためもあり、なるべくこじんまりと帰ったつもりが・・・それでも重かったです。14日日曜日、なかなか行く機会もなかった‘どんど焼き(左義長)’に行きました。実家近くのお寺まで。火を焚きお経がよまれて、その後、種火を組まれた竹のやぐらに移して、積まれた正月飾りを焼きます。子どもの頃からの恒例行事ですが、実家を離れてからは一度も行ったことがなく、偶然帰省中だった今年は、10年ぶりのどんど焼きとなりました。ありがたいお経も、混雑する本堂へは入れず、境内のガラス越しに眺めていましたら、すっかり葉のない木の枝にリスが現れ、見つけた数人の子どもたちが歓声を上げていました。自然の残る実家の周辺には、リスが住んでいて、帰省するたびにその姿を見せてくれます。『リス横断注意』の標識も立っているほど。そうこうしているうちに燃え盛った火は、バン!という大きな音を立てて竹を破裂させながら、いつまでも燃えておりました。暖をとり、煙をあび、その火で焼いたお餅を食べて、今年一年の無病息災を願ってきました。それにしても帰省するといろんな気持ちになりますね。この町を絶対に出たいと思っていた頃・・・嫌だったところも大好きだったところも、つい昨日のことのように思い出されます。ここにしかない澄んだ美味しい空気と、いつでも晴れ渡った空は、なんにも変わっていませんが、町並みだけは確実に変わってくのがわかります。もっと大きいと思っていたものが、どれも意外に小さかったりして、息苦しさはリアルに過去を思い出させて、早く我が家へ帰りたくなるのが常です。それでも愛しい故郷。やっぱり好きだな~とひしひし感じながら過ごてしてきました。滞在は3泊4日の予定。なか二日間、夜は古い友人たちといつもどおり集まって楽しいひと時。一日目は幼馴染たちと小料理店へ、二日目は新築の友人宅で集まってお鍋パーティを。偶然、15日はその中のひとりMちゃんがバースディで、気を利かせてこっそり手作りしたケーキを持ってくる友もあり、みんなでお祝い一度でいいから歳の数だけロウソクを立てて見たかった~と、ケーキを作った友が用意した沢山のロウソク。小さめのケーキにすべてさして、いざ火を灯しました。数の多さにて惑い、みるみるうちに溶け出す蝋に焦りまくり遂にはロウソクの火が合わさり大きな炎になるに至り、急いで吹き消しました。歳の重さ、というより歳の数多さに苦笑いあるのみでした(笑)今回は母や姉と映画の話などいっぱいできたので嬉しかったです映画に夢中だった学生時代の母の思い出話は、なんだか同じ血を引いているな~と実感させられてしまいました。冬休み終盤。やることは溜まっているけれど、まだまだこちらへも来客は続きそうで、今月はたくさんの出会いが続く嬉しい月となりそうです。
2007.01.16
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“不幸のオンパレード”をウリに世界中でベストセラーとなった児童書『世にも不幸なできごと』シリーズの映画化。裕福なボードレール家の三姉弟妹は、愛する両親を突然の火事で亡くしてしまう。身寄りのない三姉弟妹は、ほどなく遠縁の親戚オラフ伯爵(ジム・キャリー)が預かることに。しかし預けられてすぐ、三姉弟妹はオラフ伯爵の目当てが自分たちの遺産だと気づくのだが…。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 久しぶりのレンタル店で、公開当時から気になってたこの作品をレンタルしてきました。児童書を映画化したファンタジックな世界は、多くのものと同じように、大人から子どもまで楽しめるのではないでしょうか。冒頭からの一言がまず面白くて、“夢や希望のあるハッピーな結末をお望みならこの映画は観ないで”と始まります。それは観なくちゃ! と思ってしまう(笑)個性派俳優ジム・キャリーが、遺産目当てで子どもたちの命を狙うオラフ伯爵を演じます。幾度も変装しては現れる、冷酷伯爵の奇怪な行動と容姿は、無条件に楽しめるのではないでしょうか。そこに、突然親を亡くした三姉弟妹の個性が絡むと、期待した以上にいい味が醸し出されます。 原色の抑えられた寒々とした色遣いは、ストーリーの魅力と相まってとても好みでした。ストーリーテラー(ジュード・ロウー)を置いての展開は、両親の死に謎を抱えたまま、不幸に見舞われてゆく子どもたちの物語を、さらに寓話チックに感じさせてくれます。発明好きな長女14歳と、読書好きな弟と、なんでもかじる末っ子。いまやお互いのほかに頼るもののない姉弟妹は、それぞれの長所を良く知っていて、信頼しあって、頭を使いながらピンチを切り抜けていきます。不幸になってゆくけれど、そこに小さな幸せを見つけ出すことができる彼女たちの頑張りと強さは、今までありそうでなかったタイプの魅力。地味だけどいい~あんまり笑わない上の子の二人に、末っ子の笑顔はまるで太陽。‘幸せ’ってなにかを、ほんのり感じられる映画です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 ブラッド・シルバーリング 製作 ローリー・マクドナルド 、ウォルター・F・パークス 原作 レモニー・スニケット 『世にも不幸なできごと1 最悪のはじまり』 脚本 ロバート・ゴードン 音楽 トーマス・ニューマン 出演 ジム・キャリー 、メリル・ストリープ エミリー・ブラウニング 、リーアム・エイケン カラ・ホフマン 、ティモシー・スポール ダスティン・ホフマン (ノンクレジット)
2007.01.12
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機関車ジェネラル号を、恋人同様に愛する機関士ジョニー・グレイは、恋人を乗せた機関車を北軍スパイに奪われてしまう。彼女たちを奪回せんと、獅子奮迅の大活躍をするキートンの大傑作。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ずっと観たいと思っていたキートンの代表作です。1926年という古い映画ですが、スケールの大きさや、キートンらしさともいえる名アクションの数々、とても見ごたえありました。戦争に志願したキートンは‘機関士’という仕事柄幾度も断られてしまいます。恋人から意気地なしと決め付けられて散々なキートン・・・ところが、脱走兵たちに機関車ジェネラル号と恋人を奪われ、ここぞとばかりの大活躍をみせるのでした。 考え抜かれたシーンのひとつひとつが巧妙です。さらっと観ていれば気づかないようなところも、きっと何カットも撮り直したのでしょうね~しかもスケールが大きくて、アクション映画としても楽しめます。前方を走っているジェネラル号へ、キートンの乗った機関車からの大砲が丘を越え命中するシーンなどは圧巻。敵の乗った機関車が橋ごと川へ崩れ落ちるシーンも、同じく圧巻! でした。扱いにくい機関車相手に、止めたり動かしたりを繰り返し、薪をくべたり給水したり・・・よくできていると感嘆するばかりでした。動く汽車の上を縦横無尽に駆け回る身軽なキートンの動きにも大注目ですね! チャップリンが成功を収めていく反面、キートンは夢やメッセージ性がないと批判された辛い時代もあったそう。でもたしかにある‘らしさ’がわたしは好きです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・監督 バスター・キートン 、クライド・ブラックマン 原作 バスター・キートン 脚本 アル・ボースバーグ 、チャールズ・スミス 撮影 デイヴ・ジェニングス 出演 バスター・キートン 、マリアン・マック グレン・キャベンダー 、ジム・ファーレイ
2007.01.07
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人形アニメの名手トルンカによる、シェイクスピアの傑作喜劇の人形アニメ化。幾度も映画化されているシェイクスピアの戯曲。 内容は幻想的でとても美しく、劇中劇の愛の物語は「ロミオとジュリエット」のよう。人形の動作ひとつひとつが、可憐でメルヘンチックで、吹き替えなら子どもでも楽しめるような作品でした。人形劇はとても好きです。表情は変わらずに、その動きひとつで感情を表す。命があると思えるくらいの迫を感ることがあります。子どもの頃は「三国志」が大好きで、毎週欠かさず楽しみにしていました。あの番組は本当に素晴らしかったですね~また観たい。終わりの歌はまだ歌えます。とにかくファンタジックな本作。台詞はナレーターのみでした。アニメーションと一体になった映像は重層的な世界で、クラシック音楽がぴったりです。全部が創作されたからこそ出せるであろう、色のトーンがあまりに美しくて物語より映像に目をとられていました。青を基調とした中に独特な赤や緑が鮮やか。その青もなかなか見つけられないような青という感じで、こだわりをいっぱい見つけることができました。 ● ● ● ● 監督 イエジー・トルンカカラー人形劇アニメ(109分)
2007.01.05
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売春禁止法成立の直前の特飲店・夢の里を舞台に、多彩な登場人物が織り成す人間絵巻。溝口監督の遺作。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 女性を描いた作品が多い溝口監督。次作を構想中に骨髄性白血病に倒れ、こちらが遺作となってしまいました。それぞれの理由で遊郭で働く女性たちの人間模様を、売春禁止法成立に揺れる時代を背景にして描いた秀作。赤線地帯とは、警察が立ち入るときに使った地図上に赤く引かれた線のこと。その地区を差すそうです。ジェンダーについて考えさせられる今の時代では、受け止める側も痛い気持ちになりますが、努めて明るく振舞う半ば諦めた彼女たちの毎日を見ていると、同情ではない思いも湧いてきます。結核の夫と幼子を抱え我身一つで生計を立てるハナエ(木暮実千代)、客を騙して金を溜め込むヤスミ(若尾文子)、田舎にいる息子を女手ひとつで育てるゆめ子(三益愛子)・・・ミッキー(京マチ子)は不貞を働いてきた父親への反抗心から、迎えに来た父親を追い返してここに留まることを決めたのでした。擦れていようと惨めだろうと辛かろうと、生きるためにはどうしようもない…とにかく暮らしがかかっています。 それでも、一度身を固めると決めて夜逃げした仲間が、結局はこの仕事に戻ってきてしまうあたり、国が救いの手を差し伸べてくれるわけではない辛い時代背景を感じずにいれません。そこで、彼女たちの雇い主が、ここぞとばかり、「お前たちを救えるのは私だけだ。政治の手が行き届かないところを私が補っているのだ」そう高々と述べるシーンは印象に残ります。結局は物としてしか見ていないことが窺えるシーンでもありました。彼女たちの意思でここにいる。ここで働かねば生きていけないからここにいる。でも、そればかりでもないことが分かってくると複雑・・・客を騙し金を溜め込み、遂には殺されかけるヤスミとか、反抗心から留まるミッキーとか、自分の生き方としてしゃっきりと生きてる姿も印象に残りました。本作の音楽では特徴ある電子音が使われています。それがかなり不評らしく、いざ聴いてみると「!」という感じ。どうしたかと思うくらい突然で、映画の雰囲気にも似合っていないのですが、これが懲りずに何度も投入されています。もったいないといえばそうですが、作品自体がとてもよかったので、最終的に気にならなくはなりました。知らぬ間に上京していた愛する一人息子から、「もう会いません!汚い!」そう言い放たれ、遂に発狂してしまう・ゆめ子。演じた三益愛子さんの演技も素晴らしかったです。この頃の銀幕女優たちの圧倒されるような存在感に酔うのも醍醐味なのかもしれませんね。若尾文子、京マチ子の両者は今観てもとても美しいです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 監督 溝口健二 製作 永田雅一 原作 芝木好子 脚本 成沢昌茂 音楽 黛敏郎 出演 京マチ子 、若尾文子 、木暮実千代 三益愛子 、町田博子 、川上康子 モノクロ(86分)
2007.01.03
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新年 あけましておめでとうございます今年も変わらず どうぞよろしくお願いいたします 奮発した恵比寿ビールと白ワインで酔っぱらい、うたた寝していたら、すっかり年が明けておりました。行く年来る年も見ないままの新年です本年はじめの日記は、年末に読んだ本から。新年そうそうバタイユはどうかと思いましたが・・・書きたい。 バタイユの名を知ったのは、伊坂幸太郎の「重力ピエロ」と「ブッダの夢」。手に取った二冊に続けて登場してきた人を、素通りする気にもなれず、読みかけの本をのけて先に読んだのがこちらでした。「重力ピエロ」で春(登場人物)が心底憎んでいたバタイユ、中沢新一さんが反カソリック思想の人として名を挙げたバタイユでした。フランスの思想家でエロティシズムについての著作を書き、ニーチェとフロイトに傾倒した方だという前知識しかないまま「マダム・エドワルダ」「死者」「眼球譚(たん)」を読めば度肝を抜かれること間違えなしですね・・・本当に驚いたわけですが、ほぼ一世紀半前に書かれたというこのセクシャルな本が、今もまだこうして現代人に読まれているなんて、不思議な感じがします。エロティシズムは進化するものでも退化するものでもないから、人には永遠のテーマということでしょうか。快楽=死の願望――そんな話を読んでると、自分がいかにノーマルなのかを知らされるようでした。このバタイユの感覚が分かる人もきっといるのでしょう。けどそれはとても退廃的で、同時に登場人物のように、まともな暮らしはできないような気がする。。あからさまな(あからさま過ぎる!)描写はまさに成人向けという感じですが、どんな人がこの本を性の悦び以外の為に読み、どんな位置づけにあるものなのか興味が湧いてきたのは事実です。次はサドも読みたくなってきた・・また大きく横道に逸れていく自分を感じます。ただのポルノ小説ではないような趣が、無きにしもあらずな一冊でした。
2007.01.01
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