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ある日、ニューヨークのセントラルパークで、大勢の人間が次々と自ら命を絶つという異常現象が発生する。原因が分からないまま逃げまどう人々がパニックに陥るなか、フィラデルフィアの高校教師エリオットたちも、安全な場所を求め避難するのだが・・・。 『シックス・センス』以降、新作が出るたびに観続けているシャマラン監督の最新作。期待を裏切るとまではいかないけれど、緩やかな下降線を辿っている印象は変わらなかった。二番煎じ、よくいえばシャマラン監督らしさが、好みに向かない方にはがっかりで終わってしまうかも。不気味な前兆、突然始まる得体の知れない恐怖、人間たちの畏れ。いつでも描きたいことは同じで、持っていきかたが上手くて、これだけ似たような導入部や展開を観てきても、なおかつ引きつけられるものがあるのは、わたしは流石だと思う。ニューヨークから始まり、徐々に東海岸の都市へと拡大していく惨状。はじめバイオテロかと思われるも、その死の法則からテロではないとわかるや、ますます恐怖がアメリカ中を覆う・・・・。科学の先生である主人公というのも定石どおりで、妻や同僚家族とともに逃げながら、彼は法則を見つけようと試みるのだった。動作が止まりおかしな言葉を発したあと自ら命を絶っていく何者かにやられた人々の描写は、耐えずこちらにも恐怖を与え続けて、主人公たちと一緒になって安全な場所へ行きたい焦燥感に駆られてしまう。中盤で思いがけず法則のヒントを得るあたりから、少しずつトーンダウンしていった感が否めないかも。あれ?と思っているうちに、それが答えだったりして、あっけない。半分しか、驚き、納得できない答えだった。というか、90分という長さも丁度いいし、前半楽しませてもらったので、もっと単純にやられた!と思えるだけで満足したのになぁと思う。『サイン』のようにどうしようもない愛すべきラストだって、満足だったのだから!上手くまとめるよりはユーモアを交えて騙しちゃうくらいのノリのほうがこの監督には似合っているような気がする。そしてシャマランが好きな人は、それでかえって満足できちゃうような気もするのだ。主人公エリオットの妻を演じたズーイー・デシャネルは、ブルーの瞳がとてもキレイで見惚れてしまうほどの美人だったけれど、演技が下手すぎ(ると思った、字幕だけど)。友人を演じるコロンビア出身のジョン・レグイザモは、いつかどこかで観たはずと調べたら『ランド・オブ・ザ・デッド』だった。はじめ観たことあるし、クセのある顔がシャマラン監督かと(笑)ずいぶん出ずっぱりだなぁと思ってたら、ちゃんとした役者さんでした。ちなみに監督、今回は声のみの出演となっています。 監督・脚本 M・ナイト・シャマラン 撮影 タク・フジモト 音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード 出演 マーク・ウォールバーグ ズーイー・デシャネル ジョン・レグイザモ (カラー/91分)
2009.01.31
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ブスで地味な女イリス(オウティネン)はマッチ工場で働いている。家族は冷たくされ、ディスコで恋に落ちたプレイボーイにはおもちゃにされ、おまけに妊娠までしてしまったイリスは、ついに復讐のオニとなるのだが―――世界一不幸な女の 世界一おかしな物語VHSのジャケットの文句がぴったりな映画だった。不幸で陰気なイリスが愛しい。モテなくて情けない愛すべき主人公たちを描くのがカウリスマキ監督の魅力だ。いつも不思議な温かさをくれる。フィンランドの寒々とした景色がうそみたいに、ぬっくくて、おかしくて、豊か。生きていく無常も悦びもユーモアに乗せて届く、カウリスマキワールド。マッチ繋がりか、「マッチ売りの少女」並に不幸なイリスは、ずっと寡黙に耐えている。流れ作業のマッチ工場で黙々と働き、友達も恋人もいないけれど、いつしか幸せになる日を夢見ていた。ところが不幸は加速するばかりで、母親は愛人と一緒になって彼女をいびり、一夜をともにしたプレイボーイには捨てられ・・・ついに彼女は復讐を誓い、薬局でネズミ殺し薬を手に入れるのだった。寡黙さがとてもいい。文句も言わずに耐えてきためげない彼女を応援しながら、人って静かに燃えているんだなぁと思わされる物語だ。音楽が映画の大事な要素になっているのも、この監督らしさ。今度のもとてもよかった。自分のなかを通り過ぎてくだけの映画もあれば、たった70分でいつまでも留まっていく映画もあって、ストーリーの単純さは問題ではないんだなぁ。撮り方ひとつ、シニカルさひとつ、ユーモアひとつ、他より秀でていれば記憶に残っていく。イリスを演じたカティ・オウティネンはカウリスマキ・ワールドには欠かせない顔という感じだ。演技も最高。監督・脚本/ アキ・カウリスマキ 撮影/ ティモ・サルミネン 音楽/ レイヨ・タイバレ 出演/ カティ・オウティネン エリナ・サロ エスコ・ニッカリ (カラー/70分)
2009.01.30
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黒澤映画不朽の名作を、オリジナルの脚本をそのままにリメイクした痛快時代劇。名も無き一人の浪人が、上役の汚職告発と人質救出に決起した若侍たちに助太刀し、素早く大胆な機転と居合で悪漢に立ち向かう様を描く―――。 豊川悦司と松山ケンイチが見たいけど、レンタルするほどでもないなぁと思っていたら、地上波で放映されてlucky!CM挟んでの放送で、幾分か編集されたヴァージョンだった。コメディタッチの軽い時代劇で、わけもなく笑ってしまう作品に仕上がっていた。良くも悪くも。ひしと実感するのは、この脚本がいかにおもしろかったか!ということだと思う。リメイクしてもなお見られるのは、やっぱりストーリーの起伏アル楽しさに他ならないんだろう。黒澤監督のオリジナルもコミカルだったし、シリアスなシーンの重厚さだけが、まったく違うものになってしまうのは、まぁこんなものなんだろうというか、予想どおりというか。おなじみの台詞とテーマ曲がそのままなのは、入りやすいけど。いかにも「椿三十郎」で文句もいえない(笑)トヨエツと松山くんと、織田裕二が好きな方にはいいかもしれない。それから若侍たちの中にファンがいる方とか。 織田裕二はずいぶん頑張っているようで、三船敏郎の話し方を真似ているのがよくわかった。トヨエツはスマートすぎる(危なさが足りない)感じだったけど、そつがなくうまくて好き。佐々木蔵之介は文句なしに巧い!(押入れからの一連のシーンが最高)難点は悪役の3人と、若者たちの落ち着きのない演技だけ。これがかなり鬱陶しい・・・。こうして演技の良し悪しばかり観ているということは、我ながら物語に集中していない証拠だ。それにしても、最後にちょこっとだけ出てきて口上を述べる藤田まことの圧倒的存在感といったら!だてに歳とっていないなぁと感心するばかりだった。監督/ 森田芳光 原作/ 山本周五郎 音楽/ 大島ミチル 出演/ 織田裕二 豊川悦司 松山ケンイチ 鈴木杏 佐々木蔵之介 (カラー/119分)
2009.01.28
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かつて馬肉屋をしていた男は刑務所から出所後、愛人のもとで暮らしていたが、何もかもに嫌気がさし、施設に入っている娘に会うためパリへと向かう。施設から娘を連れ出し、ふたりは安宿に入るのだが、鬱屈した男は取り返しのつかない行為に及んでしまう―――。『カルネ』の続編で、監督・脚本は同じくギャスパー・ノエ。 以前、松本人志の「シネマ坊主」を読んだとき気になって、オンラインリストに追加していた作品。前作『カルネ』は未見。乱暴で猥言ばかりの主人公の饒舌がすごい。多くのフランス映画が描かない、国の暗部を描いているけれど、それがいかにもフランス的だったりするのでおもしろい。人間はみんな利己的と言った男の第二の人生は、身重の妻に支配されて絶望の色。新しい馬肉店を開こうにも、財産は妻が握っていて、わずかさえも自由にはできない情けなさ。いつしかなにもかもが嫌になり、妻をさんざん殴ったあげく家を飛び出し、銃片手に唯一の希望である娘に再会するため、トラックを拾いパリを目指すのだが・・・。はみ出し者の中年男が辿り着いた境地は、ノーマルのわたしにはたしかに共感しがたかった。けれどあと20年生きていく意味を探したくなる気持ちはわかる。誰だってなんのために生きるのか、理由がなければ辛いのだ。冒頭に、駆け足で見せられる前作のダイジェストは、男の過去を教えてくれて、それなりに屈折した人生のわけがわかるようになっている。筋違いのこじつけで、ドイツや富裕層を憎悪したり、娘に手を出すなんていう醜猥極まる行為も、男の開き直りを前には怒りが湧かなかった。知能の弱くして生まれてきたらしい娘は、はっきりと感情を表に出すことはない。ただただ男の独白で物語は続いていく。「これから30秒以内に映画館を出たほうがいい」思わせぶりな字幕のあとに繰り広げられるカウントダウン後のおぞましい光景も、死を覚悟した男が出した答えも、やっぱりどうしようもない。普段ならば、そんな主人公をいとおしく思えることが多いけれど、こちらは違っていた。モラルなんて、所詮人間同士の決め事。自分を徹して生きるには利己的であるしかないのだろうか。監督・脚本・撮影・編集/ギャスパー・ノエ 出演/フィリップ・ナオン ブランディーヌ・ルノワール フランキー・バン (カラー/95分)
2009.01.25
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2009年の完成に向けて着々と工事が進む長江の三峡ダム建設プロジェクト。中国の一大国家事業により水没する運命にある古都・奉節(フォンジェ)を舞台に、時代の大きなうねりの中で繰り広げられる名も無き人々の人生を見つめたドラマ。 近代化の加速する中国と、21世紀とは思われぬような古都・奉節。この土地に、音信不通の伴侶を探しにやってきた2人の男女の物語を通して、中国のいまを詩情豊かに描き出す。淡々としていて、静かで、何度も何度も気を失いながら見終えた。長江やどこまでも広がる廃墟の情景は、中国の広大さを感じるには十分で圧倒的だ。自然豊かな素朴な画面にリラックスしてしまうのか、眠くてしようがないのは長回しのせいかもしれない。 そんなのんびり画面に、ちょっとした監督の意図で、UFOやロケットが突如現れるので、オチオチしていられないのだった。思い切りリアルな中国の現在を感じながら、都市と辺鄙な町にある大きな隔たりが不思議で、そこの隙間にまったく違和感なく、未確認飛行物体が投入される。炭鉱夫ハン・サンミンも、看護師のシェン・ホンも、ダムの下に沈んでいく古都を訪れ、働いたり知人の協力を得たりしながら、懸命に音信不通の連れ合いを探している。遠い土地に来て初めて気づくことや経験することの戸惑いは、そのまま近代化の波にのまれ、住み慣れた土地を追い出される人々の困惑に通じるところがあって、どうであれ生きている人々の日々の営みが哀愁持って描かれていく。近代化とはいっても、廃墟となったビルや家々を壊すのは、ハンマーを持った人の手だ。このあたりの遅れには驚きを隠せない。本編にも登場する、工事中の怪我や事故死。これが三峡ダム工事の現状なのだとしたら悲しい。まさに哀歌の「哀」だ。前向きに生きていく主人公たちとはうらはらに、物悲しい気持ちになる作品だった。監督・脚本/ジャ・ジャンクー 撮影/ユー・リクウァイ 音楽/リン・チャン 出演/チャオ・タオ ハン・サンミン ワン・ホンウェイ リー・チュウビン (カラー/113分)
2009.01.24
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川上弘美は『センセイの鞄』で初めて触れてから他のも手に取るうち、すっかり虜になった作家さん。『蛇を踏む』『ニシノユキヒコの恋と冒険』『パレード』と、ひそかにコンスタントに読んでいて、どれもほんとうに好きになれる作品だった。本棚に揃えておきたい人です。この本がまた、とっても奇妙。 川上弘美が綴る「謎の日記」。一見何事もないような平和な日常は、近所を散歩してお茶を飲み世間話をする平穏な日々。でも、その時空は静かによじれ、ヘンなモノたちがすました顔をしてそこかしこに息づいている。四季を通じて淡々と、ときには不気味にときには可憐に綴られる世界を彩るのは、イラストレーター山口マオのカラー・イラスト約30点。奇想天外でヘンテコ! まさにそのとおり。自身の夢をヒントに、ゆっくりペースで綴られていったという一遍一遍がおかしくて、シュールで虜になってしまう。妊娠中のもぐらに遭遇したり、中くらいの災難に見舞われたり。南伸坊さんの解説から拝借するならば、「奇妙で不思議でありながら、やすらかでおおらかでたのしい。ついでに言うと主人公の私が何気に艶っぽい」かったりするのだ。川上さん船頭の妄想の船に揺られていることの気持ちよさといったら、ほかではちょっと味わえないものがあると思う。好きだなぁ。南伸坊さんの短い解説のなかには、冒頭から興味ぶかい名前が登場した。内田百間、稲垣足穂。どちらも、わたしの最近のお気に入りだ。内田百間のようにいっぺんに好きになって、稲垣足穂の『一千一秒物語』のように何度も開いてしまう本―――なんだそう。好みというものはたしかに存在して、川上弘美の奇妙さが好きな人は、やっぱり似たような本を好んで読むのだなぁと、ヘンに感心した解説だった。引用させてもらってばかりの感想ですが、タイヘン楽しかったです。ちなみに山口マオの挿絵がかなりいい。内容にぴったりだ。読んで楽しく、見て楽しい。短い短い夢の断片のような、温かくも枯れた味わいのある一冊。最後に短いけれど、山口マオ×川上弘美の対談が収録されています。
2009.01.22
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カルト・ムービーとして迎えられた、リンチ監督の長編デビュー作。白黒映像の中に展開される悪夢と狂気の幻想世界。フィラデルフィアの工業地帯、印刷工の男がガールフレンドとの間に奇妙な赤ん坊をつくり、次第に悪夢の世界に入り込む―――。リンチの原点ともいうべき映像的魅力に溢れた傑作。(映画大全集より) いまのわたしには、観るべきではなかったかもしれない。内容をちゃんと知らないままに、いつか観たいと思ってきた。短尺だったのでつい選んでしまったけれど、結果、状況はどうあれ観てよかった。こういったアブナイ作品にも共感を持ち楽しめる自分自身は変わるわけじゃないのだ。悪夢。悪夢としか言いようのない世界が、忽然と現れるのに、なぜ面白いと感じるんだろう。主人公が顔を歪めれば、同じように観客の顔も歪むような出来事ばかりが起こる。不快でグロテスクなのに、怖いもの見たさで見続けていくうち面白くなっている。ずば抜けて幻想シーンに世界観のある傑作だった。髪型のせいでことさら大きな頭をした不恰好な主人公は、ガールフレンドとの間に突然、奇妙な赤ん坊を授かる。まるで鳥小屋のような自宅で赤ん坊を育て始めるが、妻はまもなく発狂寸前で家を飛び出してしまい、残された男はいつか悪夢に取り込まれ、狂気と幻想の狭間を彷徨っていく―――。台詞も説明も排除して、斬新な映像で怖ろしい悪夢が延々と表現されていく。現実との間には大きな隔たりがあるというのに、実在感のある幻想は、そんなものを飛び越えて迫ってくるから怖ろしい。愛用する「映画大全集」でシュールレアリズムをホラー映画として蘇らせたとあったけれども、たしかに、ブニュエルとダリの『アンダルシアの犬』をすぐに思い浮かべた。他に思い出したのはヤン・シュヴァンクマイエルの『ルナシー』『オテサーネク』、ベルイマンの『野いちご』。共通するものがたしかにあるみたい。そしてどの作品もわたしは好きだということ。上の写真の男は、冒頭と最後ラストに登場した(まるで塚本晋也の鉄男!)、いったい何者だったのだろう。堂々とした存在、無機質で美しい。見てくれからは、主人公と対極にある印象を受けたから、もうひとりの主人公だったのだろうか。なにを表していたのかわからないからこそ知りたい。この衝動は後の『マルホランド・ドライブ』なんかでもそのまま残っている、リンチらしさといえるのかもしれない。それからエロティックさ、鋭さも。 ぽっぺのぷっくらした女の子が舞台で踊るシーンが印象に残る。あれもなんだったのか、単なる幻想の一部だったのかはわからないけれど、深読みすればキリがないから単純に楽しんだ場面だった。深読みしすぎて、それで映画を楽しめないのではつまらない。『マルホランド・ドライブ』なんていまだによくわかっていないけれど、それでも面白い映画だった。監督・脚本・製作 デヴィッド・リンチ 撮影 フレデリック・エルムズ 音楽 ピーター・アイヴス 出演 ジョン・ナンス シャーロット・スチュワート アレン・ジョセフ (モノクロ/90分)
2009.01.18
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フランケンシュタイン博士の孫の脳外科医(ワイルダー)が祖父の実験記録を目にし、モンスター実験に取り掛かる。実験は成功したかに見えたが事は意外な方向へ。アイディア・役者・ギャグ三拍子そろったメル・ブルックス監督のパロディ・コメディの快作。(映画大全集より) なんとも淡々とした、味のあるパロディだった。ちらっと観た特典映像で目にした近年では珍しいという言葉がとても頷けてしまう。多くのハリウッド映画とは違ったノリと落ち着きで、玄人たちによって作られていることが、何気に伝わってくるのがおもしろい。いつか『フランケンシュタイン』を観た時、おすすめいただいて(2007年に!)やっと観ることができた。シーン写真からでも、この映画の魅力は十分伝わるでしょう。せむし男の僕アイゴール(マーティ・フェルドマン)のギョロリとした目つきがかなりユニーク!なんともいえない素朴な笑いにくすくすっとなる、大人のためのパロディ映画といえそう。フランケンシュタイン博士の孫という設定であるけれど、物語は元ネタを着実になぞっている。舞台の要素を取り入れたかったそうで、ミュージカルというには申し訳ない程度に、突然出演者たちが歌いだすシーンなんかはけっこうシュール!思いのほか地味で、エンターテイメント性は少ないとしても、こういうのを完成度の高い玄人作品というのだろうなぁ。じっくり浸っていられるのは大人だなぁ・・なんて考えながら観ていた。わたしはまだ、楽しいけどちょっと退屈で、本編に流れてるまったりした時間とは多少ズレがあったけれど、またきっと機がくれば再見したくなる作品だと思う。ちなみに、フランケンシュタイン博士を演じたジーン・ワイルダー、どこかで観たと思ったら先日の『星の王子さま』でした。軽~い身のこなしと目つきがいい。監督 メル・ブルックス 脚本 ジーン・ワイルダー メル・ブルックス 音楽 ジョン・モリス 出演 ジーン・ワイルダー ピーター・ボイル マーティ・フェルドマン(モノクロ/105分)
2009.01.17
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バレエ学校に入った少女スージーは、次々と起こるショッキングな連続殺人に遭遇する。秘密のドアを探し当てた彼女は、140年生きた魔女と対決する―――。 語り草となっているイタリアンホラーの傑作。冒頭から漂う、不気味で不穏な空気。スージーが土砂降りの空港に到着してから、とにかくなにかが起こる不気味な予感に支配されている。舞台となる学校は古くて、アーティスティックで冷たさを感じる。いたるところ原色の赤ライトに照らされて、光景をさらに異様にひきたてる視覚感覚的ホラーでもあった。学校に到着した夜に目撃した生徒が何者かに殺害されたのを皮切りに、次々と起こる殺人事件。スージーは隣室の友人とともに、少しずつ謎に迫っていくが・・・・。巧いんだか下手なんだかわからないジェシカ・ハーパーの演技は置いといて、魔女伝説を科学的に解き明かそうとした展開はよかった。どんなにピンチでも、動きがワンテンポ遅いのは、この際演出の妙というべきか。。じれったくて仕方なかったけれど、このわざとらしくて大げさなのがいいのかもしれない。ホラーで魔術(悪魔系)といえばポランスキーの『ローズマリーの赤ちゃん』が素晴らしくて一番に思い出すけど、雰囲気的にもあちらの方がずっと好きだ。それでも共通して嫌な予感というものが、妙味として見事に描かれているのがいい。対決というには緩いラストと、あっけない幕切れが気になりますが、ゴブリンの音楽は怖くて絶品。室内装飾も、色遣いも、一見の価値ありな『死ぬまでに観たい映画1001本』のうちの一本でありました。ちなみに『サスペリア2』というのは、アルジェント監督が本作の前に撮った作品で、続編でもなんでもありません。私的には『2』のほうが楽しめた記憶。ちなみに『第三の男』『夏の嵐』のアリダ・ヴァリが、誰よりも怖かったかも。監督 ダリオ・アルジェント 脚本 ダリオ・アルジェント ダリア・ニコロディ 撮影 ルチアーノ・トヴォリ 音楽 ゴブリン ダリオ・アルジェント 出演 ジェシカ・ハーパー アリダ・ヴァリ ジョーン・ベネット(カラー/99分)
2009.01.14
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思えば幻想文学というものはあまり、というよりほとんど読まないけれど、映画で観るファンタジーやホラー(に分類される一部)の作品は好だ。内容・中身ともに、とても面白い一冊。この中で語られるとおり、ファンタジーは文学や映画において主流にはならないけれど、欠かせない存在で、時おり無性に欲する自分がいる。本書は、18世紀のゴシック小説の起源から、幻想文学の巨匠や、各国の幻想文学を国別に紹介している。他にもファンタジーとユーモア、ファンタジーとキリスト教など、興味をそそられる内容がいっぱい。ほとんどの頁に、当時の単行本や雑誌に使われていた挿絵や、映画の写真などが添えられていてカラフルで賑やかだ。それに目をやるだけでも楽しめるのだけど、著者が言うように「この本は小説や物語とその書き手に焦点を当てている」内容の充実したものとなっている。映画ファンなので、どうしても興味がわくのは良質な映画化をされたという作品で、『赤死病の仮面』とか『血と薔薇』だとか、近く観たいなぁと思ったものが数点。文学の本なのにそちらにはあまり触発されることがなくて、カフカの『変身』やエドガー・アラン・ポーに改めて興味を持ったくらいだった。ポーは好きな映画『世にも怪奇な物語』(1967)の原作者だったことを改めて思い出した。短い生涯と伝説的な人物像に興味がわいた。 日本の幻想文学の頁で紹介されるのは、上田秋成の『雨月物語』、芥川龍之介、江戸川乱歩、安部公房など。なかでも安部公房には字数を割いていて『燃えつきた地図』『砂の女』などについて詳しく言及しているのが嬉しい。手元にあるのにまだなんとなく観ていなかった映画の『燃えつきた地図』、ぜひ観なければ。1979年10月第一版発行の古い本です
2009.01.12
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明治30年代の信州を舞台に、被差別部落出身の小学校教員・瀬川の苦悩を通して、人権問題を厳しく見つめた佳作。(あらすじ・映画大全集より) 島崎藤村はまだ読んだことはないけれど、略歴を見てみると波乱にとんだ人生を送った興味の湧く人物のようだった。『若い人』『細雪』『炎上』『こころ』がほぼ原作に忠実だったように、きっとこちらもそうなのだろうと思う。被差別部落という馴染みの薄い地域での出来事でも、テーマは差別による苦悩という普遍的なもの。いつの時代でも、主人公・瀬川の心中と純粋さを思えば心を揺さぶられるに違いない。人間の尊厳、人権、いまでは考えられないような差別が行われていたことに驚きながら、それらの言葉についてつと考えさせられる物語だった。身分を偽り、露見するのを恐れながらも、部落民開放運動家の猪子蓮太郎(三国)に惹かれ近づいていく主人公の葛藤が見事に描かれている。部落民もそうでない人も、同じ人間である。そのことを堂々と言える時代は、きっとすぐにはこない。けれど、猪子の跡を継ぐと決めた瀬川の最後の覚悟と潔さは感動的で、教え子や親友(長門)との別れの場面では、泣けてくる。『炎上』で初めて知った市川雷蔵は、今回もとても素敵だ。誠実な役柄が良く似合う人。部落民だと知ったうえで、瀬川に一生付いていくと決めたお寺の娘・お志保(藤村)の健気な優しさ、同僚の親友・土屋との深い友情、猪子蓮太郎の立派な行いもまた、心に染むいいものだった。猪子の妻を演じた岸田今日子の、ラストの台詞と演技による存在感も忘れてはいけない、素晴らしさ。全体として美しい作品。監督/市川崑 原作/島崎藤村 脚本/和田夏十 音楽/芥川也寸志 出演/市川雷蔵 長門裕之 船越英二 藤村志保 三国連太郎 (モノクロ/119分)
2009.01.11
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台北の街、昼下がりの公園。お腹を下したらしい年配の女性(ルー・イーチン)がトイレから出てくると、3歳になる孫の姿が見当たらない。女性は台北の街中を必死になって捜して回る。一方、同じ街の片隅では、祖父が作ってくれた弁当には手も付けず、ファーストフードで食事をすませる少年がいた。一日中インターネットカフェに入り浸り、祖父のことなど気にも留めずゲームに夢中になっていた少年だったが・・・。 なにも知らずに観れば、監督はツァイ・ミンリャンだと見間違う人もいるのじゃないだろうか。それくらいに良く似ているミンリャン節の、リー・カンション初監督作。欠かせない長回し、ロングショット、摂食排泄の描写。一見、祖母が迷子になった孫を泣きながら探し回るだけのストーリーに見えるが、裏でもうひとつ、祖父と暮す現代っ子の少年の日常が動いている。預かりものの大切な孫がいなくなり、尋常ではないほど動揺する祖母の姿は痛々しい。パニックに陥り、泣き叫び、なりふり構わず半日中街を探し回るのだ。かたや少年は、祖父の用意してくれた弁当を公園に置き去り、ネットカフェでゲームとチャットに夢中になっている。 時に街角ですれ違いながら、一日の終わり、夜の公園でふたりは偶然出会う。ふたりは気づかないけれど、敷地の外には、迷子の孫と少年の祖父が、手を繋いで歩いている。年代も生活もかけ離れた二人が、親しい言葉を掛け合うでもなく吸い寄せられるように佇む、都会の夜の風景がちょっといい。時は奇しくも、新型肺炎SARSの脅威が台湾に迫ってるころ。新聞には見出しが躍り、少年の友人はSARSらしきの症状で行き倒れ、不穏な空気だ。子どもたちは不健康なネットカフェに入り浸り、老人たちは孤独。そんなたくさんのモチーフがさりげなく入り混じる。長回しで平坦な絵面を構成する、ある種退屈なミンリャン風の撮り方そのままに、確固たるものが浮き彫りにされないのはちょっとツライ。作品にのめり込ませる力が足りないのは、初監督ということで、これからに期待しよう。それにしても、ここまで作風が似てしまうのは・・どうだろう。本作についてリー・カンションが語った言葉を読むと、少し見えてくるものがある。彼の父親が亡くなって二年後に、母親に初孫ができたのだそうだ。母は孫を父の生まれ変わりだと信じて大きな愛情を寄せると同時に、孫になにかあったらという不安に苛まれ始めた。その姿から浮かんだ構想だという。本編は父に捧げられている。そういえばミンリャンの『ふたつの時、ふたりの時間』でも、祖母を演じた主演のルー・イーチンは、夫を亡くした喪失から立直れない母親を演じていたっけ。実生活と微妙にシンクロさせて映画を撮るのも、ミンリャン組み風といえるのかもしれない。それにしても現代の台湾と日本は、似てる。監督・脚本 リー・カンション 製作 ツァイ・ミンリャン 撮影 リャオ・ペンロン 出演 ルー・イーチン ミャオ・ティエン チャン・チェア(カラー/88分)
2009.01.06
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高台に豪邸を構える製靴会社の専務・権藤(三船)の子どもと間違えられて、運転手の子どもが誘拐される。身代金を要求する知能犯の医学生(山崎)と警察との、行き詰る攻防が始まる―――。 ウワサどおり、サスペンス映画の名作だった。いつものことながら、長尺が苦にならない黒澤監督。豪華な出演陣それぞれに見せ場があって、人物の心理描写はとても丁寧だ。老年となり貫禄ある名優となった仲代達矢や山崎努の、若き姿と演技が感慨深い。すでにギラギラと光るものを見つけるにつけ、なぜだか嬉しくて。山崎努は昨年の『おくりびと』がすごく良かったっけ。高台の豪邸で不自由ない暮らしをしている権藤を憎む犯人は、誤って運転手の子どもを誘拐するが、それに構わず身代金3千万円を要求し続ける。奇しくも、製靴会社を我が物にするため用意した5千万の小切手が、権藤の手元にはあったのだが・・・。社会的な立場と一家の暮らしを守るか、人命のためにすべてを犠牲にするか。身を切るような選択を迫られた権藤が出した答えは、運転手の子どもを救うため、犯人の指示に従うというものだった。 戸倉警部(仲代)の指示の元、周到な犯人が現金受け渡しの場所に選んだのは特急こだまだった。走る列車の窓から、人質の少年を確認し、金の入った鞄を投げ落とすまでの、緊迫した一連のシーンが素晴らしい。8台のカメラで、車内を駆け回る刑事たちの動きを捉えたのだそうだ。結局、犯人はまんまと金を奪い逃走するが、少年は無事に保護される。そして後半からは、犯人逮捕にむけての警察の捜査が描かれていく―――。5千万円用意できなかった権藤は会社での地位を失うも、新聞には美談として語られ人々の同情を得ていた。事件後、人間的な変化をみせていく様子が見事だ。豪邸のなにもかもが抵当に入り惨めな暮らしとなっても、愛する家族と新たな人生を歩もうとする真摯な姿が、控えめな三船敏郎の演技から滲み出ていて巧い。犯人逮捕への捜査の様子も丹念で、後半に入ってからも目が離せない。ホシに迫っていくうち、荒んだバーや生きる屍と化した麻薬中毒者たちが現れ、退廃した人々の生活が巧い具合に飛び込んでくる。彼らと権藤の暮らしを比べれば、まさしく天国と地獄だ。でも単に金持ちか貧乏かではなくて、精神の腐りきっている人間こそが地獄に位置するもの、としてでてくるのだ。必要悪でも、社会悪でもない。犯人が権藤を憎んだのも、自らの屈折した過去でもって精神を腐らせたからだ。その過去さえ語らず死刑になってしまう犯人を、どっしり見つめてその言葉に耳を傾けた、権藤の姿が印象的。二人の間の、人間的な隔たりがあまりに大きすぎる・・・。なんだか悲しい幕切れだった。忘れちゃいけない特筆すべきシーン。全編モノクロのなかで、ワンシーン一箇所のみ、カラーになるところがあった。それは身代金を入れた鞄に仕掛けた薬品が燃えて出る煙のシーン。モノクロの大都会に高々とそびえる煙突から、オレンジの煙がもくもくと上がるシーンは、すごいインパクトだ。この一部カラーという手法は、知っている限りでは、本作が一番古いような気がする。もっと古い作品にも使われているのか、黒澤氏が初めてなのか・・・ご存知の方がいらしたらぜひ教えてください。監督 黒澤明 原作 エド・マクベイン 『キングの身代金』 脚本 小国英雄 菊島隆三 久板栄二郎 黒澤明 音楽 佐藤勝 出演 三船敏郎 香川京子 佐田豊 仲代達矢 石山健二郎 木村功 加藤武 三橋達也 山崎努(モノクロ・一部カラー/143分)
2009.01.03
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