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渡部正和「釣行夜話 其之壱」小雪舞う師走の防波堤で、藤本さんは釣りを始めようとしていた。魚を釣りすぎて塗装の剥げ落ちたルアーをラインにしっかり結び付けると、彼はやや遠目のポイントを凝視した。そして、竿をしならせて投げようとした瞬間、彼の動きが止まった。目の前の海面に、Tシャツに麦わら帽子姿の中年男が浮かんでいるではないか。波の高低も関係なく、その身体は微動だにしない。上半身だけ海面に出しながら、防波堤と平行に『すーっと』移動し始める。その男がそのままテトラポットを通り抜けていったことを横目で確認すると彼は即座に撤退の準備を始めた。
2015.05.31
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平山夢明「ドンとしたもの」風と雨の強い夜だった。『駅から家に帰る途中、携帯でメールしながら歩いていたんですね』江本さんは不意に脇から現れた人影とぶつかった。『あ!』予想外に強い当たり方に傘が手を離れてしまった。その直後、一歩先に音を立てて倒れたものがあった。自動販売機だったという。見回しても、ぶつかって来た人はおろか、誰も居なかった。唖然としている彼女の携帯が震え、可愛がってくれていた祖母の訃報を聞いた。
2015.05.30
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「廃病院の窓辺に佇む死んだ院長の幽霊」求人の張り紙が以前から出ていた小児科医院へ面接を受けに行った。しばらく待つように言われシートに座って待っていると、診察室の入口付近に白衣を着た背の高い老人がいるのに気付いた。『こんにちは!』と声を掛けると、軽く会釈をして立ち去りました。しばらくすると診察室に入るように言われ、40代半ばの先生に採用をいただいた。勤務するようになって、度々見かける長身でメガネを掛けた白衣の老人の話を先輩看護師にすると、それは死んだ先代の院長先生だと教えられた。その後、医院がビルに建て替えられるため解雇となり、その町を離れた。数年後、結婚が決まったため、かつての先輩看護師へ連絡すると医院はビルに建て替えられることなく、今は廃墟となっているとのこと。『院長先生が、誰もいない2階の窓から見ているんだって・・・・』先輩看護師が近所の人から聞いた話とのこと。
2015.05.30
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北野誠「犬神祓い 賢見神社へ」西浦和也の知り合いのA君のつきあっている彼女が犬神の一族であるということ。その彼女と北野誠、西浦和也が合わないようで、特に西浦和也は命に関わるほどの大病をしてしまった。北野誠も身に覚えのない痣が足にできたし、A君が来ると不思議な事が起きたりする。もう、お祓いに行かないと本当にまずい。もう『犬神』の話は終わりにするべく、四国へ飛んだ。しかし、行くと決めたものの、神社までの道が大変なことになった。爆弾低気圧が抜けて快晴のはずが、強風に加え雹が降る始末。そして、カーナビまでも全く違う道を案内して、神社に辿りつけない。賢見神社へ辿りついたのは、お祓いの約束の時間を1時間以上も過ぎてのこと。それでも、お祓いは無事終了した。終わってから神官さんと話をすると、北野誠の痣は犬神の世界ではよくあることなんだと説明された。『あと、柔らかい、こういう所を噛まれます』そう言って示した場所は太ももの内側。そこは、西浦和也が入院するはめになった人喰いバクテリアにやられた場所・・・・
2015.05.30
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平山夢明「夜中のこと」 平山夢明里見さんが彼と渋谷のラブホテルに泊まったときのこと。『夜中にふと気付くと彼が腕枕をしてくれていたんですね。寝てから時間も経っていたし悪いなあと思って外そうとしたら』その瞬間、彼が≪うう~≫と短く呻いて反対側へと値返りを打った。『でも、腕枕はあたしの首の後ろに、しっかりされていたんです』≪えっ?≫と思った瞬間、回されていた指が動いて彼女の肩を、ぎゅうと抓ったという。それだけで彼女は気を失ってしまった。
2015.05.24
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高田公太神沼三平太ねこや堂「手ブラ」 ねこや堂小西君は幼馴染の雄大君から、できたばかりだという彼女を紹介された。照れ臭そうに雄大君の後ろから現れた彼女は、小柄で可愛らしい。胸に付いたリアルな模様が、パステルカラーのTシャツの色とそぐわないのが気になった。何度か見直して、その正体に気付く。両脇から伸びた大きな手が、彼女の乳房をしっかり掴んでいた。以来、彼女に会う度、小西君はどうしても胸に目が行く。手は今日もそこに張り付いている。
2015.05.24
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高田公太神沼三平太ねこや堂「ドライブ」 高田公太佐々木さん一家が海岸に向けてドライブをしていたときのことである。『ねえ、パパ。かお! いっぱい顔!』と、息子が声を上げ、窓の外を指さした。咄嗟に息子の見ているほうに夫婦で目を向けると ≪○○首塚≫ と書かれた立て看板があった。息子がそのような漢字も、内容も理解できるはずがない。『顔があったの?』『いっぱいあった! 顔あった!』佐々木さんはアクセル強く踏んで、早くその場を離れることしか考えなかった。
2015.05.24
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高田公太神沼三平太ねこや堂「俊足」 神沼三平太新幹線の窓から外を眺めていると、何かが新幹線と同じ速度で並走している。いや、まさか。最初は自分の見ているものが信じられず、別のものではないかと思いながら観察した。・・・・あれ、やっぱり人 だよね。自分自身に問いかけたくなるほど、不思議な光景。黒い服を着て、覆面をしている忍者姿の人影が、何処までも付いてくる。場所は、岐阜県から滋賀県に入ったあたりだという。
2015.05.24
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加藤一「タメスケ」夜、尿意で目が覚めた。暗い廊下をひたひた歩いてトイレに入った。トイレの明かりを点けたと同時に、窓の外からジャラジャラと鎖の音がした。丁度、トイレの外側にタメスケの犬小屋があるのだ。家族がトイレに起きるたびに目を覚ましてしまうのか、タメスケは自分を繋いだ鎖をジャラジャラ鳴らして犬小屋の周りをうろうろする。『いっぺん目を覚ますを夜中でも散歩連れて行けとか騒ぐんだよな、あいつ。しょうがねぇな~・・・』洗面所で洗った手をぷらぷら振りながら乾かして、勝手口に向かおうと・・・そこで気付いた。タメスケ。あいつ昨年に死んだんだ。その後、1度だけ『ふわうっ!』というヘタレた鳴き声を聞いた。確かにそれも長年聞き慣れたタメスケの一鳴きだった。
2015.05.22
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我妻俊樹「お昼寝」慎二さんは幼稚園に1ヶ月くらいしか通わなかったらしい。登園を嫌がったという記憶もないので不思議に思い、中学生の頃に母親へ尋ねた。『お昼寝の時間に、あんたが白目剥いておじいさんみたいな声で≪ゆるせ~ゆるせ~≫と唸るから保母さんが怖がっちゃって』と言われた。
2015.05.22
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