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御伽草子は、いつ誰がどのようにして書き遺したものかはっきりしていないようです。しかし、現代に生きる私たちが読み、広く世間に知られている「浦島太郎」の物語内容とは多少違っており、本来のお話がどんなものであったのかが分かって、私は読んでいて楽しいのです。
原文には「空にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝」、「鴛鴦の契り浅からずして」、「偕老同穴の語らひ」などの慣用句が多く用いられ、その分だけ平板になっておもしろみに欠けますが、龍宮城での四季の描写には弾むようなリズム感があって、音読して読み聞かせるには楽しいものがあります。
母親が幼いわが子に、また文盲の女性たちが文字の読める人の周りに集まって耳を傾けたのではないかと想像すると、当時の人々の「物語」に寄せるときめきが感じられ、心暖まる思いがします。
挿絵も8枚ほどあって、原文では太郎が「おじいさんになってしまった」という、はっきりした記載はないものの、蓋を開けた玉手箱から煙が立ち上り、つるんとした若い太郎の顔には、それまでなかった長い髭が描かれていて、「二十四五の齢も、忽ちにかはりはてにける」とありますから、挿絵を見ながら「おじいさんになってしまった」ことを想像したのでしょう。
次回からは同じ岩波書店・古典文学大系新装版の「御伽草子」から「一寸法師」を、原文になるべく忠実に現代語訳してみたいと思います。
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