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親などが付いていて娘を大切にし、深窓の中に養育している間では、
男がその女のほんの一部分だけを聞きつけて心を動かすこともあるでしょう。
顔がうつくしく、おっとりとし、若々しく、世間知らずな間は
人真似にでも習い事などをして、一芸に秀でることもありましょう。
女を世話する人は、欠点などは隠しておいて言ったりしませんし、
ありもしないことを良いように取り繕って吹聴するのだから、
聞く側の男にとっては見もしない女を想像して、
『そんなことはないだろう』などと、悪い方に考えるわけがない。
だからその女の評判を『本当か』と勝手に思い込み、連れ添うてみて、
それでやっと予想とはずいぶん違うことに気付くのです」
と、頭中将がうめくようにため息をつきました。
源氏の君はその様子に、
御自分よりずいぶん大人びた体験をしているように思われて気恥かしく、
きまりの悪い様子でいらっしゃいます。
頭中将の話の全てに対してではありませんが、
ご自分にも思い当たることがあるのでしょうか、ほほえみながら、
「その、何の才能もない女というものは、いるのでしょうか」
と、おっしゃいます。