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さてそんな女房たちの中に、
たいそう年をとった 典侍
(ないしのすけ)という老女がおりました。
家柄もよく気が利いて上品なので人からの評判も良いのですが、
たいそう浮気な性分なのです。
源氏の中将 は、
『このような年令になっても、どうしてこんなに好色なのだろう』
と、訝しくお思いになり、典侍にお戯れを言い掛けて試してみようとお思いになります。
すると典侍は源氏の中将との仲を、不相応とは思っていないのです。
源氏の中将は『呆れた』とお思いになるのですが、
さすがに面白くて典侍に話しかけなさいます。
それでも老女相手のお戯れを人が耳にしたならときまりが悪く、
よそよそしくお扱いになりますのを、典侍は『何と薄情な』と、本気で思っているようです。
ある日、典侍が帝の御整髪に奉仕した時のこと。
この日の典侍はいつもよりうつくしく、容姿や頭の格好がなよやかでした。
衣装の着こなしもたいそう派手で、いかにも色好みらしく見えますので、
源氏の中将が『いつまでも若い気でいるものだ』と、不愉快にご覧になるのですが、
『それにしても典侍は、どう思っているのだろう』と、
さすがに見過ごすことがおできにならず、裳の裾をお引きになります。