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「さゝわけば 人や咎めむいつとなく 駒なつくめる 森の木隠れ
(あなたには他に親しい駒がいるようですね。
笹を踏み分けて森の木隠れまで行ったなら、きっと人が非難することでしょう)
めんどうな事になりそうですから」
と仰せになってお立ちになりますのを、 典侍 がお袖を引っ張り、
「私はこの年になるまで、そのような悲しい恋をしたことがございませぬ。
今さらあなたさまに捨てられるとは、身の恥というもの」
と言って泣く様子が、ひどくみっともないのです。
「そのうち御文をと思いながら、なかなかできないのですよ」
源氏の中将が引き離しながらお立ち出でになりますのを、典侍は追いすがり、
「私との縁をお切りになるのですか」
と、恨むのです。