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フィルムを持ってきたのは、痩身に幼児を背負い
左右に小さな女の子を連れた彼の妻でした。
メガネをかけた顔には化粧っ気がなく生活に疲れたような表情をしていましたが、
子どもたちの身なりはきちんとしていて、
私はこの母親の穏やかな眼差しの奥にどことない知性を感じました。
そんなしっかり者の女性が夫の大切にしているフィルムを、
何も指示せずに店に預けるはずがない、と私は思いました。
彼女は「スライド用フィルム」であることを、夫から知らされていなかったのではないか、
と思ったのです。
しかし一方では(不遜にも私自身の不注意を棚上げして)
『夫の趣味を理解していたなら、普通の写真にするのかスライドなのかくらいは、
妻として判断できただろうに』とも思いました。
私は『牧師は誰かに八つ当たりしたかったのだ』と、勝手に想像しました。