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あの、有明に逢った女君は、源氏の君との儚い逢瀬を思い出しては
たいそうもの哀しく、眺め暮らしていらっしゃいました。
春宮への入内は四月ころと右大臣が決めていらっしゃいましたので、
どうにもならず思い乱れていらっしゃいます。
男君も女を訪ねたくお思いなのですが、手掛かりがなくはないものの
五の姫か六の姫かがはっきりせず、
また源氏の君をお許しにならない弘徽殿女御のお里でもありますので、
係り合いになると外聞が悪いとためらっておいででした。
そのうち三月の二十日過ぎに、右大臣の弓の試合に
上達部や皇族たちが大勢お集まりになって、その後藤の花の宴をなさいました。
桜の花盛りは過ぎたのですが、「ほかの散りなん後ぞ咲かまし
(他の花が散ってしまった後にこそ咲こう)」と教えられたのでしょうか、
遅れて咲く桜の木が二本あって、たいそう風情があるのです。
新しく造営なさった寝殿を、弘徽殿腹の姫宮たちの御裳着の日のために磨き立て、
立派に設えてあります。