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内裏で源氏の君にお会いになった折に、
右大臣がこの弓の試合をご案内申し上げました。
御子の四位の少将をお迎えにたてまつります。
「我が宿の 花しなべての色ならば 何かはさらに 君を待たまし
(我が家の藤の花が、みごとな色に咲きました。
あなたさまにこそぜひともお目にかけたく、お待ち申し上げております)」
ちょうど内裏においでだった源氏の君は、この歌を帝に奏上なさいます。
「得意げですね」
と、帝はお笑いあそばして、
「わざわざお迎えがあるようだから、早く行くがよい。
右大臣家には弘徽殿女御腹の皇女たちもおいでだから、
異腹のそなたが他人とは思えないのであろう」
など仰せになります。
源氏の君はお装束をお整えになり、たいそう暮れて、
先方から待ち遠しく思われたころにお渡りになります。
他の人が正装した中に、
桜襲の唐織りの綺の御直衣に葡萄染の下襲の裾をたいそう長く引いた
おしゃれでくつろいた姿で、人々にかしづかれてお入りになります。
そのご様子は格別に優雅でうつくしく、
藤の花も気圧されて反って興ざましなほどでした。