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もともと左大臣家の姫は、このような祭にお出掛けなどなさいません。
ましてご懐妊なさった今ではご気分までお悪いので、
ご見物など思いもよらぬことなのですが、若い女房たちが、
「私どもだけでこっそり見物するなんて、晴れがましくありませんわ。
今日の大将殿を拝見しようと、何の関係もない怪しい木こりや身分の賤しい山人でさえ、
遠い故郷から妻子を引き連れてやってくるのですもの。
それを北の方様がご見物にならぬとは、あんまりでございます」
と言いますのを、母・大宮がお聞きになり、
「今日はご気分もよろしいようですし、
と、大急ぎで御車の用意を仰せつけになりますので、御見物にいらっしゃいます。