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御息所の御手を、やはり何といってもこれほどの名手はいないだろうと、
源氏の大将はご覧になりながら、
『どう考えたものか分からぬのが、男女の仲というものだな。
心ばえも容姿もそれぞれ申し分ないのだが、
しかしまた、これと思い定めるべき女もいない』
と、お思いになります。
お返事は、たいそう暗くなってしまいましたが、
「袖だけが濡れるとは、どうしたことなのでしょう。
それは私へのご愛情が浅いからではありませんか。
浅みにや 人はおりたつ我がかたは 身もそぼつまで 深きこひぢを
(袖が濡れるとあなたさまはおっしゃるが、それはお情けが浅いからではありませんか。
私は身がずぶ濡れになるほど深い恋路に踏み込んでいるのに)
並みの気持ちでこの御返事を差し上げるのではありませんよ」
と書いてあります。