私訳・源氏物語

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July 31, 2011
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カテゴリ: 源氏物語

 かの御息所はこのような祝宴のご様子をお聞きになるにつけても、
心穏やかではいられません。

『かねては、お命も危ういと聞いていたものを。ご安産だったなんて......!』

と、お思いになるのでした。

不審に思って呆然自失のお気持ちを辿ってごらんになると、
不思議な事に御衣などにも芥子の匂いが染み込んでいます。

御髪をお洗いになり、お召し物も着がえてごらんになるのですが、
どうしても芥子の匂いがとれませんので、我が身ながら厭わしくお思いになります。

ましてこれを世間の人がどう言い、どう思うかなど口に出して言うべき事ではなく、
御息所の御心ひとつに納めてお思い嘆くしかありません。

御息所の御乱心は、ますますひどくなって行くのでした。

 源氏の大将殿はご安産に少し安堵なさいました。


御息所へのご訪問もつい間遠になってしまった事を心苦しく、
そうかといってまた、『直接御息所にお目にかかるのは、いかがなものだろう。
きっと厭な気持になるであろうから、あの方にとってはお気の毒な事になろう』
と、様々お思いになり、御文だけを差し上げるのでした。






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最終更新日  March 6, 2017 09:03:15 PM
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