私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

February 1, 2012
XML
カテゴリ: 源氏物語

別れは口惜しく悲しく、

「私もご一緒に」

と、泣きながら故・院を見上げなさいますと、そこには誰もいないのです。

ただ月の面がきらきらと輝いているばかりなのですが夢と思えず、
まだ故・院がいらっしゃるような心地がなさいます。

空には心に沁みるような雲がたなびいていました。

今まで夢にさえお逢いしたこともなく、恋しく気がかりにお思いだった院の御姿を、
ほんの僅かではあってもはっきりと拝見したそのご様子だけはありありと思い出されて、

「私が悲運の底に沈み、このまま死んでしまおうとしたのを助けるために
天翔けておいで下さったのだ」

と、ありがたくお思いになり『この暴風雨があってこそ』と、
夢の名残を頼もしく嬉しくお思いになるのです。

 それでも思わず故・院恋しさに御胸が塞がり、お逢いしたために反って御心が乱れ、
ここでの悲しい暮らしも忘れて
『夢の中で院にいま少し御返事を申し上げなかったことが、なんとも残念であった』
と、気が晴れません。

『また夢に見られようか』と、ことさら寝ようとなさるのですが、
眠ることがおできにならぬまま夜が明けてしまいました。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  March 6, 2017 11:12:38 AM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: