私訳・源氏物語

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October 4, 2012
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カテゴリ: 源氏物語

[源氏物語] ブログ村キーワード

「私が斎院の姫君に御文を差し上げるのを、邪推なさっていらっしゃるでしょうか。

それは全く見当違いな事ですよ。いつかきっと、ご自分でそれがお分かりになるでしょう。

朝顔の姫宮は斎院時代からこの上なく遠慮深い御方でいらして、
私など寄せつけもなさらぬご性分でいらっしゃいます。

まあ、もの寂しい折々に御文を差し上げる事はあるけれど、
あちらでも所在なくしておいでの折には、たまにお返事をくださる程度で、
本気の恋ではないのですよ。

わざわざお話しするほどの事でもありませんから、あなたはご心配なさいますな」

と、一日中紫の女君をお慰め申し上げるのです。

雪がたいそう降り積もった上に、今も降り続き、雪に覆われた松と竹の恰好が
風情あるように見える夕暮れで、源氏の大臣の御姿も光が増したように見えます。

「四季折々につけて人の心を惹きつける花や紅葉の盛りよりも、
冬の夜の冷たく澄んだ月に雪の光が調和した空の景色こそ、
華やかな色合いはないものの不思議に身に深く感じて、
この世以外のことまで思いが馳せられ、面白さも哀れさも残る所なく感じる時なのです。

殺風景で面白味がないと昔の人が言ったのは、何とも心浅い感想ですね」

と、御簾を巻上げさせなさいます。

月が隈なく差し出て辺り一面が白一色です。

雪の重みで枝の下がった前栽の姿が痛々しく、鑓水は凍って流れがつかえ、
池の水もぞっとするほど凍り付いたお庭に童女たちを下して、
雪まろばしをおさせになります。

可愛らしい姿や頭の恰好が月明かりに映えて、
大柄で物馴れた童女たちは、様々な色の袙を無造作に着て、
帯をしどけなく結んだ宿直姿が上品な上に、
袙からこぼれるほど長い黒髪の末がお庭の白さにいっそうくっきりと引き立っています。

小さな童女たちは子どもらしく、喜んで走り回っては扇などを落としてしまうのですが、
それにも気付かず打ち解けた表情をしているのが可愛らしいのです。

皆『少しでも大きく丸めよう』と欲張るのですが、
なかなか転がすことができず難儀しているようです。

片方では別の童女たちが東の簀子に出て、じれったそうに笑っています。






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最終更新日  October 4, 2012 02:49:44 PM
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