私訳・源氏物語

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October 23, 2012
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カテゴリ: 源氏物語

内大臣には弘徽殿女御の他にもう一人娘がおわしました。

このおん娘の母君は皇族の血筋でいらっしゃいますので、
高貴なことでは弘徽殿女御に劣ることはないのですが、
その母君が今は按察大納言の北の方となりまして、
当面大納言との子どもの数が多くなりましたので、
内大臣は『その子らと一緒にして按察大納言に娘を譲るのは筋違いであろう』
とお思いになって、実母からお離しになり、祖母の大宮にお預けになったのでした。

内大臣は、弘徽殿女御に比べてずっと軽んじていらしたのですが、
人柄や見目形などがたいそううつくしい姫君でいらっしゃいました。

源氏の大臣の若君は、祖母の大宮のおん元でこの姫君と共にお育ちになりましたが、
姫君の父・内大臣が、

「いとこ同士とはいえ、女は男に打ち解けるものではない」

と、十歳を過ぎたころからお部屋を別々にしてしまいました。

若君は幼心に恋しい気持ちがなきにしもあらずで、
ちょっとした花紅葉につけても、お人形遊びのご機嫌取りにも睦まじくいつも一緒で、
お互いに気心がよく分かっていらっしゃいましたので、
姫君も恥ずかしがって隠れるということがありませんでした。

お世話する乳母や女房たちも

「十歳を過ぎたからといって、心配なことなどございませんわ。
幼い同士でいらっしゃるのですもの」

「今までずっとご一緒にお育ちになった仲でいらっしゃいますのに」

「急に引き離すなんて、どうしてこんなにばつの悪い思いをおさせになるのでしょうね」

と言いあいます。

姫君こそ子どもらしく無心におわすのですが、
若君はあんなにたわいない幼いお年ごろと見えて、
大胆にもどのような御仲でいらしたのでしょうか。

お居間も別々で思うように逢えず、落ち着かなく思っているようなのです。

未熟な筆跡ながら、
生い先が楽しみなふうにお書き交わしになる御文の数々には、
子ども心の不用心から他人の目に触れる折がありますので、
姫君方の女房たちの中には、お二方の恋心を何となく知れる者もあったのですが、
誰に何と申し上げることができましょう。

見て見ぬふりをしていたのでございます。






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最終更新日  October 23, 2012 03:15:29 PM
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