私訳・源氏物語

私訳・源氏物語

PR

プロフィール

佐久耶此花4989

佐久耶此花4989

カレンダー

バックナンバー

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

キーワードサーチ

▼キーワード検索

November 20, 2012
XML
カテゴリ: 源氏物語

若君は一人取り残されてひどくばつが悪く胸が塞がり、
自分のお部屋でお寝みになってしまいました。

そのうち御車が三つばかり、前駆の声も控えめに
大急ぎで出て行かれる気配がしますので、若君はいたたまれないお気持ちになります。

大宮の御前から「こちらへいらっしゃい」とお言葉があるのですが、
狸寝入りして身動きもなさいません。

涙ばかりが流れて止まらず泣き明かして、霜がたいそう白く降りた早朝、
急いで二条院にお帰りになります。

『泣き腫らした目を人に見られるのは恥かしいし、
大宮が私をお引き留めなさるであろうから、一人になれる所に』

と、大急ぎで大宮邸を後になさるのでした。

誰のせいでもなく自分のしたことを心細くお思い続けになります。
空の気色もひどく曇り、あたりはまだ暗いのでした。

「霜氷 うたてむすべる明けくれの 空かきくらし 降る涙かな

(霜や氷がひどく凍てつく明け方の暗い空。
その空を曇らせて降る雨は、まるで私の涙のようではないか)」

源氏の太政大臣邸では、今年の新嘗祭に五節の舞姫を朝廷にたてまつります。

格別準備なさることはないのですが、その日が近くなりますと
舞姫に付き添う童女たちの装束の準備を急がせなさいます。

東の院にお住いでいらっしゃる花散里の御方には、
参内する夜の者たちの装束の用意をおさせになります。

源氏の大臣は全体の準備をなさり、梅壺中宮(斎宮の女御)からは、
童・下仕への分を過分に奉納なさるのでした。

去年は藤壺中宮崩御の諒闇でこの儀式が停止になり、
張り合いがなくて寂しかったのですが、その反動のように
今年は殿上人の気持ちもいつもより陽気に思える年ですので、
舞姫をたてまつる家々では互いに競ってたいそう立派に、
贅を尽くしていらっしゃるようなのです。

公卿からは姫君の父・按察大納言と内大臣の弟・左衛門の督が、
受領分では、今は近江の守で左中弁となった良清が舞姫をお立てになります。

皆この五節の舞姫を女官として内裏に仕えさせるべく、我が娘をたてまつるのでした。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  November 20, 2012 03:04:20 PM
[源氏物語] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: