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女君達は、彼岸のころにお移りになります。
御方々が一度に移るようにとお決めになっていらしたのですが、
それでは大騒ぎになろうという事で、中宮は少し延期なさいます。
例の、おっとりと穏やかで気どりのない花散里の君は、
その夜紫の上に付き添ってお移りになります。
春のお庭の様子はこの季節にはぴったりしないのですが、
うつくしさは際立っています。
御車が十五、前駆の者は四位や五位が多く、
六位の殿上人はしかるべき者だけをお選びになってお供させます。
それほど多いということはありません。
世間の非難もあろうかと簡素になさったので、
何事も仰々しく厳めしい事はないのです。
花散里のご様子も紫の上に劣ることなく、
侍従の君が付き添ってお世話していらっしゃいますので
『ほんに、御子息として大切にお世話なさるからであろう』と思われました。
何よりも行き届いていてみごとなのは、お仕えする女房たちの細かな部屋割でした。
五・六日過ぎて、中宮が宮中から六条院に退出なさいます。
この御儀式がまた簡素とはいうものの、たいそうなご威勢でいらっしゃいます。
すぐれたご幸運は申すまでもありませんが、
お人柄が奥ゆかしく重々しくいらっしゃいますので、
世間からの信頼も際だっていらっしゃるのでした。
六条院の町々の仕切りには塀を設け廊などを造り、
互いに行き来できるようにして親しく打ち解け、
風流な間柄になるよう造られていました。