私訳・源氏物語

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December 12, 2012
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カテゴリ: 源氏物語

八月(はづき)には六条院が完成しましたので、そちらにお移りになります。

源氏の大殿は、

『未申(南西)の町は、梅壺中宮(斎宮女御)の元のお邸であるから、
そのままお住みなさるだろう。

辰巳(東南)は我が住いとするべき町。

丑寅(北東)は、東の院に住んでいらっしゃる花散里の御方、
戌亥(西北)の町は明石の御方に』

とお決めになりました。

もとからあった池や山で不都合な所は取り崩し、鑓水や池の趣き、築山の趣向を変えて、
それぞれの町に住まわれる女君たちのご希望に沿う趣向にお造らせになりました。

南東は山を高く、春の花の木を数限りなく植え、池の趣きも奥ゆかしく、
御前に近い前栽には五葉の松、紅梅、桜、藤、山吹、岩躑躅(いわつつじ)といった
春の観賞用の木草の中に秋の前栽を目立たないように混ぜて植えてありました。

梅壺中宮の御殿はもとからあった山に色の濃い紅葉を植え、
澄んだ泉の水を遠くまで流しやり、その途中で水音を立てるように岩を立て、
瀧を落として、広々とした秋の野の風情です。

そこには今の季節にぴったりの草花が咲き乱れていて、
嵯峨の大井あたりの秋の野山も見劣りするようなお庭なのです。

北の東の花散里のお住いには涼しげな泉があり、
夏には木陰を作るように木々を繁らせてあります。

御前に近い前栽には下風が涼しいようにと呉竹を植え、
木高い森のように植えた木々が面白く、
山里のように周囲には卯の花の垣根を特別に回して、
昔を偲ばれる花橘、撫子、薔薇、りんどうなどを植えて、
春秋の木草をその中に混ぜてありました。

東面には馬場殿を造り、土塀を構えてあります。

そこは五月の御遊び所ですので、池のほとりには菖蒲を植えて、
向かいの御厩には立派な上馬たちを揃えさせるのでした。

明石の上の西の町は、北面と築地で隔てた御蔵町です。

隔ての垣根にはから竹を植え、松の木が繁り、雪を観賞するのに好都合なのでした。

初冬の朝霜が見られるようにと菊の籬に、我が物顔に紅葉する柞原や、
名も知らぬ深山木などを移し植えてありました。






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最終更新日  August 20, 2017 04:00:43 PM
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