私訳・源氏物語

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October 4, 2014
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カテゴリ: 源氏物語

松原にはるばると立て連なる御車の、
風に吹かれた下簾の隙間からこぼれるお袖の色は、
まるで常緑の松の蔭に花の錦を引いたようです。

身分によってそれぞれ決まった色の袍を着た人が、
風流な懸盤を取り次いで召し上がりものを給仕する様子を、
下人たちは目を見張っています。

明石の尼君の御前には浅香の折敷に青鈍色の上掛物をして、
精進料理が運ばれて参ります。
人々は、

「何とも幸運な女であることよ」

と、蔭口を言うのでした。

行きは仰々しいほど様々の奉納品あったのですが、
帰りは身軽になりましたので物見遊山をお尽くしになりました。

それをいちいち書き続けるのもうるさく面倒ですので、省くことにいたします。

尼君は、身に余る光栄なおん有様につけても、
夫・入道がこれを見聞きできない山奥にいらっしゃることだけが
残念に思われるのでした。

けれどそれは難しいことでもあり、みっともない事でもありましょう。

しかし世間の人はこれを「幸運」の例として、
高い望みを持つことが流行りそうなご時勢なのです。

何につけても感心し驚いては、世間のはやり言葉で「明石の尼君」と、
幸せ者をはやし立てるのでした。

致仕の大殿の娘・近江の君は、双六を打つときの言葉にまで
「明石の尼君、明石の尼君」と言って賽の目に祈るほどでした。

入道の帝・朱雀院は、たいそう熱心に仏道修行にはげんでいらして、
宮中のおん事にもご関心がなく、
春秋の行幸の折には昔をお思い出しになることもあるようなのでした。

ただ女三宮の御ことだけは今も見捨てることがおできにならず、
六条院の大殿は表向きのおん後ろ身としてお立てになりながら、
内々のお心配りをいただけるよう、今上に上奏なさるのです。

それで女三宮は二品になり給いて御封(みふ)などが増し、
ますます華やかなご威勢におなりなのでした。







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最終更新日  August 19, 2018 08:19:07 PM
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