私訳・源氏物語

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September 7, 2016
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カテゴリ: 源氏物語
対へお渡りになりまして、
のどやかに御物語などなさいますうちに日が暮れてまいりました。

昨夜、かの一条の宮に参上した際のご様子などをお話し申し上げますと、
ほほえんで聞いていらっしゃいます。
しんみりとした昔のお話しでご自分に関した事には大殿も相槌をお打ちになって、

「二宮さまが想夫恋をお弾きになったのは、どういうおつもりなのかね。

なるほど、昔の例にも引き合いに出すような折柄ではあるものの、
女はやはり、男が心動かされるほど長く弾くべきではありません。

大将が衛門督との友情を忘れないことは良いのだが、
同じ好意であるなら懸想心などではなく
潔白な心で宮さまをお世話して差し上げることが、
誰のためにも奥ゆかしく傍目にも好感が持てると思いますよ」

と仰せになります。大将は、

『おっしゃる通りだ。しかし、浮気心について自信たっぷりにお説教なさるが、
父上ご自身、人の事など言えるものか』

と、お思いになります。

「私には何の邪心もございませぬ。
ただ亡くなられた当座だけで、その後ぱったり見舞わなくなりますれば、
反って世間によくある色恋と疑われましょう。
それでお見舞い申しているのでございます。

想夫恋の件は、二宮さまがご自分からお弾きになったのであれば、
父上が仰せの通り不謹慎といえましょう。

しかしもののついでにほのかにお弾きになりましたのは、
折から趣深く風情がございました。

何事も人により、その事柄によるのでございましょう。

宮さまのお年なども、もう軽率な事をなさる若さではいらっしゃいませんし、
私もふざけたり浮気っぽいことには疎いものですから、
打ち解けてくださるようでございます。
宮さまは親しみ深く感じの良いお方でいらっしゃいます」

と申し上げる間に、好機とお思いになって、少し膝をお詰めになり、
かの夢語りをお話しになります。

大殿は黙って聞いていらっしゃるのですが、
心中では思い合わせる事があるのでした。





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最終更新日  September 7, 2016 08:57:23 PM
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