私訳・源氏物語

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佐久耶此花4989

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September 6, 2016
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カテゴリ: 源氏物語
大将は『そういえば、まだ若君をよく見ていなかったな』とお思いになって、
御簾の隙間から覗いてご覧になります。
花の枯れた桜の枝が落ちていますのを取って、お見せになりながら手招きなさいますと、
走り出ていらっしゃいました。
ニ藍の直衣だけを着て、肌はたいそう白く輝くようです。
可愛らしさでは明石女御腹の皇子たちよりも繊細な綺麗さがあり、
丸々と肥って気品があります。
格別な気持ちで見るせいでしょうか、眼差しが衛門督より少し強く、
才気のある様子などが勝っているのですが、
目じりの切れ目あたりがうつくしく薫り立つような様子はそっくりでいらっしゃいます。
口元は際立ってはなやかで、にっこりなさるところなどは
『初めてみるからであろうか、こんなに似ているとは。
これでは大殿が気付いていらっしゃるに違いない』とお思いになり、
ますますお気持ちが知りたくなるのでした。
明石女御腹の宮たちは、そう思って見るせいでしょうか、いかにも高貴な感じがします。
それでも普通の可愛らしい稚児たちにしか見えないのですが、この君はたいそう気品があり、
容姿は格別に優れて可愛らしいので、宮たちに比べながら、

『やれやれ、何ともお気の毒なことではないか。もし本当に衛門督のお子だとすれば、

父・致仕大臣が呆けてしまうほどのお悲しみの中で、せめて遺児でもいてくれたら、

と泣き焦がれていらしたが、お耳に入れ申すことができないのも、罪作りなことだな』


と思うにつけても『どうしたものか』と思案なさるのですが、如何ともし難いのです。

若君は容姿ばかりか気立てまで優しく素直ですので、

遊んでおあげになりますうちに可愛らしく思わずにはいられないのでした。






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最終更新日  September 6, 2016 02:42:18 PM
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