私訳・源氏物語

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July 29, 2018
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カテゴリ: 源氏物語



内裏におかれましても今上の妹宮でいらっしゃいますし、
朱雀院からも頼まれておいででしたので、お心寄せが深く、
中将をたいそう可愛い者に思召され、
明石中宮もまた、もとより父君が同じでいらっしゃる上に、
六条院で皇子たちとご一緒にお育ちになりましたので、
今も同じお扱いをなすっておいでです。院が生前、

「一番末にお生まれになって、
この子が成人なさるまで見届けられないことがお可哀そうだ」

と仰せでいらしたことをお思い出しになりますので、
大切にしていらっしゃいます。

右大臣も我が御子の君達よりも中将をあれこれ大切になさって
お世話申していらっしゃいます。

昔、光君と申し上げた御方は
桐壺帝からのまたとないご寵愛を受けていらっしゃいましたが、
嫉妬なさる方があまたいらした上に、
母方にはしっかりしたおん後見もありませんでしたので、
ご思慮が深く世の中に対しては穏やかにお振舞いになって、
並びないご威光も目立たぬように控えめに身を処し給いて、
ついには世の騒動にもなりかねなかったことさえ、
穏便にお済ませになりました。

後世のためのお勤めも時期を過ることなく、
何事につけさりげなくなさいましたのは、
いかにも悠長で鷹揚なご一生でいらっしゃいました。

しかし中将の君は、
まだ年端もゆかぬ早い時期に世間からの声望がありすぎ、
気位もこの上なく高くていらっしゃるのでした。

ほんに前世からの因縁があって、人間界に生まれるなずではないのに、
この世に生まれ給うた人のように見えるのでした。

顔かたちもどこといって優れたところがあって、
ああうつくしいと見えるところはないのですが、
若々しく、こちらが恥ずかしくなるほど優美で、
しかも心の深みが計り知れぬという感じが他の人と違っているのでした。





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最終更新日  July 29, 2018 09:22:47 PM
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