私訳・源氏物語

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December 12, 2024
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カテゴリ: 源氏物語

中納言は妻戸を押し開けて、

「ほら、あの空を見て御覧なさい。
十八夜のうつくしさを知らずに寝ていられましょうか?
風流人を気取るわけではありませんが、
秋の夜長をまんじりともせずに過ごす夜な夜なの寝覚めには、
後の世のことまで思いやられてしみじみと哀れな気持ちになるのですよ」

などとごまかして、お立ち出でになります。

中納言は特に女房を喜ばせるような言葉を尽くしたりなさいませんが、
優雅で上品なご様子でいらっしゃるからでしょうか、
薄情者と思われることもなく、ちょっとしたお戯れであっても
『もっとお側近くでお姿を拝見していたい』と思う女房がいて、
すでに尼となられた母宮に無理やり縁故を求めて奉公しているので、
身分相応に可哀そうなことも多いのでした。

一方匂宮は、昼の間に六の姫君のお姿をご覧になって、
そのうつくしさにすっかり夢中になっておしまいでした。

からだの大きさが程よく、優美で、
髪の下がり具合や頭つきなどがとくにみごとなのです。

お顔の色つやがまるで匂うほどつややかで、
重々しく気品のあるお顔の目元は見る人が恥じらうほど気高く愛らしく、
非の打ち所のないお方なのでした。

二十歳を一つ二つ越えていらっしゃいますので子供という年齢ではなく、
未熟で不足なところがなく、今を盛りの花と見えるうつくしさです。

大殿が限りなく大切にご養育なさいましたので、不完全なところがなく、
ほんに親としてはこの娘に心もとろけてしまうほどでありましょう。

もの柔らかで愛敬があり可愛らしいことでは、
かの対の中君を第一に思い出されるのですが、
六の君はお返事なさる時も恥じらっておいでですけれども、
おぼつかないと言うことはなく、何事も見どころと才気がありそうなのです。

お傍には若く美しい女房が三十人ほど、童が六人、みな醜いのはなく、
装束などもいつものとは様子を変えて意匠を凝らして揃えてありました。

北の方腹の大君を春宮に差し上げた時よりも
このご婚儀を特に大切にお世話なされたのも、
匂宮のご声望やお人柄によるものだったのでございましょう。






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最終更新日  December 12, 2024 07:25:51 PM
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