私訳・源氏物語

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December 24, 2024
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カテゴリ: 源氏物語
匂宮は今までの無沙汰に心を痛められて、
急に二条院へお帰りになったのでした。中君は、

『宮さまを、お恨みすることなどできないわ。
すねている様子もお見せするまい。宇治へ行きたいと思っても、
頼りとする中納言様が困った料簡をお持ちになるのですもの。
どうしたものやら』

と思いますと、世の中がひどく窮屈で生きづらく、

『やはり女は辛い身の上なのだわ。
ならばせめて生きている間は成り行きに任せて穏やかに暮らそう』

との思いに至って、可愛らしく素直に振る舞っていらっしゃいますので、
宮はたいそう嬉しくお思いになり、
長い間の無沙汰を限りなくお慰めになります。

中君はお腹も少し目立つようになり、
腹帯が引き結ばれている様子などがたいそう愛らしく、
妊婦をご覧になったことがありませんので珍しくお思いになります。

いままで気の置けない六条院にいらしたので、
二条院にお帰りになりますと万事が気楽で懐かしくお思いになって、
あれこれ優しくお約束なさいます。中君は、

『男の人というものは、こんなに口の上手いものなのかしら』

と、昨夜もしつこかった中納言の様子も思い出されて、

『長い間ご親切なお方でいらっしゃると思い込んできたけれど、
昨夜のような下心を見てしまっては、あるまじき事と思うにつけても、
この先のお約束など頼みになるまい』

と思いながらも、少しは心を惹かれるのでした。

『それにしても、すっかり油断させておいて御簾の内に入ってくるなんて、
何ということをなさるのでしょう。
お姉さまと実事がなかったということはほんに奇特ことではあるけれど、
やはり中納言には心を許すべきではないわね』

と、用心なさるのですが、宮のお越しが途絶えがちになりますと、
中納言がこの時とばかりにやって参りますのでひどく恐ろしく、
それをはっきりおっしゃることはできませんけれども、
以前よりは宮を引き留めておくようお振舞いになります。

宮はそのような中君をたいそう愛おしくお思いになります。

それでも世の常の香りとは違った中納言の移り香が、
はっきりと中君の衣にしみ込んでいますので不審にお思いになり、

「中納言と、なにかあったのですか?」

と、お尋ねになります。

中君は言い訳のしようもなく黙り込んでいらっしゃいますので、

「やはり!こんなこともあろうかと不安に思っていたのです。
今までずうっとおかしいと疑ってはいたのですが」

と、お胸がどきどきなさるのでした。





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最終更新日  December 24, 2024 10:54:40 AM
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