Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2017/12/05
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 76.ソルティ・ドッグ(Salty Dog)

【現代の標準的なレシピ】
【スタイル】 ビルドまたはシェイク

 「ソルティ・ドッグ」は、「英海軍生まれのカクテル」と言われ、多くのカクテルブックでもそのように紹介されています。この定説への異論は聞かれませんが、誕生の時期については、1930年代~40年代と幅があり、詳細は不明です。

 カクテルに関する著作も多い作家のオキ・シロー氏はその著書「カクテル・コレクション」(1990年刊)で「1940年代に誕生したジン・ベースのソルティドッグ・コリンズが前身」と紹介しています。「ソルティドッグ・コリンズ」は、ジン・ベースでライム・ジュース、塩少々、ソーダ(適量)というレシピです。

 オキ氏は根拠となる一次資料を明示していませんが、他にもこの「ソルティドッグ・コリンズ起源説」を紹介するサイトもあり、ソルティドッグ・コリンズが40年代に存在したことは事実なので、そのライム・ジュースがグレープフルーツ・ジュースに代わったバリエーションが、「ソルティ・ドッグ」として定着していったという説にはそれなりに説得力はあるかと思います。

 「ソルティ・ドッグ」(塩辛い犬=「犬」は転じて「野郎」というような意味)とは、スラングで「海軍の甲板員」のこと。いつも波しぶきを浴びて、体じゅうに塩気を帯びていることから、この名がついたと言われています。スノー・スタイルは、潮まみれで仕事をする甲板員をイメージしているとのことです。

 一方、「Dog」は、綴りの文字順を入れ替えた「God」すなわち「塩(海)の神(God Of Salt)」を意味するという説もあります(出典:Webの専門サイト)が、裏付ける資料は明示されていません。

 以上のような経緯、すなわち当初の「ソルティ・ドッグ」はジン・ベースだったということはバー業界でもあまり知られていません。ちなみに昔は、グラスの縁に塩を付けるスノー・スタイルではなく、塩をひとつまみ直接放り込んだり(または一緒にシェイク)して飲むというスタイルが一般的でした。現在のようなウオッカ・ベースで、グラスをスノー・スタイルにするというやり方は、1970年代以降に米国の西海岸で誕生したと言われています(出典:Suntory HPほか多数)。

 欧米で「ソルティ・ドッグ」の知名度が上がったのは1950年代の後半以降です(当初は、前述の通りジン・ベースが主流でしたが)。その後70年代以降、トロピカルカクテル・ブームにも乗って世界的に広く普及しました。しかし意外にも、50~70年代のカクテルブックで収録している例は、なぜかそう多くありません。

 「ソルティ・ドッグ」が、(欧米の)カクテルブックで初めて紹介されたのは、現時点で確認できた限りでは、米国で出版された「Mr Boston Official Bartender's Guide(ミスターボストン・バーテンダーズ・ガイド)」(1935年初版刊)の1953年の改訂版です。そのレシピは、「ドライ・ジン60ml、グレープフルーツ・ジュース120ml、氷、塩ひとつまみを加えて、よくかき混ぜる(ビルド・スタイル)」でジン・ベースです。

 ウオッカ・ベースでの欧米初出は、現時点で確認できた限りでは、フランスで1983年に出版された「The Larousse Book Of Cocktails(ラルース・ブック・オブ・カクテル)」です。そのレシピは「ウオッカ30ml、グレープフルーツ・ジュース適量、氷、グラスはスノー・スタイルに」となっています(70年代のカクテルブックでの収録例をご存知の方は、ご教示ください → arkwez@gmail.com までお願い致します)。

 ソルティ・ドッグのベースがジンからウオッカに移行していくのは、概ね1970年代後半から80年代前半にかけてです。その理由は明確ではありませんが、第二次大戦後、米国で急速に普及したウオッカの販売戦略としてトロピカル系カクテルが活用されたことに加えて、ジンに比べてクセの少ないウオッカの方がカクテルのベースとしては使いやすく、バーテンダー側、客側の双方から選ばれていったのではないかという専門家もいます(ただし、米国内では現在でもジン・ベースのソルティドッグも割と普通に飲まれています)。

 ちなみに、スノー・スタイル(塩)なしでこのカクテルを作れば、「ブル・ドッグ(Bull Dog)」、「グレイハウンド(Greyhound)」または「テールレス・ドッグ(Tailless Dog)」と呼ばれます。

 ご参考までに、70年代以降の欧米のカクテルブックで、「ソルティ・ドッグ」がどのように紹介されているかを、少し見ておきましょう。

・「The Bartender's Standard Manual」(Fred Powell著、1979年刊)米 
 ジン2ジガー、グレープフルーツ・ジュース4ジガー、塩ひとつまみ、氷(ビルド)

・「The Book of Cocktails」(Jenny Ridgwell著、1986年刊)英
 ウオッカ45ml、グレープフルーツ・ジュース適量、氷、グラスを塩でスノー・スタイルに(ビルド)

・「American Bar」(Charles Schumann著、1994年刊)独
 ウオッカ50ml、グレープフルーツ・ジュース50ml、グラスを塩でスノー・スタイルに(シェイクし、ショートカクテル・スタイルで)

・「New York Bartender's Guide」(Sally Ann Berk著、1995年刊)米
 ウオッカ2オンス(60ml)、グレープフルーツ・ジュース適量、氷、グラスを塩とグラニュー糖でスノー・スタイルに(ビルド)

・「Complete World Bartender Guide」(Bob Sennett著、2007年刊)米
 ウオッカ2オンス、グレープフルーツ・ジュース適量、氷、グラスを塩でスノー・スタイルに(ビルド)

 「ソルティ・ドッグ」は日本には、1960年代、沖縄駐留の米軍を通じて広まりました。本土の街場のバーで知られるようになるのは70年代以降です。とくに大きなきっかけとなったのは、サントリー社が70年代後半から80年代初めにかけて展開した「トロピカル・カクテル・キャンペーン」です。そして、80年代前半までには日本国内でも幅広く認知されるようになりました。

【確認できる日本初出資料】 「たのしむカクテル」(今井清著、1976年刊)。レシピは「ジン45ml、グレープフルーツ・ジュース適量、グラスはスノー・スタイルで」となっていて、70年代半ばの日本でも、ジン・ベースが一般的だったことが伺えます。
 しかし、著者の今井氏は「最近はウオッカでつくることも多くなってきました」とわざわざコメントを残しており、この頃から日本でも、ベースがジンからウオッカへ移行していったことも分かります。



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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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