教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
July 29, 2005
XML
カテゴリ: 思わず納得!
理由あって、第2次世界大戦中のアメリカにおける日系アメリカ人の強制収容問題について、あれこれ調べものをしています。卒論でこのテーマを選んだ学生がいるものですから、指導する側としても若干の予備知識を持っておかなければなりませんのでね。

で、調べ始めて初めて知ったのは、当時のアメリカ政府が日系アメリカ人を強制収容に踏み切った理由というのが、かなり馬鹿馬鹿しいものだったらしい、ということです。アメリカ西海岸沿いに居住して農業を営んでいた日系アメリカ人が、その畑の刈り込み方によって日本軍の潜水艦に暗号を送り、アメリカの情報を漏らしているのではないか、とか、そんなような下らない嫌疑なんですよ。もちろん実際にはそんなことをやっていたはずもないので、実害は一つも報告されていません。しかし「実害がまだ出ていないということは、秘密裏に陰謀が行なわれている何よりの証拠である」というトンデモナイ理屈によって、結局日系アメリカ人は「敵性外国人」として強制収容の憂き目にあってしまった。要するに、そういう不当な行為を正当化するだけの人種差別的反日感情が、当時のアメリカにはあったということですね。

で、こういう不当なアメリカ政府の措置に対し、当時の日系アメリカ人たちは様々な反応を示した。たとえば先日亡くなったフレッド・コレマツ氏のように、裁判に訴えて政府の不当な行為を糾弾した人たちがいるかと思えば、強制収容による屈辱や財産の喪失によってアメリカ国家への不信を強め、国家への忠誠を拒んでさらにひどい扱いを受けることになってしまった人たちもいる。またその一方で、「敵性外国人」という汚名を雪ぐべく、自分たちのアメリカ国家への忠誠を身をもって示すためにアメリカ軍に志願し、勇猛果敢に戦った人たちもいる。陸軍442部隊なんていうのはそうした日系アメリカ人兵士からなる部隊ですが、ここは米軍史上もっとも多くの武勲章・名誉戦傷章を授与された部隊なのだそうです。それはまた、もっとも高い割合で戦死者を出した部隊であったことも意味するのですが。

しかし、こうした日系アメリカ人の苦労は、被害を被った一世・二世の人々の忍従と沈黙によってあまり表沙汰にはならなかったんですな。この問題が注目されるようになったのは、1960年代に入ってアメリカ黒人による公民権運動が活発になってきたことによるらしい。公民権運動に伴うマイノリティ・グループの意識の変革により、日系アメリカ人三世の世代が、自分たちの先祖たちが被ってきた屈辱の歴史をアメリカの社会問題として捉え直そうとし始めた。それによって、ようやくこの問題が表面化したわけです。

で、そうした過去の問題に決着をつけるべく、法廷闘争などで戦った日系アメリカ人たちの努力により、アメリカはようやく過去の過ちを認め始めたんです。たとえば1976年のアメリカ建国200年祭に際し、時の大統領ジェラルド・フォードは、ルーズベルト大統領が発令した日系アメリカ人強制収容を認める大統領命令9066号を破棄した上で、被害を受けた日系アメリカ人に対して謝罪をしていますし、1988年にはレーガン大統領が強制収容を「深刻な不法行為」と認め、数千人に上る元収容者に対して一人当たり2万ドルの補償金を払うことを決定しています。また1999年には、クリントン大統領が先に名前を挙げた日系アメリカ人強制収容訴訟の闘士フレッド・コレマツ氏に対し、民間人に与えられる最高の栄誉である「大統領自由勲章」を授与しています。

アメリカというのは面白い国で、確かに時折、とんでもなく馬鹿げた政治的・社会的過ちをしでかしますが、時を経てみると、ほとんど必ずと言ってよいほどその過ちを認め、反省し、何らかの謝罪と補償をしていますね。そこがアメリカのいいところであって、私の好きなところでもあります。

ま、日系アメリカ人強制収容問題について、ざっとですがその概要を把握してみて、色々面白いことも分かってきたし、この問題について関心を抱くことができました。今後も引き続き、ゼミ生とともにこの問題を考えていきたいと思います。

それにしても、この程度の知識を得るのに、インターネットというのはすこぶる便利ですなー。今回実際に自分でやってみて、テーマをうまく選びさえすれば、関連書籍を一冊も読むことなく、インターネット上の情報だけで、学部生の卒論レベルの論文なら書けてしまうな、という手応えを得ました。しかし、それは果たして良いことなのか、どうなのか・・・。どんな問題について考えるにせよ、もしこの程度の知識を土台にして何らかの結論を出そうとすると、やはり危険な感じがします。インターネット上の情報は、あくまでも下調べ程度のつもりで捉えておかないと、学問的な深まりがなされないまま、「分かったような気」になってしまうのではないでしょうか。便利過ぎるものというのは、一面、大きな危険性をはらんでいると思っておいた方が良さそうですね。もちろんこれは自戒のつもりですが。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  July 29, 2005 07:45:00 AM
コメント(1) | コメントを書く
[思わず納得!] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Favorite Blog

奮闘中 New! AZURE702さん

YAMAKOのアサ… YAMAKO(NAOKO)さん
まるとるっちのマル… まるとるっちさん
Professor Rokku の… Rokkuさん
青藍(せいらん)な… Mike23さん

Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: