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August 19, 2005
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カテゴリ: 思わず納得!



S先生は私の卒業した大学の先生ではなく、別の大学の先生です。しかし幸いなことに、私の大学時代の直接の恩師であるO先生とS先生とは非常にお親しい間柄であり、そのこともあってS先生は非常勤講師としてうちの大学に教えにいらしていたんですね。で、私もO先生から勧められてS先生の授業を受けに行ったのですが、授業を受けているうちに先生の学問とお人柄にたちまち惹かれてしまった。そんなわけで、大学時代の私は、O先生とS先生、このお二人の先生の薫陶を受けながら過ごすことができたというわけなんです。実際、私がS先生から受けた影響というのはものすごく大きなものがある。しかもその後、残念なことにO先生は早くに鬼籍に入られましたので、今の私にとっては、言葉の真の意味で「先生」と呼べる方はS先生だけになってしまった。それだけにS先生は、私にとって、本当にかけがえのない存在なのです。

とはいえ、私は別に畏まるために先生のお宅にお邪魔するのではありません。先生のお好きなお酒を一本携えて遊びに行き、先生のお話しを伺ったり私の近況を報告したりして、楽しいひとときを過ごすために行くのです。長い休みに実家に戻っている時は、必ず一度は先生のお宅に遊びに行くのがならいになっているのですね。で、今日もそんな感じで東京は深大寺の近くにある先生のお宅にお邪魔してきたわけ。

先生は大正の末のお生まれなので、今は81歳とか82歳とか、多分そのくらいのお歳だと思います。しかし、いつお会いしてもそんな感じはまったく受けず、今なお研究に、読書に、執筆に、そして庭仕事にと、忙しくしていらっしゃいます。今日も、私が今研究していることや手がけている仕事などについて、あるいは最近読んだ面白い本のことなどについて、色々とお話しをさせていただいたり、また先生のことについてもお話しを伺うことができました。

しかし、今日、何と言っても面白かったのは、先生が最近なさっている、ある「芸術活動」についての話題でした。

きっかけは、私が昨日、仙石原の湿性花園に行ってきたことや、サワギキョウがとてもきれいだった、というようなことを報告したことでした。で、それを聞いていらした先生が、サワギキョウならうちの庭にも咲いているよ、とおっしゃりながら、後ろの書棚からなにやら紙挟みのようなものを取り出され、その中から一枚の紙を出して私に示された。その紙が、問題の「アート」だったんです。

それはなんとも不思議なものでした。もちろんその紙にはサワギキョウが描かれて(?)いるのですが、よく見ると写真のようにも見える。しかし、写真かしらと思ってみると、どうもそうでもないようで、精密に描かれた日本画のようにも見える。しかし、どちらにしても非常に美しいアートなのです。

「先生、これは・・・」と私が絶句していると、ニコニコしていた先生がようやく答えを教えて下さいました。それは花のカラーコピーだったのです。

つまり、花の咲いた木、あるいは草を近くのコンビニに持っていって、そこにあるカラーコピー機で直接コピーしてしまうというのですね。ちなみに、コピーする時に蓋(というのかな?)をしてコピーすると背景は白になる。逆に、蓋をしないでコピーすると背景は黒くなる。背景を白くするか、黒くするかは、花の色にも依ります。赤い花などの場合は白い背景の方が映えますし、また紫の花などは黒い背景が似合う。ま、その辺はケース・バイ・ケースのようですが。



ただ、もちろんそれが「アート」であるためには、花の美しさばかりでなく、それをいかに上手に配置するか、という「アーティスト」側の手腕も問われます。ということはつまり、「生け花」的なセンスや絵心が必要になってくるわけ。私がS先生の作品に打たれたのは、そのセンスの良さに依る所も大きいかな。たとえば先生は花の性質によって作品のトーンを様々に変えていらっしゃるのですが、白い背景に白い花桃を映し出した清楚な感じの作品もあれば、黒い背景にハナミズキの花を散らした、まさに日本画的な作品もある。そうかと思うと、大小様々な黄色い菊の花をうまいこと画面一杯に散らし、あたかも「ポップアート」のように仕上げた作品もあったりする。その辺のさじ加減が、これがなんとも言えずいいんですなあ。

しかもさらに愉快なのは、この手法を考案したのが先生ご自身だ、ということですね。つまり先生は、この新たな芸術手法の「家元」なんです。と言っても、もちろん先生は別に「アート」を作るために花のコピーをなさっているわけではありません。一番最初は、ただご自宅の庭に咲いた花々を詳細なデータと共に記録してみようと思われただけなんですね。で、はじめのうちはご自宅にあるコピー機で白黒のコピーをとって、ご自分で彩色しておられたのですが、ふと思ってカラーコピーしてみたらなかなか面白い「作品」が出来上がった。それ以来、この「アート」をお一人で楽しんでおられるというわけ。先生の作品にまったく「邪心」がないのはそのせいかも知れませんね。コピーした花だって、コピーが終わったら花瓶に差して愛でられるのだそうです。

いやはや、それにしても80歳を優に越えられた先生が、研究や読書や執筆の合間に花を愛で、自ら工夫してその花の美を別な形に置き換えたりしながら、悠々と暮らしを楽しんでおられる様子を見て、私まで本当に楽しくなってしまいました。それに先生考案になるこの手法だったら、画才のない私にもちょっとしたアート製作が出来るかも知れません。なにせ、私は現時点で家元の最初の弟子みたいなもんですから、頑張れば免許皆伝も受けられるかも知れない。

ということで、今日は恩師のS先生に飛び切り楽しいひとときと、それからアートな野心をいただいて、すっかりいい気分で帰宅の途についた私なのでした。





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Last updated  August 19, 2005 10:08:38 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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