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March 17, 2008
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カテゴリ: 教授の読書日記

昨日、学会から家に戻る電車の車内で、「おっ」と思う場面に遭遇。

吊革に掴まりながら本を読んでいた私の斜向かいに、年齢から言えば70代後半と思しき、白髪も大分薄くなりかけの御老人がシルバーシートに腰掛けていたんです。どちらかというと、「よぼよぼ」という形容詞が当てはまりそうなご老人です。

ところがこのご老人、しょぼしょぼした目で、のそのそと手荷物の中を探していたと思うと、やおらアルミ缶に入ったコカコーラを取り出したんです。で、私が「え! まさか・・・」と思う暇もなく、「プシュ!」という軽快な音を立てて蓋を開けると、そのまま一気にグビグビと。まるでコマーシャルのように。

じいちゃん、やるなあ!

ま、別にご老人がコカコーラを飲もうとその方の勝手ですが、よぼよぼのご老人とアルミ缶入りのコカコーラの組み合わせが余りにも意外だったので、見ていた私も思わず息を飲んでしまいました。

で、そのよぼよぼのじさまがあんまり豪快、かつ旨そうにコーラを飲み干したので、私まで無性にコーラが飲みたくなり、自分の降りる駅に着いた途端、コンビニに立ち寄って思わず買ってしまったという。


さて、その話はともかく、私が車内で読んでいた本というのは、青木玉著『幸田文の箪笥の引き出し』(新潮文庫)というものでありまして、今日はこの本をおすすめしようと思っておるのでございます。

ま、車内で読む本ですから、エッセイ風の軽いものがいいかなと思い、母の書棚から勝手に抜き出してきた本なんですが、これがですね、なかなか面白い。青木さんが、キモノ(和服)にまつわる思い出、という形を借りて、母・幸田文、祖父・幸田露伴のことを語った本なんですけど、血は争えないというか、読ませるんですよね。

で、また着物の話となると、私なんかまるで知らない世界になるわけですが、それだけに発見も多いんです。昔の日本のキモノ文化の奥深さを知って、驚愕することばかり。



で、その数えきれないバリエーションの中から、自分にふさわしいキモノをどう選んで行くか。そこに奥深い個性の表出がある。粋がある。粋ったって、そんじょそこらの粋ではなく、露伴や幸田文の粋ですからね、これがまず凄い。

他方、キモノというのは管理が大変なところもあります。季節が終われば縫い目を解いて洗い、そして糊をつけて張るという作業がある。でも、そうやってしんどい管理をするがゆえに、キモノは長い寿命を保ち、母から子へ、時には父から娘へと受け継がれ、着継がれていく。そしてその大事に使ってきたキモノの最後をどう看取るか。それも大切なことで、キモノを解いて座布団カバーにしたり、本や掛け軸の表装に使ったり、最後の最後は雑巾にしたり、と、本当に使えなくなるまで使い切る。そういう風に考えると、キモノというのは実にコストパフォーマンスの高いものであり、エコなものでもある。

いやあ、勉強になります。

それにね、第一、この本を読むと、いかに自分がキモノにまつわる言葉を知らないか、ほんと思い知らされます。いかんですな、日本人として、こんな素晴らしい文化のことをまるで知らなんて。

でまた、この本のところどころに、実際にキモノを着た幸田文さんや青木玉さんの写真が掲載されているのですけど、これがまた実に美しい! ほんと、最近、こんなにきれいに和服を着た女性を見たことがない。それほど着こなしが見事なんですな。

で、車中でこの美しいキモノ姿の写真を見ていて、ふと目を上げると、偶然、近くに卒業式を迎えたと思しき袴姿の女子大生が立っていたのですが、そのなんともチンケな着こなしに、思わず吹き出しそうになってしまいました。君、君、キモノってのはこうやって着るんだよ、と、この本を彼女に見せてあげなくなりましたよ。

ということで、『幸田文の箪笥の引き出し』、なかなかいい本ですので、興味のある方におすすめします。

これこれ!


幸田文の箪笥の引き出し





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Last updated  March 17, 2008 11:32:47 PM
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『幸田文の箪笥の引き出し』  
藍毘尼  さん
さっそく読みます!

私も、釈迦楽様のように、電車の中で『箪笥の引き出し』を読んでいたら、どかからともなく「プシュ!」という軽快な音を立てて蓋を開けてコーラを飲むご年配の人にお目にかかれるかしら?(笑)

粋な着物の着こなしって、ほんと、憧れます。
最初の長襦袢から、「粋に着るぞ」って気合いを入れて。腰紐をきゅっと締めて、衿の重ね方とかの微妙なところで、粋か無粋かの分かれ道、、って感じでしょうか。
私は大島紬とか草木染めの着物に愛着があります。
(March 18, 2008 06:58:20 AM)

リンクありがとうございます  
黒猫Moon さん
コーラをぷしゅっと飲まれる大学教授もなかなか粋だと思いますよ。 (March 18, 2008 09:58:48 AM)

Re:コーラを飲む老人・和服の美(03/17)  
りぃー子  さん
まあ偶然!

私も若い頃から幸田文さんが好きでしたが、
ここ20年位はとんと遠ざかってしまってました。
たまたま図書館で
「動物のぞき」と言う本を見つけて
借りてきたところなんです~。

彼女の文には共感と憧れを感じます♪

ご紹介の本もぜひぜひ読んでみます!!

(March 18, 2008 06:45:02 PM)

Re:『幸田文の箪笥の引き出し』(03/17)  
釈迦楽  さん
藍毘尼 さん

この本を読むと、たとえば和服の世界にも「石擦り」の生地なんてのがあるということが分かります。若い人たちは、ストーン・ウォッシュのジーンズなんかを履いて得意になっているわけですが、そういうのをはるか昔の日本人もまた、生地を石で擦って柔らかさと風合いを出したキモノを着ていたんですね。面白いなと思います。 (March 18, 2008 06:58:47 PM)

Re:リンクありがとうございます(03/17)  
釈迦楽  さん
黒猫Moonさん

コーラって、たまに飲みたくなりますよね。特にハンバーガーとか、ピザとか、KFCみたいな、いかにもアメリカンなものを食べる時なんかに、ね! (March 18, 2008 07:00:03 PM)

Re[1]:コーラを飲む老人・和服の美(03/17)  
釈迦楽  さん
りぃー子さん

幸田文さんは、露伴の下で、いわば日々修行をしたようなもので、もちろん辛いことやマイナス面もあったでしょうけれど、生活全般にわたる知恵と厳しさをしっかり身につけたという点では物凄いプラス面があったのでしょう。それだからこそ、露伴なき後、文筆家として大成したのでしょうね。

私は今回、青木玉さんの文章を初めて読んだのですけど、玉さんは玉さんで、文さんから叩き込まれただけのことはあると、感心させられました。ぜひご一読下さい。 (March 18, 2008 07:04:09 PM)

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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
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