monikamamaさん

電子ブック、またはオンデマンド印刷という手もあるのですが、学問的な業績としては一応、一般出版社から出したものの方が認められるんですね・・・。というわけで、やっぱり一般出版社の自費出版部門を使うことが多いんです。

では500部ではなく100部印刷すれば? というふうに考えるのが普通ですが、出版というのは面白いもので、100部作るのと500部作るのでは、値段が5倍違うかというと、そうでもないんです。そんなに違わないんですね。だもので、つい多目に印刷しちゃうんです。

ま、人情と業界事情と出版事情の三つ巴で、悲しい本が量産されるというわけなんですよ。 (November 25, 2008 10:49:18 PM)

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November 25, 2008
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カテゴリ: 教授の雑感

 うちの大学の英語科の院生室が手狭になったということで、今、在学中の院生たちが中心になって部屋の大掃除を実施中です。

 ま、それだけですと、とりあえず我々教員には無関係なんですが、今日、たまたまその院生室の前を通ったら、何やらすごい量の書籍が廊下に山積みになっている。そうですね、ざっと1000冊分くらいはありましたかね・・・。いや、もっとあったかな。

 で、なんだこれは? と思ってよく見ると、何とこれが定年退官された歴代の先生方の退官論集の山なんです。他に置く場所がなかったので、これらを院生室に置かせてもらっていたのか、それとも元々ここが英語科の書庫だったのを、後から院生たちが自分たちの居場所として使いだしたのか、その辺はよく分かりませんが、とにかく膨大な量の退官論集の売れ残りが、院生室から追い出されたらしい。

 ひゃー・・・。

 ま、素人の方はご存じかどうか知りませんが、大学の先生が定年を迎えたとき(あるいは還暦を迎えたとき)に、この種の「記念論集」というのを作ることがよくあります。主役の先生の論文を中心として、同僚や若手の後輩たちが論文を出し合い、合わせて一冊の論文集を編纂するんですな。もちろんそういう記念論文集には「○○先生退官記念論集」などの文字が金文字で入った立派な表紙が付けられ、一般に販売もされます。見かけは非常に体裁がいい。

 が、実際のところ、この種の論文集というのは「自費出版」なんですな。で、たとえば500部作るのに200万円とか、あるいはそれ以上のお金がかかるわけですが、これらはすべて執筆者負担です。主な執筆者、つまり定年(あるいは還暦)を祝われる張本人が半分くらいを出し、残りを20人ぐらいの執筆者で5万円くらいずつ分担する、というのが相場です。だから、「先生ももうすぐ退官ですから、論文集でも作りましょうか」と、同僚や後輩から声が掛かるのは嬉しいものでしょうが、実質、その時点で「100万、200万の負担は覚悟してくださいね」と言われたようなものなんですな。

 ちなみに、この種の自費出版を出版社の側から見ますと、出版にかかる費用のすべて(+出版社の取り分)が前もって執筆者によって支払われるわけですから、出版社としては絶対に損が出ない、ある意味、笑いの止まらない商売、ということになります。一般市場で売れようが、売れまいが、出版した時点で既に出版社としては儲かっているわけですからね。たとえ1冊も売れなくても、出版社としては黒字です。

 でまた、実際にこの手の記念論文集というのは、「出版することに意義がある」という手合いのものですから、一般の読者が買うということはほとんどありません。ですから、出版したはいいけれど、執筆者がそれぞれ数部ずつもらって捌けた分と、執筆者のそれぞれが友人や図書館に寄贈した分以外は、全部売れ残りになることが多い。ですから、気張って500部を出版したとして、おそらくそのうちの400部は売れ残りになるわけです。

 本っていうのは、それほど売れないものなので、ね。



 それこそが、私が今朝、院生室の前で見かけたものだった、と。そこに置いてあった膨大な量の本は、ほとんどがこの種の記念論集の売れ残りだったのであります。

 でもね、ずっと段ボールに入っていたため、まるで昨日出版されたかのようにフレッシュな体裁の立派な記念論集が、「捨てるしかない」と言わんばかりの状態で廊下に積み上げられているのを見ますとね、それはそれは哀しいものでございますよ。中には、かつて私もお世話になった先生や、すでに亡くなった先生の記念論集も含まれていますからね・・・。

 一度もページを切られることなく捨てられる本というのは、しかし、哀しいですなあ・・・。そんな本でも、中身を書くときは、執筆者の誰もが一生懸命だったはずなんですから。そして、それが出版された直後は、執筆者の誰もが顔を輝かせ、新刊本の香りを嗅ぎ、表紙を撫でさすり、そして出版記念のお祝いに一席を設けて、皆で楽しい酒を飲んだはずなんですから。

 というわけで、今朝はそんな処分一歩手前の悲しき自費出版本の山を見て、なんとなく物悲しい思いに捕らわれてしまったワタクシだったのでありました、とさ。





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Last updated  November 25, 2008 05:26:31 PM
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電子ブック  
monikamama さん
記念論文集の山、哀しいですね。配る部数だけ印刷するということも無理なら、いっそ電子ブック化するというのはどうでしょうか。EU圏で電子図書館というのがオープンしたそうですし。 (November 25, 2008 06:11:45 PM)

Re:電子ブック(11/25)  
釈迦楽  さん

欲しいな~♪  
藍毘尼 さん
英語科の先生方の論文集なんでしょう?


外資系の会社でばりばり働いている弟が、10年~15年前に「子どもには、パソコンと英語ときれいな日本語、この3つをしっかり学ばせといたらええ!」とアドバイスされたものです。

英語科の先生方の論文集などは、私ならすごく欲しいですね♪ (November 26, 2008 12:08:01 AM)

Re:欲しいな~♪(11/25)  
釈迦楽  さん
藍毘尼さん

ま、実際には私の物ではないので、私としては何ともしがたいのではありますが、せめて直接裁断するよりは、多少なりともブック・オフ等で市場流通させるなどの方策をとってもらいたいですね。誰が判断するのか分かりませんが・・・。そのうち、科の会議とかあるのかしら・・・? (November 26, 2008 12:29:14 PM)

最近思う事なんですが!  
藍毘尼 さん
論文集とは全く関係ない話なんで申し訳ないのですが、、!

46歳の犯人の大事件があったでしょう。
テレビニュースを見ていたら、犯人の父親が苦笑いして「保健所に犬を引き取ってもらったことがそういえばありました」みたいな事を言ってるんです。母親は「うちの子はそんな事をするような子じゃありません」て、言ってるんです!
もし、我が家の息子が犯した事件だとしたら、私と夫は、すぐに、遺族の方のところに飛んで行って土下座して謝って、次に、入院されている方のところに飛んで行って土下座して謝ります。
ニュースが出たら、すぐに警察の人に場所を聞いて飛んで行きます。
とてもじゃないけど、大事件の後で、苦笑いしたり、「うちの子はそんな事できる子じゃない」なんて軽々しい言葉は発しませんね!
私ならマスコミのインタビューには応答しません!
それより親として、被害者の方たちにお詫びする方に奔走しますね。
最近、事件が起こると、このようないろんなことを考えてしまう毎日です!! (November 26, 2008 02:20:43 PM)

Re:悲しき記念論集(11/25)  
AZURE702  さん
ふか~い溜息をひとつ。さて、おもわず洩らしたこの溜息の正体はとなると、自分でも説明しずらいほど多面的な感慨をふくんでおります。 (November 26, 2008 03:17:49 PM)

え!  
板谷 さん
川崎寿彦先生の本はありませんか!?

彼の「イギリス文学史」って本が私の愛読書なんですけど! (November 26, 2008 05:23:05 PM)

Re:最近思う事なんですが!(11/25)  
釈迦楽  さん
藍毘尼さん

それにしても毎日のように嫌な事件が起こりますね・・・。事後何十年も経ってから「犬の仇」などと言われても・・・。こういう子を持った親は、いずれにせよ大変な心労だと思いますよ、これからもいろいろ言われるでしょうしねえ・・・。 (November 26, 2008 05:52:50 PM)

Re[1]:悲しき記念論集(11/25)  
釈迦楽  さん
AZURE702さん

 間近に本の山を見ると、溜息がさらに二つ出ますよ~。 (November 26, 2008 05:54:11 PM)

Re:え!(11/25)  
釈迦楽  さん
板谷さん

 大丈夫、川崎先生のはないです。『庭のイングランド』もいいですよね! (November 26, 2008 05:54:59 PM)

Re[1]:え!(11/25)  
板谷 さん
> 大丈夫、川崎先生のはないです。『庭のイングランド』もいいですよね!

庭のイングランド・・・読んだ事ありません。早速探してみます。大学の本屋さんなら売っているでしょうか?わくわく。
(November 27, 2008 11:24:55 PM)

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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…
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