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May 11, 2012
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カテゴリ: 教授の映画談義




 舞台はアメリカとメキシコの国境の町、ロス・ロブロス。麻薬のトラフィックで勢力を伸ばすメキシコのグランディ一家に対し、メキシコ人麻薬捜査官にして政府にも影響力を持つヴァルガス(チャールトン・ヘストン)が睨みを利かすという状況。その中で、メキシコの要人・リネカー氏がヴァルガスの目の前で爆死するという事件が起きるんですな。現場に居合わせたヴァルガスは、新婚の妻でアメリカ人のスーザンをアメリカ側にあるモーテルに避難させた後、捜査に乗り出します。

 ところがこの事件に関し、アメリカ側の捜査担当となったハンク・クインラン(オーソン・ウェルズ)というのが難物だった。彼は自らの直感に頼る強引な捜査手法で、次々と犯人を検挙していく伝説の人物。ただし、どうやら彼が検挙し、電気椅子に送り込んだ犯人の中には、相当な数の冤罪も含まれるのではないかというところもある。

 で、今回の事件でも、クインランはリネカー氏の娘の恋人・サンチェスによる金目当ての犯行と決めつけ、リネカー殺害に使ったダイナマイトの残りと思われるものをサンチェスの家から押収して彼を拘束してしまう。

 ところが、クインランの捜査方法に疑問を抱いたヴァルガスは、押収された証拠品のダイナマイトが、ヴァルガス本人が農場で使うために購入していたものであることを突き止め、サンチェスを強引に容疑者に仕立て上げるためにクインラン仕組んだ罠と断定。さらにクインランが捜査を担当した過去の事件まで洗い直し始めるんですな。

 で、ヴァルガスの登場でクインランが危機に陥っていることを見てとったメキシコの麻薬組織グランディ一家の長、ジョー・グランディは、クインランに共闘を持ちかける。ヴァルガスの妻スーザンが現在泊まっているモーテルは、実はグランディ一家の所有になるもので、いわばスーザンはグランディ一家の捕虜のようなもの。そこで部下に命じてスーザンに麻薬を打ち、麻薬捜査官の妻が麻薬漬けだったというスキャンダルを起こして、ヴァルガスを失脚させようというわけ。そしてジョー・グランディが持ちかけたこの策謀に、クインランは乗っかります。

 ところが、クインランにはまた別な意図があった。

 スーザンをモーテルから誘拐し、彼女に麻薬を打ち、後はそのことをスキャンダラスに報道させればいいところまで実行したジョー・グランディのもとをクインランは訪れ、その場でジョーを絞殺してしまうんですな。ジョー・グランディに弱みを握らせず、その死の責任をヴァルガスの妻に負わせることで、ヴァルガス失脚をさらに確実なものにしようという一石二鳥の計略です。

 しかし、クインランはそこで重大なミスを犯す。ジョー・グランディ殺害の現場に、自分の愛用の杖を置き忘れてしまうんですな。そしてその杖を発見したクインランの長年の部下・メンジーズは、ようやくクインランが長年犯してきた犯人検挙の手法に気付くことになる。先にクインランが行ってきた過去の冤罪のことをヴァルガスに指摘されていたこともあり、ついに彼はヴァルガスに協力し、クインランの罪を暴くべく、隠しマイクを身に着け、今回の一件についてクインランから真実を引き出そうとする。



 しかし、先のリネカー氏殺害に関しては、クインランの直感通り、実は本当にサンチェスが行ったことであることが判明するんですな。

 実はクインランは、新婚の妻を悪漢に殺されるという、悲惨な過去を持っていたんです。だからこそ彼は犯罪と犯罪者を憎み、悪者を電気椅子に送り続けることだけを生き甲斐にしてきた。強引な捜査手法も、結局は「悪を懲らしめる」という彼の生涯をかけた決意の顕れだった。

 クインランは、悪徳警官というより、悲しい人だったんですな・・・。クインランと同じように妻を殺されそうになったヴァルガスが、見事その妻を助け出すことに成功したのとは対照的に、クインランの方は、射殺され川に浮かぶことになってしまった。そんな哀れな彼の死体を、長年の愛人、ターニャ(マレーネ・ディートリヒ)は悲しげに見送り、去っていくのだった。

 というような話です。


 と、こう粗筋を書いていくと、何だか面白そうな映画なんですが、実際の映画はねえ、うーん、あまり面白くないんだなあ。例によってオーソン・ウェルズの撮ったフィルムを、映画会社が適当にカットしてしまったので、そのせいもあるのかもしれませんが、それにしてもクインランという男の魅力が、あまり上手に描かれていない。ターニャとの関係も、あまりよく分からないので、ターニャの悲しみもあまりよく分からない。

 それから本来なら正義漢ヴァルガスと、悪漢クインランの対比で物語を盛り上げていくべきところなんでしょうが、両者の絡みがあまり上手に描かれないので、『第三の男』におけるような悲しみが出てこないわけ。

 そう、要するに、この『黒い罠』という映画は、『第三の男』と同じようなテーマを扱って、しかし、それと同じようには成功しなかった映画と言えるんじゃないでしょうか。『第三の男』におけるジョゼフ・コットンの役回りを、この映画ではチャールトン・ヘストンにやらせようとしたのでしょうけど、それにも失敗していますしね。


 というわけで、オーソン・ウェルズ・ファンのワタクシをもってしても、この映画に「おすすめ!」と言い切ることはできなかったのでありました。点数をつけるならば、うーん、「61点」ってところかな。





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Last updated  May 12, 2012 01:25:03 AM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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