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May 16, 2012
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カテゴリ: わけ分からん



 とはいえ、実際に読んでみると、英語学習のヒントになるようなことが満載、というほどではなく、読み物として楽しむくらいの本かなと。

 ま、それはいいんです。

 それよりも、本書を読んでいて、一つ、猛烈に頭に来たことがありまして。それはノーベル賞受賞者である小柴昌俊さんへのインタビューの部分なのですが。

 それによると、小柴さんというのは、日本の大学(もちろん小柴さんが前提にしているのは国立大学、それも東京大学のことらしいですが・・・)、特に理系の学部でももっと英語の勉強に時間を充てるべきだ、という意見の持ち主なんですな。そのあたりのくだりを抜き書きしましょう:


小柴:小宮山宏さん(前東大総長)に言ったことがあるんです。「もっと英語の授業を増やしなさい」と。でもそれは、格調高い文学的な教養をつけろという意味じゃないですよ。
 日本はこれから、日本人の学生だけじゃなくて、アジアのさまざまな国の学生を育てるということを本気で考えないと駄目だと思う。そのためには、英語で講義をやらないと。東京大学のようなところが講義を日本語だけでやっていたのでは、アジアの人たちは来にくいでしょ。今なんていったって、悔しくったって、世界でいちばん通じるのは、英語なんだから。
 理学でも工学でも医学でも、日本でアジアの若い人たちを教育するということを、本気でやるべきだと思うんです。

原賀:それはつまり、日本人の教官(ママ)が、ブロークンでもいいから英語で授業をやったほうがいいということですか?



原賀:海外から教官(ママ)を連れて来るということではなくて?

小柴:いや、それも必要だと思う。日本の国立大学を独立行政法人にするときに、ぼくはひと言も反対意見を言わなかったんです。それはなぜかというと、国立大学には規則があって、どんなに優秀な学者でも日本国籍を持っていない人は、教授になることができなかったからなんですよ。教授というのは、教授会でいろいろな議決権を与えられるからなんです。
 でもね、立派な大学というのは世界に門戸を開いていなければおかしい。外国籍の人を教授にできないなんていうのはおかしな話ですよ。だから、独立行政法人になればそういうこともやれるようになるだろうと思って、反対しなかった、


 小柴さんの発言の部分で、前半は別にいいです。問題は後半部分。国立大学が独立法人化する時に反対しなかった、という部分。

 まず基本的に小柴さんの認識が誤りだ、ということを言っておきましょう。

 確かに国立大学時代、外国籍の先生は「外国人教員」と呼ばれ、別枠での採用というのが一般的でした。私の所属大学の場合ですと、外国人教員は基本的に3年契約で、3年毎に契約を更新する必要があるなど、ある意味、不安定な雇用形態だったかもしれません。もっとも実際には形式的な更新であって、いわゆる「任期制」ではないのですが。

 しかし、これはですね、各大学の裁量でどうにでもできる話なんです。実際、私の所属大学では、国立大学時代に既にこの制度を撤廃し、外国籍の先生を日本人と変わらぬ条件で教授にしています。だから、外国籍の人を教授にする、というためだけならば、国立大学を法人化する必要なんて一つもないんです。これが厳然たる、そして小柴さんがご存じない事実。


 ちなみに外国人教員を、日本人なみに教授にした結果、どういうことが起こったか分かります?

 教授にされた外国人教員から一斉に不満の声が上がりました。なぜなら、日本人と同じ条件の教授になったことで、給料がガクっと減ったからです。

 そう、明治以来の外国人教員優遇制度により、外国人教員は日本人の教授の1.5倍くらいの給料をもらっていたわけ。それが、「普通の教授」になったために、それまでもらっていた給料がガクっと減った。加えて、出たくもない教授会にも出なければならず、それでいて、日本語で話されている審議内容は何一つ分からず、嫌なことばかり増えてしまった。これでは不満が出るのも当たり前でしょう。

 しかし、それは瑣末なこととして、ここでは論じないことにしましょう。




 そのために今、全国の国立大学法人がどのくらい苦労しているか。教育・研究が行き詰る一方、どれほど巨額のお金が無駄に使われているか。それはこのブログでもしばしば指摘しておりますが、そのことを、小柴さん自身、どのくらい認識されているのか。

 もちろん、認識していないからこそ、まるで自分の手柄でもあるように、平然とこういうことが言えるわけでしょうけどね。


 おそらく、文科省は、ノーベル賞を取った小柴さんのような人を「識者」として招いて、それで国立大学の独法化を進めていいかどうか、意見聴取したんでしょう。

 しかし、小柴さんご自身はアメリカとかの大学に長くいらした方で、日本の大学の事情に詳しくない。それに研究の方に没頭されていて、大学の在り方とか、教育行政の在り方などについて何ら詳細な知識も見解も持ち合わせていないはず。そういう人に、文科省は、なぜ意見聴取するのか。



 文科省のやることってのは、いつでもこういうレベルなんだよな・・・。万事、そう。で、その馬鹿な文科省のやり口に、小柴さんはまんまと乗せられて、文科省が望むような応対をしたと。無邪気な人をかつぐのなんて、訳ないでしょうから。

 しかし、如何に無邪気とは言え、その後に及ぼす影響のことも考えず、文科省の諮問委員のような仕事を引き受けてしまったことに、罪なしとは私は思いません。たとえそういう要請があったとしても、「私は単なる科学屋で、日本の教育行政のことなどよく知りませんから」と言って断るべきでした。


 というわけで、本書のこの部分を読んで、文科省と小柴氏のような偉大な頭脳のおかげで、今、国立大学法人が泥沼の中を這いずり回らされているんだ、ということを知り、怒り心頭に発しているワタクシなのでありました。小柴氏よ、「財団法人平成基礎科学財団」などという象牙の塔から出て、自分が何をしでかしたのか、よーく見るがいい!





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Last updated  May 16, 2012 07:49:21 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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