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July 19, 2012
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カテゴリ: 教授の映画談義




 舞台はロサンゼルス郊外の比較的裕福な住宅地。ここにニックとジュールズというレズビアンの夫婦・・・と言うのか「婦婦」というべきか、よく分かりませんが、とにかくそういうカップルと、ジュールズが匿名男性からの精子提供を受けて産んだジョニとレイザーという姉弟からなる四人家族が住んでいてる。レズビアン・カップルを核にした家族というと、なんだかやけに進歩的なようですが、ロスという土地柄もあって、周囲もこの家族をさほどの違和感もなく受け入れているし、当の家族のメンバーも、別に自分たちがとりわけ特殊だと思っているわけではない。ごく普通の一家なんです。ごく普通の一家が、ごく普通に暮らしている。

 ただ、娘のジョニはちょうど高校を卒業したところで、進学先の大学も決まり、もうじき遠くの町に引っ越すことになっているんですな。だからこの夏が、家族四人で過ごす夏としては最後のものとなる。そのことが若干、家族のメンバーに緊張を与えていることも確か。

 で、そんな一足先に巣立っていくジョニに対し、弟のレイザーがあることを頼むんですな。自分たちの生物学上の父親である人に会ってみたいと。精子提供者の情報を親の許可なく聞き出すには、18歳以上になっていないとダメなんです。だから、15歳のレイザーは、18歳になっている姉のジョニにそのことを頼んだわけ。ジョニの方は別に自分から父親に会いたいとは思っていなかったようですが、とりあえず弟の頼みを聞いて父親を特定し、姉弟の二人で彼に会いに行くことにする。

 で、実際会ってみると、彼らの父親はポールという名前で、彼らの家からさほど遠くないところでオーガニックな食材を使った自然派志向のレストランを経営している人物だったんですが、これが気さくで、感じがよく、しかもなかなかのハンサム。結婚はしておらず、気ままなライフスタイルをエンジョイしている感じ。で、そんなポールと話をするうちに、弟のレイザーよりも、むしろ姉のジョニの方が彼に惹かれてしまうんですな。レズビアン・カップルを両親として育ったこともあり、大人の男性に興味があったこともあるでしょうし、また知らず知らずのうちにポールの中に理想の父親像を見てとったこともあるのでしょう。かくして、ジョニとレイザーは、その後もポールと何度も会うことになるんですな。一方、ポールの方も、突如現れた娘と息子に戸惑いつつ、これまた知らず知らずのうちに父性愛が芽生えて行く。

 ところが、こうしたポールとジョニ&レイザーの密会は、やがてニックとジュールズの知るところとなり、二人は子供たちが黙って父親に会っていたことに動揺します。が、そこは進歩的な一家ですから、ここはひとつ冷静にならなければと自制しつつ、ポールを家に招くことにする。ニックとしては、一度公式に招いて、後は彼のことは過去のことにしてしまおうという腹づもりがあったわけ。

 が、実際にポールに会ってみると、彼が予想外にいい男だったことで、ニックの計算が狂い始めます。そして話の流れの中で、ジュールズが造園業を始めてみたいなどと口にしたことから、ポールが自宅の庭のデザインを彼女の頼むことにもなる。医師として家計を支えるニックに対し、ジュールズはこれまで仕事をした経験がなく、それゆえ自己実現もしてこなかったのですが、今回、初めてポールから仕事を依頼されたことで、自分も仕事をしてお金を稼ぐことができるかもしれないという期待に、夢中になってしまうわけ。

 で、そんなこともあって、ポールの自宅で作業することになり、必然的に彼と頻繁に会うことになったジュールズは、自然の成り行きで彼に惹かれて行き、ポールもまたかつて自分の精子によって自分の子を産んでくれたジュールズに惹かれて行く。そしてついに二人は一線を越してしまうわけ。むしろジュールズの方が積極的に。

 で、ジュールズとジョニとレイザーがそろってポールに惹かれている状況、それはポールを父親、ジュールズを母親とする生物学上の家族が再結成された形をとっているわけですが、その状況を敏感に感じ取ったニックは、焦りと嫉妬で心のバランスを崩し、家族の中で孤立していきます。が、ニックも知的な人ですから、そんな自分の状態を反省し、家族に謝罪し、その印として、今度は家族全員でポールの家を訪問しようと提案する。



 が、ポールの自宅のバス・ルームやポールの寝室に、ジュールズの髪の毛が落ちていることを発見したニックは、自分が想像していた以上に二人の関係が進んでいたことを知り、和解のための訪問が逆効果になってしまうんですな。で、帰宅してからニックとジュールズは大喧嘩となるのですが、二人のやり取りを立ち聞きしていたジョニやレイザーにも、ポールとジュールズの関係がばれてしまう。その結果、今度はジュールズが家族の中で孤立することになり、またポールを理想化していたジョニもまた、彼に幻滅してしまう。

 一方、ポールはポールで真剣にジュールズのことを愛しはじめ、それまで身体だけの関係で付き合っていた女性とも別れてジュールズとの結婚を夢見、ジョニやレイザーを含めた家族を作ることを夢想し始めていたのですが、自分とジュールズの関係が家族にばれたことで、家族全員を傷つけてしまい、その結果、もはや彼が受け入れられる余地がなくなったことを知ることになる。

 かくしてニックもジュールズもジョニもレイザーも、そしてポールも傷つき、一家はバラバラになってしまうのですが、そうこうしているうちにジョニが大学に入学するため、遠くの町に引っ越す日が近づいてくる。で、まだ互いにしっくりしないまま、家族全員でジョニの荷物をクルマに積み、彼女が住むことになるアパートまで送っていくのですが、家族のメンバーの一人の巣立ちの時を機に、バラバラだった家族の心がまた一つになっていくんですな。喧嘩したまま別れたくない、という気持ちを誰もが共有していたこともあり、またジュールズが皆の前でポールとのことを謝罪したこともあって、家族がまた一つになっていく。

 で、そんな風にして、一度危機に陥った家族の傷が、癒え始めたことを示唆したところで、この映画は幕を閉じると。

 ま、そんな感じの話ですな。

 で、本作に対する私の評点は・・・


 「78点」でーす! 合格。


 映画全体として、ドーンという感動もない代わり、どこにも無理がないというか、平和に暮らしていた一家のもとにポールという異分子が入り込んできたことで生じる波紋というか、感情の起伏が、ごく自然に、さもありなんという感じで、上手に描かれている。そういう意味で、すごく説得力があるわけ。家族を丸ごとポールに奪われそうだと感じた時のニックの、恐怖にも似た焦りの感情も実に上手に描かれていたし、やや支配的な性格のニックの下で自己実現を阻まれてきたジュールズが、ポールと出会ったことを機に、ニックへの不満が噴出していくことも実に説得力がある。また思春期の只中にあるジョニとレイザーの姉弟の、変わりゆく家族の状況の中での心の動きも実に自然。

 一方、気ままに自分一人の生活をエンジョイしてきたポールが、ジョニやレイザーやジュールズと出会ったことで、結婚して一家を構えるという選択肢もあったのかな、と気づき、次第にその考えにとりつかれていく様子も、これまた自然なんだなあ。

 でまた、ひと騒ぎの後、結局、元の鞘に戻りました、という結末も、まあいいんじゃないでしょうか。家族ってのは、それがたとえレズビアンのカップルの家族であっても、こういう風に傷つけあうこともあり、また傷つけあった後、もとの関係に戻るだけの回復力を自然に備えているものなのであってね。



 で、そういう意味では普遍的な家族の物語なんですが、一つだけ、やっぱりアメリカだなあと思うのは、ニックやジュールズが自分の非を認めて、家族の前で謝罪をするシーン。これが日本だと、たとえ今のまずい状況が自分の責任であると分かっていても、親の立場にあるものが、子供も含めた家族に公式に謝罪する、ということはないでしょ。そこがね、日本人の目から見ると、アメリカっぽくて面白いなと。

 結局、「言葉」と言うモノに対する信頼の問題なんですよね。日本人は一般に言葉に重きを置かない民族だと思いますが、それに対してアメリカ人は、言葉をもう少し信頼している。というか、「たとえ完全な手段じゃないとしても、言葉で伝える以外に方法がないでしょ」という諦観がある。そういう意味での言葉への信頼は、日本人より遥かに強いんじゃないかな。

 そういうアメリカ人の「言葉」の使い方がね、こういう映画を見るとよく分かる。


 とまあ、そういうもろもろのことも含め、この映画、見る価値ありと判断します。教授のおすすめ!です。ただ、この映画の題名(原題も疑問ですが、特に邦題)は、果たしてこれで良かったのだろうかと、ちょっと思いました。


これこれ!






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Last updated  July 19, 2012 03:26:36 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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