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November 1, 2017
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カテゴリ: 教授の読書日記
アリアナ・ハフィントン著『サード・メトリック』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 「ハフィントン」さんというお名前、なんだか発音していても息が漏れてしまうようで、ちょっと読みにくいのですが、ギリシャ生まれのアメリカ人女性でありまして、そのお名前から「ひょっとして・・・」と思われる方も多いかと思いますが、インターネット上のニュースメディアとして有名な「ハフィントンポスト」の創設者でございます。ハフィントンポスト、日本版もありますよ。

これこれ!
 ↓
ハフィントンポスト日本版


 で、このアリアナさん、自分でそういう一大メディアを立ち上げて育て上げてしまう人ですから、そりゃもうブルゾン的に見てもバリバリの「キャリアウーマン」なんですけど、そのワーカホリックなアリアナさんが2007年の4月に突然ぶっ倒れるんですな。デスクに頭をぶつけて血だらけ、倒れた拍子に鎖骨を折るというなかなかの重症。原因はもちろん過労です。

 で、この一件をアリアナさんは一つの啓示と見るわけ。このまま、今の生活を続けていったら、間違いなく死ぬな、と。そこで彼女は、これを機に自分の生活をバッチリ見直すんです。そして、改めるべきところは改めていく。その顛末を記した本書は、その意味で、アリアナさんのライフスタイル改善の実践記録と言っていい。

 じゃあ、アリアナさんがどういう方針で自己改革をしたかということなんですけど、まずアリアナさんはそれまでの自分の生活を振り返ってみて、自分が今まで追求してきたのは、「成功」の二つの証、すなわち「権力」と「金」であった、ということを直視するんですな。権力と金。実際、アリアナさんはハフィントン・ポストの成功によってこの二つを二つながら十分に手に入れたと言っていい。



 幸福っていうのは、権力と金だけでは測れないんじゃないか。それを補完する第三の極、第三の基準(=サード・メトリック)があるんじゃないか。そう考えたアリアナさんが、サード・メトリックになりえるものとは何だろうかと熟慮に熟慮を重ねた結果、出した答えが「4つの柱」、すなわち「幸福(ウェル・ビーイング)」「知恵(ウィズダム)」「不思議と驚き(ワンダー)」「与えること(ギビング)」であったと。で、ここからが本当にすごいことなんですけど、アリアナさんはこの4つの柱を自分なりのやり方で実行していくわけ。

 「こうすればいいんだろうな」ということは多くの人が考えるのでしょうけど、それを実際に実行するとなると、それはやはり難しい。それを実行してしまうアリアナさんってのは、だからやっぱり例外的な人物なのかも知れません。

 ま、それはともかく、ではアリアナさんが実際に何をやったのか、ということですが、まず「ウェル・ビーイング」という観点について言いますと、アリアナさんは直近の自身の経験から、ストレスによるバーンアウト(燃え尽き症候群)が現代人の幸福度を奪っていると考え、それに対処すべく「マインドフルネス」を自身の生活に取り入れるんですな。

 「マインドフルネス」については、このブログでも何度か取り上げましたが、要するに「今、自分がやっていることに意識的に集中する」ということ。例えば呼吸一つとっても、「今、自分は新鮮な空気を吸っているんだ」「今、その吸った空気を腹の底から吐き出しているんだ」ということを意識しながら呼吸をする。こういう集中の訓練のことですな。もちろん、その延長線上に「瞑想」ということがあることは言うまでもありません。

 また同時に、「マインドフルネス」の対立概念でもある「マルチタスク」(同時にいくつもの仕事をこなすこと――ニュースを見ながらメールをチェックし、食事もする、みたいな・・・)をやめる、ということも自分に課すわけ。そして、十分な睡眠時間を確保することも心掛ける。さらに「毛深い友人」、すなわちペットと暮らすことのメリットを体験してみたりする。

 で、アリアナさんは筋金入りのジャーナリストですから、ただ単に「私はマルチタスクをやめました。沢山寝るようにしました。ペットも飼いました」ということを語るだけでなく、自分以外の人々、例えば有名な会社のCEOだとか、トップアスリートたちの中で、マルチタスクをやめ、睡眠時間を増やし、ペットを飼い始めたたことで、逆に効率を上げ、成績を飛躍的に上げた人々の実際のエピソードやデータをこれでもかと盛り込むわけ。だから説得力が違う。

 同様に「ウィズダム」の方面では、自身の経験や、友人たちとの付き合い、さらに読書経験などから人生に役に立つ知恵を抽出するという作業をアリアナさんは実行します。例えばアリアナさんは離婚経験をお持ちなのですが、相手に対する恨みを乗り越える過程で、そういったネガティヴな感情を、「もう必要のないもの」として手ばなすことがいかに重要か、ということを学ぶわけ。で、「必要ではないものを手ばなす」という知恵を自分のものにしていくんですな。その他、一日の終わりに「感謝することリスト」を作って、それを書き出し、友人同士見せあうことがいかに優れた人生の知恵であるか。夜、特定の時間を決めて、その時間になったら仕事関係のデバイスのスイッチをすべてオフにすることで、いかに人生は豊かなものになるか。直観というものが、いかに素晴らしいか。そういった様々なレベルの「知恵」を、アリアナさんは一つ一つ自分のものにしていく。

 「ワンダー」方面では、自然やアートに心打たれる、といったような意味で、新しい体験にワンダーを感じるという話から始まり、人生に様々な驚きを与える「偶然の一致」という現象を受け入れるとか、あるいは人間である以上誰もが目を背けつつ、しかしいつかは受け入れなければならない「死」に落着いた思いを寄せる、とか、そういった話題が繰り広げられます。

 そして最後、アリアナさんは、サード・メトリックの最後のピースとして、「ギビング」ということを提唱する。つまり、与えること、愛すること、気遣うこと、共感や思いやりを持つこと、奉仕すること、こういったことなしに、人間の幸福というのはあり得ないと。実際、人に奉仕をする人は、そうしない人よりも遥かに収入が高い、といった数値的な情報も満載ですが、しかし、この章は感動的なエピソードが盛り沢山。

 例えば、父親を失ったあるユダヤ人の少年の話。ユダヤ社会では、父親を失った少年は一年の間、教会(シナゴーグ)に通って追悼しなければならないそうなんですけど、その幼い少年がその習慣に従って協会通いをしていた時、その教会のラビ(=司祭)が、毎朝少年に付き添ってくれるようになったというのですな。「どうせ通り道だから、一緒に行こう」と。そしてその一年間、少年はラビと親しく話をすることで、父親を失った悲しみから立ち直ることができた。



 要するにギビングってのは、このラビの行為のことですわ。

 で、アリアナさんがすごいのは、「ウェルビーイング」「ウィズダム」「ワンダー」「ギビング」ということを、それぞれ自分の生活の中に取り入れるばかりでなく、例えば自分の会社の中でも、社内の会議室ではなく、社員と一緒に散歩をしながら会議をすることで、より建設的な意見を集約する、などということを実行したり、ハフィントンポストの記者に「休暇の日にはケータイをオフにする」という「デジタル・ダイエット」を実践させ、その効能を記事に書かせて公開するなど、ハフィントンポストという自分のメディアを縦横に使って、広く一般の人たちにもこうしたことの重要性を訴え続けていること。その辺の実行力、行動力が半端ない。

 辛辣な見方をするならば、アリアナさんがこの本の中で行なっている一つ一つのこと・提案は、凡百の自己啓発本に書いていることと大差なかったりもします。しかし、アリアナさんはそれらを、そういった自己啓発本から間接的に学んだのではなく、自分の経験の中から直接的に掴みとったのであり、さらにそこで得た知見を実際に自分の生活の中で試行し、さらにその中でも効果があると確信の持てたものに関して他人(=読者)にも積極的に勧めるというところまでやっている。つまり、本当の意味で「地に足のついた自己啓発」なわけですよ。「生きた自己啓発」というのかな。「権力」と「金」だけが人生の価値ではないということを骨身に滲みて知ったアリアナさんだからこその自己啓発。そういう意味で、これはとても説得力のある、気持のいい、言葉の最良の意味での「自己啓発本」であると言っていい。

 下らない自己啓発本も数多い中、これは私も自信を持って皆様に推薦できる数少ない自己啓発本の一つでございます。教授のおすすめ!です。



サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功 [ アリアーナ・スタシノポウロス・ハフィント ]





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Last updated  November 1, 2017 11:09:25 PM
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Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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