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January 21, 2019
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カテゴリ: 教授の読書日記
最近、すっかりお留守になっておりましたが、今の私の研究の中心は自己啓発本なんだ、と思って、久しぶりにそっち系の本を読みました。ウィル・ボウエンという人の書いた『もう不平は言わない』(原題: A Complaint Free World, 2007)という本。

 このボウエンさんという人は、アメリカ中西部の小さな町の教会の牧師さんなんですが、ある時、不平・不満のない世界があったら、素晴らしいんじゃないかと思いつくんですな。もちろん、いきなり不平・不満をゼロにするというのは難しいので、とりあえず21日間、不平・不満を言わないで過す(21日間というのは、卵が鶏に孵化するまでの期間から取った)。それを自分もやってみるから、皆さんも一緒にやりませんかと。ま、そんな風に教会員の人たちに提案した。

 で、それを実行するために、紫色のシリコン製のブレスレットを沢山注文して、自分も身に着け、教会員の人たちにも配ったんですな。使い方は、まずそのブレスレットをどちらかの腕にはめるんですが、もし自分が不平・不満の類を口にしたことに気付いたら、その時点でブレスレットをもう一方の腕に付け替えるわけ。で、その次にまた不平を言ったら、元に戻す。

 で、ブレスレットを一度も付け替えないで21日間過せたら、証明書(幸福証書:Certificate of Happiness)を発行する。

 ま、そういうルールを作ったわけ。

 で、大抵の人は、「自分はそう不平・不満を言うタイプではないし、21日間くらいだったら簡単だろう」と思うらしいんですわ。だけど、実際にやってみると、スタートしてものの5分くらいでブレスレットを付け替える羽目になると。

 つまり、意識して自分を観察すると、誰しもすごい頻度で自分が不平・不満を口にしているというのが分かるというのですな。だから、21日間ぶっ通しで不平・不満を言わずに過ごすというのは、結構、骨なわけ。

 だけど、諦めずにその努力を続けていると、いつかは21日間ぶっ通しでブレスレットを付け替えないようになる。その時、人は、自分が変わったことに気付くんですって。そして自分が変わるだけでなく、自分の周りの人の自分に対する態度も変わるし、周りの人も不平を言わなくなると。つまり、その効果は水に投げた小石のように、波紋として周囲に広がっていく。

 で、この小さな町で始まったプロジェクトが、次第にマスコミに取り上げられるようになり、ついにはオプラ・ウィンフリー・ショーでも取り上げられて、今やアメリカ全土で980万人もの人がブレスレットを身に着けるようになったらしい。



 ま、この本はそんな顛末を語った本であります。

 さて、これをどうとらえるか。

 要するにですね、これは・・・引き寄せの法則です。引き寄せ系の自己啓発本ですな。

 ただ、通常の引き寄せ系自己啓発本は、「良いことを引き寄せる」ことを指南するのに対し、この本は「悪いことを引き寄せない」ことを指南する本になっている。そこが、ある意味、斬新。

 著者のボウエンさんは、結局、「言葉の力」というものを信じているわけよ。言葉・・・つまり人が口にしたことはすべて実現してしまう(=引き寄せの法則)。だから、不平・不満を口にすれば、それを引き寄せてしまうんですな。で、通常、人はそういうことに無自覚に生きているので、不平・不満をしょっちゅう口にし、その結果、さらなる不平・不満の種を引き寄せている。

 だから、それを止めればいい。不平・不満を口にせず、それを引き寄せなければ、不平・不満の種は芽を出さないので、ますます不平・不満を言う必要が無くなる。で、そうなれば人はどんどんハッピーになっていく。その方がいいじゃん? というのがこの本の主張なわけね。

 だから、幸福を引き寄せるのではなく、不幸を引き寄せないためのノウハウを語っているわけで、やり方は違うけど、言っていることは本質的には同じっていう。

 ま、それにプラスして、ブレスレットという、不平・不満を可視化するための道具を持ち出したところが、面白味でもあり、成功の秘訣でもあるんでしょうな。

 もっとも、これに近いものは、自己啓発本の長い歴史の中で、前にもあることはありましたけどね。それは腕に輪ゴムをはめて、もし何かネガティヴなことを言ったらその輪ゴムをはじいて己を罰する、っていう奴。それじゃまるで中世の修道院のマゾっぽい修道士みたいじゃないか、ってんで、自己啓発本の批判者たちから揶揄されたりしたものですが。

 輪ゴムでパチン、じゃなくて、紫のブレスレットを右から左へ、左から右へ付け替えるというところが、ちょっとお洒落っぽいから、そういう批判を受けなくて済んでいるのかもね。

 で、ちなみにですけど、こういうプロジェクトを始めてすっかり有名人になってしまったボウエンさんは、その有名税として色々な批判に晒されるようです。



 これに対してボウエンさんは、エックハルト・トールという自己啓発ライターの以下のような言葉を引いて反論します:


 不平不満を言うことと、過ちや欠陥を指摘して正すことを、混同してはならない。不平を言わないようにすることは必ずしも、悪い品質や無礼な態度を我慢することではない。ウェイターに、スープが冷めているので温め直す必要があることを告げることは、それがニュートラルな事実に基づいたものであるなら、そこにエゴは介在しない。「こんな冷めたスープを出すとはどういうつもりだ!」というのは不平不満である。(『A New Earth』より)


 なるほどね。ま、そりゃそうですな。何にしても、不平・不満、人の悪口は、できれば言わない方がいいに決まっている。

 というわけで、トータルで言うとなんていうこともない自己啓発本ですけど、自分が日頃、どのくらいの頻度で不平・不満を口にしているか、ということを意識的に観察してみる、ということは、無駄なことではないかもね。





もう、不満は言わない (サンマーク文庫) [ ウィル・ボウエン ]





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Last updated  January 21, 2019 10:43:52 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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