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March 6, 2019
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カテゴリ: 教授の読書日記
昨日読み始めた『アンのゆりかご』、結局、読み終わっちゃった。結構面白かった。

 まあ、まず基本的に村岡花子の英語や英文学に対する情熱ってのがすごくて、そこから発して、日本に家族で楽しめる家庭文学が欠損しているということに気付き、翻訳という仕事を通じて、その「ないもの」を存在させることに尽力したということなんだけれども、その過程では道ならぬ恋もあり、戦争もあり、子供を失くすという経験もあり。女性が男性と同じ立場で良い家庭を築けるように、という当たり前のことを実現するために、公的な仕事もこなす一方、あまりの多忙さゆえにオリジナルの作品を書くという夢はある程度断念せざるを得ず、といった後悔もあり。所詮、誰の人生だって一筋縄では行かないものだけれども、村岡花子さんも、一筋縄に行かない人生の中で精一杯、自分の得意を活かして、仕事したんだなあ、って思います。

 で、読みながら思ったんだけど、文学作品の価値ってのは何なのかなと。

 村岡花子が愛した『赤毛のアン』シリーズ。おそらく、学問的な意味での英文学史的には、あまり価値のないものと思われているんだろうなと思うわけですよ。せいぜい児童文学として取り上げられはするだろうけれども、しょせん、「おんなこども向け」(失礼!)のものとして、下に見られていると思う。

 だけど、プリンス・エドワード島の風物とか、そこで暮らす少女アンの多感な胸の内の思いへの共感とか、そういうものが、外国(日本)の少女たちの心すら、どれほど浮き立たせたかということを考えれば、それを文学の力と云わずして何と言う、って思うわけですよ。ましてや特高などに検挙されることを怖れながらもこの本の翻訳を続け、いつの日か平和な時代が再び訪れた時に、その翻訳を出版することが出来たらと夢見ることで戦時中の厳しい時期を乗り切った村岡花子のことを思えば、この本に文学的価値なしなどと言うことはとてもできなかろうなと。

 子供の頃、3歳年上の姉の書棚に、『アン』シリーズが何冊か並んでいるのを見た記憶があり、それゆえに、というべきか、これは男の私が読んではいけない本なんだと思いこんで、今日に至るまで読んだことがないのですけれども、ここはいっちょう、奮起して読んでみようかな、『赤毛のアン』。

 50代半ばのおっさんが、『赤毛のアン』・・・。

 だけど、案外、分からないよ。意外にはまったりして。「今年の夏休みは、プリンス・エドワード島に行こう!」とか言い出したりして。

 あ、あと、『赤毛のアン』というタイトルについて面白いエピソードが書いてあって、原題の『Anne of Green Gables』をどう訳すかというので、村岡花子自身は『窓辺に倚る少女』にするつもりだったので、出版社の三笠書房の編集者だった小池喜孝が『赤毛のアン』という案を出してきた時には一顧だにせず一蹴したのだけれども、後で娘のみどりが『赤毛のアン』の方が絶対にいいと言い張ったので、花子が「これは若い人に向けた本なのだから、若い人のセンスを信頼しよう」と考えを翻し、自説を捨てて小池の案を採用したのだとか。確かに『赤毛のアン』の方が、スッキリしてますよね。






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Last updated  March 6, 2019 11:35:36 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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