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August 19, 2019
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カテゴリ: 教授の読書日記
玉村豊男さんの書かれた『人生を豊かにするモノ』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 まあ、私はエッセイストとしての玉村さんのご著書が好きなので、時折、思い出したように読むのですが、本書も「実家に戻っている時、仕事の合間に読んだらいいんじゃないのかしら?」と思って、前もってネットで入手しておいたの。

 もちろん、古書として数百円で買ったのですが、なんと開けてみたらサイン本だった! 超ラッキー!!

 ま、それはともかく、本書は玉村さんがこれまでにお買いになった様々なモノを巡ってのエッセイでありまして。玉村さんはご自身のことを「コレクター」とは思っておらず、ただ自分のその時々の審美眼と必要に応じて買い求めたモノが段々溜まってきたので、それらの中でもとりわけ思い出深いものについて、何か書き記しておこうと、それでこの本をお書きになったと。

 ちなみに2002年10月刊のこの本が出た時、玉村さんは57歳だったそうで、つまり今の私の年齢とほぼ同じ。そう思うと、一層、面白みが増します。

 で、本書に紹介されている品々で、高いものの筆頭はフランス製の調理用コンロ。当時としてもベンツのゲレンデヴァーゲンと同じくらいの値段だったと言いますから、まあ1千万円くらいのものでしょう。これは、長年日々の食事の支度を担当されてきた玉村さんにとって、高くはあるけれど、どうしても欲しかったものだったのだとか。

 でも、もちろんそういう値の張るモノのことばかりではなく、ペルーで買った二束三文の土産物の話とか、そういうのも沢山ある。

 で、これを読んでいて、つい私も欲しいな!と思ったものがいくつかありまして、その一つは玉村さんがフランスで買い求め、愛用されたブリキの鞄。

 それはフランス軍の兵隊用のものとして、一昔前はどこでも安い値段で売っていたものだそうで、薄っぺらいブリキ製なので、ぶつけると凹む。だけど凹んだら内側から金槌かなにかでとんとん打ち出すと元に戻るらしく、そういうものとしてヘビーデューティーに使えばいいと。でその色がまたフランスらしい青で、実に美しいのよ。機能美って感じ。



 あと、その他ではシノワズリ(中国趣味)の洋食器とかも、なかなか良いですなあ。私も一つ欲しくなっちゃった。

 でも、この本は、別に読者の購買欲をかき立てるための本ではなくて、一つ一つのモノについての思い出やら、考察が面白いんです。

 例えば、「ハウマッチ考」もその一つ。

 旅行者が旅先でモノを買うことはよくあるので、あらかじめ現地の言葉で「これいくら?」に相当する言葉を覚えておく、なんてことはあるわけですが、特に発展途上国なんかにいくと、この理屈が通用しないことがある。

 つまり、発展途上国なんかにいくと、売り手側がわらわらと旅行者に近づいて売り物を示し、「ハウマッチ?」と聞いてくる、というのですな。

 買い手が聞くのではなく、売り手が「ハウマッチ?」と聞いてくる。つまり、「いくらで買ってくれるか?」と向こうが尋ねてくるわけ。だから、もし「そんなものいらない」と思えば、旅行者は「ノー」と答えるわけですが、そうなると売り手が「ハウマッチ?」で、旅行者が「ノー!」という会話になる。これは、通常の会話として想定の埒外になるわけですが、そういう埒外な対話がそいう場所では頻繁に起こると。

 しかし、と玉村さんは考える。むしろ、売り手が「ハウマッチ?」と尋ねる方が、健全なのではないかと。

 そもそも「定価」なるものが発明されたのは、デパートというものが登場して以来ですから、たかだか150年とか、その程度の歴史しかない。それ以前は、売り手が示した曖昧な値段に対し、買い手側がどう反応するか、その応酬によってモノの値段が決まっていた。だから、売り手の「ハウマッチ?(いくらだったら買う?」という質問は、当たり前のものだったわけですな。

 で、そんなことをつらつら考えながら、玉村さんも現地の風習に倣って値段交渉をするわけですが、そうなるとそこに「値切る」という行為が必要になってくる。だけど、この「値切る」というのが実に難しいと玉村さんは言います。

 つまり、値切らなければ、現地の人に馬鹿にされるし、値切りすぎれば、現地の人を搾取することになる。じゃあ、双方が納得する落としどころはどこなのかと。それをいちいち考えてモノを買うというのは、少なくとも現代(西洋)文明に慣れた身からすると、非常に辛い。

 モノを買うというのは、そういう風に考えて行くと、結構大変な作業なんだなと。ま、そんなことを考えたりする。



 ま、結局、モノを買うというのだって、一期一会だからね。買って良かったもの、買いそびれてしくじったと悔やむもの、色々ある。そういう色々のことが、本書には書かれています。

 私もまた、モノを買うのが好きで、買ったモノに執着する方ですので、そういう私のような人間にしたら、この本、すごく面白いです。教授のおすすめ! と言っておきましょうかね。


これこれ!
 ↓

『中古』人生を豊かにするモノ (The New Fifties)





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Last updated  August 19, 2019 03:10:38 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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