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November 24, 2021
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カテゴリ: 教授の映画談義
アマゾン・プライムで『サウンド・オブ・メタル』という映画を観ましたので、ちょっと忘備録を。ネタバレ注意ですので、まだ観ていない人、これから観るつもりの人は、以下、読まない方がいいかも、です。

 これ、ルービンという男と、その恋人のルーという女の話なんですけど、二人はメタル・バンドを組んでいて、ルービンはドラム担当、ルーはギターとボーカル担当で、ギンギン大音量のメタルを演奏しながら、家兼用の改造バスに乗って全米各地を経めぐっていたわけ。

 ところが、そのルービンが、突如、失聴してしまう。耳が聴こえなくなるんですな。メタル・バンドとして大音量の音楽に耳を晒し続けたのが悪かったのか・・・。

 で、なにせ耳が聴こえなければバンド活動なんかできやしない。それどころか、日常の会話すら出来なくなり、ルービンはとまどいと苛立ちで荒れます。で、とりあえずルーが、耳の聴こえない人たちが集団で暮らすコミュニティみたいなのを探し出してきて、ルービンをそこに預け、自分は実家のあるフランスに帰ってしまう。ルーは、実の父親とはあまりいい関係ではないのですが、父親は富豪だし、背に腹は代えられないということで、そういうことにしたわけ。

 で、最愛のルーもいなくなってしまったルービンは、そのコミュニティの中で暮らすことになり、コミュニティを主宰するボスの指導を受けながら、子供に混ざって手話を習ったり、そこで暮らす耳の聴こえない仲間たちと少しずつ心を通わせたりすると。

 で、ルービンも少しずつ状況にも慣れ、コミュニティに溶け込み始めるのですが、やはり音楽への未練もあり、また耳が聴こえない苛立ちもあって、結局、音楽機材やバスも売って資金を作り、思い切って耳の手術をすることにするんですな。

 とはいえ、手術をしたからと言って全治するわけではなく、要するに機能しない耳の代わりに、電気信号を直接脳の神経に伝えて、鼓膜の代役をさせるという手術なので、今まで通りというわけにはいかない。むしろ、頭の中に常に不協和音が鳴っているような状態になってしまうんです。でも、とりあえず、少しは人の言葉が聞き取れるようになった。

 で、そこでルービンは一旦、コミュニティに戻るのですが、ボスはルービンをもはや受け入れません。

 このコミュニティは、もう、一生耳が聴こえない人たちのコミュニティであり、そういう人生を受け容れている人達だけで構成されている。そこへ、まだ耳の聴こえる世界へ復帰するためにじたばたしているルービンが入ると、コミュニティの輪が壊れると。だから、ルービンはもはや受け入れられないっていうわけ。



 で、リッチな父の下で暮らしていたルーと久々に再会するのですが・・・もうそこに、彼の知っていた彼女はいなかった。もう、元の父の娘たるフランス娘がいるばかり。

 それをルービンも感じるんですが、それでもあきらめられない彼は、ルーに向って、早く元の生活に戻ろう、また一緒にバスに乗ってツアーをやろう、と誘うのですが、その時のルーの反応を見て、あ、これは駄目だ、と悟るんですな。もう彼女は、自分との生活には戻れなくなってしまったんだなと。

 で、翌朝、まだ寝ているルーを残して、ルービンはアメリカに帰ることにする。その途中、フランスの街角のベンチに座っていた彼は、自分の頭に取り付けた機器を外すんです。そして無音の世界に入る。その無音の世界の中、ポツンとベンチに座ったルービンの顔がクローズアップされる。

 まあ、結局、ルービンは、じたばたするのをやめて、無音の世界で生きることを選択した――。まあ、そういうことをほのめかして、この映画は幕を閉じます。

 まあ、降ってわいた不幸の中で、苦しんで苦しんで、とうとう自分はすべてを失ったということを悟って、ルービンは新しい、耳の聴こえない人生を、ついに選択したんでしょうな・・・。悲しいけれど、しかしそれはそれで一つのスタートの物語でもあって、その意味では妙にすがすがしいところもあるというか。

 ま、傑作とは言わないけど、ルービンを演じたリズ・アーメドの印象的な顔立ちもあって、佳作ではありましたかね。


これこれ!
 ↓
サウンド・オブ・メタル


 ところで、この映画の最後のシーンを観て、一つ思い出した別な場面がありまして。



 で、倒された伊吹は、目が覚めてから怒りに任せて刀を振り回すのですが、やがて大猿に「知り合いのいる寺があるから、そこで仏に仕える身になってはどうか」とアドバイスされたことを思い出し、「俺に坊主頭は似合うかな・・・」と言って、刀を捨てて去っていく。

 無論、失聴と失明は違うし、メタルバンドのドラマーとかつて徳川軍を恐れさせた必殺の剣士では大分立場が違いますが、身に降りかかった不幸と、そこからどう立ち直るかというストーリーはよく似てますよね・・・。だから、ルービンが無音の世界の中、ベンチに座ってじっと空を見ているのと、伊吹兵馬が「俺に坊主頭は似合うかな・・・」と呟くのが、重なっちゃって。

 ま、そういうことですよ。

 でも、伊吹兵馬がひょっとして仏門に入ったかもしれないように、ルービンにもまた、今までとは違うけど、やっぱり意味のある新しい生活が、彼を待っているんじゃないかな。そう思うと、ちょっと救われますよね。





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Last updated  November 24, 2021 10:53:23 PM
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釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽 @ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

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