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映画館で上映する映画に、知り合いが俳優として出ているという、ちょとうれしい話です。
チラシを見ると、確かに 「上野伸弥」
という名前が、知っているままの名前で載っています。徘徊で通い始めた映画館で、モギリの青年として再会して 3
年目なのですが、元「アメリカン・フットボール」少年だった頃からの知合いです。
そのうえ、今日は、上映後の舞台挨拶というイベントに登場すると聞きました。これは、まあ、行かねばなるまいとはせ参じたのが元町映画館です。
映画は 「れいこいるか」
です。チラシでは 「阪神大震災、あれから 25
年」
と謳っているのですが、見る人によって評価は真っ二つに分かれそうな内容でした。
一応、娘の 「れいこ」
を震災で亡くした元夫婦の、男と女の物語なのですが、これと言った脈絡はあるような、ないような展開です。
個人的に一番驚いたのは、 「れいこ」
の母親の 「伊智子」
の実家が鷹取駅前商店街に実在する、立ち飲み屋 「森下酒店」
だったことです。
実際の 「森下酒店」
には、御嬢さんが二人いるはずで、お二人とも 「上野」
君と同じ事情で知り合いです。だから、劇中の 「伊智子」
さんは、ぼくの知っている 「森下酒店」
のお嬢さんだったかもしれません。そういう妄想から、ぼくは 「れいこいるか」
という映画の内側に入り込んで、ウロ、ウロ、当てもなく徘徊するオッサンになってこの映画を見ていました。
震災の前後の神戸を須磨、鷹取、新長田、板宿、新開地と歩いて知っている人間にとって、この映画が、へたくそで、脈絡無視のワンカット、ワンカットで映し出す、どっちかというと支離滅裂な人間たちの姿が印象的でした。
「ダボ!また会おな!」
登場人物たちを支えているのがこの言葉だと思いましたが、このことばだけで日々を暮らし、 25
年の歳月を 「あれは、確か、ここやったかいね」
で乗り切ってきた、神戸の下町の「普通の人々」の真実のポートレイトがこの映画には映っていると思いました。
目が見えんようになったり、見えるようになったり、オッパイまで見せて活躍の
「伊智子」
ネーさん、考え事をするときは自動車の下に潜り込んでオマージュを叫びながら、サカリがついてしまう 「上野」
少年、ボケてしまった
「森下酒店」
のおばちゃん、ふと見上げる鉄人に思わず 「ごくろうさん!」
と声をかけて通り過ぎていくゴムの緩いジャージのニーちゃん、フィルムには登場できませんでしたが、そのあたりをウロウロしている徘徊老人のぼくも、一言かまさせてもらいます。
「ダボ!お前らみんな、元気でな!おれはこの程度のはなしでは泣けへんで!若松公園や森下酒店に集まってるみんなによろしゅういうといてや。」
というわけで、われにかえると、 「上野」君 がニコニコ舞台の上でおしゃべりをしていましたが、ぼくは調子に乗ることなく、静かに拍手していました。
監督 いまおかしんじ
脚本 佐藤稔
撮影 鈴木一博
録音 弥栄裕樹
編集 蛭田智子
音楽 下社敦郎
キャスト
武田暁(伊智子)
河屋秀俊(太助)
豊田博臣 美村多栄 時光陸 田辺泰信 上西雄大
上野伸弥 石垣登 空田浩志
2019
100
分・日本
2020
・ 08
・ 19
元町映画館no51
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