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第23話「佳人の残り香」

賀連信(ガレンシン)は四弟・賀連修(ガレンシュウ)を見つけるなり胸ぐらをつかんだ。
「なぜだ?なぜ妹妹にまで手をかけた!」
良医署の毒薬が減っていたことから、医官たちは郡主が盗んだのだと推察した。
しかし賀連信は元雪に毒を手に入れる術などないと知っている。
「お前が昨夜、良医署に行った後、元雪を訪ねた
 元雪にもしものことがあれば父親は私を厳罰に処すからな、それが狙いなのだろう?!」
「私が毒殺したと?!私の妹妹でもあるんですよっ?!」

 天は見ている、お前は曲涼(キョクリョウ)の主になれぬだろう」

呂北逸(リョホクイツ)の治療で賀元雪は一命を取り留めた。
報告を聞いた安(アン)王はようやく娘の様子を見に行ったが、元雪はうなされながら呂北逸の名を呼んでしまう。
「呂北逸…他の人に嫁ぎたくない…」
安王は元雪の想い人が呂北逸だと知り、老三と呂北逸を呼んだ。

賀連信は妹の警護が甘かったと認めて罰を請うた。
しかし咄嗟に引き返して妹の命を救ったことから、安王は相殺により賞罰なしだという。
呂北逸もまた賀元雪の命を救った功が認められたが、安王はあまりに罪が大き過ぎると言った。
「お前は輿入れに乱入し、賀家の面目を潰し、郡主の名節も汚した」
すると安王は弔いの酒だと言って呂北逸に杯を差し出す。
賀連信は慌てて止めようとしたが、その時、賀元雪の声が聞こえた。

一方、蘇南春(ソナンシュン)から報告を聞いた駱青蓮(ラクセイレン)は馬を駆けて王府へ向かっていた。

賀元雪は呂北逸の命だけは助けて欲しいと嘆願した。
どちらにせよ愛する人以外に嫁ぐつもりはなく、父王がどんな婿を選ぼうと決意は変わらないという。
安王は娘の思わぬ反発に深く失望し、怒りに任せて呂北逸に毒酒を賜った。
「王爺!お待ちください」

青蓮は安王から″死を免じる″という約束の証しとして賜った亡き王妃の玉笛をかかげる。
「これを呂北逸に譲ります、譲渡禁止とはおっしゃいませんでした
 私はただ王爺に決断の後悔を残して欲しくないのです」
結局、安王は父親としての情にほだされ、賀元雪の望み通り王府を出ることを許した。
しかしこれからはもう父娘ではないという。
「父親…」
「父と呼ぶな、天下は広い、どこへでも行け」
安王は駱青蓮から玉笛を受け取ると、正殿を出て行ってしまう。

賀連信は妹と一緒に正門を出た。
すると馬車の前で呂北逸と駱青蓮が待っている。
呂北逸は自分を愛してくれる賀元雪を受け入れると決めたが、あばら家で質素な生活になると念を押した。
「今は何もしてあげられない、情や名分も与えられないが、本当にいいのか?」
「その答えは私が服毒した時に出ていたはず」
「はお」
その様子を遠目から賀連修が見ていた。

賀元雪は別れ際、兄嫁に酒瓶の入った化粧箱を渡した。
「先日、一夜を共にした女子を探し回っている書生を見かけたの
 一途なのは私だけじゃない、愛に苦しむ人は他にもいる
 呂北逸に比べたら私は幸運ね、二度と会えないと思ったけれど、これからはそばにいられる
 だから本来の持ち主にこれを返します」
賀元雪は呂北逸の深い愛情を得ることができた駱青蓮を幸せだと言った。

賀連修の地図を隠した化粧箱は駱青蓮の手に渡った。
こうなると頼りになるのは南如珍(ナンジョチン)だけ。
しかし賀連修は麒麟の子を宿した南如珍が今さら自分たちに従うとは思えない。
そこでその夜、嫡妻・阮之湄(ゲンシビ)は自ら静姝(セイシュ)館に赴いた。

駱青蓮は就寝前の安胎薬を飲んでいた。
すると侍従の李塘(リトウ)が駆けつけ、之湄夫人が侍女を使わず自ら南如珍に会いに来たと報告する。
「まさか脅しに来たとか?」
青蓮は彤冊(トウサツ)を詳しく調べた許寄柔(キョキジュウ)の話を思い出した。
…記録を改ざんした跡があったわ…
その謎を解いてくれたのは今日の賀元雪の話だった。
…書生は香粉の店を回っていたわ、その女子の顔は覚えていないけれど、独特な幽蘭(ユウラン)の香りが漂っていたとか…
「東籬(トウリ)、南如珍の愛用の香を知っている?」
「もちろん、幽蘭から作られた香粉・百悦(ヒャクエツ)香です」
駱青蓮は早速、内務房から百悦香を取り寄せた。

阮之湄は南如珍に化粧箱を取り返すよう命じて帰って行った。
未だ他人に操られることに我慢ならない南如珍。
そこで徐良川(ジョリョウセン)に例の書生を始末してくるよう指示したが、思いがけず邪魔が入った。

徐良川は裏道の暗がりで書生に襲いかかった。
しかし黒装束で顔を隠した東籬と李塘が邪魔して書生を連れ去ってしまう。
徐良川は退散する途中、書生が女と会っているのを目撃し、急いで静姝館に戻った。
遠目からでは書生と話していた女が誰か分からなかったが、姿形は青蓮夫人に似ていたという。
「実はその女は書生に刺され、深手を負いました」




南如珍は漣微居に乗り込み、邪魔をする侍女を引っ叩いて駱青蓮の寝所に入った。
青蓮はすでに寝台に横になっていたが、南如珍の姿に驚いて慌てて腹を隠す。
「使用人が姐姐と書生が密会していたと言うんです
 別れ話のもつれか、書生は姐姐の腹を匕首で刺したとか」
南如珍は青蓮の腹が大きいのは傷あての綿紗を巻いているせいだと誤解し、いきなり寝衣をめくってしまう。
すると確かに青蓮の腹は大きかったが、それは懐妊しているからだった。

駱青蓮は書生から証言を得るため百悦香の手巾を見せた。
すると書生は駱青蓮が一夜を共にした女子だと誤解、いきなり匕首で青蓮の腹を刺してしまう。
しかし匕首はちょうど腹帯に入れていた長命鎖に当たっていた。
こうして図らずも公になった駱青蓮の懐妊。
そこへ久しぶりに妹の水蘭(スイラン)が訪ねてきた。
「以前のことは私が悪かったわ、許して」
「本宅に戻ってから何度、招いても来てくれなかったわ
 妹を遠ざけた私を許せと言うの?」
「姐姐が誰よりも私を可愛がってくれたと分かってる」

つづく


(´⊙ω⊙`)あーっ!老四ってどこで見たのかずっと考えていたけれど分かった!
長相思でカメハメ波で女主を殺しちゃった人か!w





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最終更新日  2024.11.18 23:24:25
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