2017年03月08日
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カテゴリ: OPERA



「名古屋のおやじ」様からびわ湖「ラインの黄金」Day 1 及び 池袋芸劇・笈田ヨシさん演出の『蝶々夫人』ご感想をいただきましたのでお許しを得まして掲載させていただきます。いつもありがとうございます!

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 古代の権力闘争の歴史や瀬田の唐橋にまつわる大蛇や竜神の伝説などに彩られた大津の湖。その岸辺に聳えるびわ湖ホールほど、ワーグナーの『ニーベルングの指輪』の上演にふさわしいオペラハウスは、他にあまり例がないでしょう。
 4日に見たハンペ演出の『ラインの黄金』は、まず、視覚的に見どころの多い舞台でしたね。ライン川のなかを泳ぐ乙女たち、のっしのっしと舞台を歩く文字通りの巨人たち、カエルや大蛇に姿を変えるアルベリヒ、そして虹を渡ってゆく神々。映像の技術等をつかって、これら眼前に現出する様は、感動的ですらありました。ただ、ひび割れた大地、ローゲやドンナーの出で立ちゆえに、アニメの『ドラゴン・ボール』の世界を覗いているような気分にも少々なりはしましたが。
 いまどき珍しい程の超オーソドックスな舞台だったこともあって、演出家のエゴを押し付けられることもなく、それゆえに、ワーグナーがこの作品に込めた思いを、観客自身が考えるように誘うような舞台であったとも思います。『ラインの黄金』は、その物語の空間が縦軸に上下します。今回の演出はそれを映像の使用で、はっきりと示しました、そのようなこともあって、社会の上下関係と搾取の関係が可視化されていたと思いました。そして、舞台上に示されたアルベリヒの歌詞の日本語訳を見ながら、ワーグナーとマルクスが同時代人だったということも、思い出したりしました(たしか没年は同じ)。金と権力。最近のテレビや新聞などの報道を見るにつけ、人間は「アルベリヒの呪い」から逃れられないのだと思う日々。
 音楽面も充実していましたね。びわ湖ホールに定期的に伺うきっかけになったのは、数年前の『オテロ』での京都のオーケストラの演奏の素晴らしさ(もちろん、それは指揮の沼尻さんのダイナミックなリードあってのことです)に感銘を受けたからですが、今回も、やはりその演奏は見事でした。2回しか上演がないのはもったいない。もっとピットでの演奏機会が増えるといいなあと、いつも思います。
 歌手は落ち込みなし。そのなかで、一番印象的だったのはローゲ役の西村さん。狂言回し的な役柄ということもあって、キャラクターテノールが担当することが多いこの役を、美しく輝かしい声で歌い驚かされました。あの声で、ローエングリンや『名歌手』のワルターを聴くことができたら、どんなにか素晴らしいだろうと思いました。長身だし、きっと見栄えもすることでしょう。

 話は違いますが、2月の半ばに池袋で笈田ヨシさん演出の『蝶々夫人』を見ました(4月にBSで放送があるらしい)。個々の歌手がどうこうというよりも、1つのプロダクションとして、とても興味深く、面白かった。表参道のオリエンタルバザール(まだ、あるのかな?)の店内に紛れ込んだような錯覚を覚えた第1幕。蝶々さんの部屋に掲げられた星条旗を彼女が踏みつけ、父の形見の短刀で自刃する寸前まで幕切れとし、蝶々さんが死ななかったかもしれないという可能性を示したりもする。この幕切れは、とても印象的で、笈田さんの解釈なのだろうけど、原作のロングの物語でも、蝶々さんは死ななかった(?)ような、おぼろげな記憶があるのだけど、どうなのかな。ちょっと気になりました。答礼には、笈田さんも出てこられました。とても若々しく、80歳を超えているようには見えなかったですね。
 彼の出演する舞台を見たのは四半世紀も前のこと。銀座のセゾン劇場でのピーター・ブルック演出のシェイクスピアの『テンペスト』でした。空気の精のエアリアルを大柄な黒人が演じ、「怪物」のキャリバンを小柄な白人(映画の『ブリキの太鼓』に出演していた人)が演じていて、目からウロコ。そのようなこともあって、今回の『蝶々夫人』の舞台を見ながら、1950年代の終わりにメトでは、ジョージ・シャーリーという黒人がピンカートンを歌ったことがあったよな、なんて思ったりしました。演出はたしか青山圭男さん。このプロダクションは、新メトにも移行され、その開場のシーズンにも上演されています。そして、その演奏が少し前にリリースされた新メトの50年の記念ボックスCDセットにも収められています。そこで、レナータ・スコットの蝶々さんの相手をしているのが、このシャーリーなのです。記憶が正しければ、メトの100周年のガラの時、彼は往年のプリマドンナ、ミラノフなどと一緒に舞台上にいました。







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最終更新日  2017年03月08日 21時57分40秒


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