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エンタテインメントの作り方 売れる小説はこう書く【電子書籍】[ 貴志 祐介 ] この間ダークゾーンを読んで一気にこの作家が嫌いになったのだった。 その作家が書いたミステリー論である。 というよりミステリー作家論と言ってよろしい。 182ページに微に入り細に入りミステリー作家のイロハが書きだされている。 もちろん私がこれからミステリーを書くことなどあるまいが,ミステリーリーダーとしてミステリー作家の手の内を知るには実に素晴らしい一冊だ。 それでこの作家のことを私はどれだけ知っているのだろうかなんて考えて本ブログを精査したら,そもそもカテゴリーに挙げており,10作以上読んでいるんだな。 本書にも私が読んだ作品が随所に出てくるのだけれど,いつものとおりもうほとんど詳しいことは忘れていた。 それでも読後感は素晴らしい!というのが多かった。 ダークゾーンだけが私には理解不能だったということになるんだろうが,一作者の一作がその作者の評価を根底から崩してしまうんだなあとつくづく思ったことだ。 しかしながら,本書を読んだらまたその評価が変わった。 本書は背中の痒い所をかいてくれるような実に素晴らしいミステリー作家指南書だ。 貴志はミステリーの種を常にノートしておく。 その種を大事に育て花を咲かせるのだ。 時には不能なトリックに気づき連載中大慌てしたこともあるとか。 本書によるミステリー作家が多作家症候群に陥ることはないのかもしれない。(3/15記)
2023.06.10
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狐火の家 (角川文庫) [ 貴志 祐介 ] シリーズとしての防犯探偵はこの作家の代表作なのだろうが,どうも粗削りすぎるな。 本作も短編集であるが今回は密室三昧をなくして動物であるとか将棋であるとか金塊インゴットによる殺人であるとかそれはもう様々な材料を武器にして殺人事件を起こさせているんだけれど,あまりにも粗削りすぎて話に乗っていけないのだ。 本シリーズに榎本とともに欠かせないのは青砥純子弁護士である。 それはもう榎本と名コンビになっているな。 そして本作では青砥純子が榎本なしで見事に解決した事件もあるのだ。 こういうシリーズモノというのは癖になるな。 やめられなくなるんだよ。 つまりキャラクターが定着して読み手がとても楽しみになってくるのである。 だからといって粗削りなのはいかがなものか。 人を泣かせるストーリー性は欲しいわな。 でも貴志祐介にはそれがない。 それが彼の作品をつまらないものにしている。 短編集に細かいトリックがいっぱい詰まっていると疲れてくるんだよね。 それが実は貴志の手口なのかもしれない。 読み手を疲れさせるってか。 私なんざあ終盤本当に飽きてきてさ,捨てようかと思ったけれど,とにかく読了はしたよ。 ミステリーリーダーと作者の関係は戦う人ということかもね。 騙されずに謎を解くのがミステリーリーダーなのである。(2/22記)
2023.05.10
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鍵のかかった部屋 (角川文庫) [ 貴志 祐介 ] ここまで密室モノで攻められると口飽きしてくる。 密室モノの短編集なのだが読後どれがどれやら判然としない状態になった。 たしかに密室はミステリーに欠かせないものだけれど,それが何度も何度も短編で登場してきては,考えるのも面倒で,しかも榎本という防犯探偵,これぞ独り善がりの権化,だからわたしゃあ青砥純子弁護士を応援してしまうのだ。 でも発想は面白い。 欠陥住宅の密室モノでは,なんとピッチングマシーンを使用した。 欠陥住宅だから,使用されたテニスボールは斜めを転がり全部回収されたという。 だが警察の微物鑑識によりテニスボールの毛が検出されるという,完全犯罪には程遠い犯行となった。 私は東野を読んでいるものだから,その完璧さを感じているので,貴志はどうも荒削りな感じがしてならない。 たしかに面白いトリックではあるが,ミステリーにはストーリー性もあるわけで,ただ単なるトリックの羅列では,ミステリー足り得ない。 だからトリックを考えだしたらそこにストーリー性を乗せ,読み手を感動させなければならないのだ。 そういう意味で本作はイマイチでしなな。 そもそもミステリーの読み手は文系人間だから,七面倒臭いトリックは理解不能に陥るのだ。 だからある程度のアバウトさは必要だ。 しかし必要以上なアバウトはかえって夢物語にしか過ぎなくなる。 いかにもリアルな感じの嘘。 そういうのが必要だ,ミステリーには。(2/21記)
2023.05.09
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青の炎 (角川文庫) [ 貴志 祐介 ] しかしそれにしても(今日、何読んだ? 210528)と令和3年に読んでいるにも関わらず,その中で素晴らしいミステリーと評しているにも関わらず,この度読んだら全く覚えていないという,トンチンカンな話。 これじゃあミステリーリーダーの名が泣くね。 せめてもの罪滅ぼしに,貴志祐介,のカテゴリーを増やしたら,10を超えていた。 つまり私的には少しは興味のある作家だということになろうが,この前読んだ,ダーク・ゾーンが不快だったことから,この作家を私がほめちぎているなどという事実にびっくりしてしまったのだった。 それはともかく東野の後継を探さなければならないと思いつつじゃあ貴志祐介はなんて考えた場合,貴志は東野と同世代なんですなあ。 本作はその東野モノを彷彿とさせる作品でもあるのだが,東野のふわっとした感じが不足しているのだ。 そんなことで貴志は東野の後継足り得ないのだが,気になるミステリー作家として,今野敏であるとか中山七里などと同様本ブログ上カテゴリー独立をするに値する作家だと私は判断した。 さて本作であるが,2つの殺人が行われる。 倒叙である。 これはもったいないね。 野獣のような男を殺すにあたり手の込んだトリックを考えつくのだけれど,歯の銀冠から足がつく。 検視を検死と書くのもいただけない。 最終盤の悲劇もでかさない。 けれども高校生の微妙な心理が余すところなく表現されている。 文章力も高い。 ホラーを書かせたら面白い作家なのかもしれない。 ただとにかくこの前読んだダーク・ゾーンは私はだめだね。 だが,本作はけだし傑作だ。(2/10記)
2023.04.28
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ダークゾーン(上)【電子書籍】[ 貴志祐介 ]ダークゾーン 下【電子書籍】[ 貴志 祐介 ] さて本作は上下巻の大作。 しかし話が,ゲームなのか,夢なのか現なのか,判然としないままダラダラダラダラと進行する。 それにしても本作の筋の悪さには辟易する。 そもそも将棋の駒は先手後手それぞれ9×2+飛車角で20枚でしょうが。 それが軍勢が18体だなんてさ,知ったふりすんなよと私ですら言いたくなる。 それに今をときめく天才棋士藤井聡太さんですら大学に進まず,その道を究めんとしているのに,何が神宮大学だ。 そのうえ登場するヒロイン的女性が子宮外妊娠ですと。 主人公の虹彩はゲームでは4つあるのだが,それが一つ一つ潰されやがて失明する。 話がほとんどハチャメチャでしたな。 それはともかく作者は本作について並々ならぬ自信を持っていたに違いない。 たしかに冒頭に書いた通り何が現で何が夢か判然としない,ゲームと現実の二部構成,でゴシック体を駆使して読み手を撹乱する,テ,には,フム面白い試みだ,と私なんざあ思い込んでしまう。 ようするに小手先の,いわゆる独り善がり本,いつどこで切ろうかと思ったが,結局読了してしまった私だった。 ただ本作に関して私は容易にその印象を忘れることはないのではないかなと思う。 印象深いのは間違いない。 でも深いストーリーが私には理解不能なのだった。 なにはともあれゲームというのを文章で紡ぐと本作のようになるのだろうな。 その意味では見事だと認めなければなるまい。 しかしそれにしても情けとかお涙とか感情というのが感じられない無機質さが不気味だったとも思う。 この手の小説はもう結構だと言いたい。(11/1記)
2023.01.22
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鍵のかかった部屋【電子書籍】[ 貴志 祐介 ] 本書は佇む男、鍵のかかった部屋、歪んだ箱、密室劇場の短編4部作からなる。 防犯アドバイザー榎本径と弁護士青砥純子のいわゆる探偵コンビとしては仲の悪いちょっと距離のある二人であるが、そもそもこのシリーズは警察と仲の良い鍵師である榎本径は、青砥純子から言えばたぶん今も現役としての泥棒だということなのだが、この二人が微妙な距離間で密室トリックを暴いて行く。 尤も暴くのは榎本径だけで青砥純子は仮説をひけらかしては結局無理だという結論に落ち着くのだが…。 表題は鍵のかかった部屋であるから作者や出版社は多分鍵のかかった部屋が一押しなのだろうけれど私は密室劇場が一番面白かった。 私はタリーズでこの作品を読んでいたのだが、読みながらクスクスと何度か笑いながら先に進んで行ったのである それほどこの作品は榎本、青砥コンビからすれば異質の作品であった。 しかも戒名は殺人ではなく過失致死だろう。 そういう作品なのだが、一昔前にあったクイズの、アハ、というシーンを再登場させたりして、その話は全く受けないお笑い芸人の舞台が舞台と言うことで、逆に笑わずにはいられない、とても楽しいというよりはやはりミステリーであるから、異質の作品ということになるだろうか。 死体硬直により立ったままから座った状態に変わるとか、サムターン回しの天才が密室に利用されるとか、不正建築の建築会社の社長をピッチングマシーンで殺すとか、様々なトリックを相変わらず作者は上手に使って読み手を楽しませてくれる。 いやあ、ミステリーは本当に面白い。
2021.06.24
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狐火の家【電子書籍】[ 貴志 祐介 ] 最近著者の作品を読む機会が増えた。 というのも著者の作品がKindle Unlimitedに多いからだ。 しかしそれにしてもこの作家の才能には驚かされる。 本書は短編4作だが、この作者の当たり役青砥純子と榎本径のコンビによるもの、いやコンビと言うよりは、仲の悪い相棒とでもいうのか、とにかくそれぞれがよくできたキャラクターで、読み手には実に魅力的な二人なのだ。 私は、貴志祐介の特徴は粘着質な性格と深彫する取材力、そしてその道の人以上の知識力にあると思う。 狐火の家では、第一発見者が実父で、そこからさらに様々な話が続いていく。 可愛そうな第一発見者がさらに犯人たりうるにはどのようなストーリーの変化が必要になるかということですな。 まさにミステリーの醍醐味でしょう。 蜘蛛の話はいささかマニアックだ。 しかも青砥純子の蜘蛛嫌いは尋常ではない。 なのに蜘蛛の話が延々と続く。 こういう書きっぷりが著者の粘着質を感じるところだ。 将棋の世界にも著者は明るい。 しかしそれにしてもこの小説が書かれた時代だね、ケイタイで次の一手を示唆するか。 ケイタイの時代にポケベルなんて言っていた時代を思い出す。 犬に噛まれる話も短い作品だが、犬しか聞こえない超音波を出す機械を使うトリックなんか秀逸だ。 たまたまKindle Unlimitedに親しんでいたのと、3年前に日本推理作家協会賞受賞作品を重点的に読んでいたことで著者の本を読む機会が増えたのだが、いい作家に巡り会えたものだと思うし、またその青砥純子と榎本径の活躍が読みたいものだと思うこの頃である。 いやあ、ミステリーって面白い。
2021.06.21
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硝子のハンマー (角川文庫) [ 貴志 祐介 ] 本作は、日本推理作家協会賞受賞作品で、2019年1月22日に夕顔絵夢二郎の江戸ハブ日記に書評を初掲している。 その記事を読むと、読み手としてこの作品を読み切れていないな、と、私が私を評することになった。 さて2019年といえば、私が小説読みに戻った年で、冒頭の日本推理作家協会賞を中心に読んでいたわけだ。 そのうちの1冊が本作だった。 本作が優れているのは、2部構成になっており、1部で弁護士と探偵のコンビが事件を推理し、2部で倒叙の形になるところ、こんな素晴らしい構成だと言うことを読み込めなかった私は何という愚か者なのだろう。 夕顔ブログには、介護ロボットのことが書いてあるが、たしかにそれは大きなポイント、しかし2部の部分が私の記憶から大きく欠落していたわけだ。 あの頃一体私はどんな読み方をしていたんだろうね。 それはともかく、貴志祐介という作者は、稀代のストーリーテラーにして流麗な文章家なのである。 そのうえ、プロットも素晴らしい。 これだけ精緻なミステリーは珍しい。 まさに読み応えのある作品だ。 しかしそれにしても私は2年前の1月一体何を読んだのでしょうねえ。 今回読んで本作のトリックが実に目の前にスッキリと現れる。 細かいところ、つまりヒーローとヒロインの組み合わせもいい。 本作は密室ミステリーだから、密室であることを明らかにするため、開口部がないことを次から次へと明らかにしなければならない。 それを一つ一つ丁寧に描いてあるわけだ。 そのへんも実に小気味いい。 本当にミステリーは素晴らしい。
2021.06.18
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雀蜂【電子書籍】[ 貴志 祐介 ] ヒッチコックの鳥を彷彿させるような作品だ。 本作の結末を書くのは、読み手に対し失礼だ。 ギャフンという驚きはしないが、最終盤まで雀蜂との格闘を描いていただけに、肩透かしを喰らったようなそんな間抜けな気分だ。 しかしそれにしてもどこまで蜂と闘うんだろうねえ、なんていささか食傷気味になってしまったね。 それがこの作家のいいところでもあり悪いところでもあるのだろうか。 とにかく、最後に帳尻は合ったということだろうね。 ただ貴志祐介の文章力が高いのは確かだ。 いささか食傷気味と言いつつ今も私の頭の中を蜂がブンブン飛んでいるよ。 そういうのが小説家なんだろうね。 いずれにしろ蜂との闘いが延々と続き、それ以外の大どんでん返しは期待外れであるけれど、とにかく蜂と闘った彼にはスタンディングオベーションだ。 何にしろ、とにかく小説は取材力だ。 蜂に関する細かな説明がなければ、本作は駄作に堕す。 蜂に関する説明が相まって、蜂の怖さが倍増するのだ。 そういうところが実に技能的ですな。 小説というのは何も自分の空想を文章にするだけの話ではない。 それを読み手の脳内でどうスパークさせるかなのだ。 プロの小説家というのはそれが実に巧みだ。 そういう小説を読めた時が本当に読み手冥利に尽きるというものだ。
2021.06.02
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青の炎 (角川文庫) [ 貴志 祐介 ] うーん、いい話だ。 いい小説だ。 しっかりしたミステリー小説だった。 ただラストシーンがいただけない。 そもそも私は朝ドラの信者なので、ハッピーエンドにならない話は好まない。 しかし、本作をミステリーとして見た場合、殺人事件が2件あって、そのいずれのトリックも試行錯誤された上、最後に著者自身が真似しないでください、絶対に失敗しますと解説している通り、多分真似をしたら成功することになるかもしれないトリックなのだ。 しかも舞台が湘南の高校だと言う設定が素晴らしい。 そして少年は軽やかに自転車でロードバイクでそちこちを走り回るのだ。 証拠品を匿名のロッカーに隠したり、私には理解できないけれども精緻な理科の実験を利用して感電死させてみたり、コンビニの防犯カメラの死角で犯行に及んで見るなどと言う仕掛けは素晴らしい。 そして高校生の初恋話も盛り込んである。 そのうえ、少年法やら刑訴法やらの理解も正しくて好ましい。 そもそもこの主人公の悲劇性は母親の再婚相手が離婚してもなおこの家に乗り込んできて、自分、母親、主人公の妹の家庭をずたずたにして行くところから始まる。 さてしかしこの疫病神は何とがんを患っていて、主人公が何も殺さなくてもよかった話なのだ。 そしてその結果不登校の自称親友という男が主人公をゆすりにかかるのだけれども、そうこの疫病神が自然に死ぬのを待っていれば、その次の殺人も起こらなかったということになる。 ここに、仏教の悟りの話も塗り込められているのも秀逸だ。 高校生にして悟りにたどり着いた彼の友達。 彼が語る真理こそ仏教の髄で、疫病神の死を待つまで我慢していれば、つまり、怒りをコントロールできていれば、かような悲劇は起きなかったのだ。 私は何作がこの作者の作品を読んだが、本作は最高ではないかと思う。 また最近読んだ作品の中でも最高の部類に入る作品だと思う。 本当にミステリーは素晴らしい。
2021.05.28
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クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫) [ 貴志 祐介 ] 要するに VR+サバイバルゲームなんだね。 その文章力は卓越でそのシーンをありありと思い描くことが出来るのだが、ただそれだけなのだ。 だから何よ、というのが偽らざる感想なのである。 まあそれにしてもとにかく現代は計り知れないことが起きているんだなとつくづく思う。 そもそも本作の主人公は一体何者だったのだ。 それはともかくゲーム中必死になって生き延びようとするその努力はわかる。 途中ハンニバルも出てくるしね。 先に文章力が卓越だと書いたが、私の感想はただそれだけだ。 謎もホラーもミステリーもない。 だから立花隆(敬称略)から小説不要論が出てしまうのだ。 やはり伝統的なミステリーを楽しみたいものだ。 小説が単なる時間つぶしであってはならない。 読み手が読了後記事を書くまでの間は余韻に浸りたいものだ。 そういうのも無くなったのが現代であるとでもいうのだろうか。 ところで今まで散々スタバやらフードコートやらドトール、サイゼで記事を書き読書してきたというのにこの4月から職場が変わってしまい、それが思うようにできなくなったのがとても悔しいし、俺は一体今後どのように知的生活を続けるべきなのかがわからず途方に暮れているのだ。
2021.05.27
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黒い家 (角川ホラー文庫) [ 貴志 祐介 ] 本作は20世紀末、平成シングルの作品で、現在とは背景が違うけれど、それでも生保に勤めるものの苦しみがひしひしと感じられた。 統計について、年間の自殺者とか交通事故死者がこの四半世紀で大きく変わっているし、本作の中にあった、損保支払いの半数が詐欺だ、なんて話も今はどうなっているのか。 それはともかくまるでボレロのようにだんだんじわじわと恐怖が増していくのだ。 凶器は鱧切り包丁。 それを…。 そこまで書くとネタバレになるか。 ただ結果から言うと、生保の裏の仕切屋がいとも簡単に殺されてしまうものなのかという疑問は残った。 しかしそれにしても作者の頭の中はどうなっているんだろうねと思ってしまう。 私は作者に同期してしまった。 小説家は、読み手をいかに同期させるかが評価につながる。 その力があるかないかが、小説家の価値になる。 読み手である私は、脳内スパークしてしまうのだ。 ということで終盤どんどんどんどん恐さがましていくのだ。 そして朝ドラ理論的にみごとにヒーロー、ヒロインが勝ち抜く。 生保は、今日もまた厄介な案件をかかえ、なんとか解決していくだろう。 本作は、作者が最後の最後まで手を抜かず、きちんと書き抜いた小説だったと思う。 本当に素晴らしい。 拍手だ。
2021.05.05
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天使の囀り (角川ホラー文庫) [ 貴志 祐介 ] さて本作は角川ホラー文庫に所収のところ、おどろおどろしいホラーかと思いきや、ブラジルのアマゾンで線虫が人間を支配する話だった。 しかしそれにしてもその線虫が人の脳に食い込み、線虫のコントロール下におくなどということは、奇想天外な話なのだろうか。 そもそも今のコロナ禍もウイルスによる人間支配なのかと思ってしまうような説得力のある話だった。 とにかく小説はすごい。 それはともかく愛人を2人も線虫により殺されたヒロインである精神科医が、今度は自身のクライアントであるHIV感染者である少年にその線虫を仕掛けるなどということがあっていいのかな。 しかも彼女は人を7人も殺している殺人犯なのだ! たしかに読み手は地球防衛のために取った彼女の行為を擁護するだろう。 その7人は地球のために殺されなければならなかったのだ。 それは法治国家における法無視の行動ではないのか。 そうだとすれば今後彼女は殺人犯として裁かれることになるのである。 つまりデュープロセスである。 ところで本作のような鬼気迫る作品というのは本当に脳みそに多大な影響を与えるね。 しびれる! 知的生活に小説が必要ないというのは嘘だ、立花隆さん。 良質な小説こそ脳をスパークさせてくれる。 小説家の脳と私の脳がスパークし合うことで私の脳はまた1つ何らかの進化をしたような気がする。 脳のスパーク、これは人にとって必要なことだ。 私はこれからも小説を読み続ける。
2021.04.25
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十三番目の人格(ペルソナ) Isola (角川ホラー文庫) [ 貴志祐介 ] また凄い小説に出会ってしまった。 とにかく理屈なしに最後まで読み切った。 ある意味小説は読み手と書き手の闘争だ。 だから読み手も真剣なんですよ。 それにしても心理学であるとか精神医学について作者は実に多くのことを熟知している。 それを私は取材力と名付けている。 本作における作者の取材力は万全だ。 安心して私は読むことができた。 本作が女性が中心になっているというのもとてもすごい。 ところでまたここで朝ドラ論であるが、朝ドラ論というのは読み手あるいは観手の思いどおりになるハッピーエンドなことなのだが、朝ドラ論を本作に求めようたしたら、それは無理だよ。 ちょっとしたネタバレだけどね。 12個の多重人格にあの阪神淡路大震災で亡くなった、磯良=ISOLA、が13番目の人格として入り込むという奇想天外な話なのだ。 その女と人の心を読める女の果てしない闘いですな、本作のコンセプトは。 ところで、ISOLAですが、ISOLATION TANKなんですなあ。 このことに作者は作中で言及していない。 だが私は見つけてしまった。 まあそれにしても、本当に小説は素晴らしい。
2021.01.05
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